追加戦士になりたくない黒騎士くん   作:クロカタ

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お待たせしてしまい申し訳ありません。
少し体調を崩してしまい更新が遅れてしまいました。

今回はアカネ視点でお送りします。


並行世界編 9

 マグマ怪人は強敵だ。

 マグマという生身で触れれば即死という危険な攻撃を持っていることに加えて、いくら攻撃しても瞬時に再生し消耗すらしない。

 私たちが最初に戦った時は撤退を余儀なくされ、完全な敗北を叩きつけられた怪人といってもいい。

 

 そんなマグマ怪人が私たちが新しく拠点としていた第一コロニーへと攻め入ってきた。

 黄色のシールドバリアに叩きつけられる溶岩の塊。

 脅威的なのは、黒騎士が張ったシールドの方、自然の猛威そのものの溶岩の攻撃を受けてもなお、壊されることなくコロニーにいる人々を守っていた。

 

 だけど、そう何度ももたない。

 直感的にそれを理解した私とキララは、司令とアオイが留守にも構わずパワードスーツでの出撃を試みた。

 

「私たち、ここで死ぬかもなー」

「奇遇だね。私もおんなじこと考えてた」

 

 第一コロニーを背にした私たちの前に立ち塞がる溶岩の怪人。

 数十メートル離れていても伝わってくる強烈な熱気を前にして、私とキララは軽口を交わす。

 状況はかなり絶望的だ。

 アオイは指令の護衛でこの場にはいないし、なにより相手は一度敗北を喫したマグマ怪人だ。

 とてもじゃないが、まともな方法で勝てるとは思えない。

 それに加えて———、

 

「後ろにうじゃうじゃいる」

「第二コロニー総力戦って感じかな。襲い掛かってくる気配はないのはマグマ怪人の攻撃に巻き込まれないようにするためかな?」

 

 マグマ怪人以外の怪人。

 溶岩の余波を受けないようにやや後方に控えた奴らを見てうんざりした気分になる。

 

「……それでもやるしかない」

 

 もう人類には後がない。

 この場で私たちがやられれば次は新拠点にいる人たちが蹂躙されることになる。

 そんなことには絶対にさせないために、私たちは命をここで賭ける。

 

『ヴァァァ……』

 

「っ、来るよ!!」

「うん!!」

 

 マグマ怪人が身構えるのに合わせて、私たちもスーツの出力を上げ、それぞれの武器を展開する。

 私のパワードスーツの腕部に内蔵された熱を帯びた剣が飛び出し、キララは背にマウントされている斧を装備する。

 ———ここで死ぬとしても、奴だけは道吊れにしてやる。

 この身体がどうなっても、スーツの限界を超えたとしても。

 

『アァァァァ!!』

 

 マグマ怪人がその体から溶岩を吹き出し、咆哮を上げる。

 それに合わせ、私たちが動き出そうとした……と同時に、私たちの後方からとてつもない速さで飛んできた“何か”がマグマ怪人の胴体に突き刺さった。

 

『ヴァ!!?』

『『ッ!?』』

 

 中心から外れた肩から溶岩を鮮血のように迸らせ、呻くマグマ怪人。

 ッ、あれは、剣?

 咄嗟に剣が飛んできた方向を振り返ると、誰かがこちらへ飛んでくるのが視界に映り込む。

 これ、司令に指示仰いだ方がいいよね!?

 

『司令ェ!! なんかでっかい剣が飛んできたんですけど!!?』

『アカネ!! 誰かここに来てるで!! あれやばいんちゃいますの!!?』

『待て待て攻撃するな!! あれは援軍だ!!』

 

 援軍……!? 若干パニックに陥っていると、こちらに迫っていた何者かが私たちの近くに着地する。

 轟音と共に地面に着地したのは、人間大のパワードスーツに身を包んだ誰か。

 私たちのソレよりも遥かに小型なパワードスーツを身に纏った誰かは機械音と共に着地の衝撃を和らげながら———呻くマグマ怪人を睨みつける。

 

「チィッ、外したか」

 

 全身に罅が入った赤黒いパワードスーツ。

 顔を隠すヘルメットも同じ有様で赤みがかかった髪が隙間から伸び、よく見たら左腕がない。

 まさか、コイツ……第一コロニーに現れたもう一人の謎の戦士2号!?

