追加戦士になりたくない黒騎士くん   作:クロカタ

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感想欄を見ていたら、プロトスーツのキャラが大抵酷いことになってて面白すぎる。
いいぞもっとやれ

カツミ君視点でもよかったですが、最後の部分をやりたくてレッド視点にしました。



マグマ怪人対策会議(レッド視点)

 マグマ怪人。

 カツミ君が当時の自衛隊と協力してようやく撃退することができた強力な怪人。

 推定で幹部クラスかそれ以上の怪人と見られていて、政府と本部の中でもトップシークレットに位置する存在でもある。

 私達は怪人と戦う立場にいるから当然、未来で戦うかもしれないマグマ怪人について知っていたわけだが、まさかこのような形で関わることになるとは思いもしなかった。

 

「すまないね。形式上、君に手枷をつけることになってしまって」

「いや、気にしてないよ、レイマ。むしろこの方が安心する」

「そういうところが君の変わったところだ。はっはっはっ」

 

 作戦会議をするブリーフィングルームに向かう最中、手枷をしたカツミくんと先ほどまでキャラを乱しに乱しまくっていた我が組織の社長が、通路を歩きながら雑談を交わしていた。

 

「おや、おやおや、どうしたのかな? そんな親の仇を見るような目でこぉの、私を見て?」

「「「……!」」」

 

 さらに煽ってくるのかこの社長は。

 緊急事態なのでいちいち怒ってはいられないので、そのまま堪えていると、なにを思ったのか人一人分くらいの距離を空けて歩いていたカツミ君が話しかけてくる。

 

「勘違いするなよ」

「え?」

「俺はお前らの仲間になるつもりはないから、名前を呼ぶつもりはないんだ」

 

 そう言葉にして、彼はそっぽを向く。

 

「……別に、お前らのことを嫌ってるわけじゃない」

「か、カツミく~ん……!」

「ええい、調子に乗るな! 離れろ!」

 

 追い返されながらも足は止めない。

 

「でも、マグマ怪人かぁ。カツミ君でも倒せなかったってことは相当強いんじゃないの?」

「ああ、基本的に大地にいると無敵だ。最悪、奴の能力を使えば日本なんて簡単に崩壊させられるらしいからな」

 

 カツミ君の言葉に対して驚きもせずにため息をつく。

 きららも葵も同じような反応だ。

 

「……やっぱり、例に漏れず幹部級はそのくらいの力は持っているよね。私達が負けそうになった。大気怪人……オゾン層奪おうとしたアレ……私はトラウマもあって、すごい怖い敵だったよ……」

 

 私の呟きに反応したのはきららと葵であった。

 二人もなにかを思い出すように遠い目をする。

 

「私達の時も大変だったわなぁ。光食怪人グリッター*1。あれ、一週間日本だけずぅっと夜やったもん。私なんて、電撃やら視力やらも奪われたし、大変やったわー。てか、あいつ無駄にヒーローっぽい姿してんのが面倒くさいわ」

「あとあれも凄かった。ろうそく怪人*2。弱そうかと思ったら、とんでもない能力であやうく死ぬかと思った」

 

 一つとして楽な戦いなんてなかった。

 多分、カツミ君が助けてくれた戦いにも同じことが言えるだろう。

 

「私が評価しているのは我が親友カツミ君だけではない。お前達も同様にスーツを扱える装着者なのだ。……誇っていいのだぞ?」

「さらっと親友呼ばわり……」

「そう言われると素直に誇れんわ……」

 

 きららと葵のツッコミを華麗にスルーした彼は、フッと笑みを浮かべる。

 

「お前達ならば、マグマ怪人にさえ立ち向かえるだろう。なにせ、それが人類の希望、ジャスティスクルセイダーなのだからな」

 

 そこまで決めて歩き始める社長。

 こう良く分からないところで決めるところは毎回変わらないなぁ。

 

「まあ、俺はお前達のおかげで怪人に狙われずに済んでいたからな」

「カツミ君は、その間は何してたの?」

「……細かいところは忘れた。覚えてねぇよ」

「覚えてない? 言いたくないだけ?」

「や、マジで覚えてない。まあ、三日前の朝食を思い出せないとかと同じ感覚。気にするほどのもんじゃねぇよ」

 

 まあ、本人がそういうのならそうなんだな。

 さして悩んだ様子もないし。

 そんな会話をしているうちに、ブリーフィングルームへと到着する。

 部屋には既に、ジャスティスクルセイダーの活動を支援してくれているスタッフさん達がおり、プロジェクターで映し出された画面には、移動を開始しているマグマ怪人の姿がある。

