前話を見ていない方はまずはそちらをお願いします。
今年最後の更新です。
地球のオメガとアルファを殺した青肌の宇宙人、ザイン。
どこかルインと似た雰囲気をしたそいつは一方的にこっちになにかを話したかと思えば、いきなり攻撃してきやがった。
だがその一撃は決して侮れないものだった。
アカネ達を守るために真正面から攻撃を防いだ俺はヒラルダとの変身を強制解除され、typeXへと変身を切り替えザインに戦闘を仕掛けた。
「驚きだな。“運命のアルファ”に適合する生命体がいるなんて」
空へ浮かび上がるザインに跳躍し、拳を叩きつける。
繰り出された拳は見えない壁に阻まれ防がれるが、拳が激突した地点から空間に罅のようなものが走る。
……こいつの力はなんだ?
「しかも罅をいれるか。先ほどの桃色の姿……あぁ、“同化のアルファ”とは比べものにならん力だ」
「うるせぇ、テメェと喋るつもりはねぇ!!」
「そうか? 私はお前にどんどん興味が出てきたのだが」
バリア怪人とは違う。
シールドとかバリアとか物理的なモンを出しているわけじゃねぇし、攻撃そのものが見えず、防いだ後でもその全容がつかめない。
見えない何か、ではなくあらかじめそこに存在していたなにかに触れたような感覚だった。
「アカネ達は離れたか……」
こいつ相手に出し惜しみはできねぇが、それをすればここら一帯が危険に晒される。
アカネ達がこの場から遠ざかるのを待ちながら、俺はザインを足止めするために銀糸を放つ。
「プロト、力を合わせるぞ!」
「LA……!」
マフラー、両腕の装甲を解し生成された銀糸は螺旋を描くように、棒立ちのザインへと迫る。
さながら繭のように奴を包み込み、地面、建物、視界にあるすべての物体に糸を繋ぎ、奴の動きを無効化する結界を作り出した俺はそれを両腕で束ねて握りしめる。
「これなら……」
『糸か。原始的だな』
「ッ!」
銀糸の繭が内側から爆ぜ、引きちぎられる。
内側から体から数センチのところで見えない壁で銀糸の干渉を阻んでいるザインが笑みを浮かべて出てくる。
「なるほど、地球の被害を心配しているのか」
「……」
「確かに私とお前が本気で争えば惨事になるだろう。私もこれから地球を有効活用しようとしている手前、そのような無駄なことを避けたい。———ならば」
悪寒を抱いた瞬間、瞬時に目の前に現れたザインの腕を防御する。
——ッ、ワームホールじゃねぇ……!! 瞬間移動か!?
糸で反撃しようにもまた見えない壁みてぇのに阻まれ攻撃が届かねぇ……!!
「場所を変えよう。うん、それがいい」
「ぐっ……!!」
防御した腕を掴まれ、後ろに押し出される。
背後にはザインが作り出したワームホールがあり、強制的にどこかへ移動させられる。そのまま奴に突き放され、地面に叩きつけられる寸前に受け身をとり、周りを見ると———そこは白色の大地と、空一面を覆う暗黒の世界が広がっていた。
そして背後には青く、大きな地球の姿。
「ここは月か……!? って、やべぇ酸素!?」
普通にしてるけどがっつり酸素ねぇじゃん!!
