追加戦士になりたくない黒騎士くん   作:クロカタ

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お待たせしてしまい本当に申し訳ございません……!!

今回はサニーの視点でお送りします。


※後半部分に特殊タグが誤作動(?)のようなものを起こしてしまうので、本文のものから特殊タグ部分を除き、後半部分に移しました。
本編には影響の方はないのでご安心をー。



燃えよ漢女

 まさかアズがこんな強引な手を使ってくるなんてね。

 私が知る彼女はもうちょっと慎重だったけれど、やっぱり状況が状況だし調子づいちゃったと考えるのは自然かしらね?

 どちらにしろアズは暴走している。

 地球怪人というアンチ星将序列を持ち出してきたのだ。

 

「貴女、お名前は?」

「えっ、此花(このはな)灰瑠(はいる)、です」

「いい名前ね!」

「あ、ありがとうございますぅ!!」

 

 それにいい返事!!

 後ろでイレーネちゃんに守られている女の子。

 カツミちゃんの同級生で隣の席にいたというそこはかとない甘酸っぱな青春ムードを感じさせる此花灰瑠ちゃんを守らなくちゃならない。

 

「その子、別に特別な力はないわよ?」

「あら? 貴女も随分と目が節穴ね」

 

 なーんも分かってないわねアズ。

 特別だとか普通だとか、そういう区別はあってないもの。

 

「この子には特別な力はない? 全くもって分かってないわ。いい? どの宇宙でも、どの星でも、どの時代でも、どの瞬間でも———恋する乙女は皆、特別なのよ」

「きっっっも」

 

 本当に気持ち悪そうな顔をしないでほしいわ。

 

「イレーネちゃん」

「なんだ」

「まだゴールディにバレたくないから、私とこいつらを切り離せる?」

「できる」

 

 イレーネちゃんが口元を覆うように巻いていたマフラーに指をかけ、隠していた顔半分を外気に晒す。

 軽く息を吸った彼女をみて、そうはさせまいと動き出そうとする惑星怪人アースだが、動き出す前に私が撃ち込んだ杭が突き刺さる。

 

「もうちょっと待っててちょうだいね。これからいくらでも相手してやるから」

 

 白煙を放つ杭打機。

 またの名を“パッションバンカー”を掲げる。

 

「フッ、この“怒々好(ドドスコ)愛(ラブ)注入銃(ちゅうにゅうじゅう)”に恐れ慄いているわね」

『“パッションバンカー”だ化物。武器にまで変なルビふらせんな』 

 

 軽口を叩きながら改めて敵を見る。

 惑星怪人アース。

 たった一体で星を食らいつくすことさえ可能な危険な怪人ね。

 まったく、地球のオメガは相当えげつない能力を持っていたことでしょうね。

 

「anataga(貴方が) hosii(ほしい)」

 

「soumotometa(そう求めた)watasino(私の)kokoroha(心は)」

 

「kourinomeikyuheto(氷の迷宮へと)sugatawokaeta(姿を変えた)」

 

 ハイルちゃんの両耳に手を当てながらイレーネちゃんが歌う。

 透き通るような声が響き、私とアズたちをイレーネちゃんの能力で作り出されたフィールドの中へと閉じ込めてくれる。

 

「綺麗ねぇ」

 

 作り出されたのは凍てつくような氷に包まれた銀世界。

 さすがの能力に舌を巻きながら眼前の怪人たちを見る。

 

「さぁて、思う存分にやってやりましょう。運動するの久しぶりなのよね」

「「「……!」」」

 

 惑星怪人から炎が噴き出る。

 私から吸い取った恒星の力———それらは周囲の氷を溶かしていく。

 そのまま炎を纏いながらこちらへ近づこうとしたところで、その体は一瞬にして私が打ち出した杭が突き刺さる。

 

「今のが見えなかったならやめておいた方がいいわよ?」

「……! ァ、アァス」

「ふぅん。再生力はそこそこあるようね。それにパッションバンカーから打ち出した杭のエネルギーも吸収してる……」

 

 徐々に突き刺した杭が体内に取り込まれていくのを目にして凡その能力の検討をつく。

 まさしく私への対策のために造られたような怪人ね。

 なら、中途半端な攻撃はエネルギーを与えるだけってことか。

 

『ま、消し去るのは簡単だろ』

「その気になればね。でも相手はアズよ。多分、あの惑星怪人は捨て駒。今までの個体も含めてね」

 

