追加戦士になりたくない黒騎士くん   作:クロカタ

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二日目、二話目の更新です。

平行世界編 7です。

今回はレックスさん視点でお送りします。


並行世界編 7

 私は星将序列10位、RED“X”(レックス)として黒騎士と戦い、敗北した。

 私はこの世界に必要のない異物だと、なにもする必要がない……と、それが分かれば死んでも構わないとすら考えていた。

 後悔に苛まれ続ける人生を終わらせて、死にたい。

 アオイやキララたちのいるところには多分行けないだろうけど、それでも死をまき散らすような真似をしていた私はいなくなったほうがよかったと、そう思っていた。

 

 だが、彼は私の意志とはお構いなしにこちらに歩み寄った。

 

 まさかあの少年が穂村克己本人だった事実に意表を突かれたが、それ以上に手を差し伸べられて安堵してしまった自分がいたことに驚いた。

 

 その手をとってしまおう。

 そんな甘い誘惑が私の脳裏をよぎったその時、私たちは渦に呑み込まれ意識を失った。

 

 次に目を覚ました時、そこは二度と見るはずがない景色がそこにあった。

 瓦礫が散乱し、破壊されつくした街。

 人どころか生物の気配すらも感じられないその場所に刻み付けられた破壊痕を、怪人によるものだと見間違うはずがなかった。

 第二位の仕業だ。

 私を別の世界に強引に移動させた奴が、また同じことを繰り返したのだ。

 

 それからの私の行動は早かった。

 まずは黒騎士に破壊された装備を最低限戦える状態にまで修理し、この世界に共に飛ばされたであろう穂村克己を探すこと。

 飛ばされる最中、彼の変身に用いるアイテムが取り残されたのを目撃していたので、一刻も早く彼と合流しその安否を確かめるべきだと判断したからだ。

 

 だが、こちらから探す必要もなく彼は見つかった。

 第一コロニー。

 忌々しいあの笑顔の怪人の根城で、彼は怪人を相手に蹂躙していたのだ。

 

『……』

 

 私たちにとっての悪夢の一つ。

 その場所に彼が、まるで当たり前のようにそこにいたことに。

 私の中の悪夢を、救うことのできなかった命を救っているその光景に声を発することができなかった。

 

『……私も、やるべきことを』

 

 第一コロニーの天蓋の上から、第二コロニーからやってくる怪人の群れを確認する。

 恐らく、第一コロニーの危機を知って、救援……いや、略奪しにきたのだろう。

 彼の邪魔をさせるわけにはいかない。

 私は大振りの剣を担ぎ、こちらに迫る怪人共を掃討しに向かうのだった。

 


 

「———ここまでが私が君と再会するに至った経緯だ」

「……なるほど、そういうことでしたか」

 

 穂村克己———カツミと合流した後、彼とヒラルダが寝床としている廃墟にいた。

 外の光も僅かに差し込まず、道具の明かりで照らされた部屋の中で、用意された椅子に腰かけた私の前で、彼は頷いた。

 

「身体は大丈夫ですか?」

「見てくれはボロボロだが、ほぼ無傷だ。左腕は……まあ、元々ないしな」

 

 世界を超える以前に私の腕は怪人にくれてやった。

 今は義手の換えも調達できないし、当分は片腕で戦闘しなくてはいけない。

 

「……すみません」

「謝るな。むしろ私からふっかけた戦いだ。満足こそすれど君を責めるつもりはない」

 

 本当に律義な子だ。

 戦っている姿はあんなに凶暴で荒々しいのに。

 だが、この礼儀正しい面も含めてこの子なのだろう。

 

「それでなんだが……」

「はい?」

「ヒラルダは、いったいどうしたんだ?」

「……」

 

 視線をソファーに向けると、カツミが気まずそうに頬を掻く。

 ソファーには身体から五色の光を放っているヒラルダが横になっており、その表情はどこか赤らんで熱っぽい。

 

「変身を解くとこうなってしまって……多分、俺のせいです」

「なにかしたのか?」

「ちょっと本気で動きすぎてこいつにかなりの負担をかけてしまいました」

「強化スーツが生身の人間の動きでこうなるってどういうことなんだ……?」

 

