パーティから追放された天才神官の私はチヤホヤされる為に女の子になりました。   作:節山

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パラサイト

「だからな、俺が言いたいのは無暗に回復役が前に出るなってことなんだよ、回復役が真っ先にやられたらパーティ壊滅するだろうが」

 

「いやいや、勘違いするんじゃないジョー、私だって勝ち目が無いと悟ったら逃げるとも!が、それを踏まえても天才の私ならイケるだろうという自信があるから行く時には行くわけだ!」

 

「わかってねえだろうが!ボッケコラァ!!」

 

 湿り、苔むした地面を踏みしめ、眼前の少女カミラと、冒険者のジョーが言い争う。

 先程からずっとあの調子だ。

 仲が悪いのかとも思ったが、その割には現れる魔物への対処はしっかり連携できている。

 油断からか実力不足からか、カミラの方が不覚を取ることもあるが、その度にジョーの方がカバーしているのだ。

 

「ともかく、この階層から脱出しなきゃいけねぇ、せめてこのキノコ共の縄張り抜けねえとな」

 

「ほほう、A級の冒険者様ともあろうものがマタンゴに怖気づいたか?やれやれ、情けないぞジョー!」

 

「言ってろクソガキ、マタンゴは別に強くねえし怖くねえけど、あいつらが出るとこは厄介な敵も多いだろうが」

 

 言うと、ジョーは抜け目なく前方の地面から少し笠を出すマタンゴに剣を突き立てる。

 私はまだこの迷宮をよく知らないが故、理解していないが、歴戦の冒険者であろうこの男が言う程だ。

 警戒しておくに越したことはないのだろう。

 マタンゴを逐一潰しながら進む二人を見ながら、私は念話の魔術を使う。

 

(カンナ)

 

(うわっ、びっくりした!師匠!無事ですか!?)

 

(無論だ)

 

 頭の中にカンナの驚いた声が響く。どうやら多少なりとも心配をかけたらしい。

 私はカンナを落ち着かせるように、落とし穴に落ちてからの現状を報告した。

 

(……というわけで、今は第二層の奥にいるようだ。中庭のような場所で、マタンゴが多い)

 

(そうなんですか……こっちも一応、ロフトさんが落とし穴がどこに繋がってるかっていうのを見当つけて、そっちに向かってるとこです)

 

(うむ)

 

 と、カンナの念話を切り、前方を確認すると、先に進んでいた二人はいつの間にか立ち止まり、朽ち果てたアーチ状の門に寄り掛かるかのように辺りを伺っている。

 

「どうした?」

 

「うお、鎧の……ザッパっつったか、いやな、この中庭からの出口は見つかったんだが……」

 

 言うと、ジョーは前方、中庭の外縁部を指差す。

 指差した方を見ると、なるほど巨大な門があり、広々とした通路に繋がっているようだ。

 だが、その門の前に陣取るかのように巨大なキノコがその場を塞いでいる。

 

「あれは……」

 

「キングマタンゴだ。動きは鈍いが硬いし、粉を噴き出す範囲が広い」

 

「ふむ、倒せないのか?」

 

「倒せなくはねえけど……相性が悪いんだよなぁ……あのクラスになると水の攻撃に耐性持ってたりするからよ」

 

 なるほど、キノコは湿気を好む。

 しかも落とし穴からこちら、様子を見ていた感じだと、この男の使う魔剣は水流を発生させ、操る類の物のようだ。

 斬撃を繰り出すにしても、あれほど巨大なキノコが相手ではそう簡単には断ち切れまい。相性が悪い、というのはそのことだろう。

 

「一応、炎の攻撃とかには弱かった筈なんだけどな……お前ら火とか持ってねえよな?」

 

「ふふん、持っていないね!火打石か油でもあれば既にそこらの木に火をつけて投げこんでいるさ!」

 

「お前にゃ期待してねえよクソが」

 

 言うと、何故か自信満々に返すカミラに、ジョーは舌打ちをして返す。

 それから、如何にして火を発生させるか、いっそ回り込むべきか、等と話し合いはじめた。

 さて、どうするか、炎の魔術であれば私が扱える。

 倒せと言われれば、あの程度のキノコを焼き尽くすことは可能だろう。

 だが……

 

 私は言い争う二人を見下ろすと、今度は門前に控えるキングマタンゴに目を向ける。

 今はまだこちらに気付いていない様子だが、気付いたら何かしらの行動を起こすだろう。

 粉の範囲が広いとも言っていたし、もしかしたらこちらにも届くかもしれない。

 

 ――好都合だ。

 

 私は二人に気付かれないよう、静かに腕を前に突き出すと、パチン、と一つ指を鳴らす。

 瞬間――雷が如き鋭い音が響き渡り、キングマタンゴの全身が大きく揺れた。

 驚いた様子を見せたのは言い合っていたジョーとカミラだ、慌てて顔を上げると、キングマタンゴに目をやり、叫ぶ。

 

「何だ!?おいザッパ!何があった!?」

 

