追加戦士になりたくない黒騎士くん   作:クロカタ

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いろんなところにアルファが出没してる……(白目)

序盤は、怪人視点。
それから先は黒騎士くん視点となります。



歴戦の戦士と感情を得た怪人

 わたしは生み出されたその瞬間から、怒りに満ちていた。

 

 何者でもない自分、地球の名を持つ自分。

 自分の意思こそが地球の意思。

 

人間を滅ぼせ 我らの悲願の成就のために。

アルファのために

アルファは死んだ どこにもいない。

だがアルファの子供がいる。

生まれるべきではなかった 怪物。

やつがこの時代のオメガを選び出すその前に殺せ

その存在を絶対に許すな。

 

 

 この私を作り出した怪人。

 狂気と理性の狭間を生きる怪人首領オメガと呼ばれる存在から下された命令は人類の掃除。

 生命の怪人、魂を創造し、操り、あらゆる存在の生命すらも掌握するあの方の命令は、絶対に逆らうことは不可能だ。

 命令された通り、人類を滅ぼす。

 そのためにわたしは大地へと降り立った。

 

『ウオオオ!!! アァァァァァス!!!!』

 

 だが、わたしは失敗した。

 地球に寄生する虫けらどもと、異様な強さを持つ人間によって、わたしは深い海の底に落とされた。

 落ちる最中に見えたのは、自身を暗闇へと叩き落とす恐ろしい黒い男の姿だった。

 

『アァァス……』

 

 遥か、深海の奥底で力を蓄えているその間に既に怪人首領は倒れた。

 自身を突き動かす命令は既に存在しない。

 ならば、無作為に暴れて人類を減らそうか。

 手近な大陸を壊そうか。

 

『アァァァ……ス』

 

 惑星怪人アースとして、

 地球という星の力をその身に受ける怪人として、

 星を食い物にする人間を、その使命のままに滅ぼそうかと、考えた。

 だが、しかし。

 

『クロォ……キシィ』

 

 何者でもないわたしが初めて抱いた怒り以外の感情。

 あの黒い戦士に対するどうしようもない恐怖と、地球の代弁者である自らを堕とした敵への憎悪。

 それは、紛れもない虫けらと断じたたった一人の人間へわたしが抱いた明確な人としての感情であった。


 

 海上に浮かぶ船。

 その上に乗った俺とジャスティスクルセイダーはスーツ姿のまま、マグマ怪人がやってくるであろう水平線の先を見据えていた。

 

「これ作るのにいくらぐらいかかったんだ……?」

「億は余裕で超えると思う。もしかしたら何十億じゃ済まないかも。しゃ……主任が謎技術で造ったって話らしいし」

 

 見た目は小型船舶なんだけど、その実態はまるで異なる。

 まさしく対マグマ怪人専用の“決戦場”とも言える。

 

「本当に装備とかいらないの?」

「いまさら拳以外使えん」

「え、で、でもすごいよ、これ! 色んなもの溶断できちゃうんだよ!!」

 

 チェンジャーから飛び出した柄をレッドが引っ張ると、赤熱した刃が特徴的な西洋剣が出てくる。

 形状からしてもマグマ怪人にも溶かされず、攻撃も食らわせられるやばい剣。

 明らかに女子高生が振り回してはいけないものだが、これがレッドの主武装である。

 

「レッドやめーな。彼は武器なんぞいらない拳一つで怪人と戦ってきた男や」

 

 かくいうイエローは両刃の斧を肩で担ぐように持っている。

 電撃タイプなのにパワー全振りなのがこいつだ。

 

「でも、黒騎士の新武器はちょっと気になるかも」

 

 丸みを帯びた青色の銃を二つ持ったブルーが、それの調子を確かめている。

 時折、二つの銃を合体させてライフルのような形状にさせている謎技術を見せている。

 

「……」

 

 やはり慣れない。

 こいつらとこうやっているのは。

 いつもは途中からしょうがなく助けに入る感じではあったが、今回は最初から味方なのだ。

 不本意でしかないが、たしかにもしもの事態を考えるのなら俺もいたほうがいい。

 

『そろそろマグマ怪人が到着する。すごいスピードだ。できるだけ注意を引くように』

「「「了解」」」

「ああ」

 

 マスクに直接聞こえてくる通信に頷き、水平線を見る。

 

「ッ、なんだ?」

「敵が来るよ? どうしたの?」

「いや、なんか見られているような気がして……」

 