 少なくともここに吸い込まれる前はこいつは自分のベルトで変身する奴だったはずだ。

 それがどうしてこの短時間で、ベルトとして協力し合う関係になったのか。

 

「ふふふ、かつみくんのせいじゃないよ」

 

 と、ここでソファーのヒラルダがぼんやりと目を開け、虚空を見つめながらどこか熱っぽい声を発した。

 その声色ははっきりとしたものじゃなくて、どこかふにゃふにゃである。

 

「わたしがあなたの力に追いつけなかっただけ、だいじょーぶ、次はもっとうまくやるか……っ、かか……!」

「ん? ヒラルダ?」

 

 不意にバグったように震えだしたヒラルダが、バッと上半身を起こす。

 

「———っぶなぁぁ!!? あ、危うく心が尻尾ふるところだった……!!」

「い、いきなりどうした……?」

「カツミ君ッ!!」

 

 未だに顔色は赤いが意識はちゃんと戻ったヒラルダは勢いよくカツミを見て、その肩を掴む。

 

「今すぐ私を口汚く罵りなさい!!」

「はぁ?」

 

 いきなりなにを言っているんだこいつ。

 当然、カツミも呆気にとられた顔をしている。

 

「使えないバカスーツ、とかアホとかマヌケとか……! とにかく私がつけあがらないように口汚く罵りなさい!!」

「バカ言ってねぇで休め」

 

 付き合ってられないとばかりにヒラルダの肩を掴んで押し返し、そのままソファーに横にさせた彼は部屋に置かれていた毛布を彼女にかける。

 

「罵るわけねぇだろ。お前がこうなったのは俺のせいだ」

「で、でも敵同士だし」

「今は味方だと思ってる。少なくともこの世界ではな」

 

 そして、手慣れた手つきで濡らした布巾を額に乗せた。

 「つめたっ」と反応するヒラルダを見て、少し微笑んだ彼は近くの椅子に腰を下ろす。

 

「またお前を頼ることになる」

「……どうせ、私は変身する道具の代わりでしょ」

「———嘗めんなよ。俺はプロトもシロも、お前も変身するための道具だなんて思ったことねぇわ」

「……」

「お前が必要だ。ヒラルダ」

 

 傍目で見ているとドラマのワンシーンを見せられている気分になる。

 ドラマなんて百年近く見てないが。

 

「弱って後ろ向きなことを考えてる暇があったらしっかり寝てろ」

「……うん」

 

 そこで、大人しくなったヒラルダが口元まで毛布を被る。

 よほど疲労していたのかすぐに微かな寝息を立て始めたことを確認すると、彼は私へと向き直る。

 彼の真剣な眼差しを見て、なにを聞きたいのかを察した私は覚悟を決める。

 

「まずは、貴女のことを聞いてもいいですか?」

「……ああ」

 

 話さなくてはならない、だろうな。

 いや、隠すほうが今の状況的に駄目だ。

 この世界が私のいた世界と限りなく近い運命を辿るならば、私のことは彼に話さなければならない。

 

「私は、君のいた世界と異なる宇宙のアラサカ・アカネだ」

 

 語る、私のいた宇宙のことを。

 怪人が現れてから、地球が辿った運命のことを。

 私の宇宙には穂村克己が装着する黒騎士はいなかったことを。

 大雑把に要所だけの説明を聞いた彼は、考えを纏めるように腕を組みながら唸る。

 

「……なんて言葉をかけていいか」

「必要ない。むしろ困ってしまうからな」

 

 同情されるために言ったわけじゃなく、これからの話に必要だからいったようなものだ。

 だから、そんな顔はしないでほしい。

 

「あとは、私のことはレックスと呼んで欲しい」

「?」

「ここにもアカネがいるという理由もあるが……今更、元の名前で呼ばれるのに慣れてないからな」

「……分かりました」

 

 正直、アカネと呼ばれる度に心が揺らされるような気持ちになってしまう。

 心臓に悪いし、なにより私はRED“X”(悪人)でいた時間が長すぎた。

 

