お待たせしてしまい申し訳ありません。
突然ですが重大発表です!
この度、「追加戦士になりたくない黒騎士くん」がファミ通文庫様より書籍化されることになりました!!
発売は5月を予定。
イラストを担当してくださるのは、イラストレーターのギンカ様です!!
詳しくは私の活動報告に載せましたのでそちらをご参照ください……!!
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=294882&uid=45172
あの姿は駄目だ。
意識は保てる確信がある。
だけど、あれは……ただそこにいるだけで周囲に影響を及ぼしてしまう爆弾だ。
変身が完了してしまえば、俺はルインのように無意識に周囲の生き物になんらかの影響を与えてしまう。
「———ふ、ざけんな……!!」
あんな力をこんなところでまき散らしてどうなるか分からないわけがねぇ!!
バックルを押さえつけ変身をしないように耐えるが、止まらない。
諦めかけたその時、小さな馴染みのある声が頭の中に響いてきた。
【
「っ、この声は……」
機械的な、録音されたような声。
その声が頭の中に響いた次の瞬間———バックルから光の銀糸が溢れる。
なんだ、と目を見開くと同時に銀糸はベルトを形作ると———変身のために放出していたエネルギーを抑え込むようにバックルに巻き付いた。
「———プロ、ト?」
白銀のベルトが巻き付かれた武骨な灰一色のバックル。
バックルの中心部分から二つの光が飛び出しその一つを右手で掴み取ると、それはドライバーとしてのシロが変形したような黒模様のアタッチメントであった。
N |
———これは、プロトの力だ。
彼女の意思と力を感じ取り、頭に流れてくる感覚でその力を理解した俺はそのまま迷いなく、もう一つ光を手にし、シロの力が形となったアタッチメントを手にする。
NXX |
その二つを同時にバックルに装填する。
背後に現れる二つの虚像。
それぞれがプロト1、トゥルースフォームの姿として現れたソレは、変身の開始と共に俺に重なるように消え、新たな姿への変身を開始させる。
プロト0の黒一色のスーツの上からルプスフォームの白色の装甲と、腕、足に✕印の銀の拘束具のような布が巻き付かれ、首にも風になびく銀のマフラーが装着される。
全身の拘束具を模した装甲の隙間から蒸気が噴き出し、変身が完了する。
別世界のプロトが繋いでくれた新たな姿。
自身の掌を見つめ、強く握りしめた俺はもういない彼女に何度目か分からない感謝の言葉を口にする。
「……ありがとう」
また助けられちまったな。
これで、ちゃんと戦える。
『カツミ』
スーツから聞こえるプロトの声に耳を傾ける。
『今言うのもなんだけれど……』
「以前のような力は出せなくなった、だろ?」
『……うん』
……出そうと思えば出せるのだろう。
だけど、その瞬間にこのベルトはプロトの拘束を破り、あの姿になろうとしてしまう。
戦うだけで世界そのものにとんでもねぇ破壊をもたらしちまう危険極まりない力だ。
俺自身も、少なからず自制が効かなくなっちまうかもしれない。
『今、この姿のカツミはプロト1にもトゥルースフォームにも及ばない。だけど、プロト0とルプスフォームの二つの力を同時に合わせもっている』
「お前たちがいる。俺にとってそれ以上に心強いものはねぇよ」
『———! うん』
『ガゥ!!』
力が落ちてもできることは増えているはずだ。
なら、いつも通りいまできることをやり続ければいいだけだ。
軽く深呼吸をし、未だにこちらを伺っている人々の姿を確認した後に———目の前にいるヒラルダに視線を戻す。
「悪ぃ。少し手間取った。決着をつけるぞ、ヒラルダ」
「……ええ、そうだね」
彼女も困惑していたようだが、俺の言葉にすぐに意識を切り替え睨み返してくる。