とっさに息を止めるが、ついさっきまで普通にしていたことを思い出す。
『LA……!!』
「そ、そうかお前がやってくれたのか……助かった……」
本当にいつも助けられてばっかりだな……。
とりあえずプロトXは宇宙空間に対応しているってことで問題ない。
「ここならば思う存分に遊べるぞ?」
「声が通じんのはどういうわけだ?」
「私の力だ。重力も地球と同じ程度にまで増やしてやっている。さあ、もっとお前の力を見せてくれ」
……ルインには似ているが、なんか違うな。
最初の質問をすることができなかったが、一応聞いておくか。
「どうして地球を侵略する」
「なぜ侵略するか? うぅむ、なぜ……なぜ?」
俺の質問に腕を組み思い悩むそぶりを見せるザイン。
「別に地球だけの話ではないからなぁ」
「……は?」
「地球程度の星はこの宇宙に溢れんばかり存在して、我々は星を隷属下に置くために侵略、時にはオメガとアルファの種を植え付け収穫しているに過ぎないだけ……まあ、そうだな」
奴は腹立たしいほどの笑みを浮かべて指を立てる。
「あらかじめ決められていた滅びの時が来ただけだな。原住民には悪いが大人しく私の奴隷になってほしい」
「……ああ、よく分かったよ。テメェはあいつとは全く違うってことはな」
ルインは自分より下の奴らに興味はない。
それがいいってわけじゃねぇが、見下しもしねぇし蔑んだりもしねぇ。
だがこいつは自分以外の星も生き物も全部ひっくるめて下に見てやがる。
口だけでは悪いとは言っているがちっとも思ってもいねぇし、支配するためならどんだけ犠牲が出ても構わないと思っているようなやつだ。
「ここで提案がある」
「あ?」
「お前を我が星将序列に迎え入れたい。その力、潜在能力をここで散らすのは惜しい」
……こいつ、マジで言ってんのか?
敵のはずの、侵略している側のテメェが今戦っている俺を勧誘していることに悪い意味で驚く。
「お前ならば第二位……いや、第一位の席を用意してもいいぞ?」
「断るに決まってんだろ。ふざけてんのか?」
こいつの軍門に下ったところで地球がろくでもねぇことになるのは目に見えている。
約束を守るようなやつにも見えねぇし、そもそも星を侵略する片棒を担ぐなんざ死んでもごめんだ。
俺の答えにザインは残念そうに肩を竦める。
「そうか。お前ならば一位に相応しいと思ったのだがな。……それとも威厳のある声で勧誘した方がよかったか?」
「話は終わりだ」
「そうだな。続きは戦いながらしようではないか」
余裕のつもりか、ふざけたことを抜かすザインを無視し攻撃を仕掛ける。
こいつの能力がなにかだなんてどうでもいい!!
いつもとやることは変わらず、全力で殴って確かめてやる!!
「オラァ!!」
白銀の籠手を赤熱化させながらザインに拳を叩き込む。
キィィン!! という、また見えない壁に阻まれる音が響き渡るが構わず拳を押し込み、不可視の何かを叩き割る。
「私の能力を表層とはいえ砕くとは……。運命のアルファの力か?」
「うるせぇ!! くたばれ!!」
「口汚いな」
ッ、砕いた傍から新しいのを張られた!?
んなら、張られる傍から砕いていけばいいだけだ!!
蹴りで後ろに下がり、銀糸を月面へと叩きつけブロック状に切り裂く。
「ふんっ!!」
それを銀糸と力技で月面からくりぬき、ビルほどの大きさの岩塊をザインの頭上から叩き落としてやる。
「この程度じゃ効かねぇのは分かってんだよ!!」
このまま圧し潰れりゃ十分。
だが、それで足りない状況を考え、一切の手を緩めずに全身に力を籠める。
「全力で行くぞ、プロト!!」
過剰出力による赤熱化。
赤く装甲が染め上がり、プロトが何かに耐えるように鎧を軋ませる。
あまり長くはこの状態ではいられねぇ!!
一気に叩くべく、俺はザインに岩塊を食らわせた場所へ向けて、全力の拳を放つ。
「ふんッ!!」
突き出した拳から赤いエネルギーと電撃が迸り、嵐となって月面を襲う。
地表が弾け、岩塊が粉々に削り取られ、巻き上げた嵐が宇宙へと舞い上がっていく光景を目にしながら俺はさらに拳を見舞っていく。
「普通のやつならこれで終わるはずだが……」
未だに嵐が吹き荒れる月面を見下ろし、静かに呟く。
そこらの怪人や俺の知る異星人なら今ので終わりだ。
だが、相手はルインと同じ雰囲気を感じさせる奴だ……そう簡単に———ッ、
「素晴らしい!!」
「……チッ」
終わるはずもねぇか……!!
岩塊を吹き飛ばし、宙に浮かぼうとしたザインに間髪いれずに拳を叩きこむ。
拳は不可視の壁に阻まれずに奴の顔を捉え———、
「なっ!?」
———通り抜けた……!?
