前話『来襲、星界戦隊 4』を見ていない方はまずはそちらからお願いします<(_ _)>
前半はアカネの視点、
後半は別のキャラの視点でお送りします。
空を飛ぶ六機のジャスティスクルセイダー専用ビークル。
その中の一機であるホワイト5が両翼に展開したミサイルコンテナを伴って、街を蹂躙する星界剣神へと攻撃を仕掛けた。
『私が注意を引くので早く乗ってくださ———まだ私が話してる最中でしょうがァ!!』
順調に染まっているなぁ、白川ちゃん。
そんな呑気なことを思いながら手元のチェンジャーに組み込まれたジャスティフォンの画面をスライドし、私の乗騎であるレッド1をこちらに呼び出す。
空中で旋回し、ビルの間を高速で飛行しながらこちらに迫るレッド1。
「止めている時間が惜しい。ならっ!」
それを確認し、タイミングを見た私はビルから飛び降り、レッド1の装甲に手をかけそのままコックピットへ飛び込む。
「ふぅっ! さあ、行くよ!!」
『アカネってゲッターロボに乗れそう』
「なんだかよく分からないけど、人間扱いされてないのは分かる!!」
葵の呟きに返事を返しながら、私達はそれぞれのビークルへと乗り込むことに成功する。
レッド1,ブルー2、イエロー3、ブラック4は従来通りの姿をしているけどモニターに映っている金色のビークル、ゴールド6はホワイト5とは異なり、円盤型の飛行機型ビークルの姿をしていた。
『グリーン! ブラック4に乗り込んだか!?』
『乗ったけど、なんでボクがこの黒いのに乗らなくちゃいけないんだよ! 色的にホムラのやつだろこれ!!』
『彼には別の役目を任している!! 操縦法はレグルスの指示に従え!!』
『ガウ!!』
『あ、頭に操縦法が流れれれ……!?』
にぎやかだなぁ。
『準備は整った!! やるぞお前達!!』
『『『『はい!』』』』
『ちょ、待———』
『ガウ!』
対巨大怪人を想定した合体形態。
社長の許可を得た私達は、それぞれの配置にビークルを並ぶように移動させ合体シークエンスを開始させる。
瞬間、緑の光が六基のビークルを光で繋ぎ、互いに引き寄せながらビークルそのものが変形していく。
まず最初に大型のホワイト5を中心に胴体と頭部にレッド1、下半身にブルー2、腕にイエロー3が合体。
それから追加されるようにブラック4が装備として別れ、全身の各部に取り付けられる。
最後に円盤型のゴールド6が、レッド1の頭部と肩を覆うように接続———両腕、両足部分を覆う金の装甲が取り付けられたことで、その合体変形は完成する。
地上に降り立ったスーパージャスティスロボ。
以前よりも二回りほど巨大になった機体の感じを確かめながら、共に乗っている仲間達の声に耳を傾ける。
『出力、駆動系共に問題なし。いけるよ、レッド』
『でも分離による変形は前より早くできないみたいや』
『くくく、ぶっつけ本番だがやはり私の設計は間違っていなかった!! フゥッハッハッハァ!!』
『おいゴールディ!! 一人で興奮してないでちゃんとやれ!! 気持ち悪い!!』
『えっ、気持ちわ……ご、ごめんなさい』
コスモちゃんに気持ち悪いと言われガチでへこむ社長。
とにかくロボ自体は大きくなっただけで操作する感じは前とほとんど変わらないみたいだ。
なら———、
『同じ条件だと思うかぁ!? そもそも地球の脆弱な資源で作られた兵器など星界剣神には遠く及ばな———』
『ふぅん!!!』
『ガッッッ』
問答無用で握りしめた操縦桿を前に押し倒し、星界戦隊のロボに拳を叩きつける。
『れ、レッド!? ちょ、あの、やっぱりここは開発者たる私が操じゅ———』
「宇宙で暴れまわった割には操縦がお粗末だね!! こうやるんだよ!!」
ロボの頭部を鷲掴みにし地面に叩きつけながら、そのまま引きずり回す。
顔の部分の装甲が削られて、その機械仕掛けの内面を剥き出しにさせた星界剣神はその怒りを露わにさせるが……そんなもの少しも怖くなんかない。
「外面がようやく中身に追いついたな!! 宇宙のゴミクズめが!!」
前腕部から赤熱したブレードを展開させながら星界剣神へと接近する。
相手もただやられているわけじゃない。
全身にとりつけられたビーム砲のようなものを連続して放ち、攻撃してくる。
『バリア展開や!』
イエローの声と共に黄色のバリアが展開され、エネルギー弾を阻む。
同時に左腕部にエナジーキャノンが転送される。
『左腕部エナジーキャノン転送!!』
『エネルギーもチャージ十分。やっちゃえブラッド』
「誰がブラッドだ!!」
そう叫びながら牽制のためのエナジーキャノンを星界剣神の胴体に打ち込みながら、ブレードを突き出す。
「その性根に相応しい醜い姿をさらけ出せぇ!!」
『ガッ、ガァァ!?』
切っ先が顔部分を貫き、破片と燃料らしきものが周囲へ飛び散る。
左腕部のキャノンをパージし、そのままの拳で殴り抜けると、星界剣神の巨体はビルに背中から激突し、白煙が舞い上がる。
『な、なんでこいつこんなに豹変してるんだ……?』
『近くで見るとこんなに怖いのこいつら……』
コスモちゃんと社長がなんか呟いているが全然聞こえないね!
