追加戦士になりたくない黒騎士くん   作:クロカタ

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お待たせしました。
今回は主人公視点から始まります。


出現、星界怪人

 新たに出現した侵略者の数は5体。

 それも分散するように出現したそいつらは、空から降ってくると同時に無差別に周囲への破壊活動を開始したという。

 5体だけ、というコスモを加えた俺達五人と同じ戦力数になにか作為のようなものを感じるが、戦うことには変わりない。

 俺たちはレイマの指示に従い、侵略者が暴れているというそれぞれの場所へと急遽向かう。

 

「ここか!」

『目視で確認できる距離まで接近!!』

 

 空を駆けるバイク、ルプスストライカーに乗り込み目的地に到着した俺の視界には、侵略者が暴れたであろう破壊の跡が刻まれた街並みが広がっている。

 

「ハカイ……ハイジョ……」

「う、うわああああ!!」

 

 ……まずい!

 逃げる男の人を追いつめ、その鋭利な爪で切り裂こうとしている黒い異星人。

 その爪が振り下ろされる前にルプスストライカーを加速させ、ブレーキと同時に後輪での体当たりを叩きこむ。

 

「……!」

 

 衝撃に吹き飛ばされた侵略者を目にしながらバイクから降りる。

 シロにより構築してもらったヘルメットが自動的に粒子となって消え失せ、外気に晒され肌に冷たい風が撫でる。

 

「大丈夫ですか?」

「き、君は……」

 

 大きな怪我は……してないな。

 サラリーマンと思わしきスーツを着た男性を一瞥し、安否を確かめた後に意識を黒い侵略者へと向ける。

 ……こいつは、面倒そうだな。

 

「テメェ、怪人か?」

「———」

「ただの侵略者じゃねぇな。俺の知ってる怪人と同じ気配がする」

 

 確証はないが、オメガと似た気配がする。

 一切、反応せず石像のように動かない黒い外殻を持つ奴を警戒しつつ、近くにいる男性に逃げるように促す。

 

「こいつは俺が倒します。逃げてください」

「っ、ま、まだ逃げ遅れた人がいるんだ!」

「! プロト!」

『サーチをかけてみたけど、まだ逃げ遅れた人がいるみたい!』

 

 なら、迂闊に大技も出せないわけか。

 避難が完了するまで時間を稼ぐか、周りに被害を出す前に一瞬で始末するか。

 

「避難が終わるまでに俺がこいつを足止めしますから———」

「……いや、私も避難を手伝ってくる! 君も頑張ってくれ!!」

「え」

 

 俺の反応を待たずに男性がこの場から離れていく。

 黒騎士として戦っていた時とは違う反応に面を食らってしまったけれど……。

 

「……捨てたもんじゃねぇよな。この地球も」

 

 信じられないほどに他人に非情になれる人間もいれば、こういう人もいてくれる。

 なら、この場を任されたからには、ここにいる全員を守らなきゃな……!!

 

「———ハイジョ」

 

 黒い怪人の胸部が開き、ミサイルようなものが飛び出してくる。

 あれでここら一帯を滅茶苦茶にしたのか?

 当たれば危ないだろうが———、

 

『ガウ!!』

 

 ベルトのポーチから飛び出したシロが、空中でミサイルを弾き破壊する。

 それに合わせてシロを右手で掴み取った俺は、ベルトを出現させながらシロをバックルへと変形させた。

 

LUPUS(ルプス) DRIVER(ドライバー)!!』

 

「変身

 

 ベルトに差し込んだバックルを叩き、変身を行う。

 記憶の中では慣れ親しんだ白川克樹としての変身。

 多様性に含み、様々な武器を扱うことを可能としているこの姿は、タイプ1には攻撃力では劣るもののあらゆる敵と状況に対応している。

 

FIGHT(ファイト) FOR(フォー) RIGHT(ライト)!!』

CHANGE(チェンジ) YOUR(ユア) DESTINY(デスティニー)!!』

 

 追撃のミサイルをエネルギーフィールドではじき返しながら変身は続く。

 

BREAK(ブレイク) FORM(フォーム)!! COMPLETE(コンプリート)……』

 

 黒のアンダースーツ、金の縁取りが施された銀のアーマー。

 それらが身体を覆い、最後に三本の角が特徴的なマスクと黄色の複眼を輝かせ———身体を包み込む金のエナジーフィールドを手で散らすように払い、完全な変身を完了させる。

 

「———ハイジョ!!」

「それしか喋れねぇのか?」

LUPUS(ルプス) DAGGER(ダガー)!!』

 

 ルプスダガーを一閃し、ミサイルを全て切り落とす。

 さらに逆手に持ち替えながら地面を蹴り、接近と同時に黒い侵略者の胴体に上から叩きつける形の横蹴りを叩きつける。

 

「———!!」

 