「私のことはもう終わったことなんだ。今、重要なのはこの世界の地球のことだ」

「ここは貴女のいた地球の過去、という可能性はないんですか?」

「どちらでも変わらないよ。少なくともこの世界で運命が変わったとしても、今の私には繋がっていない」

「……そういうこと、ですか」

 

 仮に私のいた地球の過去の時代だとしても、この場に私たちがいる時点で既に別の世界になってしまっているようなものだ。

 詳しい理論はよく理解していないが、こういうのを分岐とでも言うのだろう。

 

「重要なのは今日この日、君が第一コロニーを制圧したということだ」

「……やっぱりまずかったですか?」

「いや、むしろいい。よすぎるくらいだ」

 

 私たちが辿った本来の歴史よりはずっといい。

 

「本来は今日、第一コロニーを攻めるはずだったのはこの世界の私たちだったんだよ」

「……アカネ達ですか」

「ああ、不完全なスーツで戦う無謀者だよ。本来は多少(・・)の犠牲を出しながらも第一コロニーは制圧できた」

「……」

 

 多少、という単語に気づいて彼が顔を顰める。

 ああ、君が想像している通りだ。

 人質の半数は怪人に殺され、怪人化された人間も全員助けることもできなかった。

 そして———、

 

『おネェ、ちャん』

『は、る……いやだよ、そんな……ようやく会えたのに……』

『シ……な……せテ』

 

 怪人にされたあの子を自らの手で楽にさせて、アオイが心を閉ざした。

 そして、怪人の復讐にかられたアオイは怒りに任せて第二コロニーから横やりをいれてきた怪人達を殺しつくした。

 結果だけを言うならスマイリー、と呼ばれる第一コロニーの首領怪人を始末し、その後第二コロニーから押し寄せてきた怪人達も撃退することができた。

 勿論、その代償もあった。

 

「この世界の私たちは、戦わせるべきじゃない」

「……それは、どういう意味でですか?」

「この世界のカネザキ・レイマの開発した対怪人兵器は不完全なものだ。単純な出力こそは君の世界のスーツと遜色はないが、セーフティを外せば危険な状態になる」

「危険な状態?」

「装着者の生命力と引き換えに絶大な力を得ることだ」

 

 本来のスーツ……カツミの世界におけるジャスティススーツはエナジーコアを原動力としたスーツと人間を一体化させた奇跡。

 だが、この世界で作られた未完成のソレは、スーツそのものを外付けのパワードスーツに無理やり作り変え運用する不完全極まりないものだ。

 不安定且つ、セーフティそのものが緩い。

 いくらカネザキ・レイマが制限をかけていたとしても装着者本人が限界以上の力を引き出してしまう。

 

「つまり俺たちがこの世界の怪人を始末すればいいってことですか」

「……いいのか? 君は元の世界に帰りたいんじゃ……」

 

 少しも悩むそぶりもなくそんな結論を口にする彼に呆気にとられる。

 まだこの世界の私たちを戦わせたくないと話したばかりなのに……。

 

「元の世界に戻る手段がそもそも分かりませんし、なにより俺をこの世界に寄越したっつーことは、怪人と戦わせようとしているようなもんでしょう?」

「それは……そうだが」

「なら、戦いますよ。なにより―――」

 

 椅子に座った彼が自身の掌に視線を落とす。

 

「別世界でもアカネ達を見捨てるほど、俺は人でなしでないつもりです」

「……ありがとう」

 

 君が私の世界にもいてくれたら。

 そんな頭の中によぎった思考に苦笑する。

 

「それじゃあ、今後の話をしたいと思うが構わないか?」

「ええ、俺もその話がしたいと思っていました」

 

 今後、我々がどのように動くべきか。

 それを話し合う上でまずはこの先、なにが起こるかという説明をしなければならない。

 

「まず前提の話をする」

「はい」

「あと十日以内に地球は滅亡する

「……んん!?」

 

 気持ちは分かる。

 だが、冗談でもなんでもない。

 もちろんこの世界が私の知る世界ならば、という前提が入いるが。

 