 

「だ、誰!?」

「戯け。話している暇がないのは見て分からないのか」

「なっ!?」

「手を出すな。死にたくなければな」

 

 なんだこいつ嫌な奴だ!!

 直感的にそう認識した私はすぐさま言い返そうとするが、私なんか眼中にないのか謎の戦士二号はマグマ怪人へと突っ込んでいく。

 

「アァァァ!!」

「ふんっ」

 

 溶岩を飛ばすマグマ怪人に躊躇なく飛び蹴りを放ち、怯んだ反動で突き刺さった大剣を引き抜き———連撃を叩きこむ。

 隻腕とは思えない鮮やかな斬撃。

 剣を扱う私とは比較にならないほどに速く、それでいて正確な攻撃はマグマ怪人を圧倒するに十分な威力があった。

 

「すごい……」

 

 力一辺倒ではない研ぎ澄まされた技術による戦闘。

 それは、まさしく私が思い描いていた戦いそのもの。

 十数秒の戦闘で全身にいくつもの裂傷を刻み付けられたマグマ怪人は、のけぞりながらも雄たけびを上げる。

 

「アァァァァス……!!」

 

 奴の声に合わせて足元からなにかが吸収されるように点滅する。

 すると、みるみるうちに奴の身体が再生し、一瞬のうちに無傷の状態に戻ってしまった。

 

「……やっぱり駄目だ。相手があのマグマ怪人じゃ……!」

「やっぱり加勢しなくちゃ!!」

 

 キララの声に頷きせめてもの加勢に出ようとすると、マグマ怪人の全身から爆ぜ、とてつもない熱気と溶岩が周囲へとまき散らされた。

 まずい、と瞬時に判断した私とキララは後方に下がりながら武器を振るい溶岩を弾く。

 

「あれ大丈夫!?」

「思いっきり溶岩に呑み込まれたんだけど!?」

 

 あれだけの攻撃、まともに食らえばただではすまない。

 そう思い、焦燥に駆られながら真っ赤に染まった大地を見据えると……白煙を引きながら一つの影が私たちの傍に飛んできた。

 

「バリアが死んだ、か。やはり今の装備では厳しいな」

 

 パワードスーツの表面にうっすらと光のようなものを纏った謎の戦士が、大剣を肩に担ぎながら苦々しい表情で立ち上がる。

 マグマ怪人は……溶岩を無理に爆発させたせいで、少しの間動けなくなっているみたい。

 

「……」

 

 口は悪いけれど、さっきの戦闘でこいつは味方と判断してもいい。

 なにより、司令も援軍って言ってたし、ここは力を合わせるべきだ。

 

「加勢するよ」

「生きて帰るつもりのないバカの手は借りん」

「ねえ、今バカって言った?」

 

 なんなのこいつゥ!!?

 初対面のはずなのにバカ呼ばわりとか失礼じゃない!?

 

「相手はマグマ怪人なんだよ!? 一人で勝てる相手じゃないのは分かってるよね!?」

「うるさい黙れはしゃぐな。お前を見ているとイライラする」

「頭かちわってもいいかな!?」

「まあまあ、落ち着いてアカネ」

 

 食って掛かろうとする私だがキララに羽交い絞めされて止められてしまう。

 なんだろう!! 普通に悪口を言われても全然気にしないけど、こいつにこんなことを言われるのはすごくイラッとするんだけど。

 怒る私を抑えながら今度はキララが、彼女に声をかける。

 

「あの、私たちが力不足なのは分かりますけど、ここは力を合わせるべきだと思うんです」

「……お前たちが命を張る必要はない」

 

 私の時とは違って、キララにはぎこちなくそう返した奴はそのままマグマ怪人へ向かっていこうと進みだす。

 

「ここは、私だけで……、……っ」

 

 ん? どうしたの?