 ……気のせいじゃない。周囲を気にしながらも、水平線へと視線を戻すと小さな黒い点と白い蒸気のようなものが徐々に見えてくる。

 それは揺れる波を無視しながら、真っすぐに俺達のいる船へと向かってきていた。

 赤く赤熱した外殻を持つ怪人、マグマ怪人。

 カメラで見た通り、その左腕は元あった位置ではなく胸部分に突き刺さっているな。

 

「クロキシィィィィィ!!」

 

 思いっきり呼ばれたな、俺が。

 かなりのスピードで海の上を滑るように移動するマグマ怪人を目にしたレッドは訝し気に俺を見る。

 

「ねえあれ、君の名前を呼んでるよ?」

「……あいつ意思があったのか? まあ、怪人じゃそれほど珍しくないだろ」

「むしろ、喋らない方が怖いわ」

「分かる」

 

 さすがに修羅場を潜っているだけあってこの状況でもビビったりはしないようだ。

 なんだ、頼もしくなったじゃ……。

 

「いやいやいや……」

 

 そう思ってしまったらダメだろ。

 俺は仲間になるつもりはない。

 それだけは絶対に譲ってはいけない約束なんだ。

 ん? 約束ってなんだ? いや、違うな、決めているんだ。

 

「クロキシィィィ!!」

「……バカの一つ覚えみてぇに叫びやがって……」

 

 気づけば既にマグマ怪人は距離50メートルほど近くにまでやってきていた。

 突如としてその動きを止めた奴は、ぐつぐつと海面を沸騰させながら、どこにあるか分からない目で俺を睨みつけてくる。

 

「一年と半年ぶりだな。どうだぁ? 胸の傷は痛むかぁ?」

「ギ、ィィ!!!」

「怪人相手には悪人みたい……」

 

 ぼそっとレッドが何かを呟いているが、挑発しつつ奴の調子を確かめる。

 恐らく海底火山かなにかで力を蓄えていたのだろう。

 エネルギー量は恐らくMAX。

 だが、ここは大地の上でもなんでもねぇからその力を減らし続けることはできるし、なによりあの胸の傷からエネルギーが常時漏れ出しているので、前以上に速く追い詰めることができるだろう。

 

「また深海に送ってやるよ。今度はそのどてっぱらに穴を空けてな」

「がぁぁ!!」

 

 怒りに呑まれたマグマ怪人がその手から溶岩を放つ。

 すぐさま俺達は、小型船舶から飛び降り―――そのまま海面の上に立つ。

 別にそのまま海面に立っている訳ではない。

 

『では、対マグマ怪人潜水艦。ジャスティスマリーン! 浮上!!』

 

 仮面内部から聞こえるレイマの声。

 轟音と共に、今立っている足場が徐々に浮上していき、視線の先にいるマグマ怪人を巻き込み、足場が上昇し一つのフィールドとなる。

 海水が甲板から流れていく音が響きながら、困惑しているマグマ怪人に笑みを向ける。

 

「対マグマ怪人対策の潜水艦……らしいぞ? 大地に立たせて駄目なら、海に立たせればいいってな」

 

 ジャスティスマリーンと名付けられた潜水艦の上部の形状は、どちらかというと空母のそれに近い。

 その決して広いとはいえないフィールドには、マグマ怪人への対策が施され、数分程度ならば奴が放つマグマにも耐えられるらしいという代物だ。

 とりあえずは、奴を戦いの場へ誘き寄せた。

 後は攻撃あるのみだ。

 

「さて、やるか」

「私とイエローと黒騎士くんで前衛」

「腕がなるでー」

 

 右手で握りしめた剣を構えるレッド。

 ぶんぶんと斧を振り回すイエロー。

 

「ブルーが射撃での支援、よろしくね」

「合点承知のすけ」

 

 そして、軽く二丁拳銃を構えたブルー。

 いつもの陣形に、今日は最初から俺が組まれているわけだが……基本的にあっちは三人で合わせるので、俺は俺で流れに入りこめば問題はない。

 

「だがら、どぉした」

「?」

「おまえ らが いくら愚かにも策を講じようとも、この地球の化身であるわだしをだおすことは、できない」

 

 よく喋るようになったな。

 力のまま暴れるようになっていた頃の奴とは違って大分賢くなっているようだ。

 

