パーティから追放された天才神官の私はチヤホヤされる為に女の子になりました。   作:節山

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くたばれ人類

 

 ――カンナの話を纏めるとこういうことらしい。

 

 まず、私達に負けておめおめと逃げ帰った魔族共は第二層に隠れ潜み、傷を癒す。

 その後、第三層へと赴いたものの、第三層はこの淵の海だ。

 とてもじゃないが、先達の冒険者の知識や情報が無ければそうそう深く潜れるものではないだろう。

 事実、魔術を用いて海中を調べたザッパローグにも、明確に下層へ繋がる道筋は見つからなかったようだ。

 まあ、先達の冒険者が目印の杭やら何やらを撃ち込んでくれているとはいえ、それは冒険者だからこそ理解し、通じる符号だ。

 冒険者でないザッパローグでは理解できずとも仕方ないだろう。

 

 ともあれ、これでは埒が明かないと考えたザッパローグは、案内役を待つこととした。

 三層まで潜り、尚且つ四層までの道筋を既に理解している熟達の冒険者――つまりジョー達である。

 そこは私達でも良かったんじゃないか?と思うが、まあ、ジョー達の方が先に潜っていったからな。タイミングの問題だろう。許すこととする。

 さて、第三層に辿り着き、例によって深海を目指すジョー達を追い、ザッパローグ達も深海を目指す。

 ちなみに水中呼吸に関してはザッパローグの魔術でどうにかしていたそうだ。

 幅広い魔術が使える奴がいるとこういう部分で便利だな、と、ひしひしと感じる。

 それから深海に辿り着いたジョー達、ないしザッパローグ達はこの洞窟に入り、そして最下層の洞窟出口――ダゴンの巣へと向かう。

 と――ここで事件が起こる。

 

 ジョー達はここがダゴンの巣だということを理解していた。

 故に、気配を消し、水中の岩陰を通じてコッソリと第四層へと向かうつもりだったのだが……間抜けな魔族三人衆はそれを知らない。

 無論、ジョーを尾行する為に気配は消していたのだろうが、あくまでジョーに気付かれない為の隠密だ。

 巣に入り込んだ異物に対し、ダゴンは一切の容赦をしない。

 すぐさま水中を凄まじい速度で飛ぶように泳ぎ、ザッパローグ達を目掛けて襲い掛かる。

 こうなると、最早隠密も何もあったものではない。当然、ジョーにも気付かれるが――ダゴンの方もジョーに気付く。

 後はもう三つ巴の乱戦である。

 困ったことに、ジョーの水龍剣は水流を操る都合上、深海の主とも言うべきダゴンには攻撃が通りづらい。

 また、ザッパローグの方も水中では得意の雷を放てず、かといって他の魔術でそう易々と打ち倒せるダゴンではない。

 さて、そうなるとどうなるか、結果として接近戦を強いられる羽目になり――傷つけられたダゴンは、所狭しと暴れ回る。

 その結果として――――

 

「こうなった、と……」

 

「うん」

 

 カンナの説明を受けながらも歩を進め、洞窟の最奥に辿り着いた私達の前に待っていたものは、崩れた岩壁の山、山、山!

 ダゴンの巣から第四層へ向かう海中洞窟のルートが見事に岩で塞がれてしまっていた。

 本っ当に魔族はろくでもないことしかしない!

 ダゴンと戦うにしても、せめて素直に相打ちになるか見事打ち倒すかしてくれたら良かったものを。ちっ。

 私があまりのことに呆れて溜息を吐いていると、先程から気まずそうに顔を背けるカンナに対し、リガスが問い掛ける。

 

「で、カンナさんだけどうしてここに?ダゴンと戦闘してたんなら沈むか先に進むか……」

 

「ああ、それは簡単。あたしダゴンとの戦闘でダメージ食らっちゃってさ、師匠に一旦戻って傷を癒すように言われたんだよね。そしたら洞窟が崩れちゃって……」

 

「それで結局、傷も癒せず洞窟をうろついて倒れていた、と?」

 

 リガスの問い掛けに、うっ、と唸りながらも、渋々といった様子でカンナが頷く。

 

「正解。ま、吸血鬼だから放っといても傷自体は塞がったんだけどさ、気絶しちゃったのは不覚だよね」 

 

「……なんか不覚だらけじゃないか?魔族、やはり下等種族なのでは??」

 

「は、何、喧嘩売ってんの人間」

 

「はっ、何だ、図星を突かれて焦ったか?悔しいならもっと精進するのだな!私のように!!」

 

「カミラさん喧嘩しないの!!」

 

 間抜けな吸血鬼と私が視線をぶつけてバチバチと火花を鳴らしていると、焦ったようにリガスが間に入る。

 やれやれ、そこまで焦らなくても良いだろうに。

 いざ喧嘩になっても未熟な吸血鬼一匹、私の神聖術でそりゃもう悪鬼滅殺、縦横無尽といったものだ!