数秒の沈黙の後に———俺とヒラルダは、互いに召喚した銃型のデバイスを同時に向け、その引き金を引いた。
「「———ッ」」
放ったエネルギー弾が相殺され、紫と青の光が明滅する。
同時に地面を踏みくだく勢いで飛び出した俺は、一瞬で肉薄しながらヒラルダに拳を振り下ろす。
「!?」
ガッ、という打撃音と共にヒラルダの身体が後ろへと吹き飛ぶ。
しかし、十メートルほどで勢いが止まった彼女は防御に構えた両腕を振りながら震えた声を漏らす。
「痛ぅ~!! 怪人を撲殺してきた拳は効くね!!」
「……」
今ので変身を解除させるつもりだった。
それくらいの力を込めたし、プロト0のパワーでヒラルダを倒すことはできると確信していた。
だが、ヒラルダは俺の拳を受けても堪えた様子はない。
「———君と変身して、私も強くなったみたいだね!!」
「どういう理屈だ……?」
「それが君の力だから、じゃないかな!!」
彼女が銃型の武器を持つ逆の手を開くとその手に桃色と黒色の剣———別世界の地球で俺と変身した時に使っていた『ヴェノムスライサー』を出現させ、斬りかかってきた。
こちらも赤色の剣『フレアカリバー』を召喚し迎え撃つ。
「そらそら!!」
「……」
剣戟を交わすごとに甲高い音と火花が散る。
———俺はこの面倒くせぇ奴を殺すつもりはない。
だが、意味も分からねぇパワーアップをしたこいつを手加減して無力化するのは今の俺では難しいのは分かった。
『カツミ!! 社長から緊急通信!!』
「繋いでくれ!!」
ヒラルダが繰り出した突きを弾き返し、逆の手で放たれたエネルギー弾を拳で地面に撃ち落としながら繋がれた通信に応答する。
『カツミくん!! 君の帰還を喜びたいところだが、どういう状況だ!!?』
「見ての通り、別世界から帰還した直後にヒラルダと交戦中だ!!」
『ツッコミどころ盛りだくさん!? いや、まずそれよりも先にすぐにレッド達を送る!!』
「いいや!!」
振り下ろされた剣にこちらの剣を合わせ、鍔迫り合いのような態勢になりながらヒラルダの———仮面の奥の目と視線を合わせ、叫ぶ。
「この破滅願望持ちの大馬鹿野郎は俺がぶっ飛ばす!!」
「お、おおばっ!?」
「隙ありだコラァ!!」
ヒラルダの腕を掴み、力任せに振り回し斜め上に全力で放り投げる。
「ひゃぁぁぁ~~!?」と情けない悲鳴を上げてぐるぐると回転しながら飛んでいく彼女を見送りながら、耳元に手を当てる。
「だから、今は見守っていてくれ」
『……うむ!! 事情はさっぱり分からんが、君のやるべきことがそれならば何も言わん!! 私から言えることはただ一つ!! よく無事に帰ってきてくれた!!』
「ありがとう。レイマ。心配かけてごめん」
『レッド達は私が抑えとく! 君は思う存分に戦ってこい!!』
———ん? アカネ達を抑える?
あれ、確かプロトがアカネ達が荒れているって言っていたような。
……よし、後回しにしよう。
まずやらなきゃいけねぇのはヒラルダのことだ。
「よくも私を投げ飛ばしてくれたね!!」
建物を蹴り、こちらへ戻ってこようとするヒラルダ。
その右手に握られた銃に溢れんばかりの毒々しい色のエネルギーを籠めた彼女は、跳躍と同時にそれをこちらへ放ってきた。
「久しぶりにお前の力を使うぞ」
『ガウ!』
バックルの左側面。
シロとしての力が宿ったバックルを叩き、ルプスフォームで使っていた力を発動させる。
『
黒のスーツを覆う白色の装甲が黄色に染まる。
全身から溢れだした電撃がコンクリートを跳ねる。
プロト0の力にアックスイエローの力を合わせた姿に変わった俺は、新たに出現させた武器、ライトニングアックスを豪快に振るい、こちらに迫るエネルギー弾を全て掻き消す。
「なぁっ!?」
「まだだぞ?」
『CHANGE!!
