追加戦士になりたくない黒騎士くん   作:クロカタ

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 お待たせしてしまい本当に申し訳ありません!!

 今回は風浦さん視点でお送りします!


変身 ジャスティスピンク!

 幸か不幸か、私はステアスピリチアという存在になってしまったらしい。

 つい一年前まで普通のオタク趣味のある大学生だった私がこんなアメコミ主人公みたいなことになっている事実に何度も現実逃避したくなったけど、現実はどんなにあがいても現実のまま変わることはない。

 変なエネルギーを作れるようになってしまったこと。

 私に酷い目を合わせたヒラルダと、不思議な関係になったこと。

 そして、あの黒騎士くんと、ジャスティスクルセイダーと知り合いになったこと。

 

「フッ」

 

 目の前で生身(・・)で鈍い輝きを放つ刀を振り下ろしたアカネちゃんが、コンクリート製の円柱を斜めに斬り裂く。

 私でも目視できる―――ううん、むしろ遅いとさえ思える緩慢な振り下ろし。

 刀の重さを感じさせない軽い動き、踏み込みと共に流れるようなまるで踊りを見せるように斬撃を彼女は連続で振るっていく。

 その動きには矛盾が存在していた。

 刃物で物を切るにはある程度の力が必要だと私は思う。

 そして、動画とかでよく見る刀で竹を切るものでは、達人の振る刀はどれも目にも止まらない振り下ろしを放つ。

 だけど、彼女———新坂朱音の見せた常軌を逸した技は違う。

 遅い振り下ろしのはずなのに、円柱がバターのように切り裂かれる。

 脱力しているにも関わらず、その動きには一切の乱れもない。

 完全な軌跡、それも刀を軽く握るだけの脱力を維持したまま振るっている。

 

「「……」」

「おお……」

 

 ジャスティスクルセイダー第二本部の訓練場でその光景をヒラルダと並んで見ていた私は二人揃って絶句していた。

 明らかに人間の領域を超えた神業を当たり前のように繰り出しているアカネちゃんが普通に怖かったからだ。

 ヒラルダに至っては普通にビビって震えている。

 そして、隣で端末を持ちながら観察しているカツミ君は普通に感心していた。

 

「ふぅ、どう? 桃子さん、参考になった?」

「うん、ならないね!?」

 

 刀をゆっくりと納め、凄まじい集中でかいた汗を手渡されたタオルで拭ったアカネちゃんは笑顔でこちらを振り向く。

 いや、動きを見てみたいって頼んだ私も悪いけどさぁ!?

 同性ということもあり、下の名前で呼んでもらうようにお願いした手前、思わず敬語になりそうなくらいの貫禄が出ちゃってる。

 

「控え目に言うけど、アカネちゃんは人間に許される動きを分かって欲しい」

「これを参考にしてもらえると思う思考がもうドン引き」

「あはは……」

 

 実際、スーツなしの生身でこれだけのことをしているのがもう凄い。

 生身で怪人を倒せるレベルの達人という時点で大分人間離れしているはずなのに、まだ強くなろうとしているのかこの子は。

 

「私もアサヒ様……スーツに宿る意思に手解きを受けたからここまで戦えるようになっただけだよ。桃子さんにとってのヒラルダみたいな感じかな」

「うちのコレにあんなことをできる技量はないよ」

「事実だけど酷くない桃子?」

 

 聞けばアカネちゃんの着ているスーツに搭載されたエナジーコアにはアサヒ様と呼ばれる意思が宿っているらしく、その人に夢という形で闘い方やら色々を教わっていたらしい。

 つまり、今の一連の動きは特殊能力でもなんでもなく人間が可能とする動きと力で繰り出された純粋な技量ということになる。

 ……うん、おかしいね、人間技とは思えないね。

 

「俺にはできない技術だな。こういうのってあれだな、見ていて惚れ惚れするってやつだな」

 

 カツミ君も感心したように彼女の技を褒める。

 それに見て分かるくらいに照れるアカネちゃん。

 

「でへへ……まー、といっても生身で戦えるように訓練するようになったのは、侵略者が現れてからなんだよ」

「そうなのか? ……いや、あのことがあったからか」

「うん」

 

 あのこと? なにかあったの?

