今回はカツミ視点でお送りいたします。
久しぶりに私物の買い物というものをしたわけだが、結構疲れるもんなんだな。
記憶を失っていた時はちょくちょくハクアと買い物に行ったわけだが、こういう大型の店は歩くところが多くて大変だ。
最初に本屋に行ってあとは適当に見て終わり、かと思いきやその後にスポーツショップにいって服を見たり、ペットショップを見たりで結構疲れてしまった。
あとは電化製品とか売ってる家電量販店も見にいったが、普段が普段で安い家電しか買っていなかったので最新式のそれを見て滅茶苦茶驚いたりもした。
『かつみんかつみん』
『かつみん言うな。……なんだ?』
『やっぱり動物飼わない?』
『命を預かるようなもんだから簡単に飼うなんて言えねえだろ』
『きゅん』
『おい、なぜ今ときめき音を?』
『大丈夫。迷惑かけないから』
『なあ、流れ的に俺の部屋で世話をする動物の話をしているよな? そうだよな?』
会話が噛み合っているようで致命的な食い違いが起こっていないかこれ?
てか、もしかしてこいつ独房時代みたいに俺の部屋に襲撃をかけようとしている?
『新しいPCを買うなら本当は組み立てるのが性能とか諸々を自分でいじれるのでいいんですけど、そこまでこだわらないならノートPCとかそのあたりを選んだ方がいいですね。たしか今お部屋で使っているのはデスクトップでしたよね? こっちなら持ち運びもできますし、気軽に扱えます。次にどれを選べばいいかということですが、前提としてCPUは比較的高性能なものを選んで、あとはキーボードの感じとか、本体の重さとか好みのものを考えたり……私のおすすめでよければ、そちらを選んでもらっても構いません。あっ、初期設定などは私にお任せください。ええ、その際はお部屋にお伺いします。いえいえ、社長さんのお手を煩わせる必要はありません。もし配信などに興味がおありでしたらその分野についても造詣が深いのでなんでも、なんでも相談してください。私としては雑談とかゲーム配信とかのコラボを一緒にしたい所存でして、カツミさんの趣味探しの一助にもなりますし、分からない部分は私がなんでも教えます。きっと社長さんも協力してくださるので、一度考えてみてはどうでしょう? アッ……失礼しました』
『ああ、色々よろしくな!!』
ハルがめっちゃ早口だったけど、パソコンのことについて話してくれているのは分かるので頷いておいた。
パソコンのことはよく知らないが、ハルはそのあたりのエキスパートらしいので彼女に任せようと思った。
今日は買わないが、後々ハルにおすすめのパソコンを教えてもらって、その中で選んだものを別の方法で郵送してもらおう。
「……つ、疲れた」
色々と回っているうちにお昼時になってしまったので、モール内のフードコートで昼食を食べることになったが、今日が休日ともあって結構な混み具合を見せていた。
葵とハルは二人で昼食を頼みにフードコートの列に並んで俺は荷物を持って確保した席で待っているのことになった。
「たまには、こういう日もあっていいな」
『うん。カツミにはこういう日も必要だよ』
『ガウ』
「お前達にも気遣ってもらっちまったからな」
並行世界で俺が無茶をした時、きっとプロトとシロはものすごく俺のことを心配してくれたはずだ。
そのことを本当に申し訳なく思っているし、俺自身こいつらに心配をかけたくない。
「暇だからさっき買った本でも見るか」
『なんの本を買ったの?』
「恋愛ホラー小説らしい」
『……どっちのおすすめ?』
「こっちは葵のおすすめだな」