奴の顔を殴るはずが拳はそのまま奴の身体を透過し、俺はそのまま月面に着地することになった。
見上げると、奴の姿は先ほどと変わっており全身ボロボロで、左腕がちぎれるようになくなっていた。
「本当に素晴らしい!! ますます序列に迎え入れたい!! あぁ、傷つけられるだなんていつぶりだろうか!! いや……はじめてだ。すごいなぁ、いくら手加減しているとはいえ、面白いぞ!!」
奴が気色の悪い声を上げると、奴の身体が逆再生するように癒えていく。
再生能力……それも怪人以上のものか。
しかも、あの野郎今なんて言った?
「手加減だと?」
「ああ、手加減だ。まともにやるとお前たちの攻撃は私には
これ以上のお喋りをするつもりも奴を喜ばせるつもりもない。
再び糸を展開し、奴をつるし上げまた拳を食らわせてやる。放たれた銀糸が奴を取り囲み、一斉に襲い掛かる。
「もう無駄だよ」
「……!」
糸が奴の身体を貫通……いや、通り抜けた?
驚きを露わにする俺に喜色の笑みを浮かべたザインは、またもや瞬間移動じみた速度で俺の前に現れ、掌を突き出してきた。
移動と比べてあまりにも遅い攻撃。
逆に掴み取って、殴り返してやる———そう思い、奴の腕を掴もうとするが、伸ばした手は奴の腕を通り抜け、俺の胴体に奴の掌が直撃する。
「がっ!?」
遅い動きから想像できないほどの衝撃が胴体を貫通し、俺の身体は背後の地面へ叩きつけられる。
———ッ、なんだ今のは?
「私の力の正体が気になるか?」
瓦礫を背に倒れ伏す俺を煽るようにザインが見下ろす。
咄嗟に糸で周囲を無差別に攻撃するが、それも奴は迫る糸も衝撃波を無視するように透過する。
「私と君の力の差を知らしめるために教えてあげよう」
奴の言葉を無視して立ち上がり、拳を振るう。
「地球の言語では“ダークマター”と呼ばれているんだろう? 目に見えず、触れられない。されど存在する摩訶不思議な物質」
「……なんだそりゃ!」
「私はそれを意のままに操れるんだ」
糸で縛り上げようにも奴の身体は捉えられない。
「生物はなぜ物に触れられる? なぜ存在しているはずの物質であるダークマターに触れられず、認識すらできない? この宇宙の半数を占めるはずのこの物質は確かに存在している。だが、それらは未だに解明されてはいない———だが、私にとってはそんなことどうでもいい」
赤い姿でどう攻撃しようとも奴の本体には届かない。
「なにせ、私自身がソレなのだから」
ザインが手を翻すと同時に不可視の力が全身に叩きつけられる。
「どこにでも存在するダークマターに質量と実体を与え、それらを叩きつけるだけで大抵の生物も星も簡単に砕けてしまう」
マスクの中で血反吐を吐き、砕け散った装甲を再構成しながら立ち上がり、殴り掛かる。
だが、その拳も奴の身体を通り抜けるだけ。
「そして、私の肉体もダークマターと同じように実体を捉えられなくすることもできる。———つまり、お前の見ている俺は、姿だけそこにあるだけの虚像だ」
「……ッ」
「まさしく宇宙を統べる力。私はこの宇宙の王になるために生まれてきたのだよ」
そう言ったザインの声をまた無視し攻撃を仕掛けようとする俺の肩を奴は掴む。
見上げた奴は嘲りと、哀れなもんを見るような目で俺を見ていた。
「はじめからお前に勝ち目なんてないって分かれよ。地球人」
「がっ……」
腹に叩き込まれた拳から不可視の一撃が叩き込まれ、月面へと叩き込まれる。
視界が暗転し、月の大地に飲み込まれながら吹き飛び、ようやく止まるも全身の鎧もほとんどが砕け生身もボロボロだ。
『LA……LA……』
「……がぁっ……くそ」
プロトの……声が聞こえる。
まだ死んでねぇよな……なら、まだ戦えるはずだ。
なにがダークマターだ、長々と教えてくれたがちっとも理解できねぇわ。
「俺が、負けたら……誰が、あいつらを助けられるんだよ……!!」
怪人は倒した。
だけど、この目の前のクソ野郎を残して死んだら駄目だ。
アカネも、キララも、アオイも、ハル、レイマもこの世界でずっと苦しんで来たんだ。
だから、この世界のあいつらがもう苦しむことがあっちゃいけねぇんだ……!!