 

「では、諸君。全員揃ったな。ここは本部開発主任の私が、指揮を任されることとなった。……事態は急を要するので早速本題へ入ろう」

 

 何気なく自身が社長であることを隠しながら、プロジェクターを操作する。

 ズームされるのは白い蒸気に包まれながら海上を移動しているマグマ怪人の姿だ。

 

「対象は海上をゆっくりと移動しながら日本へ向かっている。目的は、侵略、それか国土の崩壊。大地からエネルギーを吸い取り操る奴にかかれば、日本という小さな島国などものの数時間で崩壊させることも容易だろう」

 

 映し出されたのはマグマ怪人の移動ルートと、到着してしまった場合に起きる惨劇。

 日本に亀裂が入り、砕け散っていくところを見せた上で、社長はパンッ! と手を叩いた。

 

「だが、前回そうしなかったのは当時のここにいる黒騎士、カツミ君を含めたこの国の人々の尽力があったからだろう。ならば、私達も彼らと同じように手を取り、協力し、事態の解決に当たる。政府は既に、事態の解決のために協力する方向にある」

 

 彼の言葉にスタッフが頷いていく。

 ここにいる人たちはずっと私達を支えて来てくれた人だ。

 なので、マグマ怪人のような事態の解決に当たってきたこともあり、こういう状況にものすごく強い。

 この場の誰も諦めていないことに満足そうに頷いた彼は、次にカツミ君へと視線を向ける。

 

「では、カツミ君。最も近くで彼と戦った君に奴とどう戦ったのかを説明してもらっても構わないかな?」

「……分かった」

 

 手枷をしたカツミ君が社長の代わりに前に出る。

 再びマグマ怪人の移動を映し出したプロジェクターを見ながら、彼はやや緊張した面持ちで―――やや、助けを求めるように私の方を向いた。

 

「お、おい、なにも悪いことしないから、スーツ着てもいいか?」

「なんで……?」

「スーツなしでこんな人前で話したことないんだよ。素顔を見られることに慣れてない」

 

 え、なにそれ、かわいい。

 恐らく、隣の二人も頭に電撃が走ったようにそう思ったことだろう。

 しかしさすがにここで変身させるのは大問題だし、あ! なにか顔を隠せるものでもあれば―――、

 

「これを使ってくれ」

 

 不意に社長がカツミ君に仮面のようなものを手渡す。

 それは、モロ黒騎士のデザインのされたおもちゃのような仮面で、逆にこっちがびっくりしてしまう。

 

「黒騎士くん仮面だ。偶然、この部屋に置いてあってな。よければ使ってくれ」

「感謝する、レイマ」

「フッ、気にするな」

 

 彼が被って前に出ると、室内にどよめきが走る。

 当然だ、と思いつつなぜあんなものを持っていたのかを社長に尋ねる。

 

「あの、なんであんな仮面を? いつ作ったんですか?」

「商品開発部のマーケティングをこの部屋で行ってな。その一環で、あそこにいる社員が黒騎士くん仮面を作ったんだ。あれは、ここに置き忘れていたものだ」

「ツッコミどころがありすぎるんですけど」

「弟と妹が欲しがりそうやねぇ」

 

 私達の武器とか装備とかをリデザインした玩具や商品が売られていることも知っていますよ?

 まさか、カツミ君のまで売ろうとしているのか?

 そう考えるとこのどよめきは、別のどよめきを現しているかのように思える。

 

「えぇと、まず一つ言えること。それはマグマ怪人が大地にいる限り無敵だということです。それは皆さん……ご存知のようですね」

 

 普通に敬語で話してくれてびっくりした。

 そういえば、今まで彼が話したのを見たのは私達か社長か白川ちゃんだけだった。

 やっぱり、根はいい人なんだなぁって思う。

 過去になにかがあっただけで……。

 

「こいつは大地から力を吸い取り、自分の力にする。それは電撃ナメクジ怪人と同じですが、あれと違うのは奴は地に足がついている限り、エネルギーが供給される。つまり地球にエネルギーがある限り、不滅とも言えるでしょう」

 

 とんでもない怪人だ。

 幹部クラスは大抵そのような一癖も二癖もある能力を持っているが、マグマ怪人はストレートに強い。

 だが、その分やりようはある。

 

