パーティから追放された天才神官の私はチヤホヤされる為に女の子になりました。   作:節山

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追放されて無自覚系

 

 反射する光に青く輝き、その輝きが海中に揺蕩う海藻や珊瑚、小魚達の銀の鱗を美しく照らしていた。

 迷宮第三層『淵の海』、私は今、きらきらと光る小魚達に紛れながら、この海の中を優雅に漂っている。

 

「本当に水中で息が出来るんですね」

 

 そう背後から声を掛けてきたのはリガスだ。

 リガスも私と同じように、水中に漂いながらあちらこちらに目をやっている。

 これが水中呼吸の魔術の効果、というよりもそれを付与された水着の効果だ。

 よくよく見ると、リガスの体全体がうっすらとした光の膜に覆われており、それが水の侵入を防いでいるのが見える。

 水着の効果により目・鼻・口・耳などから水が入り込まないように防護されているのだ。

 ついでに水中呼吸、の名の通り、水中の酸素を上手いこと取り出してどうこう、とかしているらしい。

 尤も、私にとっては魔術は専門外なのでそこまで詳しくは知らないのだが、それはそれとして私は背後のリガスに語ってみせる。

 

「当然だとも!これが水中呼吸というものさ!ふふふ、私はもう経験済みだがなっ!」

 

「け……経験済みって言うと少し語弊がある気がしますけど……」

 

「? 経験済みは経験済みだろう?ふふふ、貴様らとは違うのだよ!」

 

 苦笑いでこちらを見つめるトゥーラに、私はふふん、と髪を掻き上げて見せる。

 とはいえ、水中なので掻き上げた手が髪を撫でることは無く、水流でふわりと流れるだけなのだが。

 ともあれ、と、私は間抜けな顔で観光気分丸出しの背後のパーティメンバー二人に告げる。

 

「浮かれていられるのは浅瀬部分まで、更に潜って光の届かない深層まで行くにつれて海は私達に牙を剥き始める」

 

「魔物が強くなるってことですか?」

 

「それもある、が、それ以上に暗く静かな海ではどこから何が襲ってくるか分からない。方向感覚もおかしくなるから迷ったらもうそれまでだ」

 

「ふへぇ……そ……それでその……どうやって次の階層に……」

 

「ふふん、安心するがいいとも!道順に関しては先達の遺してくれた目印やら何やらがある!ほらそこに難破船が見えるだろう?あれとかだ!」

 

 言いながら、私は海底に沈み、フジツボや貝が所狭しと張り付く船の残骸を指差した。

 前にジョーのパーティで第四層まで行った時は、こういった残骸や、先達の冒険者が目印として残していった鎖や杭などの目印を頼りに進んでいったのだ。

 勿論、ジョー自身も分かりやすいようにと自身の歩んだ道筋に分かりやすく、旗を括った杭を打ち込んでいた。

 あの時は何を無駄なことをする奴なんだ、馬鹿だなあとコケにしたものだが、実際こうして役立つ時が来るとはな。

 なんやかんやで馬鹿なりに私の役に立つ男である。

 

「さて、ともかく、あの難破船のすぐ先から一気に深い海へと突入する。勿論、住み着いている海の魔物も多い!決して気を抜かずに行くぞ!」

 

「ああ、勿論!」

 

「は……はい、が、頑張ります!」

 

 私が激を飛ばすと、リガスとトゥーラも真面目な表情で頷き、それに応える。

 ここまで来たら誰一人として気を抜いていない。

 ふふん、流石だ、最初に仲間にした時は本当に役に立たない奴らだと思っていたが、成長したな!

 私はそんな感慨に浸りながらも、くるりと振り向き、気合を入れて叫ぶ。

 

「よぉし、では行くぞ!この天才カミラ様について来るがいい!!」

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

「楽勝すぎないか~~~~~~??????」

 

「カミラさんもうムチャクチャ気合抜いてない!!?」

 

 はぁ~っと、吐いた溜息がぼこんと大きな泡になって海中を登っていく。

 巨大なクラーケンにメガロドン、海獣、そして海竜種まで住まう海にあって、私達はあっという間に海底まで辿り着き、今は岩壁の側に浮かせた神聖術・ヒーリングトーチの灯の元に集まっていた。

 

「と、いうかだな」

 

 私は海中に漂いながら、胡坐を組んでみせると、ヒーリングトーチの光に照らされる仲間達に言う。

 

「トゥーラ!!貴様だ!!なんなんだ、貴様は!!?」

 

「ふぇっ……!!?へ……わ……わわ、私、何かやっちゃいました……!?」

 