 神妙な表情になるカツミ君にアカネちゃんは頷く。

 

「もう二度と、変身できないことで不覚をとるなんて経験したくないからね」

「あまり根を詰めすぎるなよ」

「知ってる。てかカツミ君に言われたくないし」

「そりゃそうか」

 

 軽く笑みを零したカツミ君が、気を取り直したようにこちらを振り返る。

 雑談ではなく、真面目な雰囲気に戻ったことで私も背筋を伸ばす。

 

「風浦さん、ヒラルダ。今から二人には変身してもらいスーツの性能テストを行うことになっています」

「うん」

「ですが、これで貴女を戦いに参加させるわけではありません。貴女自身が扱う星界エナジー、そしてヒラルダの力でどれだけのことが可能か不可能か、それらを見極めることが今回のテストの目的です」

 

 私は戦う必要はない。

 念押しにそう語ってくれるカツミ君の気遣いをありがたく思いながら、その一方で私にもなにか力になれるのではないか、という思考も過る。

 

「……よし、ヒラルダ。お前も頼んだぞ?」

「任せておきなさいって」

「危なそうだったら、こっち側で俺側に強制変身するからその時は色々覚悟しておいてくれ」

「ふぇ……任せておきなさいってぇ」

 

 自信満々だったヒラルダの身体がスライムみたいにぷるぷると震える。

 

「アカネ、俺たちも上に戻るぞ」

「うん! ……あれ、私ちょっと秘書っぽくない?」

「秘書というより用心棒だろ」

「……」

「そんなショック受けるほど……?」

 

 一瞬で真顔になるアカネちゃんにビビりながらカツミ君は管制室へ続く扉へと向かっていく。

 訓練場に残されたのは私とメカフクロウ状態へ変わったヒラルダだけだ。

 

「桃子、準備はできてる?」

「そんなのいつだってできてないよ。でも、やるよ。私は」

「……うん、安心して。私が補助する」

 

 ヒラルダの言葉に頷き、左手を前に差し出す。

 瞬間、宙に飛び上がったフクロウ状態のヒラルダが変形し、手首を覆う変身用のチェンジャーへと変形する。

 

JASTICE CHANGER(ジャスティスチェンジャー)

 

「ふぇいく、ふぁいぶ……?」

 

 電子音声染みたヒラルダの声がチェンジャーから発せられたことに困惑し、私は側面のボタンを押す。

 すると、チェンジャーの時計部分が展開するように開き、内側からフクロウを模したアイコンが飛び出す。

   

 

 

   

「え、これなに? ど、どうするの?」

 

 前に一回変身した時はこんなのなかったよね!?

 突然の変身要求にあたふたとすると、チェンジャーからヒラルダの声が聞こえてくる。

 

『真ん中のマークに指を添えて認証!! それで変身できるよ!!』

「前と違くない!?」

『ゴールディが追加した方がいいからって……』

 

 あの社長さんなにやってるの!?

 でもいう通りの手順でやらなきゃ変身できなさそうなので、恐る恐るフクロウのアイコンに人差し指を添える。

 

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「わわっ!?」

 

 アイコンを中心にチェンジャーが変形し、光と共にスーツを生成する。

 それらは五色の輝きと共に私のつま先から頭までを光で覆っていき、ジャスティスクルセイダーと同じ姿をした桃色の戦士の姿へと変えてしまう。

 

『CHANGE → UP RIGING!! SYSTEM OF JUSTICE CRUSADE……!!』

 

 変身が完了し、視界がクリアになる。

 あらためて自分のスーツに覆われた身体を確認してなにも異常がないことを確かめるけど……。

 

「私、本当に変身しちゃっているんだ……」

 

 ジャスティスクルセイダーの技術ではなく、侵略者由来の変身だけれど、それでも姿が同じ。

 

「……」

 

 試しに訓練場に落ちている石ころを拾って思い切り握ってみると、あまりにもあっさりと手の中で石ころが粉々になる。

 力もものすごい……!?