『LA……』
「大丈夫だ。悪い、もうちょっとだけ付き合ってくれ」
『……』
「プロト……?」
血が目に入ったのかマスクの中の視界が赤く染まったままプロトに声をかけるが、彼女は返事をせずにただ、悲しみと何かしらの決意を決めたような感情を伝えてくる。
これまでとは違うその感情に戸惑い声をかけようとした時、俺の前にザインがやってくる。
「まだやる?」
「うる……せぇ……!!」
「……いい加減しつこいな。オメガは潔く死んでくれたのに」
こっちは死に体だが、まだまだやれるぞコラ。
つーか、さっき俺に攻撃する時一瞬だけ実体だったよな?
———それだけ分かれば、捨て身覚悟でその愉快な頭を消し飛ばせるよなァ……!!
「つまらねぇ御託ほざいてねぇでさっさと来いよ。お喋りのクソ野郎が……」
「……さすがに反発ばかりの手駒はいらないか。ならお望み通り死———」
奴がダークマターを操ろうとしたその時、俺の手首にあるプロトチェンジャーが眩い光を放つ。
「プロト……!?」
光と共に俺の変身が解除され、周りに球形のバリアのようなものが現れる。
それが宇宙空間で俺が死なないようにするためのものなのは分かるが、いったいプロトはなにを……!!
「なにをするつもりなのかは知らんが———ッ」
光を止めようとしたザインに銀糸を絡ませた岩が殺到する。
それが、プロトが自分の意思で行ったことだと理解しながら手首を見ると、チェンジャーからプロトのエナジーコアだけが飛び出し、さらに大きな光を放出しはじめる。
「プロト……?」
『カ……ツ……ミ、生……キテ……』
「ッ、やめろ!! お前、なにをするつもりだ!!」
光が俺の身体を癒しているのは分かる。でもただ、治すための光じゃない。
これはもっと取り返しのつかない光だ。
プロトのエナジーコアに罅が入り、亀裂が大きく広がっていくがそれでもプロトは光の放出をやめない。
『ミツケテ……クレテ……アリガトウ』
「———ッ」
そして、ガラスの割れるような音と共にプロトのエナジーコアは砕けた。
彼女の意思が完全に消えると同時に、砕けたエナジーコアから散った光から———『プロトXチェンジャー』と『トゥルースドライバー』が現れる。
『カツミ!? やっと会えた!! 大丈夫!?』
『ガァーウッ!』
「……ぁ」
彼女たちは俺の知るプロトとシロだ。
さっきまでここにいた“プロト”はもういない。
俺のために、俺のせいで死んだ。
俺が弱かったからプロトは死を選んだ。
また、目の前で大事な存在が死んだ。
あの時の、事故と同じように———、
「ほう、“進化のアルファ”にもう一つの“運命のアルファ”か。なるほど、別世界から他のアルファを呼び出したというわけか」
手元のバラバラになったチェンジャーを見つめ言葉を発さない俺をあざ笑うように、ザインは語り掛ける。
「そんなことをすればどうなるか分からないはずがないのに、呼び出したのがコア化されたアルファ二つだけとは……なんともまあ……無駄死にだな」
……は?
ついさっきまで私を相手に一生懸命戦っていた“運命のアルファ”の適合者の纏う雰囲気が変わった。
私の力を前に触れることもできずに、ただ地面を這いつくばるだけだった輩が怒ったところでどうなるとも思えないが、わざわざそれを待ってやるほど暇でもない。
指を振るい、質量を与えたダークマターを上から叩きつけ、鬱陶しいバリアもろとも圧し潰せば終わりだ。
「本当に無駄だったな」
アルファを犠牲にしたところで時間稼ぎ程度にしかならんとは。
これならいっそのこと特攻でもしてくれた方が面白かったのに。
轟音の後に砂煙が上がる。
これで終わり、そう思い地球へ戻ろうとするが、砂煙の中で未だに光のバリアに包まれた奴がいることに気づく。
「……む?」
攻撃を防がれた? いや、外されたのか?