なんかいくつか本をお勧めされたわけだが、意外にも葵が恋愛小説なるものをおすすめしてきた。
なにやら男女関係なく読めるタイプのやつらしい。
『題名は?』
「短編集“幽愛”。へっ、ホラーっつっても俺にかかれば全然平気だけどな」
試しに本を開いて読み流してみる。
【赤いラジオ】
自分のこれからの人生を考えると憂鬱になる。
二十代半ばというまだ大人としての人生を始めたばかりの時期に僕の人生観は早くも寂れかけていた。
別に働いている職場が過酷とかそういうものじゃない。
周囲の人間関係も良くも悪くもなく、かといって誰かから敵視されているわけでもない。せいぜい付き合いで飯を食べにいったりするくらいだ。
一部の他人から見れば羨ましがられるのかもしれない。
“恵まれている”と言われるのかもしれない。
実際、そうなのだろう。
僕は恵まれている。
誰からも敵視されずに、生きることに苦労せず、これからの人生を送ることができる。
朝から会社に出て仕事して、寝るために家に帰って、そしてまた会社に行く。
現状を変えたいと時折思うことはあっても、そんな決断力が自分にはないのが一番自覚している。
今の安定した職を手離す勇気も、そうする理由になる家族も恋人もいない。
なにをするにも理由をつけて諦めて内心で愚痴を垂れ流し腐っていく。
それが僕「卯月幸助」という人間の全てであった。
「同じ人生、か」
いつもの帰り道。
音を鳴らし道を閉ざす踏切の前で足を止め、ふとそんなことを呟いた。
昼と夜の狭間、朱色に染められた夏の空を見上げた僕はため息をつく。
「俺は、なにがしたかったんだろう」
小さなころの自分には夢があったはずだ。
子供らしい憧れのままに抱いた夢はいつしか現実に押しつぶされて、今の僕になった。
今では希望もなにもなく、同じ毎日を繰り返しているだけ。
「はぁ・・・」
本当は自分でも分かっている。
僕は今の生活を変える勇気もない。
だから、そんな自分を呪って鬱々とした毎日を送っていることを。
踏切が上がり、ようやく前へ歩き出す。
駅近くの微妙に人がいるいつもの商店街を進みアパートへの帰路を歩いていく。何年か前は人で賑わっていたはずの商店街は今では見る影もなく、立ち並ぶ建物にはまばらに店が開いているだけで賑わっている気配はほとんどない。
いつしかここも消えてしまうのだろうか。
そう考えると心に一抹の寂しさが沸き上がる。
「・・・?」
人のいない、誰の需要になっているかすら分からないリサイクルショップ。
使い古された雑貨が置かれたその店を通りかかった時、古びた赤模様のそれを見つけて足を止める。
「ラ・・・ジオ?」
ガラクタを売っている場所に置かれているとは思えない真新しい真っ赤なラジオ。
店の前の棚の中でひときわ目立つそれはなぜか目を引くような存在感を放っていて、俺は魅入られるように足を止め、引き寄せられるように店に近づいた。
「ラジオ、ね」
正直、自分から進んで聞いた時はない。
小さい頃に両親が運転していた車の中で聞いていたくらいか。
見た目は新品同様。
掌二つ分くらいの大きさの真っ赤なラジオにはほとんど傷もない。
「・・・」
いつもと変わらない帰路の最中に見つけたラジオ。
基本、無趣味な自分だがこういうことがきっかけでなにか趣味を見つけられるかもしれない。
ある意味で運命的ななにかを漠然と感じた俺は、そのラジオを手に取った。
「興味あるの? それ?」
耳元で囁かれた声に肩が跳ねあがる。
危うく売り物のラジオを落としかけながら声のする方を見ると、そこには赤いワンピースを着た黒髪の女性がいた。
