パーティから追放された天才神官の私はチヤホヤされる為に女の子になりました。   作:節山

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暴け!天才神官の正体!

「……ということで、そこで現れたバジリスクを打ち倒した最強神官こそが私!カミラ様なのだよ!天才!」

 

「へぇ~」

 

 あたし――カンナの前には今、そう言って空の杯を振りかざしながら堂々と語る少女の姿があった。

 乱暴な冒険者に絡まれたあたしは、そこを助けてくれたこのパーティから迷宮についての情報を収集することとしたのだ。

 他の冒険者と比べて歳も近そうだし、女の子が二人いて話しやすい部分もあったかもしれない。

 ちなみに拳を振るおうとして石化させられた冒険者は、その後すぐに石化を解かれて逃げ帰っていた。

 

「カミラちゃんはバジリスク以外とも戦ったの?」

 

「ふふん、当然!メタルスケルトンからマンティコアまで何でもござれだとも!」

 

「マンティコアはまだ倒してなくない?」

 

「ん……いや、まあ、どのみち第四層まで行けば会うことになるだろう!よって倒したようなものだ!」

 

 傍らで酒を飲む男の子……リガスというらしい、に、突かれて少し戸惑う様を見せるものの、カミラちゃんはすぐさまそう言って胸を張る。

 どうやら相当に自信家な女の子らしい。自己主張をしない師匠とは真逆なタイプだ。

 だが、その自己主張のお陰で色々な話が聞けた。

 迷宮に挑む為の冒険者という制度、迷宮一層から四層までのおおまかな内容、ついでに街で迷宮内部の地図や便利なアイテムを売っている店の情報などだ。

 これだけ情報が集まれば、ひとまずは師匠に怒られないで済むだろう。

 と、それまで静かに話を聞いていたあたしに、気を遣ったのだろうか、魔術師であろう少女、トゥーラが声を掛ける。

 

「えと……カンナちゃんはその……どうしてこの街に……?やっぱり迷宮……?」

 

「ふふん、それはもう!この迷宮に挑むからには神具目当てだろう!今更来ても遅いがな!」

 

「カミラさんちょっと静かに」

 

 あたしへの問いかけにカミラちゃんが反応して立ち上がると、それをリガス君が止める。

 神具、恐らくは大概の冒険者は、手にすると願いが叶うというその宝を求めて、迷宮に挑むんだろう。

 だけど……

 

「うーん……あたしは仕事で来ただけだから、別にそういうのはなあ……」

 

 実際、あたしはその神具を求めて来たわけじゃない。

 や、話を聞くと、魔王様の言っていた鍵とその神具が関わっているっぽい気はするけど、あたし自身はあくまで師匠についてきただけだ。

 自分の欲の前にまず、与えられた任務を果たさないといけない。

 そう思っていると、カミラちゃんはやれやれと呆れたように首を振って言う。

 

「なんだなんだ、若いのに冷めた女だなぁ、理想は高く持ってこその天才だぞ!」

 

「そういうカミラちゃんはどういう理由なの?」

 

「ふふん、決まっているとも!神具を手に入れることで、名誉と権力を手に入れ、広くこの世に私の存在を知らしめることさ!」

 

「や~……それはそれで俗っぽくない?」

 

「だよねぇ、俺もそう思う」

 

「こらリガス!貴様に言われるのは納得いかんぞ!パーティメンバーだろう!」

 

 と、いかにも俗物、といった願望を語るカミラちゃんに、リガス君ははにかんだ笑みを浮かべながら言葉を返す。

 

「ふふん、まあ確かに、正義や平和の為だとか、そういったことを願った方がウケは良いだろうさ、だが、しかしだよ!歴史に名を残したい!これは男であれば誰しも胸に描く夢じゃないか!?」

 

「えっ、カンナちゃんって女の子だよね?」

 

「ふへ……ですねぇ……」

 

「あっ」

 

 あたしの問いかけにカミラちゃんが一瞬、目を白黒させる。

 世の中には女の子の恰好をしている男もいるとダキアから聞いたことがあったので、一瞬それかな?と思ったが、そうでもないらしい。

 単なる言葉のあやというやつだろう。

 あたしも変なところを気にしてしまうものだ。ちょっと申し訳ない。

 変なところを突かれたと思ったのはカミラちゃんも同じだったのか、顔を恥ずかしそうに、少し赤く染めながらも、すぐさま咳払いをして言い直す。

 

「んっ、こほん、今は……ええい!バーカ!揚げ足を取るな!私が言いたいのは要は……目的は明確に持てということだ!その方がモチベーションを保てるからな!」

 

「んー……まあ確かに、正義の為とかで何かドデカいことしようとしても、そこまでモチベ続かないかもね」

 

「そう、そういうことだ!わかってるじゃないかカンナ!ふふっ!一杯奢ってやろう!」

 

 あたしが相槌を返すと、カミラちゃんは上機嫌にそう言って杯に酒を注ぐ。

 言ってることは小物っぽいが、実際そういうものなのかもしれない。

 まあ、あたしも師匠の為に来てるようなもんだし――と、眼前で酒を注ぐカミラちゃんの胸元で、何かがカチャンと音を立てる。

 ふと、気になってその音の正体を見ると、それは首飾りだった。

 金の細工が施されたその首飾りは、一見して単なる装備品の一部にしか見えないが、何故かそこには目を惹かれるものがある。

 華美なわけでもなく、奇抜なわけでも、逆に汚らわしいわけでもない。

 言うなれば――

 

