みこーん!と転生…しましたが尻尾が9本ありました 作:一般FGOプレイヤー
またもや難産。1度最初からしっかり読み直した方がいいという啓示なのでしょうか?
「ありがとうございます。もう大丈夫ですので」
店番を始めてから数時間が経過した頃。ウィズがお店の裏から顔を出した。
先ほどまでの死人を通り越した顔色が、死人のような顔色なのは、リッチーだからなのだろう。
「……それにしても、一体私が帰った後に何があったのです? リッチーである貴方が、この短時間であんな状態になるなど、何かがあったとしか考えられないのですが……」
「……実は昨日、タマモさんが帰った後に、私は定期的に通っている街の共同墓地で、迷える魂達を天に還していたのですが……。その時に、青い髪のアークプリーストが私を浄化しようと魔法を唱えて……。普通なら効かないと思うのですが、そのアークプリーストの方がかなりの実力の持ち主だったようで、唱えられた『ターンアンデッド』によって私が浄化されかけてしまい……。幸いにも、そのアークプリーストの仲間の方が止めに入ってくれたので、事なきを得たのですが……」
ウィズはため息を吐きながら、カウンターにもたれた。
……どうしよう。犯人が誰だか分かってしまったのですが……。シバいてもいいのでしょうか。
「……誰が犯人か分かったので、シバいてきてもいいですか?」
「ちょっ! やめてくださいよタマモさん! 確かに、今こうしてタマモさんと友人感覚で話してはいますが、私はリッチーです。冒険者の方々が、私を退治しようとするのは当たり前のことですから……。だから、そういった事はしないでくださいよ?」
……やっぱり、ウィズならそう言うと思っていました。……確かに貴方はリッチーですが、それと同時に私の相談相手兼友人という事を忘れないで欲しいですね。
思わずため息を吐いてしまう。
「本っ当に貴方はお人好しですねぇ〜。……まあそれがウィズの良さでもあるんですけどね。とりあえず、今回はシバくのは止めておきましょうか」
するとウィズは、ほっと安堵の表情を浮かべた。
「……さて、ウィズに元気が戻ったようですし、そろそろお茶でも飲みますか。今日はお茶請けとして、アクセルで人気のお菓子を持ってきましたから、少しだけ贅沢なお茶会になりそうですよ」
……リッチーなお茶会。……なんちゃって。
つまらないギャグを考えていると、ウィズがぱあっと顔を輝かせている事に気がついた。
「嬉しいです! 最近はタマモさんに貰ったカエル肉しか食べる物がなかったので、本当に有難いです!」
「……今度からカエル肉と共に野菜と炭水化物も用意して、週に数回ご飯を作りに来るとしましょう。というかします」
「ええっ?!」
新たにやるべきことが決まったところで、私はいつもお茶会を開く机の上に、会話の時に用意していたお茶とお菓子を展開するのであった。
「はい。こちらが緊急クエストの報酬、200万エリスになります。お確かめください」
……キャベツ狩りの報酬 ≒ 私の1週間……なんでしょうこの敗北感。
カウンターの上に置かれた袋を持ち上げ、受付嬢にお辞儀をする。
ウィズのお店でリッチなお茶会をした翌日。私は数日前にあったキャベツ狩りの報酬を受け取りにギルドに顔を出していた。ギルド内では、受け取った報酬で早速飲み始めている冒険者達の姿がちらほらと見られる。
……確かに今はクエストが無いので暇になり、飲みたくなりますよね。かくゆう私も、久しぶりに飲みたい気分です。
彼らを横目に見ながら、私もお酒を飲もうと席につき、クリムゾンネロイドを注文する。
……それにしても、今日のギルドはいつもよりも活気が溢れていますね。……これがキャベツ狩りのおかげって……ファンタジー的にどうなんでしょうか?