手元のラジオと同じ、目に焼き付くような鮮烈な赤色。
普通ならけばけばしいとかそう思ってしまうのだけど、不思議とそうは思えずそれどころか僕は・・・。
「・・・」
身惚れてしまった。
真っ黒な髪と瞳に人形のように整った顔立ち、だけど人形ではない柔らかな笑みをうかべている彼女になにも反応を示すことができずにいると、彼女はおかしそうに微笑んだ。
「驚かせちゃった?」
「いえ」
かろうじて返せたが、うまく声にできただろうか。
夕焼けの商店街を歩く人々は目もくれずに道を進んでいくが、僕と目の前の女性の時間だけが止まったかのように無言の時間が続いてしまう。
「古いラジオだよね」
不意に彼女が僕の手に持つラジオを指さす。
「見た目も汚くて、使えるかどうかも分からない。君もそう思う?」
「・・・いいえ。とても綺麗だと思います」
「どうして?」
彼女は不思議そうに首を傾げる。
「これは・・・きっと、大切に使われたものなんだと思います」
「・・・」
うまく言葉にはできない。
だけど、壊れているとかそういうのではなく、これは大事に使われたということは分かっていた。
「これ買おうと思います」
「・・・」
自分に骨董品収集とかそういう趣味はないけれど、今日目についた時から僕はこのラジオから目を離せなくなってしまっていた。
これを買って代わり映えのしない日常が変わるわけじゃない。
自分の人生をやり直せるわけでもない。
だけど、それでも・・・。
「僕は・・・あれ?」
「・・・」
続きの言葉を口にしようとして顔を上げると女性の姿は消えていた。
周囲を見回しても後姿すら見つけられない。
「からかわれたのかな・・・いや、それ以前の問題か」
「・・・」
一目惚れ、なのかもしれない。
自分がそこまで惚れっぽい性格でもないので、状況がそう思わせたのかもしれない。
そう思って額を押さえようとして手元のラジオに気づいて苦笑する。
これもなにかの巡り合わせってやつだ。
買うと言葉にも出してしまったし、買おうか。
「・・・フフッ」
そこまで読んで本を閉じる。
「……導入は普通の恋愛っぽいな」
『ふ、普通? え、どこが? カツミ?』
『フッ、葵もまともなもんを勧めてくれるじゃねーか』
人生を惰性で過ごして腐っていく日常を過ごしていた主人公が赤いラジオを見つけたことをきっかけに人生を変えていくラブストーリーってやつか。
どこがホラーか分からなかったが、主人公がどうなるか気になるし、後で読もう。
「ちょっと気を付けなさい? 危ないから」
「だいじょうぶー」
「ん?」
と、そんなことを考えていると、トレーを持った子供が母親と共に近づいてくることに気づく。
家族で来たのだろうか? 母親も二つの料理がのせられたトレーを持ち、その前を上機嫌な様子の男の子が歩いている。
「あっ」
トレーを持って俺の座っているテーブルの傍を通っていた男の子が足をもつれさせ転びかける。
それに気づいた俺は、咄嗟に男の子の身体を支え、手を離れ床に落ちようとするトレーをキャッチし、中身が零れないようにバランスを取る。
「っ、ああ、ごめんなさい!」
「いえいえ。……大丈夫? 怪我はないか?」
慌てて謝ってくる母親に答え、トレーを持ち直しながら立たせた男の子に怪我がないか確認していると、俺の顔を見て驚いたように口をぱくぱくとさせている。
……いや、まさか俺だって気づいた? 至近距離だから軽い変装じゃバレちまうのは仕方ねぇけど……こんな子供にまで俺の顔が覚えられてんのか?