「はぁ~~~~!!何だ貴様、その無自覚系強者みたいな態度は!クソッ、もう!違う!強すぎるんだ貴様が!!」

 

 びくりと体を震わせながら、おどおどと呟くトゥーラに向けて、私は声を荒げる。

 いや、だって実際の話、本当にトゥーラが強い。というより海中と石化の相性がえげつない、と言うべきだろうか。

 何せ当然のことで阿あるのだが、『石は水に沈む』のだ。

 つまり、海中の魔物を石化させた場合どうなるかというと、もうそのまま深海まで真っ逆さまということである。

 しかも巨大で恐ろしい魔物であればあるほど、石化の魔術は当てやすく、また、石化した際の重量も大きい。

 そして――まあ、これが一番恐ろしいところなのだが、トゥーラは基本的にどんな魔物であっても石化させられる。

 無論、石化耐性が全く意味を成さないわけではないのだが、今のトゥーラは石化耐性がある敵に対しても、体の一部だったり、あるいは数秒~数分間の短い石化をさせられるくらいの威力と熟練度を有している。

 そして海中で体の一部が石化、あるいは数分間の短い石化をしようものなら、あっという間に海の底だ。

 その間に逃げ出すことは決して難しいことではない。

 そんなわけで、私達は特に苦戦することも無く、ここまで潜ることが出来たのだった。

 

「やれやれ、これでは海中が厳しいみたいに言っていた私が馬鹿みたいじゃないか」

 

「いや、トゥーラさんがおかしいだけで、僕らだけじゃ相当キツかったんだろうなってのは分かるよ」

 

「ええ……り、リガスさんまで……!?」

 

 私がはぁ~っと呆れたように呟くと、リガスもそれに追従する。

 トゥーラは自分がおかしいのか、と、不安そうな様子で私やリガスに交互に目をやるが、実際かなり変な魔術師ではあるのだ。

 そのあたりは自覚するべきだと思うぞ、天才的に。

 などと思っていると、それで、と、トゥーラを無視したリガスがこちらに向けて口を開く。

 

「ここから先はどうするんですか?」

 

「うむ、この海底の岩壁があるだろ?この岩壁のどこかに洞穴が開いていたはずだ。海底洞窟だな!」

 

 私は過去の記憶を思い出しながら、第三層から第四層までの道筋を口にしていく。

 海底洞窟は確か結構な長さだった筈だが、洞窟自体が狭いので大きな魔物が出ないのが幸いと言えば幸いだ。

 とはいえ、ずっと楽な洞窟ではない、出口付近には所謂ボスモンスターと言うべきだろうか、ダゴンと呼ばれる巨大な魚人が道を塞いでいるのだ。

 前にジョー達と行った時は結局、ダゴンを倒しきることは出来ず、弱ったところを抜けていった記憶がある。

 まあ今思えば水龍剣で水属性の斬撃を繰り出すジョーと、強い水魔術耐性を持つであろう深海の魔物とは相性が悪かったのだろう。

 今回はどうやってアレを突破するつもりだったのかは分からないが、いずれにせよこの道を行ってはいる筈だ。

 私達より先に倒していてくれてることを願うべきだろう。頑張れジョー。

 

 などと考えながら、ヒーリングトーチの灯を頼りに岩壁を辿っていくと、目当ての洞窟がぽかりと口を開けているのが見えた。

 背後にぴたりとくっつくリガス達に頷いて見せると、私はその洞窟にするりと入り込み、顔を上げるとぷはぁっと大きく息を吸い込んだ。

 

「ぷはっ……うわ、空気がある!」

 

「ぷは……あ、ほ、本当ですね……!」

 

「ふふん、驚いたか驚いたか!この洞窟には何故か空気があるのだ!」

 

 私は自慢げにそう言うと、水面から這い上がり、洞窟の冷たい岩にぺたりと足を着けて立つ。

 どこまでも続く闇の如き深海と違い、この洞窟内は仄かに青白い光に照らされている。

 洞窟内部の壁にはピンクや青の珊瑚や貝のようなものが至る所に張り付いており、それらが光を放っているようにも見える。

 

「さて、ここを進めば第四層だが――――うん?」

 

 リガスとトゥーラが水面から出るのを待ちながら、洞窟の中を見回していると、一つ、不自然な物が視界の中に飛び込んでくる。

 青白く光る洞窟内、岩と珊瑚と貝の住まう中にあって、灰褐色の暗いコートと、その中から漏れ出る閃光のように流れる銀の髪を垂らした少女。

 吸血鬼・カンナが、光の中に倒れ伏していた。

 

 

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