 正確に言えば、カツミちゃんが一番最初に戦った当時マグマ怪人と呼ばれた彼はプロトタイプみたいなものだろうけど。

 

「この子たちはより扱いやすくした品種改良版ってことかしらね」

 

 自我を薄く、それでいて操りやすくした恐怖を抱くことのない量産型。

 静観している私にしびれを切らしたのか三体同時に襲い掛かってくる。

 

「ちょっと能力を見ておきましょうか」

「ガァァ———、ガッ!?」

「もう串刺しにしてるけど」

 

 三体の内の一人が空中でお腹に無数の赤熱した杭を打ち込まれる。

 この攻撃を見切れない時点で大した相手ではないけれど……って、考えている場合じゃないわね!

 

「ガァァ!!」

「アァァ!!」

『触れればまた力を吸収されるぞ!』

「ノープロブレムゥン!!」

 

 あえて見逃した二体が落下と同時に放った視界いっぱいの溶岩を右腕で薙ぎ払う。

 同時に間近にまで接近し私の力を吸収しようと掴みかかってきたところで、逆につかみ返しそのまま無造作に地面へ叩きつけてやる。

 大地が裂け、岩塊が宙へと舞い上がりながらもさらにアースを振り回しもう一体へと放り投げる。

 

「ほぉっら!!」

「アァァス!!」

 

 迫る味方を殴るようにしてどかしたもう一体のアース。

 私の力———恒星の熱量を籠めた拳を突き出してきたが、私はそれを軽く突き出した左の掌で受け止める。

 それだけで熱風が吹き荒れるが、私にとってはこの程度慣れたもの。

 

「!!?」

「ちょっと嘗めすぎじゃない? 私(太陽)相手に」

 

 ふりほどかれないように拳を握り返す。

 そのまま思い切りのけぞった私は———ものすごぉく勢いをつけた頭突きをアースの頭部へと叩きつける。

 ガゴンッ!! という砕ける音と共にアースの頭部の半分が吹き飛ぶ。

 

「あら? 綺麗な戦いをご所望だった?」

「……ッ」

 

 私が手を握っているせいで吹き飛ばされずにいたアースが、その無機質な宝石のような瞳に微かな怒気を宿らせる。

 吹き飛んだ頭がすぐに再生しているわね。

 こういう不死性も地球産怪人の厄介なところね。

 

「さあ、強く打(ぶ)つわよ」

 

 アースの腕を掴んでいる右腕、それに取り付けられた変身道具“パッションバンカー”に手を添える。

 長方形型に変形したヴァルゴがはめ込まれたアタッチメントに隣接するボタンに指を添え、技を発動させる。

 

L E G A C Y

「伝 説 一 頁!!」

 

 軽快に鳴り響く地球のジャパニーズシャミセン。

 心地い音程を響かせるメロディに合わせパッションバンカーのスロットが回る。

 

B?N

  ARCTURUS

    SPICA

   REGULUS

  ARCTURUS

    SPICA

   REGULUS

  ARCTURUS

    SPICA

   REGULUS

  ARCTURUS

    SPICA

   REGULUS

B?N

 

 もう一度指を添え認証を繰り返すとスロットが停止———パッションバンカーが赤い光に包まれていく。

 

『伝説一頁(レガシー) Ⅰ(ワン)!!』

 

『それは天(そら)を支える巨人(きょじん)の記憶(きおく)!!』

 

『ARCTURUS(アークトゥルス)!!』

 

 赤い光の危険度を悟ったのか、その場を逃れようとするアース。

 それに構わず私は右手を離すと同時に光り輝く右拳をアースの腹部へと叩き込み、同時に襲い掛かろうとしていた他の二体諸共吹き飛ばす。

 眼前の大地が間欠泉のように吹き上がり薙ぎ払われていく。

 

「……ちょっとやりすぎちゃったかしら?」

 

 衝撃が治まった時には氷の銀世界は、溶岩と黒く焼き焦がれた大地が広がる地獄みたいな様相へと変わり果ててしまっていた。

 手加減はしたつもりだけど、やっぱり押さえないといけないわね。

 

『おい、まだ終わってねーぞ』

「……そのようね」

 

 変わり果てた大地の中で立ち上がろうとする三体の怪人。

 一応かなりのダメージを受けているようで再生速度も遅くなっているけど……それを含めても凄まじい生命力だ。

 

「吸い取ったエネルギーの放出。肉体変化……なるほど、惑星怪人と言ったものね。カツミちゃんはよく地球を壊さずにこいつを片付けられたわね」

 