「わからんな、私には突然キングマタンゴが暴れ出したように見えた」

 

 ジョーの問いにとぼけて答えると、怒り狂ったキングマタンゴは小さく落ち窪んだ瞳をこちらに向け、笠を大きく振り出した。

 すると、恐るべき勢いで辺りに胞子が拡散する。

 さて、私は何なれば浮遊の魔術で逃れることも可能だが……

 

「チッ!水龍剣!」

 

 ジョーが腰の剣を振り抜くと、発生した水流が雨のように降り注ぎ、振り撒かれた胞子を洗い流した。

 それに怒り狂った様子で体を震わせるキングマタンゴを見ながら、カミラの方がまた、挑発的に声を発する。

 

「気付かれたのなら仕方ないぞ、ジョー!イケるか!?それとも逃げるのかな!?」

 

「あ~!畜生!しゃあねえな、やったらァ!」

 

 言うと、ジョーは力強く足を踏み込み、キングマタンゴ目掛けて駆ける。

 向かってくる敵に対して、キングマタンゴも胞子を振り撒き、手足なのだろうか、自身の体から枝分かれしたキノコを突き出すが、ジョーは水流で胞子を洗い流し、突き出すキノコを受け流していく。

 そうしてある程度まで接近すると、横一文字に魔剣を振り抜き、キングマタンゴの体を深く斬りつけた。

 が――キングマタンゴは僅かに怯むように体を揺らしたものの、じろりとその小さい瞳をジョーに向け、地面から勢い良く自身の分身であろうキノコ達をいくつも突き出した。

 

「チッ!」

 

 ジョーも上手いこと突き出されたキノコの攻撃を防ぎ、受け流すが、流石に不利だったのか、後ろに飛び退いて距離を取る。

 

「っだぁ、クソ!肉厚!これだからキノコは嫌なんだ俺は!」

 

「ふふん、どうしたジョー!苦戦してるじゃないか、仕方ないな、この天才神官様が手を貸してやっても!」

 

「っせぇ!お前は後方支援!回復に集中してろバカ!」

 

「むぐぅ」

 

 ふふん、と鼻を鳴らしながら自慢げに髪を掻き分けるカミラの言葉に、ジョーは怒りながらも的確に支援の指示を出す。

 と、カミラは不満げに口をへの字に曲げ、頬を膨らませた。

 後方支援が嫌なのか、ジョーの命令するような口調が嫌なのか、ともかく納得いかないらしい。

 が、ジョーはそんなカミラの態度を無視するかのように、今度は私に向き直ると、同じ調子で言い放つ。

 

「ザッパ!お前は……あれだ、浮遊とか出来るくらいだ!魔術使えるんだろ!?前に出て何か適当に攻撃しろ!」

 

「ふむ……仕方あるまい」

 

「っしゃあ!やっぞ!オラァ!」

 

 私としてはキングマタンゴにジョーを消耗させ、弱ったところを倒し、カミラから鍵を奪い取るつもりであった。

 が、それ以前にジョーから疑われ、警戒されるのも避けた方が無難だろう。

 ジョーを消すにしても、一時の仲間として警戒が弱まった時に刺すべきだ。

 キングマタンゴを倒さない程度に攻撃に参加した方が良いだろう。不自然でない程度に協力するポーズを見せなければ。

 などと考えながら、私はキングマタンゴに指先を向け、再び指をパチンと鳴らす。

 すると、どこからともなくふわりと風が巻き起こり、刃となってキングマタンゴの笠を傷つけた。

 

「風の魔術か……まあいい!ガンガンやれ!ザッパ!」

 

「承知」

 

 あえて炎の魔術は使わない。

 キングマタンゴがなるべくジョーを消耗させるように、攻撃は最小限。

 更に、先程の攻防を見たところ、キングマタンゴは斬撃に対してそれなりに耐性があるらしい。

 よって風の魔術による斬撃で、少ないダメージを与える。

 これであれば私にヘイトが向く危険性も少なく、消耗も少ない。

 矢面に立つのはあくまでジョーだ。

 そして消耗したジョーを倒し、一人残ったカミラから鍵を奪い取りさえすれば、私の目的は――

 

「っぎゃーーーーーーー!!!」

 

 達成される。

 そう考えていたところで、突如、後方からカミラの甲高い叫び声が響いた。

 何故だ、確かに後方支援を任せていたはず、彼女には危険性の少ない位置にいてもらった筈だが――

 振り向くと、いつの間にか私達の背後から、カチカチと牙を鳴らして威嚇するような音が響く。

 白く輝く甲羅に、6本の足、ノコギリのような牙を持った昆虫のような魔物の群れだ。

 しかし何より異様なのは――その昆虫たちの背から、まるで甲羅を突き破るようにして巨大なキノコが生えている点である。

 私が些か混乱していると、ジョーの方は、何やら心当たりのようなものがあったのか、チッと大きく舌を打ち、吐き捨てるようにして叫ぶ。

 

「だから嫌なんだよ……キノコってのはよ!」

 

 

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