 脇腹の外殻を粉砕し、さらに大きくへこませながら地面へめり込むように沈む。

 青色の血を吐き出し這いつくばりながらも生きているソイツを目にし、軽く足を掲げる。

 

「……案外脆いな」

 

 痙攣しながらも起き上がろうとする奴の背中を押さえつけるように足を乗せ、バックルへと手を添える。

 

DEADLY(デッドリィ)!! TYPE(タイプ) LUPUS(ルプス)!!』

 

 悪いがこのまま止めを刺させてもらう。

 ベルトから赤と金のエネルギーが足へと流れ———異星人の背中を押さえつけている右足へと集中する。

 

BREAK(ブレイク)! POWER(パワー)!!』

BITING(バァイティング)! CRASH(クラッシュ)!!』

 

 凝縮された力が背中の外殻を踏み砕き、直接内部に破壊のエネルギーを送り込む。

 力に任せて踏み潰して背中から胴体を貫通させられた侵略者は、内部で炸裂したエネルギーを受け口から、外殻の隙間からエネルギーを放出させた後に、ぴたりと動かなくなってしまった。

 

「……ふぅ」

 

 踏み砕いた背中から足を引き抜き、出来上がったクレーターから出る。

 そこまで強いやつでもなかった。

 もしかすると戦闘員かなにかなのか?

 だとすれば、これは性能をテストさせたのかもしれねぇな。

 

『カツミはやっぱりカツミだ』

「……やけに嬉しそうだな」

 

 チェンジャーから嬉し気な声を発するプロトに首を傾げる。

 姉妹? 仲は悪いと思っていたのでシロを使うと不機嫌になると思って、どう機嫌を取ろうかって考えていたんだが。

 

『カツキの時も好きだけど今のカツミが一番』

「白川克樹も、穂村克己もどっちも俺だよ。……とりあえずレイマに連絡繋げてっ……!」

 

 背後の気配を感じ取りそちらを向く。

 見れば、確実に止めをさしてやったはずの侵略者が死に体になりながらも立ち上がっていた

 

『ガ、ァ……アァ……』

「再生持ちか? いや……違うな」

 

 再生している、というよりも内部から肉塊が溢れ出てきているような感じだ。

 黒い外殻に閉じ込められていた何かが、死と共にあふれ出し、奴の姿をまた別のなにかに変貌させようとしている。

 

『カツミ君!』

「レイマ、こっちの視界は見えているか?」

 

 ダガーを構え警戒しつつ、レイマの連絡に応じる。

 

『レッド達のいる現場でも同様の現象が起こっている!』

「あれ以上の変化は?」

 

 見たまんま暴走しているわけだが。

 お世辞にも鎧武者のように整っていた見た目から遠ざかり、今はホラーゲームのクリーチャーのような姿に変わり果てている。

 

『今のところは未知数! だがレッドが問答無用でバラバラにしたことで倒すことができたようだ!』

「……ちなみにどんな風に?」

『ほぼ同時に直撃する七つの斬撃だな……いや、本当どこであんなの覚えてくるのか私に理解できん……』

 

 相変わらずだな。

 鬼神の如き強さとはこのことを言うんだろう。

 頼もしいことこの上ない。

 

『カツミ! 避難が終わったよ!!』

「なら、手っ取り早く済ませよう」

TRUTH(トゥルース) GRIP(グリップ)!!』

 

 手の中に黄金色のアイテム———トゥルースグリップを出現させ、起動。

 バックルの側面に連結させ、グリップのカバーがバックルを覆うように展開し、その色を黄金色へと染め上げた。

 

ARE YOU READY?(いつでもいいよっ!)

NO ONE CAN STOP ME!!(誰にも君の邪魔はさせないから!!)

 

TRUTHFORM(今こそ)! ACCELERATION!!(全てを一つに!!)

 

 ブレイクフォームが解除されトゥルースフォームを纏う。

 

THE ENEMY OF JUSTICE(戦いに終わりをもたらす)……』

 

『『『TRUTH FORM(トゥルース フォーム)!!!』』』

 

 金属音と共に四色の装甲が胸部にはめ込まれたことでフォームチェンジを終わらせた俺に、獣のようにゆらゆらと動く肉塊の怪物と化した侵略者が襲い掛かってくる。

 

「ガ、ァァ!!」

 

 肥大化し、鋭利な爪を鞭のように伸ばし叩きつけようとする攻撃。

 それに対して棒立ちのまま炎を纏わせた腕を突き出し、問答無用で吹き飛ばす。

 動きに精彩さの欠片もなく、かといって理性がないわけでもない。

 ……こいつは、ここで終わらせてやるべきだな。

 

「……」

MIX(ミックス)!』

 

 手の中で出現させたグラビティバスターに側面の窪みにミックスグリップを差し込む。

 ガチャン、という音で接続しさらにミックスグリップをバイクのハンドルのように回す。

 

