パーティから追放された天才神官の私はチヤホヤされる為に女の子になりました。   作:節山

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露払い

「ええと、この壁をこうして……こうだ!」

 

 暗闇に閉ざされた通路の壁、つるりとした壁面の一部に不自然に四角く穿たれた窪みを指でまさぐると、カチリと言う音を立てて仕掛けが作動する。

 どういう仕組みなのかは謎だが……とにかく、この仕掛けで四角い壁の窪みに淡い光を放つ光球がふわりと浮かび上がった。

 これもいつぞやロフトが見つけた仕掛けだ。

 ずっとヒーリングトーチを展開して歩くのも消耗が激しいし、何より見える範囲が限られるからな。

 通路そのものを照らせた方が余程に良い。

 

「よし、それでは次はまた少し先の壁面だ!敵が現れるかもしれないから決して油断はするんじゃないぞ!」

 

「さっき骸骨剣士に瞬殺されかけた神官の台詞とは思えないけど……」

 

「ええい、うるさい!黒歴史を掘り返すな!」

 

 いちいち細かいところを突くリガスだったが、やれやれと困ったような笑みを浮かべると、私を守るかのように、ピタリと隣に張り付いて歩く。

 ついでにトゥーラも同様だ。チラチラと後方に注意を向けながら、私の後ろについてきている。

 っは~!やれやれ、なんだ?甘えん坊か?こいつら余程に私の近くから離れるのが不安と見える。

 ふふん、ま、私だからな!頼られるのも必然と言ったところか!

 ……ん、いや?だがこの場合は頼られてるのではなく守られているのか?いやいや、頼りになるから守られているとも言える。

 どちらにせよ私がパーティの要ということには変わりはないだろう。うん!

 

 私は満足しながら次々に通路の仕掛けを作動させ、灯を付けていく。

 途中、何体かの骸骨剣士が現れたものの、そちらはパーティの連携で見事に撃破だ。

 なんだかんだでリガスも徐々に爪を使いこなしてきているようで、最後の骸骨剣士に至っては私がサポートするまでもなく打ち勝てるようになっていた。

 元々の戦闘センスが高いというのもあるのだろうが、なかなかの成長速度だ。

 ヘムロックの禿げ爺の目利きは正しかったのかもしれない。

 ともあれ、そんな調子で順調に通路を進んでいくと、やがて通路の終点、広間へと出る道が見えた。

 そこまで来ると、私は警戒するリガス達を手で制して言う。

 

「この広間が墓地みたいになってる。見てみろ」

 

 言いながら、私達は通路の壁に張り付くと、隠れるように墓地へと目を向ける。

 広々とした空間には、足元にざらざらとした土が敷き詰められ、美しく装飾の施された天井からは、上階からだろうか、ところどころ光が漏れ出ている。

 ともあれ、その光のお陰で、通路ほどには真っ暗闇というわけではない。

 薄暗がりの中には、そこかしこに音を立ててうろつくスケルトンやゾンビ、レイスの群れ、それよりは少ないながら、骸骨剣士もいくらか見える。

 そしてその後方――墓地にことさら目立つように置かれた棺を守るようにして、三体の銀色に輝くスケルトンが立っていた。

 

「いたぞ、メタルスケルトンだ!それもお誂え向きに三体と来た!」

 

「い、いたのは良いですけど……すごい魔物の数ですよ……ど、どうするんです……?」

 

「はっ!無論!私が飛び込んでホーリーハンマーで奴らを全部」

 

「よし、作戦立てようかカミラさん、トゥーラさん」

 

「ですね!」

 

 と、二人が頷きながら私の肩を押さえつける。

 なんだ、ほんの冗談じゃないか!失礼な奴らだな!

 まあ実際、昔の私だったら飛び込んでホーリーハンマーを何発かぶち込めば、あのくらいのアンデッド共は瞬殺といったところだが……

 いや、というか、今の私もレベルが上がったことでホーリーハンマーの使用上限は増えてる筈だし……三発も撃てば実際いけるのでは……?

 などと考える私に、心を読んだかのように目の前のリガスが声を掛ける。

 

「流石にあの中に飛び込むのは無謀だよカミラさん、第一、撃ち漏らしがあったら致命的だ」

 

「そうですよ……カミラちゃん、バジリスク倒した後も慢心して石化させられたじゃないですか……」

 

「うっ……い、痛いところを突いてくるな……わかった、仕方ない!貴様らも活躍させてやるさ!作戦を立てるとするなら――」

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

「……という感じだが、ふふん、どうだ!?」

 

「良いんじゃないかな、トゥーラさんは?ちょっと危険だけど……」

 

「だ、大丈夫です!いざとなったら私、自分を石化して乗り切りますから……!」

 

 それは単なる性癖なのでは?