「づぎは、あそこの虫どもだ。つぎはもっとおおきなむし共を焼き尽くして、殺しづくして、絶滅させてやる」

「……随分と自信があるようだな」

「わだじは、惑星怪人アース! 地球の代弁者。おまえらはこの地球に必要、ない!」

 

 代弁者ときたか。

 今までの怪人もご高説を並べてきたわけだがこいつは相当だ。

 事実かどうかは分からないが、どちらにしてもこいつを野放しにする理由がない。

 

「だが、くろきし、わだじはおまえを殺」

「うるせえ!」

「シィぎぃ!?」

 

 熱量を放つ顔面に跳び膝蹴りを叩き込み、ぐるん! と一回転させるように吹っ飛ばす。

 びたーん! と甲板に全身をうちつけたマグマ怪人……否、惑星怪人アースは、怒りのままに全身の温度を上げ始める。

 

「後悔ずるなよ、わだじは不死身だ」

「御託を並べてばっかりやなぁ! 地球さん!!」

 

 電撃を纏いながら、吹っ飛ばされた方向に回り込んだイエローが大きく構えた斧をアースの胴体に叩き込み、そのままこちらへと飛ばす。

 俺が拳で迎え撃つ前に、レッドの剣が奴の外殻を斬り飛ばす。

 

「……意外と脆いね! 地球!!」

 

 一瞬で返す刃で怪人の背を切りつけ、さらに突き刺す。

 亀裂の入った左肩の関節から刃が飛び出し、血液のように溶岩が溢れ出る。

 俺のスーツもジャスティス共のスーツも特別製。

 普通では考えられない力で、守られている。

 

「オオオォォ!!」

「わわっ!」

 

 さらに熱量を上げて立ち上がり、アースがレッドを追い払う。

 

「隙あり」

「がっ、が、ががが!?」

 

 奴の足元に滑り込んだブルーが胸部の弱点に連続して、水色のエネルギー弾を叩き込んでいく。

 

「惑星怪人とかスケールでかすぎぃー……」

「危ねーぞ」

「わひっ!?」

 

 ブルーへ繰り出された高熱を纏った足を蹴り、攻撃を逸らす。

 さらに突き出された右腕を腕でいなしながら、アースと睨み合う。

 

「俺だけだったら、まだ話が違ったんだろうが」

「クロキシィィ!!」

「生憎、今回も一人じゃないんでね!!」

 

 迫りくる溶岩を拳でいなしながら、一気に懐に入り六度ほど拳を叩きつける。

 拳の衝撃で後ろに飛びそうになったところで背後からレッドとイエローが剣で斬りつけ、こちらへ跳ね返ってきてはぶん殴る。

 

「オ、ォ……!」

 

 なんとか堪えたところブルーのエネルギー弾が襲い掛かる。

 相手に意識的な休みをさせない連携攻撃。

 ジャスティスクルセイダーの連携を繋ぐ役割を担いながら、間断なく攻撃を与えていく。

 

「そいや!」

 

 俺の蹴りで地面に叩きつけたところを、再度イエローが掬い上げるように振るった斧で吹き飛ばされ、その先でレッドの剣により叩き切られる。

 さらに攻勢に出ようとすれば、ブルーの射撃が的確に視界、弱点、足元へと直撃し無理やり動きを止められ、もう一度先ほどと同じループが繰り返される。

 

「この一体感、いいなぁ」

「無駄口を叩くな。レッド」

「はーい!」

 

 頭上から隕石のように降り注ぐ溶岩へ向かってレッドが跳躍。

 そのまま縦に振るった剣で真っ二つに切り裂く彼女に、思わずため息をつく。

 

「……やっぱ、お前らもつえーよ。俺がいなくても」

 

 伊達に一年間戦ってきたわけじゃない。

 たしかに、何度か俺が助けはしたが、敗北を経験するごとに彼女たちはそれを糧にしてさらに強く、たくましくなっていった。

 アースが地上におらず、胸に大きな傷を負っている点を加味したとしても、相手は並みの怪人よりも遥かに強い。

 それを相手に優勢に戦えている時点で強い。

 

「オオ、オオオ!!」

「うわぅ!?」

「これはまずいなー」

「一旦離脱ー」

 

 さらに熱量を上げはじめるアース。

 彼女たちが離れるということは、ジャスティススーツでは耐えられないほどの熱量なのだろう。

 すると、俺達の耳にレイマとオペレーターをしている女性の声が聞こえてくる。

 