RED

YELLOW

BLUE

BLACK

RED

YELLOW

BLUE

BLACK

RED

YELLOW

BLUE

BLACK

RED

YELLOW

BLUE

BLACK

aaaXaaa

RED

YELLOW

BLUE

BLACK

RED

YELLOW

BLUE

BLACK

RED

YELLOW

BLUE

BLACK

RED

YELLOW

BLUE

BLACK

 

 シロの解析能力で相手に有効な属性と攻撃を導き出し、グリップのトリガーを引きミックスグリップに内包される属性を定める。

 止まった色は赤と黄。

 

RED(レッド)!!!】

YELLOW(イエロー)!!!】

 

 メモリに赤色と黄色の表示が浮かび、グラビティバスターの刃に炎と電撃が溢れる。

 それを両腕で大きく掲げた俺は、抑え込んだ力を斬撃と共に視線の先にいる侵略者へと放つ。

 

GRAVITY(グラビティ)BUSTER(バスター)!!』

FINISH(フィニッシュ)!! IMPACT(インパクト)!!』

  ミックス    チャージ

『MIX CHARGE!!』

 

 指向性を持って放たれた斬撃は熱線となって、異星人を呑み込む。

 周囲への影響を押さえるべく、数秒ほどの放射で熱線は消え失せるが、後に残ったものはなにも存在していなかった。

 

「これだけやれば、もう立ち上がってこねぇだろ」

『反応、完全に消失。よくやってくれた。カツミ君』

「ブルー達は?」

『無事に倒してくれた。あとはこちらに任せて君はその場を離れてくれ』

「ああ」

 

 ルプスストライカーを呼び出しバイクに跨り、走り出す。

 いつまでもここにいると逆に騒ぎを大きくしちまうからな、後はレイマの言う通り現場の人たちに任せて俺はすぐにここから離れたほうがいいだろう。

 

「……ん?」

 

 地上へと上がる際、先ほど助けた男性の姿を見つける。

 彼が無事なことに安堵しながらも、避難を誘導しているその姿をしっかりと記憶に焼きつけ俺は再び前を向く。

 

「なにが、来ようとここは守る。そうだよな」

 

 侵略者共がなにかをしようとも。

 ヒラルダが何かを企んでいようとも。

 俺の戦う理由は変わらない。

 

「テメェが何をしようともな……ルイン……!」

 

 地球を守って、奴との決着をつける。

 例え、どれだけ力の差があろうとも俺の前に立ちふさがるようなら全力で戦ってやる。

 

 


 

 

 地球に落とした星界怪人は全てジャスティスクルセイダーと黒騎士、そしてコスモによって倒されてしまった。

 あんまりな結果に私は、モニターを観察していたヒラルダを見るが思いのほか彼女は余裕そうな面持ちだった。

 

「戦闘力としてはまずまずといったところだねー」

「あっさり倒されたんだけど……」

「え、そりゃ当然だよ、イエロー。そんな簡単に苦戦させられるようなら君達こんな苦労してないでしょ?」

 

 ……確かにそうだけど。

 でもこいつに正論を言われると腹が立つのはなんでだろう。

 

「星界怪人は倒されると怪人因子が暴走し、無理な進化を促そうとする。うんうん、これは良いことが判明した」

「……はぁ」

「これをうまく使えばもっと強い星界怪人を作ることもできる。うんうん」

 

 勝手に一人で納得しているヒラルダにため息が零れてしまう。

 もう私のラボに戻っていいだろうか? いや、もうここにいる意味もないし戻ってしまおう。

 無言で立ち上がり、ヒラルダのいる研究室から出ていこうとする。

 

「イエロー」

「まだ何か用?」

「これから楽しくなりそうだね」

 

 振り返った先の視界には、研究室のスペース全てを覆う星界怪人の素体が保存されているポッドが置かれていた。

 その前で薄ら笑いを浮かべて私を見た彼女は、まるで何かを待ち遠しいと思う子供のような表情を浮かべ、淡い光を放つ双眸をこちらへと向ける。

 

「……ブルーを……兄さんを人質に取っているくせに?」

「ふふふ」

 

 本当になにを考えているのか分からない。

 こいつが何をしようとしているのか、私達を利用してどこまで力を求めるのかは分からない。

 でも……ただ一つ言えることは、私はこいつのことが心底嫌いだということだ。

 




完全復活状態のかっつんはルプスフォームでプロトゼロみたいな戦い方をします。
相手を拳で粉砕するが、蹴りで粉砕するに変わっただけとも言えます(笑)

星界怪人は所詮は戦闘員なので強すぎず弱すぎずの塩梅が丁度いいと思い、このくらいの強さになりました。

もしかしたら次回は掲示板回になるかもしれません。

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