今回はスマイリーに囚われたある少女の視点からです。
私の自由は怪人に捕まったその日から消え失せてしまった。
怪人と言う恐ろしい存在が人間を襲い、都市を蹂躙した。
日本だけじゃなく世界規模で怪人は暴れまわり文字通りの世界の終わりが近づいた。
そこに例外はなく、誰もが怪人の脅威に晒されたくさんの命が摘み取られた。
だけど、普通に死ねたことは幸運なのかもしれない。
現実に絶望して生きる必要もないし、私のように怪人にされるかもしれない恐怖に怯えて過ごす必要もないのだから。
『僕はスマイリー!! 君たちは幸運だ!! こんなわたしに捕まえられて!!』
私たちを捕まえた怪人は着ぐるみのような生々しい頭をしたピエロのような怪人だった。
スマイリー、流暢にそう言葉にした怪人は、恐怖に怯える私たちにそう話しかけてきた。
逃げ出そうとする人もいた。
錯乱して暴れだす人もいた。
だけれど、その人たちは途端に狂ったように笑いだして、喉を掻きむしって息絶えた。
その光景を目の前で見せつけられ、心を折られてしまった私たちは抵抗する力もないまま、スマイリーに囚われた。
『お前達には笑顔でいてほしいんだ!!』
無理やり連れられた先にあったのはハチの巣状に作られたなんらかの施設。
監獄のようにいくつもの部屋が作られたその一室に入るように命じられた私は、怪人に捕まったとは思えないその小奇麗さに驚いた。
真っ白な内装にベッドに机といった家具に、シャワーにトイレまで備え付けられている。
牢屋のような場所を想像していた私は小奇麗すぎるその部屋が不気味に思えて仕方がなかった。
決まった時間に食べ物も水も与えられ、服もシャワーも、果ては娯楽用品など生活に必要ななにもかもが与えられた。
その独房の中では私たちは自由にさせられていた。
ただ一つ、外に出られないということ以外は。
一か月、怪人に怯えながらその暮らしを強制させられた
他の独房から聞こえてくる声を聞けば『怪人は実はいい存在なんじゃ』だとか『外よりも安全だ』なんて言っている人も出てきた。
私は一か月経とうとも得体のしれない不気味さに苛まれてそんなことを考えてもいなかった。
だって私の家族は……おじいちゃんもお父さんもお母さんも、お姉ちゃんも怪人に殺されちゃったから。どうして大切な家族を殺した怪人を良い存在なんて見れるんだろうか。
まるで餌を与えられるだけの家畜のような生活。
そんな意味不明な生活の本当の恐怖を知ったのは、一か月を過ぎてすぐ後だった。
『ッ、なんだよ!! は、離せよ!! 俺をっ、どこに連れていくんだよ!!』
それは、夜中の出来事だった。
誰かが独房から連れ出されている。
その声に目を覚ました私が、扉の―――不自然に空いた四角い隙間から外を見ると、独房前の広い空間に怪人達に無理やり連れだされた男の人が無造作に転がされている光景が映り込んだ。
『はぁい、ご苦労様。連れてきてくれてありがとうねぇ』
『ひっ、怪人!!?』
『スマイリーって呼んでよォ。ずっといい暮らしをさせてあげたでしょう?』
私たちを閉じ込めた怪人、スマイリーは生々しい着ぐるみの頭で男を見下ろす。
『欲しいものはあげたでしょ? 飢えることもなかったでしょ? 心休まる夜を過ごせたでしょ? ———なら、もう思い残すことはないよねぇ?』
『ぁ、な、なんで……っひ、あ、ひゃ……はははひゃははひゃあはははは!!!』
狂ったように男が笑い出す。
その表情を恐怖に歪め、それでも無理やり笑顔を作った男にスマイリーは恍惚の笑みを漏らした。
『ああ、その希望が絶望に変わる笑顔!! 人間っていいなぁ人間っていいなぁ!! こんなに素敵に笑ってくれるんだから!! ここまで
『あはっ、ははははは!!』
『人間が家畜を育てる理由がよく理解できたよ。あぁ、これは僕もニンマリ笑顔になっちゃう!!』
スマイリーの言葉で、私たちはようやく自分たちが怪人の道楽で生かされていただけだと理解できた。
深い意味なんてなかった。
スマイリーは私たちを見て遊んでいたんだ。
希望を抱かせて、絶望に叩き落すため。
『さぁて、ここから仕上げだ』