「第三コロニーを守る怪人“電蝕王”をオメガが取り込み、全ての準備を終え―――日本列島は奴らを宇宙へ運ぶ箱舟と化し、地球から引きはがされる」

「……いや待て、電蝕王云々は知りませんが、日本を打ち上げようとしたことには心当たりがあります……。つーか、奴ら本当に地球を打ち上げるつもりだったのかよ……」

 

 どうやら、心当たりはあるようだ。

 それを阻止しているあたり流石だが、まずはこちらの説明を優先させよう。

 

「電蝕王は電力を食らう怪人。日本のみならず地球全土の電力を食い尽くし、人類から電力という文明の一つを奪った危険な存在だ」

「しかもナメクジ怪人もいんのかよ……」

 

 ナメクジ? あれってナマコだと思ったんだが……。

 まあ、電力の蓄え過ぎで肥大化しているし色はナマコでも実際はナメクジだったかもしれないな。

 

「打ち上げられた日本列島の先にいたのは、怪人とは別勢力の艦隊。それらとオメガが生み出した怪人の戦いが始まり……地球はあっさりと終わりを迎えてしまった」

「そして、貴女の話になると……」

 

 彼の言葉に頷く。

 かなり大雑把な説明だったが彼ならすぐに理解できただろう。

 

「残り十日あまりで世界が滅亡してしまうが、逆を言えば十日の猶予があるということだ」

「それまでにオメガを始末すればいいってことだな」

「ああ。だが、それまでに段階を踏まえてやることがある」

 

 正直、今の状態でオメガとやるのは危険だ。

 彼が変身するために必要なヒラルダは、一度の戦闘でああなってしまうし、なにより私自身が装備不足で十分な力が発揮できていない。

 

「まずは第二コロニーを支配するマグマ怪人と、もう一体の怪人の討伐」

「ナメクジに続いてまたあいつかよ……」

 

 彼は辟易した様子だが、私にとっては摩耗した今でも色濃く記憶に残っている恐ろしい怪人だ。

 あいつを倒すために……。

 

「第三コロニーを襲撃する上で奴の存在は非常に危険だ。そもそも、こちらから襲撃する以前に奴は奪い取った第一コロニーに乗り込んでくる。まずはそこで奴を倒さなければならないんだ」

「……」

「どうした? なにか気に障ったことでもあったか?」

「……。犠牲はどれくらい出たんですか?」

「っ」

 

 僅かに表情が歪んだのを見られたのか、低い声色でそう尋ねてきたか彼に言葉が詰まる。

 

「この一件でレジスタンスの八割が死んだ。そしてキララも……」

「……」

「奴を倒すために、臨界にまでスーツを稼働させて……自爆したんだ」

 

 今でも脳裏に刻み着いている。

 どれだけ攻撃しても倒せないマグマ怪人を相手に私とキララは劣勢に立たされて……。

 

『アカネ、私はここで終わるけど。後は任せたよ』

 

 彼女は自分の身を捨ててマグマ怪人と共に消滅した。

 死体もなにも残らない。一つの都市が丸ごと消え去るほどのソレを前に、私はなにもできなかった。

 

「それじゃあ、きららがそんな選択をする前に倒せばいいってことですね」

「……ああ、ああ、その通りだ」

 

 だが、今は違う。

 そんな結末にさせないために私たちは行動するんだ。

 

「君は、マグマ怪人に勝てるか?」

「正直な話、今アース……マグマ怪人の相手をするのは難しいです」

「君でもか?」

「倒せます……が、単純に相性が悪い。一応能力は封じられるが、決め手が限られています。無理やり力を引き出せば倒せますが……確実にヒラルダが今より酷いことになる」

「……今より?」

 

 なんかもう常に興奮状態みたいなヒラルダがこれ以上酷くなるとか恐ろしいんだが。

 だが、倒せないわけ……ではないのか。

 

「君の世界では、どうやって倒したんだ?」

「一度目は自衛隊の方々の力を借りてなんとか海に叩き込んで、二度目で核を抉り取って引導を渡しました」

 

 そっちもそっちで壮絶だな……。

 

「レックスさん。プロト“ゼロ”スーツはこの世界に存在していますか?」

「……カネザキ・レイマが装着したアレか。恐らく、あるはずだ。一応、心当たりもある」

 

