少し忙しくなってしまい更新が遅れてしまいました。
並行世界編14
カツミ視点でお送りします。
この第二拠点に合流してから早三日が過ぎた。
その間、俺の存在が第二拠点内に住む人々に知らされたが、俺が想像していたよりかは騒ぎにはならなかった。アカネ曰く「ここがあるのは君のおかげってみんなが知っているから」だそうだ。
「……ふぅ」
拠点の屋上。
穴が開き吹き抜けだった天井が補修され人の立ち入れるようになったその場所で、俺は欄干に体を預けながらそこからの景色を見据えていた。
「ひでぇもんだな」
俺が張り巡らせたバリアの先にある町の景色。
荒廃し倒壊したビル、最早道路とも呼べないくらいに破壊しつくされた有様を目にして思わずそう呟いてしまう。
怪人共が跋扈する世界なんて想像もしちゃいなかった。
だが、実際この目で見てみると……俺の世界も結構な綱渡りの末にたどり着いた未来だったのかもしれないな。
「いやいや、この破壊の三割くらいはカツミ君のせいでしょ」
「……うぐ」
「アースとの戦いで背の高い建物とかたくさん壊しちゃったじゃん」
「うるさい……」
一人黄昏ている俺に無遠慮に声をかけてきたヒラルダに溜息をつく。
つーか、こいついっつも傍にいるな。
「お前さぁ」
「なぁに?」
「元の世界に戻っても俺たちの敵になれんのかよ」
「もちろん、そのつもりだよ」
本当かよ。
俺はともかくこいつから微塵も敵意を感じねぇんだけど。
「仮に、仮の話私が貴方に絆されて敵対したくなくなったとしても、そんなの関係ない。そんなことは私自身が絶対に許さないから」
「……」
「信じていいよ。私は君の敵。私がそう絶対に決めているから」
そこまで言うなら何も言わねぇ。
だけど、やっぱりこいつもこいつで面倒なモン抱え込んでいるんだな。
「それにさ、そう簡単に私に心を開いちゃだめだゾ♪」
「いや、別に開いてねぇけど」
「ふ、ふぅーん……」
開いているか開いてないかで言えばまったく開いてないぞ。
頬を引き攣らせて挙動不審気味になるヒラルダを見て、もう一度溜息を吐いていると……不意に屋上に設置された真新しいスピーカーから「ジジッ」というノイズ音が鳴り響く。
「ん、そういえば今日からか」
「え、なになに?」
欄干に背中を預け、スピーカーに意識を傾ける。
そのすぐ後に軽快なメロディーが流れてくる。
『皆さん、はじめまして!』
作業音と人のにぎやかな音だけが響く拠点内で、快活なハルの声が聞こえてくる。
世界が崩壊する以前の音楽をかけ、彼女自身も聞いている人たちを楽しませるような話をしていく。
『今日からお昼の放送を任されることになりました日向ハルです! こんな世界ですけれど、少しでも皆さんに笑顔になってほしいので頑張ります!!』
ラジオ、というにはあまりにも小規模だが、彼女の最初の一歩としては十分なものだ。
「笑顔になってほしい……か」
無理やり笑顔にする胸糞わりぃことしかしねぇスマイリーの万倍はいい。
ハルの放送を耳にしながら笑みを零すと、頭上から動物の羽ばたきと共に機械仕掛けのフクロウが目の前に降りてくる。
「お、来たか」
ヒラルダから出てきたメカフクロウ。
偵察から索敵まで色々と働いてくれる優れものだ。
『クァー、クァー!』
「おう、お疲れさん。ダイフク」
「ダイフク!? ね、ねえ、カツミ君? もしかして名前つけてる? ねぇ?」
桃色のフクロウは左手首にちょこんと乗ると、腕時計型のデバイスに変形する。
「近辺の地形、徘徊する怪人のデータがとれたな」
『♪』
「偉いぞ」
レイマに渡しても問題なさそうだな。
再びフクロウに変形したダイフクの下顎を撫でた後に、無言でこちらをジッと見ているヒラルダに声をかける。
「よし。ヒラルダ、バリアを張りなおすぞ」
「……ウン」
光とともにバックルになったヒラルダを腰に巻き付ける。