「……っ、えっ!? く、くくろ……」
こんなところで周りにバレたらパニックになりそうなので、俺は咄嗟に口に人差し指を立てる。
「俺のことは秘密にな」
「う、うん」
頷いてくれた男の子にトレーを渡す。
「お母さんの言うことはちゃんと聞くんだぞ?」
「……うん!」
「もう、すみません!! ありがとうございます!!」
幸い、母親の方は気づいていないのかものすごく謝ってくれた後に、男の子と共に自分たちのテーブルへと移動していく。
こちらを振り返る男の子に軽く手を振りながら———少しだけ物思いに耽る。
「……」
両親と一緒にいる子供の姿に幼い頃の自分の姿を重ねて、苦笑する。
ああ、少し忘れていたけれど、似たようなところに来たことがあった気がする。
今では遠い昔の記憶で、過去のトラウマもあって思い出そうと思いもしなかったが……あの時は家族皆で笑い合っていたんだよな。
「思い出、か。忘れていたな」
でも、今それを思い出せるのはそれくらい今の自分に余裕があるってことなんだろうな。
黒騎士時代のように常に追い詰められたものではなく、他の人を頼ることを受け入れることができた。
「椅子に座るか」
そう思い、席に戻ろうとしたところで俺の視線の先を大男がよぎる。
日本人離れした体格に金色の髪、それだけなら別に気にしなかったが身に纏う雰囲気に俺は目を見開く。
「……っ!!」
そいつを視界にいれた瞬間―――危険な気配を感じ取る。
怪人ではない、侵略者と似た雰囲気に一気に焦燥した俺は背後の大男を見据え、そいつのいるテーブルへと足を運ぶ。
「水もうめぇとはさすがだな、ここは……って、ん?」
男の座った席にも大量の袋が置かれており、ここで買い物をしていたのが分かる。
ただこれだけならシンプルに買い物に来た宇宙人という線もあるが、それにしてはこいつは
「まさか、ここで遭遇かよ。ハッ、相変わらず
目の前にいる俺を見て好戦的な笑みを浮かべる男。
この様子からして俺のことは知っているようだが……こんな人の多いところでなにを企んでいる?
「お前、侵略者か?」
「ハネムーンだ」
「……は?」
「俺は愛する女と地球へのハネムーンでここに来た。侵略者じゃあねぇよ」
……。
……、……。
んんん?
『『……』』
斜め上の男の返答に警戒するように威嚇していたプロトとシロも唖然としている。
ハネムーンってあれだよな? 婚約祝いの旅行みたいなやつだよな。
……どういうことだ?
いや、真面目にどういうことだ?
でも顔とか見る限りマジっぽいぞ。
確かに侵略者以外にも宇宙人がいるわけだし、観光目的で地球に遊びに来てもおかしくない。
「そうか、邪魔して悪かった。奥さんとお幸せに……じゃ、俺はこれで……」
「いや、待て。いい機会だ。話をしようじゃねぇか」
なんか気まずくなって席をあとにしようとする俺を男が呼び止める。
「お前はかの有名な黒騎士だな」
「……それがどうした」
「戦士の目つきに変わったな。……そうだな、お前に会ってみたかったから、と言ったらどうする?」
「は?」
「まあ、座れよ。立ち話も疲れるだろ」
俺と会おうとする宇宙人って時点で普通じゃないだろ。
警戒しながら椅子を引いて腰を下ろすと、男は紙コップの水を一気飲みした後に自身を親指で差す。
「俺は星将序列九位だ。ま、特に星とか生き物を壊したわけじゃねぇし、勝手に繰り上がったようなもんだけどな」
「九位が何の用だ? ここで騒ぎでも起こそうっていうのか?」
「言っただろ。ハネムーンだってよ。ありゃマジなんだぜ? 俺たちは全身全霊でこの地球という星を楽しんでいる」
なんなんだこいつ。
「ま、ルイン様からのご命令はあるにはあるが、俺たちにとってはおまけみてぇなもんだ」
あいつの差し金かよ……。
最近、時折見てくるだけだと思ったが、なにやっているんだあいつ?
「俺達は無意味な破壊は好まねぇ。いや、嫌いだ。大嫌いだ。なにせ俺のハニーが嫌いだからな」
「俺のはちみつ?」
はちみつが破壊が嫌いなのか。
「はちみつじゃねぇよ。……いや、はちみつのように甘く、柔らかい黄金色で美麗でスウィートな存在っつったら間違いでもないのか? おいおい! 地球の言語は可能性の塊か!?」
「何言ってんだお前?」
「感謝する黒騎士。これでまた俺は彼女を褒めたたえる語彙力を身につけてしまった」
「何言ってんだお前?」
思わず二度言ってしまったが、こいつもしかして葵と同じタイプの言動をする奴か?
