パーティから追放された天才神官の私はチヤホヤされる為に女の子になりました。   作:節山

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箪笥の角に指をぶつけると痛い。

「さ、剥ぎ取りも済んだところで、メタルスケルトンだ!」

 

 剥ぎ取りが終わり、戦利品で懐も温まったところで、私は意気揚々と声を上げると、同じく剥ぎ取りを済ませたリガスが私に問いかける。

 

「それでカミラさん……作戦は?」

 

「はっ!無論!ホーリーハンマーぶっぱに決まってるだろう!」

 

「またか……」

 

「またですねぇ……」

 

「……いや、待て待て待て!今回はちゃんと合理的な理由だからな!?」

 

 呆れたように溜息を吐くリガスとトゥーラに、私は慌てて弁解する。

 メタルスケルトンはそれほど強い攻撃や、特殊な魔術を扱うわけでは無い、が、とにかく固い。

 魔力を蓄えたメタル種はみんなそうだが、物理的な攻撃にも、魔術での攻撃にも強い耐性を持っているのだ。

 が、それでも弱点というものはある。

 メタル化して強化されているとはいえ、元となるアンデッドの性質自体は持っている。

 この場合で言えば、スケルトンの弱点――つまり神聖術と、炎、更に骨を打ち砕く打撃攻撃に弱いのだ。

 

「そして私のホーリーハンマーは神聖術であり、尚且つ打撃技なのだ!さしものメタルスケルトンでもこれで倒れるのは必至!」

 

「ちゃ、ちゃんと考えてたんですね、カミラちゃん……!」

 

「当然だろう!私を何だと思っているんだ!」

 

 こいつら、全く失礼な奴だ!

 私が何も考えずに突撃をする浅はかな人間だとでも思っているらしい!天才なのに!

 ともあれ、実際ホーリーハンマーぶっぱは問題無いにしろ……懸念点もある。

 

「体感的にホーリーハンマーを撃てるのはあと二回だ。私もレベルアップはした筈だが、それでも今回は道中でいくつか神聖術を使ってしまっているからな」

 

「ってことは……敵は一匹余るってことか」

 

「うむ、まあ、依頼達成には別に一体だけで良い筈だが……折角だ。残りの一体も倒したいだろう?」

 

「それは勿論」

 

「で、出来るなら……」

 

 私の問いかけに、リガスとトゥーラは頷いて答える。

 うむうむ、そうでなくては!ここで素直に引き下がるようでは迷宮深部までは到底到達できまい。

 目標達成のためには退くことと進むこと、どちらも大切なのだからな!ということで……

 

「それでは、残りの一体は貴様らに任せた!」

 

「…………ええ!?」

 

 私の発言に、素っ頓狂な顔で目を見開きながら、リガスが驚く。

 仕方ないだろう。私はホーリーハンマー二発撃ったらもう終わりだ。

 ああ、いや、多少の回復や初級の術が使える程度の神聖力は残るかもしれないが……ことメタルスケルトン相手では有効たりえない。

 奴を倒すなら、私以外の二人がどうにかするしかないのだ。

 といったことを言って聞かせると、二人は納得したか、真剣な表情で頷く。

 

「……わかった。なんとかしてみせるよ。それじゃカミラさん」

 

「ああ、行くぞ!」

 

 言うと、私を先頭に、最早アンデッドの大半が消え失せ、がらんとしてしまった墓地に足を踏み入れる。

 それでも動かないメタルスケルトンだったが、一直線に棺に向けて歩を進めると、流石にこちらを認識したのか、ゆっくりと手に持った武器を構え始める……が。

 

「遅いなッ!ホーリーハンマー!」

 

 私は警戒態勢を取るメタルスケルトンのうち二体に、躊躇無くホーリーハンマーを二発、連続で撃ち込む。

 メタルな防御力に胡坐をかいたツケだ!

 さしものメタルスケルトンもこれには耐えきれず、一体は無残にもその銀色に輝く骨をバラバラにして砕け散り、もう一体は命からがら、といった様子で全身にヒビが入っている。

 が、それを見逃すほどに優しい私達でもない。

 メタルスケルトンの体に入ったヒビを見逃さず、リガスが爪を突き立てる。

 いくら防御力が高いとはいえ、この状態で攻撃を食らってしまってはどうしようもあるまい。

 二匹目のメタルスケルトンもアッサリとその場に砕け散ってしまった。

 さて、問題は三匹目だが――と、私は戦闘状態に入った二人と一体から少し離れて、そこかしこに立つ朽ち果てた墓石の一つに腰掛ける。

 

 リガスは残ったメタルスケルトン一匹に何度か爪での攻撃を仕掛けるが、目に見えて大したダメージを与えてはいないようだ。

 攻撃の雨の中、メタルスケルトンは怯むことなくゆっくりと腕を振り上げ、持っていた剣を振り下ろす。

 

「くっ……!」

 

 慌ててリガスが距離を取ると、スケルトンの振り下ろした剣が、棺の前に置かれた墓石を真っ二つに切り裂いた。

 動きはそれほど素早いわけでは無いにしろ、厄介なのはあの頑丈さ、加えてパワーも中々のようだ。

 直撃を食らおうものなら、ただでは済まないだろう。

 加えてリガスの爪との相性も悪い。あれは斬撃武器だからな。

 カリカのような本職の武道家であれば、爪を捨てて素手で殴ればメタルスケルトン程度の骨格は粉砕できるのだろうが、如何せん、リガスはこの間まで剣士だった男だ。

 さて、どうしたものかと見ていると、またスケルトンが剣を振り上げる。

 が、今度は――

 

「脆いブレイク!」

 

 リガスの後方で杖を構えるトゥーラの呪文によって、メタルスケルトンの持つ剣が石化する。

 骸骨剣士にやったのと同じ手だ!やるじゃないか!

