追加戦士になりたくない黒騎士くん   作:クロカタ

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二日目二話目の更新となります。
前話を見ていない方はまずはそちらをお願いします。

先日に引き続き追加の挿絵、Twitterにて二つほど公開いたしました。
・参上ジャスティスクルセイダー
・VSマグマ怪人
https://twitter.com/koxHhDrnIZIMYJZ




そして、モータルイエロー視点の閑話、後編となります。


閑話 モータルイエローの決断 後編

 黒き巨人、というにはあまりにも小さくなったゼグアルの姿を見て、一瞬呆然とした私の頭に沸々とした怒りがこみ上げた。

 私たちが変わってしまったあの戦いの時、ゼグアルはどこかへ消えた。

 まるで敗北した私たちを見捨てるように、変わり果ててしまったことを責めるようになにもしなかった。

 それが、どうして今出てきた。

 星界エナジーを単独で生成できるやつが現れたからか?

 

「———ッ、ゼグアル!! 今更出てきて何の用!?」

 

 怒りに支配された思考のままゼグアルに食って掛かろうとした私だが、それよりも早くゴールディが手で制す。

 

「落ち着くのだ。……見たところ、彼は普通の状態ではない」

『……その通りだ。我はブルーに宿った力の一端。我が本体は依然として“神位星界(ステアエリシア)”へ囚われたままだ』

「いきなり専門用語も飛び出してきたぞ」

 

 囚われてる……?

 待って、まさかあの時から囚われているってこと?

 

『すまなかった。我が不覚を取らなければお前たちが悪に堕ちることなどありえないはずだったのだ』

「まずは事情を話しなさいよ。あんたを怒るかどうかは、それから決める」

『うむ』

 

 一先ず落ち着いた私に、少しだけ安堵したゼグアルはその場にいる私たちを見回した後に響くような声を発する。

 

『全ての始まりは、お前たちが滅亡しかけた星———アルファへと目覚めた少女を救う任務を受けたことがきっかけであった』

「忘れもしないわよ……!! あの任務からレッド達はおかしく……」

『いいや、君達の本来の力ならばアルファの少女も、滅びゆく星も救えたはずだった』

「……は?」

 

 救える、はずだった?

 でも待って、滅びゆくアルファの少女?

 

「待って、私は黒騎士を倒すために……」

『それらはお前たちが巨悪に敗れたという悪に堕ちるがための理由にされた偽りの記憶だ』

 

 偽物の、記憶?

 そんなはずがない、と記憶を巡らせてみるが……確かに、黒騎士に負けたという認識があるだけで具体的にどう負けただとか、どういう風に恨みを持つようになったのか全然思い出せない。

 

「なんで、こんなことに気づけなかったの……? そうよ、だって黒騎士はあの時子供で……自分自身の歌で星を……」

「認識改変か?」

 

 穂村克己の指摘にゼグアルは首を横に振る。

 

『そこまで高度なものではない、が。それに近い洗脳を行ったことは確かだ。……そして、なぜそうなってしまったのか。全ての原因は我らの力を司る“星界エナジー”が、奪われてしまったからだ』

「……え」

『次元の虫、悪食の渦、隠れし者、数多くの名で呼ばれる星界エナジーを付け狙う星雲に巣食う者———我々は奴らを星界を食らう群れ(スタバーズ)と呼んでいる』

『スタバーズ……?』

 

 仰々しい名を並べながらゼグアルは続けて言葉を口にする。

 

『君達がアルファの少女の力……いいや、あの状況では彼女の能力がアルファの中においても非常に危険なものだったこともあり、君達の補助をしていた私は隙を突かれ星界エナジーの支配権を奪われ、その影響は君達にも起きてしまった』

「まさ、か」

『そして、支配権を乗っ取った奴らは君達の精神を汚染し、星界戦隊の力すらも手中に落とそうとしたのだ』

 

 そうして私たちは精神操作を受けて悪に堕とされたってこと……?

 それじゃあ、私があれだけ目の敵にしていた序列八位の黒騎士は……

 

「私たちが助けられなかった……子供のアルファだった……?」

 

 認識した瞬間、記憶が思い起こされる。

 大地を逆転させ星そのものを破滅させる力が渦巻く中で、頭を抱えて私たちに助けを求める女の子の姿。

 それが、あの八位の成長した顔と重なってしまった。

 それに対して私はなにかしてあげるどころか、なにもできていなかった。

 

「っ」

 

 じゃあ、どうして八位は私たちと関わってきた?

 復讐? いや、まさか……私たちを守っていた?