 そう思う私だったが、リガスの方はトゥーラの言葉に安心した様子で頷くと、意を決して墓地に飛び込んでいく。

 墓地に入ったリガスは、素早く爪を突き出すと、まず手近なところにいたスケルトンの体を砕いた。

 からからと軽快な音を立てて崩れ落ちるスケルトンとだったが、その音でリガスに気付いたのだろう。

 墓地を徘徊していた幾多ものアンデッドがリガス目掛けて動き出す。

 まず最初に襲い掛かってきたのは宙を浮き、素早く動けるレイスだ。

 直接的な攻撃力は薄いが、奴らの放つ魔術は、相手に恐怖や混乱の精神異常をもたらす。

 が、リガスはそんなレイス達の攻撃を軽々と受け止めていく。

 聞いたところにやると、あの爪に精神異常軽減の効果が付与されているらしい。

 中々良い神聖武器だ。私のモーニングスター程じゃないが。

 と、レイス達の攻撃を受け止め、躱しながらも、リガスは墓地の広い範囲を駆け回る。

 当然ながらアンデッド達も気付いて追ってくるが、そんなことはお構いなしだ。

 実際のところ、骸骨剣士とレイスはともかく、スケルトンとゾンビの動きは極めて遅い。

 骸骨剣士にだけ気を付けていれば、逃げ切ることはそう難しくないだろう。

 その骸骨剣士も直線的に追ってくる、というよりは、警戒しながらじりじり間合いを詰めるように動いている。

 と、墓地内の多くのアンデッド達が自分に気付き、追ってくるのを確認すると、リガスは今度は逃げるようにして一目散に通路に戻ろうとする。

 続くのはレイス、更に、骸骨剣士たちも相手が背中を見せたことで隙があると見たのだろう。素早い動きでリガスを追う。

 最後に一塊になって追ってくるのがスケルトンとゾンビだ。

 そして、逃げたリガスを追い、レイスと骸骨剣士が狭い通路に押し寄せたその時――

 

「ブレス!」

 

 私の祝福の術が、狭い通路を眩しく照らす。

 神聖なる光の前に、哀れレイスは雲散霧消!

 怯みながらも耐えた骸骨剣士達は、墓地内に戻ろうと振り向くが――そこで、引き返すのを邪魔される。

 通路と墓地とを繋ぐ道が石の塊……石化したゾンビ達の体で、いつの間にか塞がれていたためだ。

 当然、これをしたのはトゥーラである。

 通路と墓地の境目でひっそりと待機していたトゥーラは、ゾンビ達が折り重なって通路に押し寄せた時、彼らを石化させて道を塞いだのだ。

 チラリと横を見ると、ゾンビに紛れるようにして本人も石化している。

 壁にピタリとくっついているのもあって、まるで壁に施された彫刻のようだ。

 ま、眼前をアンデッド共が通り過ぎるすぐ横で待機してもらってたわけだからな、危険を感じるのも仕方ない。性癖も混ざっているのだろうが。

 ともあれ、最早引き返すことも出来ない骸骨剣士達は、必然的に再び私達の立つ通路の奥に目を向ける。

 

「しかし――ここでまたブレス!」

 

 と、再度、眩い光が通路を埋め尽くす。

 光に耐えきれずに、いくつかの骸骨剣士がその場にガラガラと倒れ伏した。

 残った骸骨剣士達も満身創痍、といった様子で、膝を突いている。

 さて、もう一度ブレスを撃ってやっても良いが……と、私が術を唱える前に、隣に立っていたリガスが骸骨剣士に向けて突進する。

 後はただ、ろくに動けない骸骨たちの骨をリガスの爪が打ち砕いていくだけだった。

 既に祝福による大ダメージを受けた骸骨剣士達は、ろくに抵抗できずに砕け散っていく。

 最後の一体の頭蓋を叩き割ったところで、リガスはふう、と溜息を吐いた。

 

「なんか凄く卑怯なことした気分ですけど……勝ったね!カミラさん!」

 

「卑怯ではなく天才的と言ってくれ!ふふん!吊り出しはダンジョン探索の基本戦術だ!」

 

 ましてやこんな場所ではな、警戒しない方が悪いのだ!私は卑怯じゃない!

 ふふん、と、得意気に私が鼻を鳴らすと、たたたと軽い足音を響かせ、トゥーラが駆け寄る。

 

「やりましたね、カミラちゃん!えへ……私も役に立てて良かったです!」

 

「トゥーラ、お前……石化してたのに骸骨剣士が倒れたのを察知してたのか……どうやってるんだそれ……」

 

「ふふ……やっぱり意識残し石化って良いものですからね……」

 

 トゥーラはそう言いながら、うっとりした様子で杖を撫でる。

 どうやら石化にも細かい種類がある……のか?こいつの変態性が産んだオリジナルじゃないのか?

 薄々そんなことを考えながらも、続いてトゥーラにゾンビ達の石化を解除してもらうと、わっと通路に流れ込むゾンビ達に私がブレスを唱えて消していく。

 こいつら程度ならブレス一発で消え失せてくれるのでとても良い!

 骸骨剣士のように警戒して引こうともしてこないしな。猪の如くこちらを突き進むアンデッドを単純作業で消していくだけだ。

 と、何度目かのブレスを唱え、アンデッド達が消え失せると――どうやら、それであらかた片付いたらしい。

 墓地の方へ目をやっても、他のアンデッドはほぼいない。

 メタルスケルトン三体は相変わらず棺桶の前に立っているが、それだけだ。

 よし、と、状況を確認した私は、二人に向き直って言う。

 

「露払いは済んだ!後は――今回のメインの仕事だけだ!」

 

「ああ!」

 

「はい!」

 

 眼前で答える二人も気合十分、といったところだ。

 やはりパーティの皆と連携が取れるというのは素晴らしい!気合を入れた私達は、速やかにメタルスケルトンを討伐――

 

「……する前に、さっきのアンデッド達のドロップ品を漁っていこう」

 

「ゾンビでも魔石あれば少しは売れるもんね」

 

「あ……このスケルトン金の指輪つけてますよ」 

 

 剥ぎ取りは金策の基本である。

 しっかりやっていこう。

 

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