そんな事を考えている内に、注文していたクリムゾンネロイドが私の前に置かれた。
……これ。お酒というよりジュースですよね。……あちらの世界で言う、『凍結』のような物ですかね。……飲んだ事ありませんが。
グイッと一杯。口の中がシャワシャワする。何故シュワシュワではなくシャワシャワなのかは、未だによくわからない。
……今日は、このままお酒を飲んで過ごしてみましょうか。……いや、途中で飽きてしまいそうですね。何かおもしろい事は……ん?あれは……。
「なんですってえええ!? ちょっとあんたどういう事よっ!」
そんな叫び声がギルド中に響く。お酒を飲んでいた冒険者達が、それにつられて声の方向である受付を見る。そこには受付嬢の胸倉を掴むアクアの姿があった。
……今度は何をやらかしたのです。あの駄女神は。
ギルドの注目を集めながら、アクアが放った言葉は……
「何で5万しか報酬が貰えないのよ! 私が捕まえたキャベツの量は、そんなに少なくない筈よ!」
報酬に対するケチだった。
……いや、5万って。いくらなんでも少なすぎなのでは? あんなにキャベツがいたのに5万って……。一体どういう……。
ウィズの一件を忘れてしまう程、気になったので引き続き話を聞いていると、どうやらアクアが捕まえていたのはキャベツではなくレタスだったようで、レタスの値段はキャベツよりも圧倒的に安いので報酬が少ないのだとか。
……レタスってそんなに雑魚でしたっけ? …………あぁ、そういえばレタスって栄養価があまり高く無いんでしたっけ。
レタスの値段に疑問を感じたが、よくよく考えたら納得のいく理由に辿り着いたので、これ以上深くは考えない事にした。
そうこうしている内にクリムゾンネロイドを飲み終えたので、素早く会計を済ませ、タゲがカズマに向いている内にギルドの外へと……
「タマモ様ー! 確か貴方にはカズマに対して大きな恩があるとかなんとか聞いたわよー! ならいっそ、ここで返してみるっていうのはどうかしら?」
……もう来やがったのですか! この女神、こういう時だけ無駄に行動が早いですね!
「確かにカズマには恩がありますが、アクアには私を転生させてくれた恩しかありません」
「大きな恩じゃない。さあさあ、いつでも返してもらっていいのよ?」
…………この女神!
「確かに、転生してもらった事は大きな恩ですね。 ですが、アクアがやらかした調整ミスのせいでその恩全てが消し飛んでいます。 というか、恩も何もこの状況で、どうやって恩を返せばいいのですかね?」
「うっ……」
流石のアクアもこれには強く言えないようで、言葉に詰まってしまった。のも束の間。すぐに言い返してきた。
「でも、あんたは玉藻の前にしてくださいと言っただけじゃない。つまりこれは、あんたの願い通りにしてあげたという事になるわよね?! だったら私に感謝しなくちゃいけない筈よ! ほら! さっさと出す物出しなさいな!」
………………こんのアマがぁあああ!!
「だったら、衣装と姿を変えろやこの駄女神! 尻尾が9本あるくせに、キャス狐の服着て顔しているんだからキャラ寄せしにくいでしょうが! そもそも、私がやりたかったのはキャス狐ムーブで、あのでかくてやばい方じゃないわ! そんくらいわかってただろこの馬鹿女神が!」
「あぁあああ! タマモが今言っちゃいけない事言った!」
「何度でも言ってやる! 大体、ずっと前からお前には恨みがあるんです! いい機会ですので、晴らさせていただきますよ!」
「わぁあああ!! カズマー! カズマ様ー! またタマモに頭グリグリされる! その前に私を助けてぇええ! さっきの事は謝るからぁああっ! 夜中に馬小屋でゴソゴソしてた事をみんなにバラしたの謝るからぁあ! だから助けてぇええ!」
「……お前は少し黙っていろ」
ゴスッという鈍い音と共に、アクアが白目を剥いて倒れ込んだ。見れば、カズマが剣の柄頭でアクアの頭を殴っていた。
……冒険者に負ける女神って……えぇ?