 普通ならありえない可能性。

 八位は普通にレッドの身体を壊したりしていたし、なにを考えているのかも分からない。

 だが、その可能性を考えた瞬間に、ぐらりと身体から力が抜けそうになる。

 

「ちょ、イエロー大丈夫!? 立てないなら座りなよ!」

「だ、大丈夫……ちょっと立ち眩みがしただけだから……」

 

 取り返しのつかない勘違いを抱いていた衝撃で精神的に打ちのめされながら、私はなんとか両足で立ってゼグアルを見る。

 

『封印されかけ、精神を汚染された君達を前にした私にとれる手段は限られていた。しかし、最後の力を振り絞り、君の汚染を一手に引き受け、今まさに心を壊そうとしたブルーに私の力を僅かに託した』

「兄さんの……」

『私が出てこれたのは、そこにいる彼女のおかげだ』

 

 ゼグアルがカゼウラを見る。

 カゼウラはいきなり話を振られて驚きながら「いえいえ!?」と手を横に振っている。

 

『だがそれで君たちの状況を解決できるはずもない。可能なことといえば、ブルーの壊れた精神を癒し、来たるべきその日までに守ることだけであった』

「……待って、それじゃあ」

『ああ』

 

 私に真っすぐ視線を向けゼグアルが頷く。 

 

『君の兄はまだ助けられる。———これは、君達を星界の戦士として選んだ私の最後の償い』

 

 兄さんが、助けられる。

 今度こそ足に力が入らなくなって崩れ落ちかけたところを、ヒラルダの小さな身体が支えてくれる。

 

『そして、君の兄を救うのは新生した星界雲器(ステアスピリチア)。君にかかっている』

「わ、私に? わ、わぁ、いきなり責任重大……」

 

 あたふたとするカゼウラ。

 彼の話にゴールディが一歩前に出て質問を投げかけようとする。

 

「ゼグアル、質問をさせてほしい。星界エナジーとはなんだ? エナジーコアとは異なるエネルギーを放出することはこちらも理解しているが、このエネルギーはあまりにも生物的(・・・)とさえ思える」

『……』

「星界エナジーはエナジーコアに限りなく近いなにかを感じる。科学者としてこのようなことを口にするのは非常に業腹この上ないが、このエネルギーは理論や科学を超越したものがあるような気さえしてくる」

 

 私たちも星界エナジーについて知っていることは限られている。

 星界剣機に搭載されていた星界核を通して星界エナジーが供給され、それらが星界剣機と私たちのスーツに力を与える。

 そのエネルギーの根源がどこからきたのかを、ゼグアルは私たちには話していない。

 

『ふむ、君達には話しておくべきだろうな。なにより、奴らの手に堕ちた星界戦隊を救ってくれた恩がある』

 

 ふよふよと浮いたまま、ゼグアルは自身の胸にあたる部分を指さす。

 

『そもそも星界エナジーは、我が種族『星界人』が持つ生命エネルギーだ。元々は()宇宙にて原初のアルファを相手に次元宇宙のために戦っていた我々が用いていたもので、それぞれが固有の能力を持っている』

「色々と尋ねたい単語はあったが……まず!! 星界エナジーは元から生物が作り出していた力だったのか!?」

『ああ。だが激しい戦いの末、我を除いた五体の星界人は死に、その亡骸は神位星界を創造し、その空間は彼らの生命力———星界エナジーで満ちた』

 

 お、思いのほかスケールが凄かった……。

 というより、元々はゼグアルにも仲間がいたってこと?

 

「お前の言う神位星界とやらが星界人の亡骸によって生じた空間、そしてその空間に満ちるエネルギーが星界エナジー。なるほど、これでは生成や複製も不可能なはずだ。なにせ、亡骸で世界を創造するような力……いいや権能を持つ者達だ。それらを司るエネルギーを複製しようものなら神のクローンを作ることと同じということだ」

「い、一気に話のスケールがアメコミみたいになっちゃった……」

 

 ぶつぶつと考察しているゴールディと、ゼグアルの話を聞き口元を引きつらせるカゼウラ。

 穂村克己は無言で聞いているだけでなにを考えているか分からないけど、まったく理解していないという風ではないようだ。

 彼らの反応を見て、また一つ頷いたゼグアルはまた言葉を発する。

 

『星界戦隊に与えた五つの星界核は、我が五人の盟友の心臓が結晶化したものだ。そして、星界核は神位星界から星界エナジーを抽出することを可能にしており、どの次元宇宙においてもこれらは一つしか存在していない』

「……私が平行世界に飛ばされた時、星界核の調子が悪かったのはどうして?」

『恐らく、現在星界エナジーを牛耳っている星を食らう群れ(スタバーズ)の観測次元から離れたせいだろう』

 

 そういえば、ヒラルダは星界核はどうしたのだろうか?