『惑星怪人アースの周囲の温度上昇し続けています!! 距離10メートル内は……2965℃!? 依然上昇中!!』

『惑星怪人ってのもあながち間違いじゃなさそうだ!! この上昇値……! こりゃ太陽の表面温度に迫る勢いだ!! さっさとなんとかしないとその足場も危ないぞ!!』

「なら俺だな」

 

 床が溶解しかけた奴の周囲に飛び込む。

 前回の戦いの時、あのコンテナの中で行われたソレは、一対一の殴り合いではなく、ただ無造作に力を振るうこいつの攻撃を避けながらひたすらに俺が殴り続けるというものでしかなかった。

 今の状況も、俺がするべきことは依然変わりない。

 

「ふんっ!!」

 

 右腕を躱し、拳を鋭く顎に命中させ、次にその足を蹴りで崩す。

 怯んだところで、可能な限り殴る。

 反撃したところでクロスカウンター気味に反撃。

 

「ガァァ!!」

 

 それでもなお無理やり飛び掛かってこようとするアース。

 だが、俺の背後から飛んできたレッドの剣が亀裂の入っていたアースの肩を貫通する。

 

「おぉぉっし!! 当たったよぉ!!」

「よくやったレッド!!」

 

 怯んだ勢いのまま、さらに拳を叩き込み奴のエネルギーを一気に削り取る。

 

「ギ、ヒッ……!?」

 

 奴の声と雰囲気から感じるのは、明確な恐怖。

 あの機械的に溶岩をまき散らしていた怪人とは思えないものだ。

 だが情けなどかけるはずがない。

 拳を固め、止めを刺す―――!!

 

「ぶふうぅぅぅぅぅ!!」

「なっ!?」

 

 煙幕!?

 突如として口から白い煙を拭いたアース。

 煙をはらいながら追撃を行おうとするが、その先には奴はいなかった。

 

「「「逃げた!?」」」

「は?」

 

 唖然としたまま奴の気配のする方を見れば、この船から脱出したアースが海面を滑りながら日本へとまっすぐ逃げようとしている姿が視界に映りこむ。

 

「大地に、大地にづきざえすればぁ……!」

 

 逃げる? 逃げたのか?

 野郎、とうとう手段を選ばず日本を破壊するつもりだな。

 脳裏に浮かぶのは一年と半年前の記憶。

 多くの人が奴の犠牲になり、大怪我をしたあの戦い……。

 

『奴は弱っている! ジャスティスクルセイダー! とどめをさせ!! ファイナルウェポンの使用を許可す――って、カツミ君! なにをしようとしているんだ!?』

 

 大きく助走距離をとった俺にレイマが声を上げる。

 

「ちょ、カツ……黒騎士君!? ど、どうするつもり!?」

「とどめは私達に任せるんや!」

「奴を始末する。今度は、確実に」

 

 あのふざけた地球野郎は俺が始末する……! 絶対に許さん……!!

 日本へと向かって行く奴を目にし、迷いなく助走をつけて甲板から海へと飛び込む。

 スーツの身体能力に任せ、海原を蹴りながら海上を走る。

 

『海を走った!? いや、君ならば不可能はないだろう!! さすがは君だァ! ウェ、ウェへへァァ!! 君の新しいスーツの構想がドバドバ湧き上がってくるぞぉぉ!!』

『主任!! ちょっとうるさいから黙っててください!!!』

『はい、ごめんなさい……』

 

 怒られて素直に落ち込むレイマ。

 オペレーターの女性は、そのまま海面を走る俺へと声を投げかけてくる。

 

『黒騎士君!! 惑星怪人アースの核は胸の真ん中から左に10㎝ほどズレた小さな球体です!!』

「了解!!」

 

 核の場所は分かった。

 懸命に海面を滑っていくアースの背中へ追いつき、その拳を固める。

 

「皮肉なもんだなぁ!!」

「ッ!?」

「感情を得て弱くなるなんてなァ!!」

 

 海面を跳躍、そのまま大きく拳を振り上げた勢いのままアースを殴りつけ、海水へと叩きつける。

 奴が足元に作り出した溶岩が冷えて固まった場所に背中を激突するが、そのままもがく奴の肩を掴んで頭突きを食らわせた勢いのまま、言葉を叩きつける。

 

「お前と戦った人たちは、立ち向かったぞ!!」

 