この宇宙にあいつと並ぶ思考回路をしているやつがいたことに驚愕する。
「で、なんの話をしてたっけ?」
「忘れてんじゃねぇかよ。……破壊は嫌いだって話だ」
「あー、そうそう。破壊は嫌いだ」
本当になんなんだこいつ。
今まで遭遇した序列とは違う。
「ここで暴れるつもりはねぇってことか?」
「ここでは、な」
「……」
好戦的な笑みを向ける九位を睨む。
破壊は好まねぇというわりにはなにかしらやろうとしているのか?
「ダーリーン!!」
睨み合う俺と九位。
そんな中、跳ねるような女性の声が響く。
その声にさっきまでの好戦的な笑みを、晴れやかなものにさせた九位がそちらを見る。
動きに合わせて、俺もそちらを見ると視線の先には長身のブロンドの女性———傍目に外国の人に見えるが、一目見て違うのが分かった。
「……アルファか?」
「お、そういえば分かるんだったな? 紹介するぜ。彼女が俺のハニー、アイシャだ」
……本当に観光を楽しんでいる。
めっちゃアイス買っているし、よく見たらこの二人の服装がカラフルすぎてすっげぇ目立ってる。
今更ながらその事実に気づいてちょっと引いてしまっていると、両手いっぱいに袋を持ったアイシャと紹介された女性が近づいてくる。
「ダーリン、アイス買ってきたわ!」
「随分たくさん買ってきたじゃないか」
「ねっ、もう色々な色があってもうどれ選んでいいか分からなくて大変だったわ!! だから全種類頼んじゃった! ……やっぱり頼みすぎちゃったかしら?」
二つの袋にわけられたアイスの箱。
買い過ぎなのは見て分かるが、それに対して男は怒る素振りすら見せずに女性の顎に指を添える。
「この程度のアイス、俺が全部食い尽くしてやるよ」
「ダーリン……ッ! 貴方の情熱で私まで溶けそう……!! このアイスみたいに……!!」
熱く見つめ合う二人。
……うーん。
その様子を見て俺はさっき買った小説をぱらぱらとめくる。
葵に勧められた本の一つが恋愛小説だったので、今の状況照らし合わせながらさらっと文面に目を通してから、もう一度未だに見つめ合っている二人を見る。
「なるほど、これが事実は小説より奇なりってやつなのか。勉強になる」
『シロ! これカツミの情操教育的に駄目だ!! 目に毒だよこいつら!?』
『
しかし、こんな人が集まるところで惚気るのはすげぇ勇気だな。
多分、宇宙人云々関係ないんじゃないか?
「あら、この子は?」
「フッ、聞いて驚くなよ。こいつはルイン様がお熱の地球人だ」
「まあ! 偶然!! 記念に写真をとりましょう!!」
「そうだな!」
ものすごい勢いで俺の両隣に移動してきた九位とアイシャに普通に困惑する。
肩を組み、スマホを自撮りモードにさせた九位がその長い腕を伸ばして、三人の姿を画面に映す。
「え? え? おい?」
「記念にピース!」
「はい、笑ってピース!」
「「イエェ――!!」」
「い、いぇー……」
なんか勢いに押されてピースしてしまう。
俺はもしかしてこいつらの術中に嵌っているのかもしれない。
いつも俺が打ち倒してきた怪人や侵略者は全員敵意を持っていた。
だけど、こいつらにはそれがない。
敵意どころか、善意すらも感じさせる動きで俺を独特の世界観に巻き込んでくる。
ある意味で、ルインより恐ろしいやつらというのが、素直な感想だった。
「うーん、いい写真だぜ!」
「サニーの時は親戚のおじちゃん感があったけどあれね。家族感があるわね!!」
「もう息子にしちまうか!」
「いや、待て? 待って?」
「……それすごくイイ考えね!」
「聞いているか? 俺の話?」
待て、やべぇぞ意味が分からねぇところで息子にされる!!