俺もハルと同じように自分にできることをしていかなくちゃな。
ヒラルダと共に第二拠点を覆うバリアを張り直し、内部の環境をもう一度整えた俺とヒラルダはレイマに呼ばれ、新しく作られた格納庫へと足を運ぶことになった。
格納庫に向かうと先にアカネ、アオイ、キララの三人が到着しており、彼女たちは俺とヒラルダに気づくと気安く挨拶をしてくれる。
「カツミさんも呼ばれたんだ」
「……ああ」
“くん”ではなく“さん”と呼ばれ少し動揺する。
この世界ではアカネ達はまだ16歳なので、そう呼ばれるのは仕方ない。
「バリアとかありがとね」
「礼ならこいつに言ってくれ。俺は能力を使っただけだしな」
ヒラルダの背中を押してアカネの前に出す。
突然のことに驚いたヒラルダはすぐに俺の後ろへ隠れる。
「ちょっと、カツミ君。そういうところが……」
「は? どういうところがなんだよ?」
「……なんでもない」
なんだよ。
ぷい、と俺から顔を背けるヒラルダを不思議に思っていると、俺たちの後ろからレックスがやってくる。
レイマが即席で作った義手にジーンズにシャツという比較的ラフな格好をしているが、やっぱりアカネの母親のシオンさんに似ている。
「レックスも?」
「ああ、私の装備の修理が終わったと聞いてな」
俺と戦った時に壊れた装備も修理してもらったんだな。
「それで、あとは司令だけだけど……」
「この三日間、姿を見せずに研究室籠りっきりだったけど大丈夫なのかな」
「大量の素材が使いこまれているって話は聞いた」
と、アカネ達が口にすると俺たちが入ってきた入口とは別の扉が勢いよく開く。
全員がそこに注目すると、一つの人影が飛び込んできて———ゴロゴロと床を前転しながらさらに跳躍し、俺たちの前に着地した。
「お前たち待たせたなァ!!」
びぃぃん、と擬音が出そうな立ち姿を見せた白衣を着た金髪の男、レイマは俺の知る世界の彼と同じ自信に満ち溢れた表情を浮かべていた。
そんな彼の登場にアカネ達は……。
「「「……誰?」」」
「私だ、私!! カネザキ・レイマだよっ!!」
包帯まみれだったレイマしか知らないのか彼の素顔に困惑しているようだ。
「司令、そんな顔だったんだ」
「ずっと包帯巻いてたから気づかなかった」
「宝の持ち腐れで草」
「反応があんまりすぎではないか……? まあ、いい。私が完全復活したことなど些末な問題でしかない」
俺の知るレイマとは違い、元気にアカネ達を煽ることもなく彼は話を進めようとする。
「早速説明するが、まずはお前たちのパワードスーツの次世代型が完成した!!」
「三日で、ですか?」
「映像資料は十分にあったからな。猶予は少ないが可能な限りの改造は施した!! それがこちらだ!!」
いつの間にか手に持っていた端末を操作し、格納庫に設置しているポッド型の機械を作動させる。
三つあるポッドが蒸気と共に開き、そこから赤、青、黄のスーツが現れる。
人間が乗り込むパワードスーツではなく、俺の知るジャスティススーツに近い身に纏うタイプのものだ。
だが全体的に鎧に包まれており、戦隊スーツというよりパワードスーツを縮小化させたようなものに見える。
「名付けるなら……こいつは『ジャスティスアーマー』!! 見た目こそはパワードスーツよりもサイズダウンしているが出力と防御性能は既存のスーツの三倍だ!!」
「これが、私たちの新しい力……」
「メタルヒーローみたい……」
「へー、すごいね」
新しいスーツに気を引き締めるアカネ、よく分からないことを言っているアオイ、そして関心するフリをしているキララ。
三者三様の彼女たちの様子に俺は目を細める。
「……どうしたのカツミ君?」
「いや、なんでもねぇよ」
……やっぱり話すべきだよなぁ。
別の世界だからあまり入れ込むべきじゃないのは分かっているが、どうにも放っておけねぇしな。