それよりこのままこいつを倒しちゃ駄目ならどうすればいいんだろう!!
「社長!! こいつここで倒しちゃ駄目なんですよね!!」
『ああ、その通りだ!! 策はある!! そのためにまずはこいつを弱らせろ!! だが!!』
社長が言葉を区切るとこちらのモニターに映る星界剣神の胸部部分が赤く強調表示される。
『その箇所は狙うな!! 狙うときは止めの一撃の時! でなければ爆発を引き起こすからな!!』
「了解!!」
『甞めるなァァ!!』
怒声を挙げたモータルレッドが操る星界剣神がその手に剣のようなものを出現させる。
巨大なエネルギーを纏った剣。
まともに直撃すれば相当なダメージを与えてくるであろうそれを向けてきた奴はその表情をさらに歪ませ叫ぶ。
『俺達は、星を守ってきた!! でも俺達にはなにも残っていない!! 感謝も、なにもかも与えられることなんてなかった!!』
だから奪おうって?
与えられないなら奪って自分のものにしてやろう、と言いたいのだろうか。
———バカげている。
例え、グリーンの言っていたように奴らの背後にいる何かしらの奴に洗脳されているだけだとしても、その発言は滑稽にすら思える。
「戦うたびにそんな余計なことを考えている時点でヒーローとして、戦士としても失格だよ」
『———なんだと』
私達……ううん、カツミくんがしてきた戦いは“負けたら終わり”という戦いばっかりだった。
少なくとも戦っている最中に見返りを貰うだなんて甞めたこと考えられるはずがない。
そもそも、彼も私達も頼まれて戦っているわけじゃない。
「私達は自分で選んだ!!」
『その通りや!!』
『私はなんとなゴホンッ!!……私たちの気持ちは同じ!!』
一人若干ズレたことをいう子がいたけど概ね私達の意思は合致している!!
私達の啖呵に形容しがたい形相を浮かべたモータルレッドが、星界剣神に持たせている剣を振り上げる。
それに合わせ、右腕を引くように構えた私は出力を上げ———前腕から伸びるブレードにエネルギーを流し込む。
「はぁぁ!!」
同時に叩きつけた剣が激突し、周囲に衝撃を広げる。
一瞬の拮抗を見せる二つの剣。
でも、モータルレッドは今は一人だ。
たった一人だけの奴なんかに、私達は負けはしない!!