 前に進もうとして不意に立ち止まった彼女に怪訝になる。

 どこかと通信でもしているのだろうか? 何かを聞くようなそぶりを見せた彼女は、不意に先ほどから発していた威圧を消し去り肩の力を抜いた。

 

「———来るか」

「来る? 来るって……なにが?」

 

 私の声を無視して奴は地面に大剣を突き刺し、そのまま瓦礫に腰を下ろす。

 ———まだマグマ怪人が健在にも関わらず、いきなり戦意を失った彼女に私とキララは混乱する。

 

「———ふぅ」

「いやなに落ち着いてんの!?」

「てか、マグマ怪人来てるんじゃないこれ!?」

 

「アァァァァス!!」

 

 先ほどの戦いで本気になったのか全身から溶岩を放出させたマグマ怪人がこちらへ腕を伸ばすように飛びかかってくる。

 肝心の謎の戦士は微塵も動こうとしないので、焦燥に駆られた私とキララが迎撃しようとした……その瞬間、

 

 

 ———こちらに伸ばされたマグマ怪人の左腕が半ばから撥ね飛ばされた。

 

 

 くるくると軽々と宙を舞うマグマ怪人の左腕。

 数舜置いて、血液のように溶岩が傷口から噴出し、先ほどの比でないほどの苦悶に満ちた叫び声をあげるマグマ怪人と私たちの間に“彼”はいた。

 

「いい加減にテメェの顔も見飽きてきたなァ、おい」

 

 落ちてきたマグマ怪人の左腕を掴み取った彼はその場から一瞬にして掻き消え———マグマ怪人の胴体に掴み取った左腕を突き刺し、釘を打つように拳でぶちぬき(・・・・・・)嵐を生み出さん勢いで殴り飛ばした。

 

「アァァ、ガっ、ァァァ!!?」

 

 半身を爆散させながら斜め上に飛んで行ったマグマ怪人はそのまま廃墟と化したビル群に直撃、その勢いを殺すことなく貫通、倒壊させながら吹っ飛んでいく。

 五つ目のビルでようやく勢いが止まり、そのまま倒壊するビルの瓦礫に飲まれていく姿を遠目で見送った“彼”は、赤熱する自身の拳を見つめる。

 

「核をずらしたか。生き汚ねぇ奴らしいな」

「「……」」

 

 人間常軌を逸した光景を見ると、なにも言えなくなってしまう。

 あのマグマ怪人がたった一発の拳でぶっ飛ばされるなんて、想像もしていなかった。

 

「ん?」

 

 首を傾げた彼が自身の赤熱する右腕を見ると、右腕を覆うアーマーが銀糸となってほどけた(・・・・)

 一瞬だけ彼の黒いスーツの腕が露になった直後に、銀色のマフラーから新しい銀糸が右腕を覆うように編み込まれ———新たな銀のアーマーとなる。

 また銀色の光を放つ腕を軽く振った彼は、軽く頷く。

 

「……ありがとな、プロト」

 

 元の白銀の装甲を纏った手を確認した彼は、最初に近くで座り込んでいる謎の戦士に声をかける。

 

「レックス、ありがとうございます」

「むしろ礼を言うのは私の方だ。この時に、君がいてくれることは何よりの希望だ」

 

 レックス、と呼ばれた女が穏やかな声で彼に語り掛ける。

 先ほどまでとまるで態度が違う奴の変わりように驚いていると、私たちの耳に司令からの通信が入る。

 

『お前達!! そちらの状況はどうなってる!!』

「いや、えと、あの……」

『そちらに黒騎士が向かったはずだ!! 色々ありすぎて説明とかしきれんが、とりあえずマグマ怪人とは戦闘中か!?』

 

 本当にどうして彼がここに、しかも全然違う見た目がここにいる理由が分からないし、今起こっている状況も全然理解できないけど、それでもありのままの事実を報告しておかなきゃ。

 

「マグマ怪人は、彼にぶっとばされました……」

『……えっ、うそーん』

 

 あの司令でさえも言葉が砕けるほどの衝撃。

 指令室の混乱具合を想像すると私も頭が痛くなりそうだが、それでもすぐに正気に戻った司令が声を震わせながら声を発する。

 

『と、とりあえず彼は味方だ!! 正体については依然として不明だが、それだけは確かだ!!』

「……どうして、そう言い切れるんですか?」

 

 さっきから予想外の事態ばかりが起こっているのは分かっている。

 だけど、あの疑い深い司令がここまで断言するだなんて普通じゃない。

 きっと、あっちでなにかあったんだ。

 少し言い淀む司令の返事を待っていると、彼の通信に割り込むように護衛をしていたアオイの声が聞こえてくる。

 