スマイリーの手に赤いなにかが握られる。
それは、他の怪人に取り押さえられた男に押し付けられる。
『我が主の
『はははは! がっ、ああああははははは!!?』
男の笑みの籠った悲鳴が響く。
結晶は男の身体にめり込み、煙を吹き出し———その煙が晴れた瞬間には男の姿は人間ではなく、昆虫と甲殻類を混ぜ合わせたような醜悪な怪人へと変わり果ててしまった。
『み んな 笑顔が い ちば ん』
それからは真綿で首を絞めるような地獄の毎日だった。
一人、一人と怪人に無理やり変えられる順番を待つ日々。
いつ自分が、隣で言葉を交わしてきた人間が怪人に変えられるか。
独房での暮らしが充実していることが、逆に毒にすらなった。
自棄になる人。
いつ怪人になるか分からないストレスでおかしくなる人。
耐え切れず命を絶ってしまう人。
私も、もう限界だった。
ついさっきまで話していた人が、起きたらいなくなって怪人に変えられて。
私たちの“価値”を確認するかのように見回ってくるスマイリーの醜悪な笑顔を向けられて。
誰の助けもこない生き地獄で、私はもう生きる気力すらも失いかけていた。
「……」
そして、私の順番がやってきた。
硬く閉ざされた扉が開け放たれたことで暗い独房に外の明かりが差し込む。
怪人が無気力な私の両腕を引きずり、独房から連れ出し———スマイリーの前に差し出される。
「おやおやお前は大分前に捕まえた人間だねぇ」
「……」
「最初に捕まえた人間達は怪人なのに、君は幸運だ」
スマイリーが頭を掴み無理やり私と視線を合わせる。
目を合わせないように眼を瞑るが、私の頬をスマイリーが平手で殴り、無理やり視線を合わせられる。
頬の痛みと、口の中に広がる血の味よりも、そのぎょろりとした大きな瞳ににらまれ、枯れたはずの喉から引きつった声が溢れ出る。
「ひっ……」
「うぅん、いい感じに恐怖が溜められたねぇ。あぁ、恐怖に歪められた笑顔は大好きなんだぁ。見える希望があるから、その希望に裏切られた人間の顔はすごくイイ!!」
「ぁ、あ……ぁ」
もう駄目だ。
耐えられない。
ここで、私は人間じゃなくなるんだ。
「さあ、早く君の笑顔を見せてく―――」
スマイリーが私に掌を向けようとした———その瞬間、背後で轟音が鳴り響いた。
その音にスマイリーは一気に不機嫌になり、私の頭を乱暴に離した。
「なんなんだよ、こんな時に」
続く轟音。
何かを殴り、砕き、潰すような音が連続して響く。
ここに閉じ込められてきて一度も聞くことのなかった異様な音に、この場にいる怪人も戸惑うそぶりを見せ始める。
「人間たちの襲撃かな? まあ、あの程度の奴らぼくだけでも―――」
その時、なにかが闇から壁を破壊する音と共に吹っ飛んできた。
地面に叩きつけられ、ぐしゃりと生々しい音を響かせたソレは全く勢いを衰えずに壁に激突する。
「……は?」
それは怪人の死体。
関節が逆向きに折れ曲がり、胴体が破裂し、壁に叩きつけられた衝撃で潰されたソレにこの場にいる誰もが目を疑った。
「な、なんだ? っ!」
破壊された壁の奥———常闇からなにかがやってくる。
左手には細身の剣、右手に既に息絶えた怪人の首を鷲掴みにして引きずった人型の誰かは、その複眼で私と怪人を無機質に睨みつけた。
特撮の、仮面ライダーのような姿だ。
怪人……じゃない、体格的に男の人……?。
「久しぶりだなぁ、スマイリー。会いたかったぜェ」
底冷えするような声。
怒りの感情をこれでもかと詰め込んだそれにスマイリーを含めたその場にいる怪人たちは気圧されたように後ずさりする。
「……は、はは。わざわざ僕の前に出るとはとんだマヌケがいたもんだね」
「……」
「お前が誰だか知らないけど、気分がいいところを台無しにされたんだ」
スマイリーの力は人を無理やり笑顔にするもの。
それを食らってしまえばどんな相手も成す術はない。
咄嗟に声を上げようとするが、ここ数か月まともに声を発していなかったせいか、私の喉からはかすれた音しか出ない。
「心臓が止まるくらいに笑わせてぐちゃぐちゃに引き裂いてやる!!」
『
『
……あれ? 発動しない?