「……うちの馬鹿が、ほんとすんません」
滅茶苦茶低い声でカズマが謝罪をしてくる。
……うわぁあ。先日、カズマ達の事を羨ましいと思っていた私をぶん殴りたいですねぇ。自分の秘密をパーティーメンバーにバラされるのは、はっきり言って最悪ですね。
アクアを引きずるカズマが余りにも可哀想なので、フォローになればと声をかけた。
「……男の子だもんね。仕方ないよね」
「…………」
……あれ? ギルドの中の空気が凍りついたのですが……。何かまずい事を言ってしまったのでしょうか?
キョロキョロしていると、めぐみんと金髪の騎士の人がカズマに駆け寄って行く姿が見えた。
「カズマ。気にする事はありません。貴方だってお年頃なんですし、そういった事は仕方のない事と、私達も考えていますので」
「そうだぞカズマ。お前の行動は何ら恥じる事は無いのだ。私もちゃんと分かっているから……な?」
「おい、お前ら。その可哀想なものを見る目を止めろ。というかやめてくださいお願いします」
突然土下座を始めたカズマに、尚も2人は優しい目を向けて声をかける。
「何を言っているのですか。私はただ、傷ついたパーティーメンバーを慰めているだけじゃないですか」
「カズマ。流石の私も、今回のこのシュチュエーションで興奮など出来ないから安心してくれ」
……なんかおかしな単語が聞こえてきたのですが……気のせいでしょうか?
困惑をしている間に、カズマはスッと立ち上がり、再びアクアの服の襟を掴んでギルドの外へと引きずって行った。
そして……
「ちっ、ちくしょぉおおおっ!」
男の悲しい咆哮が、アクセルの街に響き渡るのだった。
「なんかすみません……」
「……いえ、いいんです。もういいんです」
ギルドにいつもの喧騒が戻った中。
感情の抜け落ちた顔を見せるカズマに、私はどうしたらいいのか分からずに、周りをチラチラと見ている。
しかし私に目を合わせようとする者はおらず、皆すぐに逸らしてしまう。
……誰か助けてくれませんか?!
そんな願いが女神に通じたのか、空気を読めない全ての元凶が私達の間に割って入ってきた。
「ねえねえ、カズマさん。この際なんだし、タマモになにかしらのお願いをしてみましょうよ。例えば……『パーティーメンバーにお金を貸してやってください』とか。……きっと今のタマモなら聞いてくれると思うのよね」
「……却下」
ギャーギャーと騒ぐアクアを、めぐみんとダクネスと名乗ったクルセイダーが取り押さえる。
「「…………」」
……どうしてこんな事に……。
思わず頭を抱えてしまう。
「あの……本当に気にしていないので、大丈夫ですよ?」
……いや、明らかに暗い声で言われても、説得力が皆無なんですけど……。
「それだと私の気が収まらないんですよね。……どうしましょうか?」
「どうしましょうって言われましてもなぁ……。あぁそうだ! じゃっ、じゃあ1つだけお願いしたい事が!」
……お願い? 一体なんでしょうか?
「私にできる範囲の事なら、引き受けましょう」
私がそう言ってみると、カズマはキラキラとした笑みを浮かべた。
「……それじゃあ……」
私はカズマのお願いの内容に少し驚いたが、なんとなく納得できた。
「わっかりました。それくらいなら」
そう答えると、カズマはニッコリと笑い私に向かって手を伸ばし、そして……
「……尻尾の毛並みすげぇええ!」
尻尾をモフモフしていた。
……それでいいのか男の子。
度胸がないのか、それとも単純に尻尾の方に興味があったのかわからないが、カズマは尻尾をモフモフしたいと言ってきたのだ。
……確かに気持ちはわかりますが。……まあ、カズマがあっち系の事を頼んできたら、あのキックをかましていましたがね。
ため息を吐きながら、私はカズマが尻尾をモフっている間、店員さんに頼んでお酒を持ってきてもらい、口の中をシャワシャワさせるのだった。
「ほんっと、カズマって冒険者は最悪よね。クリスって女盗賊だけじゃなく、よりにもよってタマモさんに手を出すなんて」
尚これを見ていた冒険者が誤解をしたせいで、暫くの間カズマがカスマやクソマという不名誉な名前で呼ばれる事を、本人はまだ知らない。
カズマ。そこ変わってください。
次回も気が向いたら書きます。