『彼は私たちの味方だよ』

「アオイまで……」

『詳しい事情を話すには時間がない。だけど、私を含めた皆が彼に助けられた』

 

 今までの不安だけが目立った声ではなく、確かにそう確信してそう言葉にするアオイに私は頷く。

 彼女がここまで言うのなら、これ以上私はなにも言わない。

 

『あと彼は私のことが好きなのかもしれない』

「なんて?」

『私の名前を知ってた。しかも呼び捨て』

 

 ……。

 ……、……。

 

「……司令、アオイはどうやら錯乱状態にあるようです」

「アオイ、とうとう頭が……」

『キレそう』

 

 突然恋愛脳に支配されたアオイに呆れながら苦笑する。

 彼が人間かどうか定かでないのになにを言っているんだか……。

 

『私はこのまま指令室に向かう!! 通信と映像は繋げたまま、こちらもドローンを送る!!』

「了解です」

 

 耳元から手を離し、彼を見る。

 

「通信は終わったか?」

 

 どうやら通信が終わるのを待ってくれていたようだ。

 ……あれだけの力を見せたのに、人間っぽいなこの人。

 すると、銀と黒のスーツを纏った彼が私とキララの元に近づいてくる。

 3メートルあるパワードスーツに搭乗している私を数秒ほど見上げた彼は、不意にこちらに背を向ける。

 

「後は俺に任せろ」

『え、でもまだ怪人は……』

「心配すんな。そのために今、俺がここにいる」

 

 謎に親しそうに接してくるが、不思議と不快じゃない。

 むしろあの大勢の怪人を前にしても尚、安心感が上回るほどに彼という個は圧倒的に強く思えてしまった。

 

「カツミ、来るぞ」

「ええ、分かっています。ここを彼女達を頼みます」

「ああ、任せておけ」

 

 レックスが彼の名を呼び、カツミ、と呼ばれた彼が頷いた。

 見れば吹き飛ばされたマグマ怪人を見て動揺していた怪人が、こちらへ襲い掛かろうとしている。

 百を優に超える怪人の大群。

 それを前にしても、彼は少しの動揺を見せずに前に進みだす。

 

「心配は無用だ」

『え?』

 

 彼の背中を見ていると、不意にレックスがそう口にする。

 

「彼は怪人にとっての天敵。そう運命づけられている存在だ」

「どうして、そんなことが分かるの……?」

 

 キララの言葉に壊れたマスクから見える口元を笑みで歪ませたレックスが彼へと視線を向ける。

 

「見ていれば分かる」

 

 怪人の群れの先頭にいた個体が彼に飛びかかる。

 迫る敵に彼の首元のマフラーが風になびくように広がり———先端から枝分かれするように三日月状の鎌へと変形し、空中に飛び上がった怪人をバラバラに切り刻む。

 

『LA……』

「……なるほど」

 

 続いて彼が腕を振り上げ、広げた五指を上から下へ振り下ろす。

 きん、とそんな糸が張るような音が聞こえ、後ろからさらに襲い掛かった怪人が縦に三等分にされ、地面を赤く汚す。

 あっさりと、その場からほぼ動かずに怪人を惨殺した彼は自身の手を一瞥して、恐怖に足を止めた怪人の群れを睨みつけた。

 

「———こういう力か」

 

 そして、彼は地面が爆ぜるほどの力でその場を飛びだした。

 

「えっ」

 

 見えたのは一瞬。

 彼の姿が消え、次に姿を認識したのはこちらに迫る怪人の群れの後方。

 彼の周囲に漂う銀糸が逆再生するようにマフラーを再構築した瞬間、時間が止まったように硬直していた怪人の群れは一瞬にして粉みじんに切り刻まれ、血煙と化した。

 

「っ、うそ、でしょ?」

 

 微かに見えるのは彼を中心に広がる銀の糸。

 細く、日の光で反射しないと目視できないほどに細い糸が怪人の群れを切り刻んだ。

 いや、それだけじゃない。

 彼はそのあまりある暴力で真正面から怪人を打ち砕き、完膚なきまでに破壊しつくしたんだ。

 

「……」

 