翻弄されっぱなしのまま、九位が真面目な表情で俺の肩に手を置く。
「というわけで、俺たちの息子にならないか?」
「いや、なるわけねぇだろ。こえーよいきなり」
「え、駄目なの!? いい家族になれると思ったのに……」
……。
「プロト、シロ。レイマに助けを求めてくれ……」
『あのカツミが折れかけてる!? シロ、信号は!?』
『
『送れてない……?』
通信を妨害されている?
俺は目の前で俺そっちのけの恐ろしい家族計画を立て始めている宇宙人カップルを睨む。
「おい、通信を妨害されている。お前らがやったのか?」
「あ? ハニー?」
「ううん?
「じゃあ、俺達じゃねぇな」
こいつらじゃない……?
じゃあ、誰がと考えた瞬間、モール内に地響きが走りたくさんの悲鳴が聞こえてくる。
それに合わせてパニックが起きるようにざわつきを見せる。
っ、なんかしらの騒ぎが起きちまったみたいだな。
「カツミ君!」
「カツミさん!」
「葵! ハル!」
昼ご飯を頼みに行っていた二人が慌てて戻ってくる。
葵は俺の近くにいる九位の姿に警戒心を露わにしながら手首のチェンジャーから抜き放った拳銃を向ける。
「この騒ぎは貴方達が?」
「切り替えすげーな。殺し屋かよ。だが、ちげーよ、生憎俺達も知らねぇ」
「……カツミ君」
「多分、こいつらは関係ない。それより通信が妨害されて———」
――いる。と口に出そうとした瞬間、身体が僅かに重くなる。
なんだ? と思い葵達を見ると、二人だけではなく九位とアイシャまでもが自身の身体の重さに首を傾げていた。
「……重力怪人か?」
「ううん、カツミ君。この能力には覚えがある。平均化怪人だね」
葵が過去に戦った範囲内にいる生物の力を平均化させる怪人か。
「範囲はこのモール内か?」
「だと思う。対処は私に任せてカツミ君はハルを」
「お前
俺はまだ不用意に力を発揮できない。
なら、頼るべきは葵達だ。
「え、知ってたの?」
アカネとキララのことなら最初から気づいていたぞ。
あいつらは異変を感じると同時にすぐにそっちに向かっていったけど。
「まったく、心配でついてくるとかあいつらの中で俺は子供だと思われてんのか?」
「俺達の息子だがな」
「私とハルちゃんのお兄ちゃんだよ?」
「どっちの息子でも兄でもねぇわ」
なんでお互いに碌に知らねぇのに異次元の会話を展開させてくるんだこいつら。
「避難誘導は任せろ。だが、危なくなったら頼れ。俺が変身する」
「……うん。行ってくる」
葵が現場へと向かっていくのを見送る。
今、ここにいる全員の力が平均化されて、変身後もそれが変わらないわけだが———今のあいつらなら大丈夫だろう。
「お前らはどうする? ……って、いねぇ」
九位の方を見ると、その姿は既に消えていた。
平均化怪人の特殊な結界で閉じ込められているので、相変わらずこのモールにいるだろうが……。
まあ、あいつらも能力の影響を受けているなら放っておいても大丈夫だろう。
「ハル、避難誘導をするぞ」
「はいっ」
外との通信もできない今、俺達がまずするべきことはあいつらの戦いに一般人を巻き込まないようにすることだ。
俺が変身するのは最終手段だが、もしそんな状況になったら俺は躊躇なく変身するつもりだ。
平均化怪人さんの再登場でした。
そして小説に小説を差し込む変なことをしてみました。
内容は恋愛ホラーです()
今回の更新は以上となります。