パーティから追放された天才神官の私はチヤホヤされる為に女の子になりました。   作:節山

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はじめてのおつかい

「だぁから!そもそも二階層に入ったばっかのお前らが護衛はまだ早いっつってんだよ!」

 

「はっ、何を言うかと思えば!言うに事欠いてこの私に護衛が早いとは……呆れ果てて物も言えないね!私を天才だと知ってのことかな!?」

 

「どっからその自信が出てんだってお前よォ!!」

 

 迷宮第二層の石造りの通路、そこであたしの前を進む冒険者……ジョーさんと、カミラちゃんは互いに言い争いながらもずんずんと先導していく。

 キャンプを張って一休みした後、出発したあたし達と時を同じくして、ジョーさんのパーティも出発していた。

 前方を進むジョーさんに対し、パーティメンバーのロフトという少年と、カリカという女性があたし達の背後からゆっくりと歩みを進める。

 わざわざ同時に出発した上で、先導しつつカミラちゃんを窘めるジョーさんだが、パーティメンバーのカリカさん達はまるでいつも通りの日常のように、平然とした表情でリガス君らと会話をしていた。

 護衛対象であるあたし達……というかダキアは、その二つのパーティの真ん中に挟まれた形だ。

 どうしたものか、と、内心ちょっと焦るあたしを他所に、前方のジョーさんは振り向き、声を掛ける。

 

「ダキアっつったか、学者先生よ……そもそも、あんたもどこまで調査するつもりなんだ?まさか迷宮の深層までなんて言わねえだろ?」

 

「ンフフ……そうですねぇ、話によれば第二層の奥にも古代の墳墓があるそうではないですか、そのあたりを調査するのも良いかなと思ってますよ」

 

 ジョーさんの問いに、ダキアが不敵な笑みを浮かべながら、上手い具合に切り返す。

 二層に古代の墓や棺がある、という話はあたしが先日カミラちゃん達から聞いた話を伝えたものだ。

 実際のところ、鍵を奪うにしても迷宮の深層まで潜るのは危険だし、浅くて人が多いところでは目撃される可能性がある。

 カミラちゃん達を襲うとしたらそのあたり、二層の奥が適当ではあるだろう。というのが師匠とダキアの出した結論だった。

 まあ、ダキア自身はその第二層の仕掛けやら何やらの話に興味を示していたので、単純に学者として興味があるのかもしれないが。

 

「二層奥かァ~……しゃあねえなったく……」

 

 話を聞いたジョーは、少し考え込んだ素振りを見せると、大きく溜息を吐いて、やれやれという感じで口を開く。

 

「どうせ俺達も通り道だ、行きだけは一緒に行って手伝ってやるよ」

 

「え」

 

 いいよな?と、ジョーが後ろのパーティメンバー、カリカとロフトに声を掛けると、二人はこういったことに慣れているのか、まあ良いんじゃないのといった態度で応える。

 が、あたし達としては厄介、というか余計なお世話に他ならない。

 鍵を奪って、それで終わりでは無いのだ。

 出来るだけ波風を立てずに迷宮に潜る為にも、他のパーティに見られる危険性は避けたい。

 いっそのこと、全員をまとめて倒し、目撃者を消せれば楽なのだろうが――

 

(やめておけ)

 

 あたしがそう考えたところで、脳内に師匠の声が響く。

 口に出さず、思念を直接伝える魔術だ。

 師匠は隠密行動なんかで連絡する際によくこれを使う。

 

(あれは手練れの冒険者だ、僅かでも殺気を漏らすな)

 

(すいません、師匠)

 

 あたしもいつの間にか肩に力が入っていたことに気付き、一つ息を吐いて心を落ち着かせる。

 眼前でブツクサとカミラちゃんと言い争いながら進むジョーさん。

 いかにも無骨で粗雑な冒険者といった印象だが、乱暴に話ながらも、その実、隙が見当たらない。

 常に前方や後方から敵が来ないか、といったことを警戒しながら進んでいるのだ。

 確かに手練れの冒険者なのだろう。師匠ならともかく、あたしじゃ手に負えないかもしれない。

 と、そんな実力者の気持ちを知ってか知らずか、カミラちゃんがまた挑発的な口振りで言う。

 

「っは~、やれやれ、心配性すぎるぞジョー、私ははじめてのおつかいに行く童女でも何でもないんだ、そんな保護者みたいについてくることはないだろう!」

 

「馬鹿お前、こないだのバジリスクの時どうなってたか覚えてねえのか?」

 

「アレはアレ、これはこれ!だ!ましてや今の私はその時よりもレベルが上がっているのさ!ふふん!魔物程度に絶対負けたりなんかしないね!」

 

「その口ぶりがもう不安なんだっつうんだよ!クソが!」

 

 カミラちゃんが自信満々に顔の横でピースサインをしてみせるのに対して、ジョーさんは怒ったように怒鳴る。

 実際、どこか保護者目線で見ている部分はあるのかもしれないなと思った。

 ジョーさんは見たところ、人間で言えば壮年と言うべき年齢だろう。

 カミラちゃんとはそれこそ、親子でもおかしくない年齢差の筈だ。

 そんな年齢の女の子が自信満々に危険な場所に赴く、というのに不安があるのかもしれない。

 が、親の心子知らずと言うべきか、カミラちゃんはそんなジョーさんの言葉を一笑に付す。

 

「ふふん、私が心配なようだが……忘れたのか、ジョー!私は天才神官だぞ!?」

 

「それがどうしたよ」

 

「つまり、君のような凡人と比べたら成長速度も倍率ドン!ということさ!才人である私はもうあの頃よりも随分と成長したわけだ!凡愚であるジョーには想像もつかないようなスピードかもしれないが、な!」

 

「っっっっの……!!!!」

 

「おやおやおや、図星を突かれて怒ったのか?ふふん、相も変わらず器が小さいなあ、ジョーは!」

 

「っっっっっ……ダァオ!!!」

 

 プー、クスクス、と、からかうように意地悪な笑みを浮かべるカミラちゃんに、ジョーさんは思わず、といった感じで拳を振り上げるが――

 流石に子供を殴る、というのには抵抗があるのか、拳をギュッと握りしめると、怒りを発散するかのように、迷宮の壁にドンと拳を打ち付けながら叫んだ。

 ここまで言われては怒るのも仕方ない、というか、当然だろう。

 むしろ我慢出来てるジョーさんは正直スゴイと思う。

 と、ちょっと感心しているあたしの目の前で、ジョーさんの拳が打ち付けられた迷宮の壁の一部が、ガコン、と、音を立てて凹む。

 すると次の瞬間、突如としてジョーさんとカミラちゃんの足元の床が消え去り、ぽかりと大口を開けた暗闇が出現した。

 

「―――――――は?」

 

 その場の皆がポカンとした表情で、暗闇に飲み込まれるジョーさんとカミラちゃんを眺める中、咄嗟に、といった感じで、師匠がカミラちゃんの手を取ろうと駆け出す。

 

「師匠――!」

 

 ハッとなり、叫びながら、師匠に続くべく手を伸ばすあたしだったが、その一瞬の後にはもう、暗闇に落ちた師匠達の姿は消え去り、足元には迷宮の冷たい石床があるだけだった。

 

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