彼が腰から引き抜いたカードをベルトのようなものに入れたように見えたけれど……。
「ど、どういうこと? わたしの能力が、僕になにをした!?」
狼狽するスマイリーの声を無視し、彼が一歩踏み出す。
「や、やれ! あいつを殺せ!! 殺すんだよぉ!!」
それだけで大きく動揺した怪人が取り乱しながら彼へと襲い掛かった。
三十を優に超える怪人が殺到する。
その中には人間から怪人に変えられた人たちもおり、その絶望的な実力差に思わず目を背けてしまう。
『ガっ、アァァ!!?』
『ヒィィ!?』
「え」
だけど、聞こえてきたのは怪人の怯えたような声だけ。
もう一度彼がいる方を見ると、たったひとりで怪人の大群を圧倒している彼の姿が映り込んだ。
『ニ、ニンゲントハチガウゾ!!』
『ヤ、ヤメッ』
『ゲバッ!?!?』
左手の剣で怪人の身体をバターのように切り裂き、右手で胴体を穿ち、鷲掴みにした頭を握りつぶす。
あまりにも単純で、圧倒的な蹂躙。
攻撃すら受けていないのに装甲が悲鳴を上げるようにヒビが入っていくが、それに構わず彼は怪人を圧倒していく。
「すごい……」
信じられない光景だった。
私たちにとって怪人は絶対だった。
どうあっても倒せない不条理で、それを前にしたらもう諦めなくちゃならない。
だけど、あの人はそんなことお構いなしに怪人という“絶対”を打ち砕いてしまっている。
「ヒラルダ、やるぞ」
ベルトの側面から二枚のカードのようなものがひとりでに飛び出し、彼の前に浮遊する。
それを掴み取った彼は剣を逆手に持ち怪人を切り裂きながら、柄のカードリーダーのような部分にカードをスライドさせた。
【
【
【
状況にそぐわない軽快なメロディーが鳴り響き、逆手から持ち直した彼が剣を構える。
そして、彼の持つ武器に赤色と桃色のエネルギーのようなものがあふれ出す。
【
【二色! オーラ斬り!!】
その音声が鳴り響くと、彼を取り囲んでいた怪人がまるで彼に引き寄せられるように引っ張られる。
「ふんっ!!」
そのまま彼が円を描くように剣を横薙ぎに振るい、怪人の無防備な胴体を切り裂いた。
怪人が連続で倒され言葉も出ないけれど、それ以上に彼に倒された元は人間だった怪人の姿に驚かされた。
「……嘘」
彼の桃色の剣で切り裂かれた元は人間だった怪人は、まるで毒素を抜き出すように黒煙を放出させて元の人の姿に戻ったのだ。
人間にも戻らずに黒煙と共に跡形もなく消え去ってしまっている人はいるけど、それでも怪人にされた人が元に戻されている光景は衝撃的だった。
「……手遅れな人は駄目か。クソ」
なにかを小さく呟いた彼は、苛立つように舌打ちをする。
ものの数分であれだけいた怪人を倒してしまった彼は、スマイリーと、傍に控える怪人達を睨みつける。
「ようやく、テメェらだ」
睨まれたスマイリーは残りの配下の怪人へと喚き散らす。
「ッ、なにしてるんだい!! さっさと殺せ!!」
「デ、デスガ」
「よく見ろ!! ボロボロじゃないか!! 簡単に殺せるだろ!!」
怪人が同時に襲い掛かった……までは見えていた。
だけど、瞬きした時にはもうその二体の怪人の頭は消し飛んでいた。
「アピャ!?」
「ギビッ!?」
頭部を失い地面に倒れ伏すと同時に、一緒に襲い掛かっていた怪人にさせられた人が元に戻される。
残る怪人はスマイリー一体。
そこに絶望的な戦力差はもうなくなっていた。
「ヒッ!?」
彼は赤熱した右腕を軽く振りながら、こちらへ歩いてくる。
そしてスマイリーと呆然とする私の間で止まると……なぜか私の顔を見て驚く、
「……ハル?」
「え?」
今、私の名前を……?