 星食らいの怪物———それが惑星怪人の真の力。

 地球に出現したこの怪人をカツミちゃんが始末できたことは、本当に驚嘆すべきことだ。

 

「ガっァ……」

「ウゥ……」

「ギィ……」

 

「ん?」

 

 そこで再生を行っていた三体の惑星怪人に異変が起こる。

 普通に元の姿に再生するかと思いきや、不自然な脈動を繰り返す。

 

『おい、サニー。あれは……』

「本当に凄まじい怪人ね」

 

 溶岩のように形を崩した人型の三体は混ざり合い、三つの顔に三対の腕を持つ三面六臂の怪人へと変貌する。

 

「名付けるなら合成怪人アシュラってところかしらね! 友情感じちゃうわ!」

『笑ってる場合か!! とんでもねぇ力だぞ!!』

「ヴァァァ!!」

 

 作り出された空間が合体したアース———アシュラの力により歪む。

 その身から発せられる豪炎は地上だけではなく空気すらも歪ませていく。

 ……一つの都市なら一瞬で崩壊させてしまうほどの熱量ね。

 

「どちらにしろ危険ってことには変わりないわね。ここで始末するわよ」

 

 このまま放っておけばイレーネちゃんの作ったこの空間を壊してでかねない。

 六本の腕にとてつもない熱量の光球を作り出したアシュラがその場を跳躍しながらこちらへソレを投げつけてくる。

 

「手数が増えたわね。手だけにね!!」

『つまらねぇ冗談言ってねぇで撃ち落とせ!』

 

 パッションバンカーから杭を放ち光球を撃ち落とす。

 絶え間なく投げ込まれるそれを対処しながら、今度こそアシュラを始末するための必殺の一撃を発動させる。

 

L E G A C Y

「伝 説 一 頁!!」

 

 スロットが回転、停止。

 先ほどとは異なる力を発動させる。

 

『伝説一頁(レガシー) Ⅱ(ツー)!!』

 

『それは勇者(ゆうしゃ)の前(まえ)に立ちはだかる獅子(しし)の記憶(きおく)!!』

 

『REGULUS(レグルス)』

 

「いくわよぉぉぉぉ!!」

 

 青色の光が右拳へと宿り、雄たけびと共に空から落ちてくるアシュラを見上げる。

 空間を破壊しない! 且つ確実に始末するために一点集中!!

 

「ぬっぅぅぅん!!」

 

 接触に合わせ大きく振り回した拳がアシュラの胴体を捉える。

 拳が完全に直撃したことを感覚で理解し、その場で回転しながらエネルギーを叩きこみ続け———そのまま拳を天に振りかざすようにエネルギーを解放する。

 

「奥義(フィニッシュ)! 漢気衝撃(オトコギインパクトゥッ)!!」

『いやだっせぇ……』

 

 アシュラの身体を貫通する青い閃光が空へと舞い上がる。

 それが曇天がかった空を打ち払い、雲一つない青空へと変える。

 太陽の光が降り注ぐ中で拳を空へと突き上げた私の背後に、演出用に用意しておいたモニターが映し出される。

 

B?N

恋(こい)迷(まよ)ひても

道筋(みちすじ)照(て)らすは

 

漢(お と) 女(め) 道(ウェイ)

 

B?N

 

「フッ……決まった」

 

 残心とも言える“漢女(おとめ)川柳(せんりゅう)”の発動を確認し、拳を下ろした私はアシュラの消滅を確認する。

 

『その後ろのエフェクトのやつ本当に必要か? てか五七五でもなんでもねぇよな?』

「勝負とはノリがいい方が勝つ―――地球の格言よ」

『いい加減に黙らねぇかなぁ……こいつ』

 

 ヴァルゴの愚痴を笑って受け流していると戦いが終わったことを確認したイレーネちゃんが作り出した空間を解除させてくれる。

 元居た路地裏に戻ると、その場にはイレーネちゃんに後ろから抱きすくめられている“此花灰瑠”ちゃんがいた。

 

「終わった? 六位は始末した?」

「とっくに逃げられているわよ。あの子、実力隠しているから」

 

 だけど今日のところは引いてくれたでしょうね。

 あの子もバカじゃないし、私を正面から相手どろうとすることもないだろう。

 

「さて、と」

「っ、あ、あの……」

「心配しないで。私はカツミちゃんの知り合いよ」

「穂村君の……」

 