 などと思いながらも、当のカンナはフンッと不服そうにしながらも、それ以上に喧嘩を売ることも無く、顔を背ける。

 どうやら不満はありながらも、事を荒げるつもりは無いらしい。

 うん、愚かな魔族ながら身の程というものを分かっているようだ。偉いぞ!

 

「と……え、えっと、それで、カミラちゃん……これからどうします……?」

 

 私がクソザコ吸血鬼の態度に満足気に頷いていると、背後からトゥーラがおずおずと口を開く。

 確かに、こんな奴よりも今はどうやって先に進むかを考えるべきか……

 

「普通にこの岩をどかすわけにはいかないかな?」

 

「う~ん……難しいだろう。流石に水中に沈んだ岩まで運ぶ技術は無いし、そもそも岩を撤去するのに何日かかるか……だ」

 

「そ……そんなに何日もここで足止めされるわけには……ってことですよね……最悪、一旦帰るというのも……」

 

「それは嫌だ!」

 

 トゥーラの一時帰還の発言に、カンナが焦ったように振り向き、叫ぶ。

 

「師匠は……師匠はきっと、ダゴンを倒して先に進んでる。だったら、あたしも何とか……何をしてでも、先に進んで合流しないといけない」

 

「はぇ……そ……そうは言っても……」

 

 そうは言っても、先へ進む道が塞がれているのは事実。

 私はそう言いたげなトゥーラの言葉を遮り、カンナへ向かってニヤリと笑みを浮かべてやる。

 

「なるほどなるほど、そこまでして下層に行きたいなら、一応は他にも方法はあるが――カンナ、貴様、本当に下層へ向かう為に何でも出来るか?」

 

「――勿論!」

 

 私の問い掛けに、ほんの少し驚いたような表情を浮かべたカンナだったが、すぐさま輝く瞳をこちらへ向け、承諾すると、私もそれに柔らかな笑みを浮かべて返すのであった。

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

「――さて、前にも言ったと思うが、第三層のルートはジョー達を含め、先達の冒険者が開拓してきたものだ。つまり私達の辿ってきたルートも『このルートなら下層まで行けるよ』というものの一つでしかない」

 

「ってことは……」

 

「ふふん、そうとも!つまり――冒険者がまだ見つけていない未知のルート、あるいは、見つけたものの帰還・報告出来なかったルート、というものも存在するはずだ!」

 

「今回はそれを探すっていうことですね……」

 

 あたしの眼前、自慢気に講釈を垂れるカミラちゃんの前で、その話を聞きながらもリガス君とトゥーラちゃんがチラチラとこちらを振り向く。

 話の内容、そしてこの状況に、思わずあたしもフーッと大きく息を吐き、呆れたように頭を抱えて呟く。

 

「……や、それは分かるよ……分かるけどさあ……この格好する必要は無くない!!!!??」

 

 そう叫ぶあたしは今、体に何とも心もとない水着を身に纏い、ついでに腰にロープを括りつけられた状態だ。

 何だ?あたしが魔族だからって恥をかかせたいのか?吸血鬼だぞこっちは!なんなら一番肌を晒すのに慣れてないのに!!水着!!

 と、憤っていると、カミラちゃんがやれやれ、とでも言いたげに呆れたように首を振って答える。

 

「その水着には水中呼吸の効果があるからな、それが無いと水中活動は出来ないぞ。流石にもうザッパローグの魔術は切れているだろう?」

 

「それは……」

 

「まあ、私としては貴様がずっとこの洞窟に留まって餓死したいと言うなら止めはしないがな!」

 

「ぐぬぬ……わ、わかったよ……そんで、このロープは?」

 

 人間というのはわざわざ水着に水中呼吸の効果をつけるらしい。馬鹿なんじゃない?人間は愚かなのでは?

 そんな疑問が浮かんだものの、ひとまずそれは棚に上げておいて、あたしの腰に括られたロープについて尋ねる。

 魔族であるあたしを用心して動きを封じているつもりだろうか?いや、だったら腕や足を括る方が安全な筈だし……などと考えていると、目の前に立つカミラちゃんが、ふふんと鼻を鳴らして自慢気に答える。

 

「何、安心すると良い!それは命綱だ!万が一の時はそれを引っ張って助けてやる!」

 

「……つまり?」

 

「うん、つまり――これから貴様を海にぶち込んで、ちょっとずつ新たなルートを開拓していく!!」

 

「……いや、それって炭鉱のカナリアっていうか、捨て駒の偵察隊みたいな――」

 

「ふふっ、せいぜい頑張ってくるのだな!魔族!」

 

「ばっ、ちょっ、ま―――――くたばれ人間!!!!!!!!」

 

 そう叫びながら――炭鉱のカナリア、ないし深海の吸血鬼たるあたしは、暗い深海へとぶち込まれるのであった。

 

 

 

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