数秒ほどこちらを見た彼は、そのまま背中を向ける。
「もう、大丈夫だ。よく今日まで頑張ったな」
「……ぁ」
彼から発せられた声はどこまでも優しくて、もうなにも感じないと思い込んでいた私の心を強く揺るがした。
泣き出してしまう私を守るように彼は前に踏み出した。
「……」
「な、なんだお前は、俺はお前なんか知らない!!」
上ずった悲鳴を漏らすスマイリーが、また掌を向けて能力を使おうとする。
だけれど、奴の笑顔にする能力は彼どころか私たちにすらかかっていない。
『ヒッ、アアアアァァァアアアア!!?』
スマイリーは背中を見せて逃げ出した。
その姿はものすごく滑稽で、あんなにも私たちを恐怖のどん底に叩き落した面影はない。
あまりにも無様な姿に呆気にとられたけど、次の瞬間にはとてつもない突風を発生させながら肉薄した彼の拳がスマイリーの胴体を打ち貫いたからだ。
「あ、が、い、嫌だ……ボクは、死にたく……」
一瞬の静寂。
スマイリーの命乞いともとれる呟きが口にされる。
捕まえた人たちにした仕打ちを思い出し、頭に血が上りかけたけど……彼はそれ以上の怒気をスマイリーへと叩きつけた。
「笑えねぇ冗談は終わりか?」
「アッ」
慈悲すら与えない彼に絶望の表情を浮かべたスマイリーは、貫かれた胴体を中心にして爆散した。
肉片すら残らず粉々になって消滅した奴の最後を見届けている彼の身に纏う桃色の装甲がぱらぱらと地面に落ちていく。
「……悪いヒラルダ、やりすぎた。おい泣くなよ……本当に悪かったって。……うん……うん? アイスクリーム食べたい? いや、さすがに無理……分かった! 分かったから泣くな!!」
どこかと連絡でもとっているのか、頭を押さえて何かを呟きながら彼はこちらを見る。
「捕まった人たちは無事か?」
「は、はい……」
私以外にここには捕まった人たちと……彼が怪人から人間に戻してもらった人たちがいる。
彼は周りを一通り見てから悩む素振りを見せる。
「……ひとまず、今できることをしておくか」
『
『
彼が腰から取り出したカードをベルトに差し込み、何かをする。
彼の傍になにか4つのモザイクのようなものが現れると、それは人の形になって現れる。
「ぶ、分身……?」
「あー、気にするな。全部俺だ」
「どういうことなの……」
ますます意味が分からないよっ!!
さすがにそんなツッコミはできなかったけど、彼以外の4人はそれぞれが別のカードを取り出してまた使おうとする。
今度は戦隊ヒーロー!?
青、黄、ピンク、緑の姿になった彼らは、どういうわけか身体を震わせながらポーズを取り始める。
「癒しの青き星雲!! リリーフブルー!!」
「星々の煌めき!! リリーフイエロー!!」
「清らかなる桃色エナジー!! リリーフピンク!!」
「豊穣万歳!! 緑の賢人!! リリーフグリーン!!」
「……お前ら何やってんの?」
突然の奇行に彼は分身した自分にそんな声を投げかける。
そんな声に分身たちはキレ気味に返事をする。
「「「「分身だから抗えねぇんだよ!!」」」」
「お、おう……」
いったいなにが起ころうとしているの……?