 まさかアズがこの子を狙うだなんて思いもしなかった。

 この子は正真正銘の一般人。

 カツミちゃんと友人関係があっただけの女の子だ。

 

「なにが起こっているんですか? お母さんも友達も私のことを忘れて……もしかしたら穂村くんも……」

「いえ、彼はちゃんと覚えているだろうから安心して」

 

 アズの認識改編。

 その強力な能力はエナジーコアを持つ者には効きにくい。

 効きにくいといってもシロちゃんやレオちゃんのように覚醒したエナジーコアに限定される話だけど……いえ、カツミちゃんに限ってはエナジーコア関係なしにアズの認識改編の影響を受けていないのかもしれない。

 

「本当はすぐにカツミちゃんに連絡したいけど……」

「ん、私が送っていく?」

「貴女はそのまま捕まりにいきそうだから駄目に決まってるでしょ……!!」

 

 なぜに期待を込めた眼差しで見てくる。

 でも、今のハイルちゃんの状況をなんとかできるのは同じ認識改編を有しているアルファちゃんだけなのだが……うーん。

 

「ここでこの子をジャスティスクルセイダー本部に預けるのはちょっとまずいわね……」

 

 先ほど、アズと会話して分かったことがある。

 多分、アズはあの子(・・・)の存在を認識することができていない。

 恐らく、指摘した程度では違和感すら抱くことのできないほどの強烈なものだ。

 これは間違いなく今後、重要なカギになってくるはず。

 

「だからこそ、不用意に注目させるわけにはいかないわね……」

 

 恐らく、アズはまだハイルちゃんを人質にすることは諦めていない。

 それほどまでにこの子の存在はカツミちゃんにとって大事だし、彼女の代わりになるような人はいない。

 だって、人質の候補になるであろうジャスティスクルセイダーの三人娘ちゃん達はあまりにも戦闘力と個性が強すぎるからだ。

 下手をすれば人質にとったであろうアズが痛いしっぺ返しを食らうことになる可能性だってある。

 

「よし。此花灰瑠……ハイルちゃんって呼んでもいいかしら?」

「え、か、構わないですけど……」

「申し訳ないけど、貴女はうちで匿うわ。今、貴女をカツミちゃんの元に向かわせわけにはいかなくなったの。いずれはジャスティスクルセイダー本部に貴女を送り届けるけど今は……私達の保護下にいてくれないかしら?」

 

 私の言葉に目を丸くしたハイルちゃん。

 先ほどまでアズという悪意に晒されていたのだ、むしろ私たちの存在を怪しまないはずがない。

 

「……今まで私、記憶を失っていたんです」

 

 そう考えているとハイルちゃんがぽつり、とそう口にした。

 

「穂村君は私のために記憶を消した。それが私を助けるためなのは分かっているんです。だから、記憶が戻った後も穂村君の迷惑にならないようになるべく普通にふるまうようにして……」

「……」

「今までずっと蚊帳の外だったけれど、今……彼のいる世界に踏み込めるような、そんな気がするんです」

 

 震えながらも力強い言葉を口にする彼女に自然と口元が綻ぶ。

 人の意思の輝きはどんな光にも勝るものだ。

 太陽の化身だからこそ言える。

 私は、こういう生きている人の生きる輝きが大好きなのだ。

 

「もう、我慢するのは終わり。今度は私から会いにいきます」

「決まりね」

 

 意思は決まったようなのでこの子を安全な場所に連れて行こう。

 ジャスティスクルセイダー本部以外の安全な場所———といえば非常に限られているが、私達にはとっておきの隠れ家がある。

 

「ジェムちゃんに新しい入居者が来ることを知らせておこうかしら」

「私、イレーネ。黒騎士だ」

「よ、よろしくお願いします? 黒騎士くん?」

「黒騎士だ。黒騎士さんでもいいぞ」

「は、はぁ?」

 

 ……でも大丈夫かしら?

 ジェムちゃんはともかく他の強烈な面々にこの子は馴染めるのだろうか?

 

 


 

以降、あとがき部分です。

前書きの通り、本文中の特殊タグ込みのものを後半部分へ。

文字が消えたりする特殊タグなのですが、反映されたりされなかったり不安定なのでこちらへ移します。

 

B?N

恋(こい)迷(まよ)ひても

道(みち)筋(すじ)照(て)らすは

 

漢(お と) 女(め) 道(ウェイ)

 

B?N




ノリがいいサニーの戦闘回でした。
……。
……、……。
漢女川柳ってなんだ……?



今回の更新は以上となります。
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