 レジスタンス本部の地下にあった扉。

 司令は扉の奥にあるものを教えてはくれなかったが、大体の見当はついていた。

 プロトゼロスーツ。

 司令の身体をボロボロにさせた悪魔のスーツであり、カツミが最初に装着したスーツでもある。

 

「なら、まずは彼女に会いに行きましょう」

「彼女……? いや、今は無理だ」

「? なぜですか? 第一コロニーの件もありますし、俺たちが味方だと言えばレイマも受け入れてくれると思いますが……」

 

 彼の考えは間違っていない。

 あれだけの奇跡を見せたならいくら疑い深くなっている司令でも受け入れただろう。

 だが、そういう問題じゃない。

 

「今、レジスタンスに入れば確実に殺される。それが分かっていたんだ」

「……まさか、もう入り込まれて(・・・・・・)いるんですか?」

「ああ」

 

 気づけなかった私たちが間抜けだったのだろう。

 最初から怪人にとって私たちはいつでも殺せた存在で、遊び相手でしかなかったということだ。

 

「レジスタンスに入り込んでいる怪人は頭のいいやつだった。人間のように振る舞い、誰もが信用しきったところでその本性を露わにし、最悪の事態を引き起こした」

 

 人間に化け、難民を装いレジスタンスに入り、人間以上の人間らしさで友好を築く。

 そんな存在に私たちはしてやられた。

 

「さっき言ったもう一体の怪人がそいつだ。マグマ怪人襲撃と同時に奴は動き出し、私たちが出払ったアジトの中で虐殺を始めた。救援に向かったアオイがアジトについた時には、全てが終わっていたんだ」

 

 亡骸と残骸がいたるところに転がった血まみれのアジト。

 プロトゼロスーツを封印していたはずの扉が破壊され、中はもぬけの殻になっていたこと。

 そして、扉の前でバラバラになって息絶えていた誰かの亡骸。

 どんな怪人が暴れたのかは残された監視カメラ越しでしか分かっていないが、異形を以てして虐殺を行ったのは———私たちが仲間と認識していた一人の男の姿だった。

 

「いきなり現れた俺らがそいつを怪人だと言っても信じられない……ってことですか?」

「ああ。信じてもらえたとしても、その場でそいつは暴れだすだろう」

 

 だからこそ、第一コロニーでこの世界の私たちと合流するべきではなかった。

 変身を解いた瞬間に、後ろから攻撃を受けていた可能性があったからな。

 

「……とことん俺らを舐め腐ってますね。あぁ、本当に腹が立つ連中だ」

「……同感だ」

「でも、今度は違う。そうでしょう?」

 

 彼の言葉に頷く。

 もう同じことは繰り返さない。

 誰も死なせない。

 この世界が過去でも平行世界でもどうでもいい。

 

「まずはレジスタンスの膿を焙りだす。幸い、君が張ったシールドのおかげで奴は第一コロニーに入れない。なら、簡単に行動が読める」

 

 奴の目的は恐らくプロトゼロスーツ。

 レジスタンスの人々を虐殺したのはあくまでついでだろう。

 司令の性格上、プロトゼロスーツを手離さず、主要拠点になる第一コロニーに移送するはず。

 奴が狙うのはそこの可能性が高い。

 

「私が先に動くが、ヒラルダが復帰次第、君も行動開始だ。……いけるな?」

「もちろんです。こちらも情報収集の手段はありますからね」

 

 この絶望しかない結末を変える。

 多分、私だけでは無理だが、今は彼がいる。

 

「……あぁ、そうか」

 

 そこまで考えて私は、彼の世界の私の気持ちを理解する。

 まったく、あっちの私はずるいな……。

 いつも傍にこんな“希望”がいたらどんな相手でも立ち向かえたはずだ。




・寿命を削るアオイ
・自爆するキララ
・ほぼ皆殺しにされる仲間

本来の歴史は本当に救いがない世界でした。
そしてオメガにとって超重要な存在だったナマコ怪人、主人公の世界で彼が早々にやられたことはかなりの痛手でした。

次回の更新は明日の18時を予定しております。

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