「我々には時間が残されていない。性能試験は最低限行い、すぐに第三コロニーの掃討に向かうことになる。相手は膨大な電力を溜めこむ電喰王ナメクジ怪人!! 奴を討伐次第、怪人王オメガを倒す!!」
「「「「はい!!」」」」
むしろ短い期限でよくやったもんだ。
最悪俺だけでカタをつけるつもりだったが、アカネ達も頼れる味方として一緒に戦ってくれるかもしれない。
「そしてレックス。お前の装備も修理・グレードアップさせておいた」
「ああ、感謝する」
「それとお前の装備の記憶領域に不自然な空白があったので、お前の動きを補助するサポートAIを組み込んでおいた」
「サポートAIだと? 待て、なんだそれは」
『私だ』
怪訝な顔をするレックスに、この場の誰でもない第三者の声が響く。
声の主はレックスの装備していたフルフェイス型のヘルメットからだ。
『私はカネザキ・レイマが作り出したサポートAI、
「……勘弁してくれ」
「私の思考をトレースした超超超有能AIだ。きっと役に立つだろう!!」
額を押さえうなだれるレックスと高笑いするレイマ。
対照的な二人に首を傾げていると話は次の作戦の内容へと移っていく。
「オメガを倒せば、怪人との戦いは終わりか」
宇宙からの敵の問題は解消されないが、まずはオメガをなんとかしねぇとな。
作戦決行は二日後。
かなり早急と思うかもしれないが、元より地球が滅ぶまでの時間が差し迫っているのでこちらも急がなくてはならない。
なんとしてでもナメクジ怪人とオメガは倒さなくちゃならない。
「オメガの能力はヒラルダの能力で封じれば、奴は単純な強い怪人として片づけられる」
俺のいた世界ではオメガはただ強い怪人として倒されたが、実際はアルファの認識改編の力でオメガの視界に俺達を認識されなくして能力の対象にならないようにしていただけだ。
実際の能力は俺もそれほど把握してはいないが、アルファ曰く「生を冒涜する能力」ってやつらしいのでろくなもんじゃなかったんだろう。
「ナメクジ怪人はどうするの?」
「レックスの話を聞く限り、オメガのために電力を溜めこんだことで肥大化しているらしいからな。こっちも能力を封じればそこまで脅威でもねぇだろ」
木っ端怪人も問題なし。
大量に出てくるだろうが、戦力増加した今なら大丈夫だろう。
諸々の話を終え、格納庫から出た俺たちはそのまま居住区に戻る。
「それじゃね、カツミさん」
「時間が空いたらハルに会いに来て」
「おう」
アカネとアオイに返事をする。
二人に続いてキララも別れの言葉を口にしようとするが、それよりも先に俺の方から声をかける。
「あー、キララ、ちょっといいか?」
「ん? どうしたの? カツミさん、私になにか用?」
俺の提案に目を瞬かせるキララ。
アカネとアオイも怪訝そうにしている。
「いや、お前に聞きたいことがあってな」
「別に、怪しんでるわけじゃないけど……」
アカネとアオイは同時にキララに振り向きその肩に手を置く。
「駄目だからね、キララ」
「襲うなよ」
「ねえ、私のことなんだと思ってるの……?」
こういうやり取りはどこの世界も変わらないな。
ぷんすかと怒るキララからアカネとアオイが逃げていく。
「えと、ここで話すの?」
「いや……屋上とかでもいいか? ヒラルダ、先に戻っててもいいぞ」
「なるほど、そういうことね。分かったわー」
ヒラルダを見送った後、俺たちは拠点の屋上へと移動する。
頭上には拠点の周囲を包むバリアがあるこの場所は、俺が知る限りほとんど人が来ない。
秘密の話をするにはもってこいの場所だ。
「ねえ、いったいどうしたの? 屋上なんかに来て、秘密の話?」
「避けられているのは分かってた」
「へ?」
普段と同じ明るい様子で話しかけてきたキララに話を切り出す。
後ろの彼女が困惑した反応を返すが、構わず話を続ける。
「正直、ずっとお前と話そうと思ってた……けど、俺も勇気が出せないところがあった」