死んだ”運命のアルファ”が作り出した結界の中でうつむいた奴は、おもむろに右手を軽く掲げ———つい先ほどバラバラに砕かれた腕輪を
「……なんだと?」
運命のアルファはもう死んでいる。
あの腕輪の中にはいない、そんなことが分からないほど奴は愚かではないはず。
だが奴は宙に浮くもう二つのベルトと腕輪に手を添え、先ほど再構成させた腕輪と共に分解させ、新たな一つのベルトとして創り出した。
———なんだ、あれは。
地球人に物体の再構成に創造能力なんてあるはずがない。
ならば、なぜ……奴は生身でアルファの能力を自らのもののように使っている?
黒と白、そして赤と金に彩られたベルトがひとりでに動き出し、装着と同時に起動する。
まずい。
なにか恐ろしいことが起ころうとしている。
漠然と、これまで抱くことのない意味不明な感情のままに、光に包まれようとする奴にダークマターを叩きつける。
だが、なぜかすべてが奴の身体を
奴の変身を邪魔できない……!?
まるで確定した運命のように奴の姿が変わってしまう。
黒い闇が奴の身体を包み込み、その肉体を覆う鎧を纏っていく。
生物と機械、そのどちらも混ぜ込んだような光沢を放つ鋭利な外観。
まるで祝福するように少女の声が宇宙に響き渡る。
両腕は黒い装甲、両足は白い脚甲を纏い、胴体、下半身は白と黒を織り交ぜた装甲に包まれる。
頭には赤い複眼と白の三本角
先ほどの白い姿とは明らかに違うソレにいつしか私は攻撃の手を止めてしまう。
光が収まり、奴がゆっくりと地に足をつける。
派手さのない、白と黒の織り交ざった瘦身の姿。
そこからは威圧感も、殺気もなにもかもが感じない。
無機質ともいえるほどの様変わりを見せた奴に、俺は無意識に浮かんだ汗をぬぐい笑みを浮かべる。
「ハッ、変わったのは見た目だけか。そんなものでは……む?」
動かない奴を嘲ろうとすると、次元の穴が俺と奴を飲み込む。
移動させられた先は、ついさっきまでいた世界と異なる次元の世界。
生物の存在しない死した宇宙に運ばれた私は、いらぬ気を利かせた配下に苦笑する。
まったく、現序列一位が……こいつに嫉妬でもしたか?
「イリステオ、お節介が過ぎるぞ」
この俺が思う存分に戦える場所を用意してくれたのだろうが、今のこいつ相手では必要のないことだ。
「期待外れでないことを祈るぞ」
こちらが攻撃に出ようと奴を見ると、奴がその手になにかを持っていることに気づく。
先ほどまでそこからも移動していなかったはずの奴が、どうやってそれを持っているのか疑問に思う前に———その手に無造作に握られた、“人の腕”に言葉を失う。
『『『『が、ああああああああ!!?』』』』
「ッ、イリステオ!?」
少女の、男の、しわがれた老人の幾重にも重なる男女の悲鳴が宇宙———いや、次元を隔てた世界中に木霊する。
その痛みの叫びに私は薄ら寒いなにかを感じ取り、声を震わせた。
「まさ、か」
あれは、一位の腕か? 次元を隔てた世界に遍在する奴を、この俺に気づかせずに攻撃したのか……?
ゴミを捨てるように半ばから切断された一位の腕を地面に捨てた奴は、赤く、血のように染まった複眼を向ける。
「っ」
その異様さに、後ずさりする。
奴の頭を覆う仮面の、口にあたる部分が生き物のように大きく裂ける。
『ヴォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
憎悪に満ちた雄叫びが上がる。
それを目の当たりにして、ようやく俺が抱いている感情が
ジェミニクロスかクロスジェミニにするか半年間くらいずっと悩んだ結果、どっちにも読める感じにしてみました。
そして、トラウマと怒りで目覚めた最終フォーム解禁回。
ルインパパの能力についてはめっちゃ強い能力って感じでフワッと認識していただければ大丈夫です。
今回の更新は以上となります。
今年も本作を読んでくださり本当にありがとうございました。
来年もまた「追加戦士になりたくない黒騎士くん」をよろしくお願いします<(_ _)>