 一年半前、なし崩し的に一緒に作戦を共にすることになった自衛隊の人達。

 他にも多くの人が覚悟して、お前と戦う覚悟を決めていた。

 彼らは俺のようなワルモノとは違い、日本のために、家族を守るために戦った。

 それは、俺には絶対にできないことだ。

 

「よりにもよって、お前は俺達に背を向けて逃げやがったなァ!!」

 

 だが、こいつは逃げた。

 よりにもよって、まだ日本を害する意思を持ったまま、俺達から逃げた。

 

「あの人たちは、命を懸けてお前と戦った!! なのに、追い詰められたお前は逃げるのか!! ふざけやがってこの腰抜け野郎!!」

「……わだじは惑星怪人アース!! お前だぢを絶滅ざぜる!! わだじは惑星怪人アース!! お前だぢを絶滅させる……代弁者ぁ……ッ!!」

「テメェが人間をムシ呼ばわりする資格なんてねぇんだよ!!」

 

 壊れたテープのように恐怖の籠った声で同じ言葉を呟き、顔を赤熱した右手で掴まれる。

 至近距離の高熱でアラートが鳴るが、それに構わず掲げた手を手刀の形へと変える。

 

「その出来損ないの心臓はいらねぇよなぁ!!」

 

 そのまま渾身の力で放った抜き手を怪人の胸へと突き刺す。

 かつて俺がこいつの左腕を突き刺した僅か左にあるソレを掴み取った俺は、奴の身体に足を掛けながら力づくでそれを抜き取った。

 

「———ァ」

 

 瞬間、アースの身体は真っ白に染まりボロボロと崩れ落ちていく。

 無言のまま手の中の小さな……ピンポン玉ほどの心臓を握りつぶした俺は、この騒動の終わりに思わずため息をついた。

 

「はぁ、戻るか……。……ッ!」

 

 何か、空気を振動させる音。

 海の音に混じってその音を聞いた俺は、足元の溶岩が固まったソレを割り砕き、手ごろな石を空中へと放り投げる。

 するとなにもない空間にパァンという音が響き渡り、なにかが落ちる。

 

「……水色の……なんだこれ? オペレーターさん、なんですかこれ」

『ドローン!? なぜこんなものがここに!?』

 

 空と海の色にカモフラージュされているように塗装された『どろーん』と呼ばれる機械。

 

「アアァァァ!? ドローンが!?」

「はい……?」

 

 こちらに流れ着いたそれを拾いながら首を傾げていると、この場にそぐわない呑気な悲鳴が聞こえてくる。

 声のする方を見れば、一隻の漁船が漂っているではないか。

 

「やっば見つかったっ!」

「逃げるが先っしょ! うおおおおお!! 生放送めっちゃやばい!!」

「さっすが怪人戦! これで俺達有名人だ!」

 

 なんだあいつら……?

 一般人、だよな? たしかこの海域は封鎖されているはずなのに……。

 俺の視線に気づいたのか、そそくさと逃げようとするボートだが、その直後に―――彼らを追ってきたとみられる自衛隊の船が取り囲む。

 

「うわああああ!?」

「だから言ったんだよ!!」

 

 あれよあれよという間に拘束される彼らを見ながら首を傾げるしかなかった。

 本当になんなんだあいつらは?

 

『……あーあ、こりゃ大変だぞ』

「どうした? レイマ」

『日本との距離も近いせいか電波が届いてしまったのか。全く、愚かなことをしてくれたものだ……』

 

 本当にどうしたのだろうか?

 なにがあったか未だに分からないが、とてつもなく落胆しているレイマ。

 

『この戦いが世間にバレてしまった』

「……はい?」

 

 分かりやすく話してくれる彼に、俺はまた呆気にとられた声を返すしかなかった。




※この作品はSF作品なので沖合でも生放送はできます(謎理論)
彼らは無駄な運を発揮して忍び込み、無駄な運を発揮して戦闘の余波を逃れて生放送をお届けていました。

実は惑星怪人だったマグマ怪人くんでした。
恐怖を知ってしまったので、精神面でも弱体化しています。

あっけなく敗北してしまった理由については、弱体化していたことに加え一年間死闘を潜り抜けてきたジャスティスたちと、二年間ソロで怪人をぶった倒しまくっていた黒騎士くんのベテランチームじゃ相手が悪すぎたというのもあります。
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