「あはは、どうしたの急に。もしかして告白?」
「どの口が言えるんだってな。少なくとも俺は今のお前に何かを言えるような資格はない……が、それでも言うべきだと思った」
茶化すように笑う彼女に振り向き、欄干に背を預ける。
彼女の表情は変わらず笑顔だが、俺の目で見る彼女は笑っていても笑ってなんかいなかった。
「なあ、キララ。お前、無理してるだろ」
「え、何言っているの? 無理なんてしてないよ」
キララが俺の言葉を否定し手を横に振る。
「アカネはああ見えて割り切ることができる性格だ。別世界の自分のことを知ってもそれほど影響はねぇし、精神の根っこが強いやつなんだろう」
「えぇと、カツミ君?」
「アオイはハルのおかげで前向きになれている。帰りを待っている家族がいる今のあいつなら自暴自棄になることもない。……お前はどうだ?」
「……っ、あはは、何言っているかさっぱり分かんないよ」
だが、キララは違う。
お前はアカネと違って現状を割り切ることができない不器用なやつだ。
表面上は笑顔で取り繕っても、その裏でお前はずっと泣いてる。
「考えすぎだよ。私は大丈夫。心配ないよ」
「マグマ怪人との戦いで自爆しようとしていた奴が大丈夫なわけじゃねぇだろ」
別の世界のアオイは妹のハルを怪人にされ自暴自棄になった。
なら、キララはどうして自分の命を投げ出すような手段に出た?
状況的に仕方がなかった? それもあるのだろう。
だが、元いた世界のキララを知っている身からすれば、今のキララはどうもそうは思えない。
「それは別の世界の私のことでしょ? さすがにそんなことしない」
「俺が来なかったらするつもりだっただろ」
「……なんで、そんなこと言うの」
ずっと昔の両親が死んだ後の、生きたまま死んでいた時の俺と同じだからだ。
表面上は笑顔で取り繕ってもその裏でお前はずっと泣いている。
「ここには俺とお前以外に誰もいない」
「無理してないって」
「俺は別の世界からやってきた部外者だ。吐き出しても問題ねぇ」
「だから……ッ」
「なあ、キララ」
苛立ちに俺を睨みつける彼女と目を合わせる。
……本ッ当にこんなこと言うのは嫌だけど、こいつのために言うしかないか。
「お前、そのまま戦いに行ったらアカネとアオイを殺すことになるぞ」
キララが俺の襟を掴み背中の欄干に押し付ける。
されるがままの俺を見上げるようにした彼女の瞳にはこれ以上にない怒り、と涙が浮かべられていた。
「無理してるに決まってるじゃん!!」
上っ面の笑顔をかなぐり捨てて叫ぶように訴えかけるキララ。
「ずっと無理してるよ!! 得体の知れないパワードスーツに乗って! 怪人と戦って!! たくさん人が死んで!! どうして普通でいられると思ってるの! 私がおかしいの!?」
「……」
「こんな世界が救われて、その後どうすればいいの? 怪人全部いなくなっても私の家族は戻ってくるの? アオイみたいな奇跡は起こらない。だって……だって……」
俺の襟から手を離し、膝から崩れ落ちた彼女は小さく呟く。
「私の家族は目の前で、怪人に殺されたから……っ」
なんとなく察していた。
普通普通とは言いながらも、あんなにも心が強いキララがここまで打ちひしがれる理由なんてそれしかない。
「ねえ、カツミさん。私はこの先どう生きていけばいいの」
俯きながらキララが俺に語り掛けてくる。
「レックスの、別のアカネの世界の私の最期を聞いて正直納得してた。ううん、それどころか羨ましいと思ったよ。だって、私は誰かの役に立てて死ねたから」
「……」
「でもこんなこと思っていたらきっとアカネとアオイにも悲しい思いもさせちゃうから……」
多分、この世界のキララはアカネ達と出会った時からこうだったんだな。
だからアカネもアオイもレイマも……レックスすらも気づけなかった。
俺が彼女の望むような答えを口にすることはできない。