『グゥ!! またしても、またしてもまたしても!! なぜ、俺達が負ける!! 星界に選ばれたはず、なのに!!』
剣を弾き、そのまますれ違い様に胴体を切り裂く。
装甲を深く切り裂きスパークする星界剣神にモータルレッドはそれでも苦しまぎれの言葉を吐き出した。
『もう、いい! このまま無様に敗北するくらいならば貴様らの守るべき都市を吹き飛ばしてやる……!!』
「社長!!」
『止めようとしていたようだがもう遅ォい!! お前らはなにも守れない!! 俺達と同じように!! 自らの理想に打ち崩さればいいんだ!!』
私達の声に社長は無言のまま腕を組んでいる。
なにも考えていない、わけではない。
だけどもう手遅れなほどに星界剣神の内包エネルギー量が上がっていき、今にも危険な状態だ。
『お前らの存在を認めてたま———』
『そうか? 俺はもう認めているけどな』
通信機越しか、はたまた肉声かは分からない。
激戦の中で
『
『
突如として発生した重力の檻が星界剣神を縛り付ける。
奴の前に浮かぶ、白いアーマーを纏ったカツミ君はその右手を星界剣神へと向けていた。
『テメェの尺度でこいつらを計れると思ってんのか?』
『黒、騎士ッッ!!』
『そりゃ無理だ。なにせ、ジャスティスクルセイダーは俺が認めた地球を守る戦士、なんだからな』
プロトワンからトゥルースフォームへと変身を切り替えていた彼はその掌を閉じた瞬間、重力で拘束されている星界剣神の背後に巨大なワームホールが現れる。
ワームホールの先に見える星が瞬く宇宙と星界剣神を背景に、彼はこちらへと振り向く。
『止めは任せたぞ、ジャスティスクルセイダー』
「……! うん!!」
ここで社長の作戦と、彼の意図を察した私達は即座に最高火力———必殺技の使用を選択する。
「社長!!」
『うむ、ファイナルウェポンの使用を許可する!!』
社長の許可が下りたことでジャスティスロボの肩に大型のキャノン砲が転送される。
足裏、かかと部分から地面にアンカーを突き刺し、固定したところでエネルギーを砲台へと重点させていく。
「引導を渡してやる」
照準は重力の檻で動けない星界剣神。
この面倒な戦隊は、今確実に始末する!!
それが、ある意味で彼らのためにもなる!!
「発射!!」
収束されたエネルギーが解放、二筋のビームとなって星界剣神のコアへと直撃する。
攻撃は直撃だけに留まらず、その巨体をワームホールへと押し込み———地球外へと追放させる。
『が、ああああああ、あ……あ、あああ……!?』
モータルレッドの最期の叫び。
苦痛と恐怖によるそれは、次第に悲しみを思わせるようなソレへと変わっていく。
『……洗脳が解けた』
「コスモちゃん?」
『クソ、胸糞悪い。用済みになったらその最期すら見届けないのか……』
……。
なんとなくコスモちゃんの言いたいことは分かった。
ルインも倒さなくちゃいけないけど、いつか星界怪人の背後にいたなにかとも戦わなければならないのかもしれない。
そう予感していると、瓦解していく星界剣神を映し出すワームホールが消えていくその最期に———、
『あ り が とう』
モータルレッドの、これまでの憎しみと激情に駆られたそれとは異なる、優しさと悲しみに満ちた声が聞こえた……ような気がした。
幻聴かもしれない。
あいつらはいくつもの星と人々の命を奪った奴らだ。
だけれど、それでも奴らのことは忘れないようにしよう、と私は思った。
「……社長。ヒラルダとイエローは?」
『カツミ君が追っている……が、風浦桃子を人質に取られている今、捕獲するのは難しいだろうな』
「……」
とりあえずは目下の危険勢力の星界戦隊の半数以上を排除できただけ十分か。
モータルイエローも、自分から進んでなにかを破壊するような奴ではないだろうし、それほど危険視するほどでもない。
兄さんが死んだ。
ジャスティスクルセイダーの巨大ユニットの一撃により宇宙へと飛ばされ、その末にレッドと共に消えてしまった。
言葉はなかった。
ジャスティスクルセイダーへの憎悪もない。
グリーンとレッドの死を見届けることができたんだ。
むしろ、私にできなかったことをやってくれた彼らには逆に申し訳のない気持ちでいっぱいだ。
……あるのは胸を締め付けるような悲しみと、なにもできなかった自分への怒り。
私は結局、なにもできなかった。
兄さんを助けることも、狂った仲間達を元に戻すことも止めることもできなかった。
「……」
「いなくなっちゃったわねぇ」
ワームホールが消えた場所の近く。
暗い路地で地面に膝をつき、どうにもならない現実に打ちのめされている私の肩にヒラルダの手がのせられる。
「ヒラルダ。私は、これからジャスティスクルセイダーに捕まる」
「殺されちゃうかもよ?」
「……どうでもいい。もう、兄さんも、仲間もいないなら……私なんて……。あんたはどこにでも行きなさい。一応仲間だったから、逃がす時間くらいは稼いであげるわ」
ジャスティスクルセイダーは自分を殺さないのは分かっている。
奴らは昔の、狂う前の私達と同じで正義を志していた戦士達だから。
「まだ捕まっちゃ駄目よ。だってまだまだ貴方には利用価値があるもの」
「え……」
ヒラルダの身体を星界エナジーが包み込む。
それは肩に手を置かれた私も包み込み、私達は今いる場所とは別の場所に転移する。
「ここって……」
「私の船。いやー、飛ばされた星界剣神が地球の近くでとても助かったわ。おかげで回収も楽になる」
「回、収?」
ヒラルダの船。
いや、この前に私達を訪ねてきたものとは違く、小型船などとは比較にならないほどに大きく、奥には星界怪人が培養されたケースもある。
これまでなにかを企んでいることには気づいていたけど、拠点すらも誤魔化しているだなんて思いもしなかった。
「えーっと、座標はっと……」
船が動き出し、移動を始める。
混乱した私に構わず進んでいった船は地球から少し離れた宙域で停止する。
「これは……星界剣機の、残骸?」
「そうそう。ついさっき破壊されたものよ」
なんでこんなところに。
まったく意味が分からない。
「狙いは、なに……?」
「貴方達の星界“核”」
「ッ!!」
一瞬で頭の中が怒りに染まった私は銃をヒラルダに突きつける。
奴は大して気にした様子もなく宇宙船を操縦しているが、こっちはそれどころじゃない。
「私達が負けることが分かっていたのね!!!」
「それはお互い様でしょ? 貴女も自分たちが勝てないことを分かっていたはず。今更、イライラするのはやめてちょうだいな」
確かにそうだけど……!!