 その場でジャンプしても軽く5メートル以上は飛んでしまう。

 

『風浦氏、身体の方は異常はないか?』

「ふぇっ」

 自分の変化に集中しているところに社長さんの声がマスク内に響いてくる。

 訓練場上方の管制室でカツミ君たちとデータ取りをやっているであろう彼に、私は慌てながらも返答する。

 

「は、はい!! 異常はないです!! 今のところ!!」

『うむ。こちらからも異常はない。とりあえず軽く動いて調子を確かめてみてくれ』

「はい」

『だが、少しでも体調に異常、違和感などがあったらすぐに報告してくれ。すぐさまカツミ君とレッドがそちらへ向かう』

 

 社長さんの言葉に頷き、軽く深呼吸をする。

 そして掌を目の前に出して力を出すイメージで星界エナジーを発動させる。

 

「むむっ」

 

 掌から発せられたのは桃色を基調にした五色のエネルギー。

 照らされたライトのように放たれたそれは訓練場に設置された的や壁に当てられるが、特になにか変わった気配はない。

 

「あれ、おかしいな……星界エナジーって重力とか色々操れるんじゃ……」

 

 私の中のエネルギーが垂れ流されている時は普通に無重力空間とか作り出していたし、できるはずなんだけど。

 でもオブジェクトも重力で浮かんでいる気配はない。

 

『桃子っ、さっきレッドが切り裂いた的を見て』

「え?」

 

 スーツから聞こえてくるヒラルダの声に耳を傾け、そちらを見る。

 そこには先ほどアカネちゃんが切り裂いた的が、まるで何事もなかったかのように斬られる前の状態に戻っているではないか。

 

「え、直ってる……?」

『こちらでも現象は確認した。こちらで破壊したオブジェクトを出す。もう一度頼む』

「は、はい」

 

 それから訓練場に出された破壊された的、訓練用のエネミーなどに星界エナジーの光を当てると、光と共に元の姿に戻るということが分かった。

 時間が巻き戻るような再生、ではない。

 光を当てると一瞬にして元の姿へ戻るという感じなので、原理もへったくれもないものだ。

 

『モータルイエロー……いや、ソーリア君、この現象を君はどう見る?』

『私たちの時と同じね。星界エナジーは本人が力を使うまではどんな特性を持っているか分からない』

 

 マスク内に社長とこの前顔を合わせたモータルイエロー、今はソーリアさんと呼ばれている人が会話をする。

 私に聞こえているということは、こちらにも聞こえるように話しているとみてもいいのかな?

 

『だけど、この子の力は……兄さんの再生ともちょっと違う。治しているというより、元に戻しているって表現の方が適切かも』

『ふむ。私にもそう見えた。だとすれば……』

 

 そこで思考するように一拍置いた社長さんは私に話しかけてくる。

 

『風浦氏。君の星界エナジーとしての力は、再構成とみた』

「再構、成?」

『破壊された物質の修復といえば簡単だが、実際のところはそれ以上に高度な力と見てもいい。いわば君は破壊された物を元に戻すことが可能ということだ』

 

 日常的には便利そうな力だけど……。

 

「戦える力じゃなさそうですね」

『ああ、だがそれ以上に凄まじい力だ』

「えっ」

 

 軽く落胆して呟いたけど、社長さんはそう思っていない。

 いや、それどころか驚嘆している。

 

『我々の戦力には戦う者が揃っているが、その一方で守る者はいない。それを平時は私とスタッフで補っているのだが、君の力があれば街の修復も思いのままだ』

「……あ」

『気づいたか?』

 

 確かにこの力を使えば侵略者や怪人に壊されたビルも、家も直すことができるかもしれない。

 私の力を誰かの役に立てることができる……?

 

『だが、いくら君の力が有用でも我々はその力に依存するつもりはない』

「え、どうしてですか!?」

『君は我々ジャスティスクルセイダーが護るべき一般人だからだ。どのような理由があろうと、君の意思を無視して戦いに駆り出すような真似はするつもりはない』

 

 私の意思、か。

 ということはアカネちゃん達は自分の意思で選んで戦っているってわけなんだね。

 私自身安易に決めて良いわけじゃない。

 ちゃんと考えて、両親とも相談して自分自身のこれからを決めていかなくちゃならない。

 




戦闘員は足り過ぎているので風浦さんはサポート要員になりました。


次回の更新は明日の18時を予定しております。
※※※

いくつか趣味ついでに自作フォントを作成いたしましたが、絵が潰れたりそもそも公開する機会すらないと思ったので、いっそのことこの場で公開しちゃいます。

・ガッチャ―ド第一話公開記念



・ウォルターおじさん




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