 別に今更取り戻したいとは思わないが、今どこにあるのかは気になる。

 

「観測次元……?」

『どのような次元、時間軸においても神位星界(ステアエリシア)はただ一つだけ、そして神位星界(ステアエリシア)はあらゆる次元宇宙に“窓”を持つ。恐らく、君達が飛ばされた平行次元宇宙は、奴らが支配する場所から遠くにあったから、と考えられる』

「……そういうことだったのね」

『しかし……現在、星界核はどこに? ここには存在していないようだが』

「あー、ごめん。平行世界で困ってる人達にあげちゃった」

 

 ……え?

 並行世界に置いてきたってこと!?

 予想を通り越したヒラルダの答えに唖然としていると、ゼグアルが穏やかな声で答える。

 

『いいや、むしろ感謝している。スタバーズの支配から離れた次元で、星を救うという本来の役割を遂行している。我が友が、何よりも望んでいることだろうからな』

 

 そこまで言葉にして数秒ほど間を開けたゼグアルは、再びその星模様の口を開いた。

 

「……先ほどからちょくちょく専門用語的なものが入っているのが気になるのだが、説明してもらえるか?」

 

 ゴールディがそう尋ね、ゼグアルが答えようとしたその時、ゼグアルの身体が足先から光の粒子へと変わっていく。

 

『……すまない。もう時間のようだ』

「エッ、ちょ、ちょっと待ちたまえ!! ステアなんちゃらという言語についての説明がまだなのだが!?」

『我が本体は神位星界内の惑星の核に封印され、力を吸収され続け身動きができない。君達にできる干渉もここまでだ』

「あれぇ!? もう畳みに行っている!?」

 

 消えていく自身の身体を一瞥した後に、カゼウラへと視線を移す。

 星模様で表情こそ分からないが、その雰囲気は私と兄さんが初めて会った時と同じ穏やかなものだった。

 

星界雲(ステアスピり)……いや、君の名を聞いても?』

「か、風浦桃子です」

『カゼウラ・モモコ。我々の不始末に君を巻き込んでしまい申し訳ない。無理にその力を使う必要はない。他者に強いられ、使うのではなく君が、君の心が望むがままに用いてこそ、星界はより強い力と輝きを示すのだ』

「……はい」

 

 満足したように頷いたゼグアルは、次に彼女の隣にいる穂村克己を見る。

 数秒ほど無言のまま見つめた彼に穂村克己も首を傾げる。

 

『地球の強き者達よ。カゼウラ・モモコの存在はこの私にとっても想定外だ。原初の双翼が発生した特異宇宙だからこそ起きた奇跡かは判断できないが、彼女が力を持ったことには必ず理由がある』

「「「……」」」

『いずれ、奴らも本腰をいれて地球に攻め込んでくるだろう。星界雲器を攫うために、それまでに備えておけ———恐らく、既に奴らは地球に魔の手を伸ばしている、からな』

 

 そこまで言葉にしてゼグアルは光の粒子となって消えてしまった。

 元より、力の断片といっていたので文字通りに最後の力を振り絞ったのだろう。

 

「風浦さん、大丈夫ですか?」

「いやー、なんか状況に慣れ過ぎてもう驚いていいのか分からなくなっちゃって……はぁ」

 

 これからの戦いはカゼウラモモコ……彼女を中心に起ころうとしているのかもしれない。

 私はどうするべきか……だなんて考える必要はないか。

 兄は目覚めさせることができるかもしれない。

 そんな可能性が出てきたのなら、私も力を尽くしたい。

 

「ねえ、ヒラルダ」

「んー?」

「ソーリア」

「んん?」

「ソーリア、それが私の名前。これからはモータルイエローじゃなくて、そう呼びなさい」

 

 そのために私は自分の名を明かす。

 かつて、なにもない惑星で兄さんと共に生きていた時の、私の名前。

 死んで償うためじゃなく、生きて償っていこう。

 モータルでもなくリリーフでもない、ソーリアとして私は戦う。




星界関連設定開示回。
ゼグアルは初代星界戦隊の追加戦士枠みたいな立場のキャラでした。
マスコット枠だったり、ウルトラマン枠になれたりと結構属性が多いキャラだったりします。

スタバーズの名前に関してはほぼ造語。
Stella/vore/ s をなんかそれっぽく読んだ感じです。


今回の更新は以上となります。
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