それでも、このまま放っておくことはできない。
「羨ましい、か……ああ、羨ましいよなぁ。分かるよ」
「……ぇ」
否定されると思ったのかキララが涙を浮かべたまま俺を見上げる。
彼女とは視線を合わせずに、空を見上げる。
「俺も両親が死んだときに死ねたらよかったよ。そうなったら、俺は親に愛されていた幸せな記憶のまま終われたし、無駄に辛い思いもせずに済んだからな」
きっとこの世界の俺は母さんと父さんの恨み言も罵倒も聞くことはなかったんだろう。
一人生き残った奇跡の子じゃなくて不幸な飛行機事故の被害者の一人として終われたのだ。
「だけどな。それじゃ駄目なんだよ」
この世界の俺は両親と一緒に死んで、もしかしたらそれが理由でクモ怪人が倒されなかったのかもしれない。
俺一人が満足しても、俺のせいで取り返しのつかないことが起こってしまっていいわけがない。
少なくとも今のお前が死んで喜ぶ奴なんて誰一人いないし、お前自身それを心の底から望んでいるとも思えない。
「なあ、キララ。こうたも、ななかも、オウマさんも、コヨミさんも生き返らない」
「……っ」
「それでも、お前にはもう何もないのか? 死んでも構わないって本気で思ってるのか? 今まで戦ってきたのは怪人への復讐のためだけで、それ以外に得たものは何もないっていうのか?」
そんなことないはずだ。
元の世界で散々普通とからかわれても、誰もが忘れてしまいそうな当たり前の優しさを持つお前が一緒に戦ってきた仲間をなんとも思っていないはずがない。
俺の言葉に沈黙したキララは、震わせながらも声を発する。
「そんなこと、ない」
服の袖で目元を拭った彼女は顔を上げる。
「私には、一緒に戦う仲間が……友達がいる」
「なら、何もないなんて自分に言い聞かせてるんじゃねぇよ」
「……うん」
手を差し出し、キララを立たせる。
これだけ気づかせてやりゃあとは大丈夫だろ。
「……。カツミさんは、今はどう思っているの?」
屋上から出ていこうとするとキララがそんなことを聞いてきた。
今は……というと、俺がさっき言ったことの話だよな。
「俺が死のうとしたら必死なくらいに止めてくれる奴らがいてくれるからな。もう、死んでもいいって思う気持ちもなくなっちまったよ」
「そう、なんだ」
「つーか、その一人が別世界のお前だけどな」
どいつこいつもお節介だったが、そのおかげでバカだった俺も変わることができた。
それは今でも感謝している。
「あと、なんで私の家族のこと知ってるの? け、結構親し気な感じだったけど」
むしろキララだけじゃなくアカネとアオイの家族とも知り合いなんだよな。
なぜか一時期、二人の家の居候になってしまっていたせいで……。
「あぁ、実は……」
いや待て。
普通に答えることもできるが……ちょっとからかってやろうか。
葵のことを見習って重い空気を変えられる冗談ってやつを言ってみよう。
「……ああ、コヨミさん……お前の母親にな」
「うん?」
「お前のアルバムを見せてもらった時があるんだ」
「ちょっと待って! 詳しい話を聞かせてもらう必要が出てきたんだけど!? カツミさん!?」
「……それじゃ、俺は部屋に戻るから」
「ダッシュ!? ま、待てぇ!!」
問い詰めるキララから逃走する。
後ろから彼女が追いかけてくるが、その声色は明るいものになっていることに安心しながら———俺は全力でキララから逃げるのであった。
精神状態的には黒騎士時代のカツミに近かったキララでした。
本来の歴史では、目の前で怪人に家族を殺され、怪人化したハルをアオイが倒し結果心を壊すという悲劇が立て続けに起こったことでキララも精神的に耐えられなくなり、惑星怪人アース相手に自爆という手段を選びました。
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