 リガスも意図を察したのか、同じように石化した剣をあっさり砕く。

 これで相手の攻撃力は大幅に落ちた。

 が、防御力に関しては変わらないぞ?さて、どうする?メタル系の耐性では流石に本体への石化は効かないだろう。

 そう考えながら、ニヤニヤと眺めていると、再度トゥーラが口を開き、指示を出す。

 

「リガスさん!メタルスケルトンを掴んで!あの棺に!」

 

「棺に……わかった!」

 

 言うと、リガスは爪を放り捨て、メタルスケルトンに向かってタックルをかます。

 なんと、がっしりとメタルスケルトンの腰を掴んで、猛烈な勢いで押していくじゃないか。

 メタルスケルトンも抵抗しようと、素手でリガスの背中を殴りつけるが、如何せん、体勢が悪い。

 あれではリガスに大したダメージは入らないはずだ。

 と、すかさず、トゥーラが更に続けて呪文を唱える。

 

「せぇの……硬いブレイク!」

 

 そう唱えると、次に石化したのは、墓地の中央に置かれた棺だ。

 元々が石製であろう棺を石化して何を――と思ったのだが、目をやると、白く分厚い石で作られていた筈の棺は今、鉄のように黒く輝いていた。

 

「ふへっ、鉄鉱石だって……石ですから!リガスさん、それに!」

 

「うおおっ!」

 

 あの杖のお陰なのか、何なのか、どうやらトゥーラはいつの間にか石化の魔術にやたらと広いバリエーションを持たせていたらしい。

 ともあれ、その『硬い石』と化した棺に向かって、リガスは思い切りメタルスケルトンの体を叩き付ける。

 なるほど、スケルトンが物理攻撃に弱いのなら、何も、ぶつけるものは武器でなくても良い。

 極端な話、固くて衝撃を伝えるものであれば、壁でも床でも柱でも棺桶でも何でも良いのだ。

 とはいえ、流石のメタルスケルトン、一度叩き付けられた程度で砕けはしない。

 尚も抵抗と続けようと腕を振り上げるが――

 

「おらぁっ!」

 

 すかさずリガスが、スケルトンの無防備な頭骨を掴んで棺桶の角に叩き付ける。

 それでも一度では砕けないので、何度も何度も叩き付ける。

 鉄の頭蓋骨が鉄の箱の角にぶつかる、なんとも重く低い反響音が辺りに響く中、何度目かの叩き付けにより、ついにスケルトンの頭蓋に亀裂が入り、真っ二つにぱかりと割れた。

 メタルスケルトンの体はそのまま力無く、ガシャンと崩れると、さしずめ自身の墓標であるかのように棺桶の上へと降り注ぐ。

 何度か素手での反撃も食らっていたせいだろう。リガスは息を荒げながら顔を上げると、背後を振り向き、私とトゥーラに満足気な笑みを浮かべた。

 

「はぁ……はぁ……どう、カミラさん!?やったよ!」

 

「ええ……ふへっ……み、見ました!?カミラちゃん!私の硬いブレイク……!」

 

「ああ、凄いじゃないか!流石はこの私のパーティメンバーだ!褒めてやるともさ!」

 

 メタルスケルトンを倒した高揚感からだろう、興奮した様子でリガスとトゥーラがはしゃぐ。

 私もとりあえずは褒めてやる。手柄は手柄だからな!大したものだと言ってやろう!

 が――パーティメンバーを育てるには飴と鞭が必要だ。

 

「メタルスケルトンを倒したのは見事だった……が、反省点も述べておかねばなるまい!」

 

「は、反省点……」

 

「そうだ!貴様らの戦い方……」

 

 そう、戦い方だ。

 なんだアレは、爪での攻撃が通らないのは仕方ないにしろ、硬くした棺桶の角に頭を叩き付けて倒すなど。

 あんなのは……

 

「あんなのは、そうだ!野蛮極まる!奇をてらいすぎだ!もうちょっとスマートかつ王道な倒し方をするべきじゃないだろうか!」

 

「カミラさんにだけはそれ言われたくないな」

 

「本当ですねぇ……」

 

「はっ!?いやいやいや、聞き捨てならんぞ!私はいつもいかにも天才!と言うべきスマートな戦闘を見せてるだろう!おい!ちょっ……黙って素材を拾うな!」

 

 なんとも生暖かい目で私を見つめながら、最早色々と諦めたかのようにメタルスケルトンの骨をかき集めるリガス達に、いまいち納得いかないものを感じて私はぐるると唸るのであった。 

 

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