 彼の首元から伸びるマフラーが舞い上がった血煙を払うように大きく靡く。

 まるで彼の銀と黒のスーツが血で汚れることを拒むようにゆらめくソレを目にした残りの怪人は、今になって自分たちが相対している存在の異常さを理解させられたのか半狂乱に陥っていく。

 我を失って逃げ出す怪人。

 恐怖の声を上げながら向かっていく怪人。

 目の前の惨劇に呆然として動けない怪人。

 そのすべてを彼は一切の情もなく、平等に破壊しにかかった。

 

「すごい……」

「えげつなすぎ……」

『プロトゼロの完全適合者が、これほどとは……』

 

 拳で粉砕し、爪で八つ裂きにし、糸で切り刻む。

 首元から伸びる銀に輝くマフラーは幾重にも増え怪人を切り裂く刃に、ほどけるように広がった糸は怪人の身体に絡みつき、首を絞め、切断する凶器へと変わっていく。

 その圧倒的な攻撃性能にただひたすらに圧倒されてしまう。

 

『LA、LA……』

 

 金属を擦り合わせたような音。

 少女が口ずさんだ歌にも聞こえるソレが響き、彼の首元のマフラーからいくつもの銀閃が宙へ伸び、空中を屈折しながら———まだ息のある怪人の肉体へ突き刺さった。

 

「ガ、アァ!!! アアアア!!?」

 

 さらにいくつもの銀糸が針金のように突き刺さり、甲殻類を思わせる怪人の首がへし折れ、だらりと脱力する。

 しかしそのすぐ後に生物の挙動を無視した動きで、近くの怪人に攻撃を仕掛け始める。

 よく見れば他の死んだ怪人も壊れたおもちゃのような挙動で動き出していく。

 

「オマエ、ナニヲ!!」

「……ァ……ァ」

「シンデル!? ドウシテウゴク!?」

 

 怪人の死体を、操って同士討ちさせてる……?

 糸で操られた怪人が続々と立ち上がり、生きている怪人と同士討ちをし始める。

 その地獄の様相に私もキララ……モニター越しに見ている司令達が絶句している中、不意に黒騎士が動きを止める。

 

「プロト。やめろ」

『———ッ』

 

 操られた怪人の死体がぷつりと動きを止める。

 この距離でも聞こえる怒りを混ぜ込んだ彼の声に、糸が大きく乱れる。

 微かに響く声に、怯えのようなものが入り混じる。

 

「お前が怪人と同じ位置にまで堕ちる必要はねぇよ」

『……ッ。……ッ』

「捨てねぇし、嫌いにならねぇよ。……お前は俺の相棒だろ」

『……!』

「だったら信じろ。一緒に戦ってこそ俺たちだ」

 

 そう言葉にして彼は前を見据え、さらに加速した。

 瞬きする間に全ての怪人を次々と始末し、ついに最後の一体を拳で爆散させる。

 この場にいた怪人は全て倒されたけど……。

 

「……」

 

 それでも彼は戦闘態勢を解除することはない。

 どうしたのだろうか、と不思議に思うと私たちの立っている地面が大きく揺れる。

 

「……っ、地面が」

 

 明らかに普通の地震じゃない。

 キララもレックスも気づいたのか周囲の状況を確認すると、マグマ怪人が殴り飛ばされ、瓦礫の山に消えていった場所が火山のように赤く光っていることに気づく。

 

「まさか……」

 

 胴体をぶちぬかれてもまだ動くって言うの……?

 瓦礫の山はどんどん膨れ上がっていき、周囲のビルの残骸を巻き込みながら巨大な人型の姿へと変容していく。

 

『アァァァァス!!』

 

 現れたのは溶岩に包まれた巨人。

 強大な質量へと姿を変えたマグマ怪人は、憎悪と怒りを込めた眼差しを黒騎士へと向け咆哮を上げた。

 

 

 




【TYPE“X”スーツ】
・糸による切断、拘束。
・損傷したアーマーを糸にして再構成。
・マフラーによる超高速オート反撃。
・敵の死体を操る(複数可)
・糸がなくても強いし硬い近距離パワー型。

この絶対に味方ポジにいちゃいけないタイプの糸使いよ……。


今回の更新は以上となります。

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