精密機動性に優れた青の姿に変わり、もう一度出現させた青の銃、リキッドシューターを放つ。
当然ヒラルダも桃色の銃で迎撃していくが、エネルギー弾に気を取られている隙を狙い一気に肉薄し———ゼロ距離で銃口を突き付け———遠慮なく引き金を引く。
「ひぇ!?」
「ん?」
放たれたエネルギー弾はヒラルダに直撃したが、彼女の身体自体が幻のように掻き消え、その後ろに怯えた声を漏らした彼女が虚空から現れる。
「ちゅ、躊躇なしとかマジ? これで弱くなってるとか嘘でしょ……!!」
「幻か」
『
炎とバランスに秀でた形態である赤の姿に変わり、炎を纏った拳を放つ。
それに対して彼女は剣と銃、そして腕から伸ばしたサソリの尾を模した武器で応戦していく。
「本当に私を殺す気があるの!?」
「あ? 何言ってんだ?」
「だって、いくら私が強くなったからって貴方なら簡単に私を殺せるはずでしょ!!」
まだんなこと言ってんのか。
振るう拳を止めずに俺はヒラルダの顔をまっすぐに見つめ返す。
「確かに、俺はお前をぶっ飛ばすって言った」
「そうだよ! 確かにそういった!!」
「だが、殺すなんて一言も言ってねぇんだこのバカ野郎が!!」
「はぁ!?」
十数メートルほどのけぞった彼女が唖然とした声を漏らす。
拳に纏わせた炎を払うように消し去り、腕を組みながら嘲笑うように声を上げる。
「テメェ、好き勝手に死ねると思ってんじゃねぇぞ」
「え、な……え?」
「自分を許せねぇから死にたい。ああ、その気持ちは分かる。だがなぁ、それをするには俺と関わりすぎたな」
「ふ、ふざけないで!!」
『
ヒラルダが怒りの声と共に跳躍する。
彼女の腕のサソリの尾が長大に伸び、蹴りの構えた右足に巻き付いていくのを目にし———こちらもバックルの両側面を同時に押し込み、技を発動させる。
『
右拳が赤く輝く。
今からするのは殺すためではなく、生かすための一撃だ。
怪人共を相手にするのとは違う感覚に任せ、俺は———こちらに迫るヒラルダの蹴りに合わせるように右拳を突き出した。
「ハァァ!!」
「……!!」
互いの一撃が激突し、毒々しい桃色と赤熱した輝きが溢れだす。
「私のようなどうしようもない悪人が生きていいはずがないでしょう!! カツミ、貴方だって私を殺したがっていたでしょ!!」
「お前、俺に構い過ぎたせいで折角のチャンスを自分から手放すことになっちまったんだよ!!」
「なにを!!」
俺に殺されたいがために付き纏ったんだろ。
後戻りできないように悪事を重ねる悪辣な自分自身を殺してほしいから。
だがなぁ!!
「俺はもうとっくの昔に———」
並行世界っつー別世界で否応なく行動を共にしちまったせいか、こいつの色々な面を知ることになってしまった。
面倒くさい。
お調子者。
変に馴れ馴れしくて鬱陶しいところ。
挙げればキリがねぇが、結局は俺も———、
「テメェに絆されてんだよバカ野郎が!!」
「——ッ」
ヒラルダの蹴りのエネルギーを拳で叩き割り、彼女を弾き返す。
地面に叩きつけられゴロゴロと転がったヒラルダに瞬時に肉薄した俺は———変身を解き、彼女のバックルを掴みとる。
「———ッ、なに、するつもり!?」
「ふんっ!!」
ヒラルダの腰に巻かれたベルトに触れ、強制的に彼女をバックルの形に変える。
人の姿から桃色と緑色の近未来模様のバックルに変わったヒラルダを、勢いのまま自分に装着する。
『ちょ、ちょっとカツミ君——』
「オラァ!! 仲間になれバカ野郎!!」
『あばばば!?』
眼前に現れたモザイク模様の半透明の壁。
それに移った桃色の影が俺の身体に重なるように通り過ぎた後———並行世界で共に戦った姿へと変わる。
「俺の勝ちだな」
『ふぇ、ぁ、あああ……! もうこんなみじめったらないよぉ、もう……!! 変身は反則じゃんかぁぁ……!』
俺の中でヒラルダが涙声で悶えている。
中々に喧しいが、もう勝敗はついてしまっているので文句は言わせるつもりはない。
「確かにお前は悪いこともしたし、中には取り返しのつかないこともしたかもしれない」
『そう、そうだよ。だから私が許されるなんてあっちゃ———』
「死んで償うなんて楽な道を選ばせねぇぞ。どんなに責められたとしても、生きて償うべきだ」
お前が死んでも俺の中に胸糞悪いものを残すだけだ。
そして、お前の中に残るものも満足感なんかじゃない。
「まず最初にすることは———風浦さんに謝れ。誠心誠意な」
『……桃子は許してくれないよ』
「だとしてもだ。許しは請おうと思うな」
『……うん』
子供のように———いや、本来の無邪気な性格のまま頷いたヒラルダ。
ヒラルダは、それだけのことをした。
だから、まずはそれを償っていかなくちゃならない。
……だけどまあ、なんだかんだで俺も絆されちまったからな、その助けぐらいはしてやるつもりだ。
前に書いた活動報告が2015年……?
新形態の“プルートルプス”でした。
プロトルプスだとそのままかなと思い、旧型のプロトゼロをいい感じに解釈してプルート(冥王)にしてみました。
今回の更新は以上となります。