だけど、この人は怪人の仲間じゃないことは分かる。
不思議な力を持っていても、彼は私たちを守ってくれたし、この安心感は気のせいじゃない。
「それじゃ頼むぞ」
「青い俺は皆を癒す」
「黄色い俺はシールドだな」
「ピンクの俺は怪人の浄化か」
「緑の俺は食いモンだな」
それぞれが四つの色を持つ彼らが何か能力のようなものを発動した、その瞬間今日何度目か分からない信じられない光景が広がる。
まず一つ起きた変化が彼が全滅させた怪人の死体が、粒子と共に消えていったこと。
血で汚れた地面も、それどころか今いる場所そのものが綺麗に塗り替えられていく。
「空に、何かが」
ふきぬけの頭上を黄色いなにかが覆っていく。
まるで映画やアニメで見るシールドのようなそれは張り巡らされると、次に小さな地響きが起きる。
なんだ、と思い周りを見れば地面のコンクリートを貫いて成長した植物がいくつも現れ、あっという間に青々とした果実を実らせていた。
「……傷も、なくなってる」
気付けば、スマイリーに殴られた頬の傷が癒えている。
口の中を切った不快な感触もなく、それどころか身体の怠さも完全に消えてしまっていた。
「一先ずこれで大丈夫か」
分身を消した彼が周りを見て頷く。
本当に奇跡のようなことが起こってしまった。
「あ、あの、ありがとうございます」
「いや、それより君の方は大丈、ッ……!」
「どうか、しましたか? っ、きゃ!?」
いきなり抱えられてその場を移動させられた瞬間、空からなにかが落ちてくる。
突然のことにびっくりしたけど、また怪人が……。
「貴女は……」
「やはり、これは君の仕業か」
空からやってきたのは赤黒い鎧のようなものとボロ布を纏ったなにか。
見た目もボロボロで左腕もない誰かは、怪人の青い血に濡れた剣を地面に突き刺しながらこちらを見る。
「まさか、戦うつもりですか?」
「いや、違う。もう君とは戦うつもりも理由もない」
「そう、ですか。良かった」
彼が私を降ろして、構えを解く。
もしかして、知り合いなんだろうか。
「第二コロニーから援軍にやってきた怪人は全て排除しておいた。しばらく襲撃はない……はずだが、このシールドを見る限りいらない世話だったか?」
「いえ、ありがとうございます」
「……。気にするな」
怪人は来ない。
その事実に安堵していると、赤黒い人の視線が私に向いていることに気づく。
バイザー越しに向けられるそれにちょっと怯えながら彼の後ろに隠れる。
「その子は、まさか……」
「……ええ」
「生きて、いたんだな」
どういうわけか、声を詰まらせる赤黒い人。
だけど、すぐに視線を彼に戻すと、凛とした声を発する。
「一先ずここを離れるぞ」
「は? なぜ?」
「
「貴女が来る? まさか、ここでも……っ、分かりました」
彼がこちらを振り返る。
話自体はあまりよく理解できなかったけれど、彼が行ってしまうことは理解できた。
「今から、お前たちの身の安全を守ってくれる奴らが来る。ここならしばらくは食料も水も確保できるはずだ」
「怪人は……」
「あのシールドは怪人だけを阻むものだ。だから、ここにいれば安全だ」
「……」
私たちを守って欲しい。
助けてほしい。
そんな、思いがこみ上げるけどこんな地獄のような状況を救い出してくれただけで十分だ。
この人たちにはやるべきことがあって、私たちは邪魔になってはいけないんだ。
「ハル」
口を閉ざした私の肩に軽く手を置いた彼は、はっきりと私の名前を呼ぶ。
「怪人共は俺達がなんとかする。それまで諦めるな」
「はい……!!」
強く頷いた彼は赤黒い人に目配せをし、その場を跳躍し吹き抜けの天井から姿を消す。
残された私たちはその姿を見送ることしかできなかったけれど、正直今この時点でも夢のような出来事だと思えてしまう。
「なんで、私の名前を知っていたんだろう」
もしかしたら怪人が現れる前に会ったことがあるのかな。
しようと思えば聞けたけれど、なんとなく彼に聞こうとは思わなかった。
『生存者はいますか!!』
「っ」
彼と赤黒い人が出て行ってすぐに私たちのいるこの場にまた誰かがやってくる。
怪人ではない、大きな黒い人型のロボットのようなもの。
『生きている人がこんなに……』
『こんなことって、本当にあるんだ……』
いきなり現れた大きな人型の機械に怯える私たちだけど、その機械から聞こえる人の声に訝し気な視線を向ける。
もしかして、このロボットが彼がいっていた助けに来る人たち……?
その中の一つ———青いペイントが施されたロボットの胸の部分が開いて、中から誰かが出てくる。
「ハル!」
「……お姉、ちゃん?」
大きな機械から出てきた変なスーツを着たお姉ちゃんの姿に、呆然として、次に涙がこみあげてくる。
お姉ちゃんも同じなのか、泣きながら勢いよく私に飛びついて地面に倒れてしまう。
「よかったッ……もう、死んじゃったのかと……」
「私も、そうだと……」
もう死んでしまったと思っていた。
私ももう死んでもいいと思っていた。
だけど、あの人のおかげで私たちはまた再会することができた。
だから、今度こそは諦めずに生きよう。
彼に言われたとおりに、この絶望に満ちた世界でも希望があるのだから。
力はそこまでではないけど、応用性は群を抜いている桃騎士でした。
本来のルートでは怪人化したハルをブルーが倒してます。
そして、覚悟が決まりすぎているレッドとイエローが笑いながらスマイリーに特攻をかけて倒します()
今回の更新は以上となります。