「当時、戦闘する以前からそのことは分かっていました。なので、何重にも重ねられた装甲を組み合わせた特注のコンテナと、最新鋭のヘリを用いてマグマ怪人を太平洋沖の深海に落とすという作戦を取ることになったんです。……地上から離してしまえば、地球からの供給もなくなりますからね」

 

 するとスタッフの中から手を挙げるものがいる。

 彼が頷くと、書類を確認しながら立ち上がった男性スタッフは質問を投げかけた。

 

「どのようにしてコンテナにマグマ怪人を? 入れた、のは分かっていますがその部分の詳細は書かれていなかったので」

「無敵ではありますが衝撃が通らないことはなかったので、攻撃し続けてのけぞらせながら無理やりコンテナに詰め込みました」

「なるほど、やはり殴りまくった、ということですか?」

「え、ええ?」

「では、怪人と共に中に入ったのも熱を発散させるためにあえて密閉空間での一対一の戦闘をしたということですね?」

「そ、その通りです」

 

 満足した様子で座る男性スタッフ。

 ……スタッフの理解が深すぎない……?

 困惑した様子の彼は、とりあえずコンテナに閉じ込めた怪人を深海に落とした下りまでを説明すると、プロジェクターへと振り返る。

 

「……すみません、この画像。もっとズームすることはできますか?」

「はい。可能です」

「ありがとうございます。やっぱりあった……。これ、この怪人の胸のところ、なにか刺さっているでしょう?」

 

 ズームされた画像を見れば、たしかに怪人の胸部になにかが突き刺さっている。

 あれは、なんだ? 思わず首を傾げると、彼はやや安堵した様子でソレを指さした。

 

「これは奴の腕です。深海に落とす際に、もぎ取った腕を胸に突き刺したんです。運悪く核には当たりませんでしたが、あそこが奴の弱点となりうるでしょう」

「「「はぁ!?」」」

 

 さすがにその場にいた全員の声が重なる。

 腕をもぎとった!? 胸に突き刺した!? 君、前の戦いの時点でそこまで追い詰めていたの!?

 

「前回は無敵でしたが、そうではない。事実、胸部あたりのエネルギー値が低いはずです」

「……彼の言う通りです。主任!」

「ならば、奴が胸部の傷を癒すその前に叩くぞ! こちらも対マグマ怪人に備えたアレを全力で使う!」

 

 いっきに慌ただしく動き出す室内に、彼は仮面を取りながら疲れたようなため息を零す。

 

「お前ら強いから、大丈夫だろ。じゃ、頑張れよ。俺は独房で作戦の成功を祈っておいてやる」

「……一緒には、戦えないの?」

「マグマ怪人が怪我してなきゃ戦っていたが、あれは倒せない敵から、倒せる敵になったんだ。お前らなら確実にやれるはずだ」

 

 そう言って近くの二つ空いた椅子の一つに座る彼。

 たしかに彼の言う通りだと思うが、こうまで頑なに拒むのは何か他にも理由があるのだろうか。

 

「あ、もしもし。こっちは作戦固まったからそっちに送……なんだと?」

 

 すぐ近くで端末で連絡をしていた社長が、珍しく焦ったような声を漏らす。

 

「しかし彼は―――ッ、……はい……分かりました」

「……なにかあったんですか?」

「ヴァアアアア!! 地球人! こっちの事情を考えろぉぉ!」

 

 デスボイスと共にばしーん、と豪快に端末を床に叩きつけ砕き割る社長。

 そのあまりの声に驚く、スタッフたちを無視した彼は、同じように驚きに目を丸くしているカツミ君の前に近づく。

 

「すまないが、カツミ君」

「ど、どうした、レイマ? え、なに地球人って、あんた宇宙人なの? ははは」

「そんな些末なことはどうでもいい!! ……カツミ君、政府からの要請だ。君も作戦に参加してほしい、と」

 

 社長の言葉にきょとんとするカツミ君。

 

「いや、なんでだ」

「彼らは前回の君の活躍とマグマ怪人の恐ろしさを知っているからな。確実性も考慮して、全力でマグマ怪人の討伐に当たりたいのだろう。……もしもの事態がないとは限らない。……すまないな」

「……分かった。分かったって。お前が謝るなよ」

 

 重いため息をついた彼は、そのまま立ち上がりこちらへ歩いてくる。

 

「しょうがねぇ」

「……うん」

「まあ、久しぶりに暴れられるって考えれば悪くない。やるぞ、ジャスティスクルセイダー」

 