「……神々しい?」

 

 ぽつりと漏らしたその言葉に、カミラちゃんがキョトンとした顔でこちらに向き直る。

 しまった、口に出してしまった。

 もしかしたら不審がられたかも――そんな不安を覚えるあたしに、カミラちゃんがゆっくりと口を開く。

 

「神々しい……神々しいか……ふふ、参ったな!しかし当然!この天才美少女神官カミラ様を前にしてはな!ふふん!私も自分で自分を見た時につい美しさに惚れ惚れしてしまうほどだ!」

 

「あっ……うん、うん!そう!カミラちゃんがね!本当そう!可愛いと思う!」

 

「ははは!いや、本当のこととは言え照れるなぁ!ふふ、気に入った!もっと飲んでいいぞカンナ!」

 

「あ……あざっす!うぇーい!」

 

 あたしは誤魔化す為に無駄にテンションを上げてみせると、そのまま杯に注がれた酒を飲み干した。

 いやー……カミラちゃんがアホで良かった!

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

「……カンナ、どうした?」

 

「うぅあ~……あ、し、師匠~……」

 

 カンナちゃんと飲み始めてからしばらく経ち、夜も更けたところで解散と相成ると、あたしはフラつく足で予め師匠が取っていた宿に戻る。

 既に師匠とダキアは帰ってきており、部屋のテーブルに腰掛けて話の擦り合わせを行っているようだった。

 一方、あたしは散々に注がれた酒で頭と足元がちょっとフラフラしている。

 みっともないところを見せてしまったが、師匠は鉄兜の下でわずかに溜息を吐くと、あたしにベッドに腰掛けるように言う。

 

「すいません……師匠……」

 

「良い、酒場に行かせたのは私だ」

 

「弟子には甘いねえ、ザッパ」

 

 すっと水を差し出す師匠に、ダキアが茶化すように言う。

 ちょっぴり腹が立つが、今回に限っては本当に甘やかされているので何とも言えない。

 

「酒に酔っているところ悪いが、情報は得られたか?カンナ?」

 

「あっ、ふぁい……えっとですね……」

 

 と、師匠に促されるまま、あたしはカミラちゃんから仕入れた情報を語っていく。

 冒険者の制度について、迷宮の組み換えについて、出現する魔物についてなどだ。

 ある程度話していくと、師匠は何かを考え込むようなポーズを取って、向き直る。

 

「ふむ……なるほど……どうだ?ダキア?」

 

「ンフフ、僕が知ってる迷宮とは大分違うねえ」

 

「ダキアって迷宮のこと詳しいの?」

 

「フフ、まあねえ、僕はザッパと違って人間の国に顔を出すことも多いし、人間と組んで冒険者やってたことだってあるさ」

 

「ふうん」

 

 水を飲みながら、なんとはなしにダキアの話に相槌を打つ。

 何でも五十年ほど前に、とある冒険者と組んでいくつかの迷宮に挑んだらしいのだが、結局踏破は出来なかった……いや、しなかった?らしい。

 

「ま、踏破しても僕にとっては意味が無かったしね、鍵が無いと意味が無い」

 

「その鍵ってのは?」

 

「うむ、こちらは例の悪魔、ミキシンから仕入れた情報だ」

 

 そういえば師匠達はそっちに情報を聞きに行っていたんだった。

 ただ、結果として言えばミキシンからはあまり大きな情報は得られなかったらしい。

 何せ本人が余程に手酷くやられたのか、全身を神聖力に侵されていて、未だに傷が癒えていない上に、いささか錯乱していたそうだ。

 師匠はそんなミキシンの姿を思い出したのか、また溜息を吐いて、ポツリと呟く。

 

「あわよくば案内役か何かに使えたらと思ったが、あれでは難しかろう」

 

 結局、最低限のことだけを聞き出して、牢に囚われたままにしておいたらしい。

 ミキシンにはちょっと申し訳ないが、下手に助け出して騒ぎを起こすよりは、そのまま牢に置いておいた方が良いという判断だ。

 というようなことを私に話すと、最後に、と師匠は私に言って聞かせた。

 

「奴は……天才神官にやられた。と言っていた」

 

 天才神官。

 

「ンフフフ、まあ、三流だとしても、悪魔を一方的に痛めつけることの出来る神官だ。確かに天才かもしれない。油断ならない敵だろうねえ」

 

「ああ、更にその神官が鍵を持っているとも語っていた……一体どのような相手なのか……」

 

「あの……師匠……その鍵ってこう……見たら分かったりしますかね……?」

 

 考え込む師匠達に、おずおずと問い掛けると、答えを返したのはダキアの方だった。

 

「フフ、勿論さカンナちゃん、鍵は……人間共からしたら呪われていると感じるだろうが、僕達魔族からしたら、それは呪いではなく祝福に他ならない。魔族であれば、一目見れば神々しいと感じられる輝きを放っているものの筈さ!」

 

「あー……」

 

「……どうした?カンナ?」

 

 脳内に浮かんだイメージと、師匠達の話す内容がもうピッタリと重なってしまった。

 どこか訝しげな態度であたしを見下ろす師匠に、あたしはちょっぴり気まずいながらも、ポツリと呟く。

 

「……さっきまでその天才神官様と呑んでました」

 

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