そうだけれど……それなら……。
「私も、ちゃんと殺してよ……」
「……」
ヒラルダに向けていた銃を床に落とし、膝をつく。
死ぬなら仲間達と一緒が良かった。
あの場で私も一緒に殺されていれば、こんなみじめな気持ちにならなくて済んだのに。
「貴女のお兄さんのことだけど」
その場にしゃがみこんだ私に先ほどと変わらず声音で話すヒラルダ。
「ほら、貴方のお兄さんだけ蘇らなかったでしょう?」
「……どういう、こと?」
兄はブルーの射撃で胸を貫かれても、代わりの肉体がやってこなかった。
それは、まだ兄さんが活動できるからだ。
そもそも兄さんはもうこの宇宙の藻屑になって……。
「ねえ、見て見てー」
「? ……ッ!!」
ヒラルダがモニターに映し出した映像に信じられないものが映り込む。
それは、星界剣機から取り出された兄さんのポッド。
死んだように眠っている兄さんに、私はただただ呆気にとられた顔をするだけだった。
「私が助けておいたの。もーっと感謝してくれてもいいのよ?」
「兄、さん……」
意識は戻らなくとも生きている。
嬉しく思ってしまう反面、いっそのことレッドと一緒に……と思ってしまう自分が情けない。
「目的は……」
「んー?」
「本当の目的は、なに? 星界戦隊をジャスティスクルセイダーに潰させてまで、なにをしたかったの?」
「ふふっ」
不敵に笑って前を向き直ったヒラルダ。
すると船の前に、赤、青、黄、緑、桃の光を放つ五つの光の球が現れる。
「星界剣機に秘められるコア。ふふふ、取り出すには破壊するのが一番手っ取り早いからね」
「まさか、最初から……」
「ええ、その通り」
ヒラルダが手を伸ばすと宇宙空間に浮遊していた五つの光り輝くコアが引き寄せられる。
透過するように宇宙船の窓を通り抜けたコアは、ヒラルダが手にしていた禍々しい色のバックルに吸収され———その姿を変質させる。
「あは……はははは!!」
「ヒラ、ルダ?」
「あぁ、やっとだ。これでやっと私の全部が出し切れる!! もう絶対に無視なんてさせない!! させてたまるものですか!!」
生物的なフォルムから星界チェンジャーに近い、機械的な見た目。
それを掲げた彼女はこれ以上になく楽し気に———涙を流しながら、バックルを腰に装着させた。
『
「カツミ、私は貴方の心に残る毒になりたいの」
不気味な音声と、光が溢れる。
ヒラルダはこの状況の為に私達を利用していた。
奴の言う通り、それは私も分かっていたことだ。
でもこいつは、私を生かしてなにをさせたいのだろうか。
ほんの少しだけ、私はこいつの行く末に興味を持ち始めていた。
星界戦隊との戦いはこれにて終了となります。
ほぼほぼジャスティスクルセイダーの戦力強化イベントみたいなものでした。
スーパージャスティスロボの見た目のイメージはSRXが割かし近いかなと思います。
最新話に合わせて、外伝の方も更新いたしました。
『となりのホムラくん 3』
『となりのホムラくん 4』
外伝登場キャラ、ハイル視点のお話となります。