 半ば強制的に一緒に戦うことになってしまった。

 こちらとしては不本意ではあるが、彼の助力が頼もしいことには変わりはない。

 対マグマ怪人、これまで通りに気を引き締めて戦わなくちゃな。

 


 

 私達は基本的に出撃するその前に変身を完了させる。

 街中で変身するようなことは稀だ。

 あったとしても必要に迫られた時にしかしない。

 このご時世、変身したところを見られれば簡単に広まってしまうし、無用な騒ぎを避けるために私達はあらかじめ変身を完了させてから現場に向かう。

 今回もそれが同じだった。

 

『UNIVERSE!!』

 

 前に軽く掲げたジャスティスチェンジャーに指を押し当て、認証プロセスを起動させる。

 カツミ君のチェンジャーと異なる音声が鳴り響いた後に独特の待機音声が流れだす。

 

『Loading N.N.N.Now Loading → Loading N.N.N.Now Loading →』

 

 リズム感溢れる待機音に合わせ、口元にチェンジャーを近づけた私達は最後の——音声認証での変身の合図を口にする。

 

「変身!」

『Flame Red! Acceleration!!!』

 

 チェンジャーを中心に特殊なフィールドが形成される。

 粒子化されたスーツと仮面が、私達の身体を覆う。

 腕部に装着されたジャスティスチェンジャー。

 それぞれの腰に装備された武器。

 赤、青、黄、三色の色をメインとした私達が変身を終えると同時に、最後の音声が鳴り響く。

 

『CHANGE → UP RIGING!! SYSTEM OF JUSTICE CRUSADE……!!』

 

 改めて聞くとプロトスーツと比べて音声が盛りだくさん過ぎる。

 これだけで社長がやりたい放題しているのが分かるが、そしてなにより、このスーツのなにが酷いって―――、

 

「燃える炎は勇気の証! ジャスティスレッド!」

「流れる水は奇跡の印! ジャスティスブルー!」

「轟く稲妻は希望の光! ジャスティスイエロー!」

 

「「「三人合わせて! 三色戦隊ジャスティスクルセイダー!!!」」」

 

 この台詞をやらないとマスクにアラートが鳴るからだ。

 なにやら、スポンサーだとか自分の趣味とかで社長がつけさせた機能なのだが、初変身以降は人前でやったことはない。

 というより、人前で変身しないので必要ないはずなのだが、それでもやらなくてはいけないのは本当に辛い。

 ポーズをやり遂げた後、隣で既に変身を終えていたカツミ君―――黒騎士がやや引いた様子で私達を見ていることに気付いてしまう。

 

「お、お前らそれ恥ずかしくないの……? 特撮ならまだしも……」

「「「……」」」

「……あ、なんか、ごめんな? ……いや、ちょ……無言で泣くなよ!? 仮面で分からないけど!」

 

 いざ言われてしまうと猛烈に泣きたくなってくる。

 マグマ怪人倒したらあとで絶対この機能とってもらおう。

 あのにやつき面の社長の顔を思い出しながら私はそう決心するのであった。

 

*1
正式名『光食怪人グリッター!』光を食べることができる怪人で見た目はジャスティスクルセイダーと似たヒーローの恰好をしており、当時は多くの人々に5人目の仲間と思われていたぞ! だがその本性はやはり怪人! 光ならなんでも食べられるので一週間日本だけが昼なのに夜のようになってしまっていた!! 瞳に反射する光を食べることで相手の視力を奪ったりできるので凶悪な能力を持つ幹部怪人の一人でもあるのだ!!

*2
別名『鬼ごっこ怪人モスーノ』見た目は大きな蝋燭に手足が生えたような姿をしているが、その能力は強力!! モスーノが認識した複数の人間を自身の作り出した幻想世界に閉じ込め鬼ごっこを強制させるぞ!! 鬼にされたプレイヤーの頭には火のつけられた蝋燭が取り付けられ、モスーノを捕まえることができず蝋燭が全て溶けてしまったらプレイヤーは問答無用で死を強制されてしまうのだ!! 見た目の割に本体も恐ろしく強い上に足が速いぞ!! こいつも幹部クラス!!




変身音は多少適当でしつこくて演出もくどくてダサくても許されるっておばあちゃんが言っていました(責任転嫁)

幹部怪人は基本理不尽だったり、攻略方法が難解なのが多いですね。


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