今回は主人公視点です。
最初の『コメつき切り抜き動画』の再現ですが、動画内を縦にスクロールできますのでご注意をー。
| か | 蒼花ナオとしての私は黒騎士さんや姉と同じように“変身”した自分自身なんです。 当然、そこには変身前の私という自分もいるのでそれが正体がバレた程度で損なうような存在ではありません。 |
| そもそもの話バレたから皆さんにどうこうできる場所にいないので大丈夫です。 というより、それでも気に入らない方々については社長にお任せしますので心配は無用ですよ |
| か | この状況になるかもしれないことは事前に社長さんから言われていましたので、特に衝撃とかはなかったですね。 |
| 怒るべきは怪人なので姉に対しては全く怒っていません。 |
| か | お姉ちゃんと黒騎士さんのデートについてどう思っている? |
| か | ……。 |
| か | この件について一番納得していないのは私なんですが? |
| か | なにが腹立たしいって黒騎士さんとのツーショット写真を私とレッドさんとイエローさんに煽りにいくのマジで終わっていると思うんですよね |
| か | ……。 |
| か | ふぅ、この件については元から話そうと思っていたことだから大丈夫 |
| か | この後、お姉ちゃんと話すことがあるから今日はここでおしまい。活動に関してはこれからも変わらず続けていくからよろしく |
| ひ | 【公認】蒼花ナオ切り抜き チャンネル登録者数17.8万人 | aa✓ 登録済み aa |
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多分黒騎士さん一緒に買い物にいったって認識しかないんだろうなって
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「……やっぱり晴ちゃんも葵の妹なんだねぇ」
昨日のハルの生放送を切り抜いた動画を見ながらハクアがそんなことを呟きながら、コーヒーに口をつけた。
「姉妹だから似た者同士ってやつじゃない?」
そんな彼女と肩を寄せ合って一緒に動画を見ているのはアルファだ。
昼時を過ぎて客の入りがほとんどなくなった喫茶店サーサナスで、店の手伝いをしていた俺は拭き終えたテーブルから布巾を片付けながら二人へ話しかける。
「俺にしてみればお前らの方が似た者同士って感じだけどな」
「「全然似てない」」
声をぴったり揃えられてもなぁ。
「だって私、姉さんみたいにかわいくないし」
「かわいいよ。そういうなら私もハクアほど頭もよくないし」
「姉さんだって私と同じくらい勉強すればすぐに身につくよ」
しかもこいつらお互いにマイナスイメージで似てないって言い張っているわけじゃなくて、お互いに自分より優れている部分だけ見て似てないって思っているからな。
ある意味で面倒な姉妹関係だと思ってる。
「心配すんな赤ちゃん共。お前らは確かに姉妹だ」
「「どこらへんが?!」」
「俺から言わせるな」
家事が壊滅的なところとか、大食いなところとか、俺を弟にした前科があることとか、挙げるだけでもキリがない。
それが分かっているのか「うぐっ」と呻いた二人に苦笑いしながら、厨房にいるマスターに声をかける。
「マスター、テーブル拭き終わりました」
「おう。お前も手伝い通しだろ? 少し休んでいいぞ」
「それじゃあ、お言葉に甘えて」
俺の後に少し遅れてからコスモもマスターに声をかける。
「シンドウ、ボクも終わったぞ」
「ん? じゃあ、窓拭きも頼む」
「おかしいだろ!?」
「冗談だよ」
こっちはこっちで相変わらずの扱いだな。
でもコスモもマスターの冗談を分かっているのか、ちょっと怒りながらもカウンターの椅子に座る。
「まったく、からかいやがって」
「でもコスモってからかい甲斐があるの分かる」
「なんだかんだでカワイイ服普通に着てるし」
「うるさい……」
ハクアとアルファの言葉に今一度、自身の着ているメイド服なるものを一瞥し、大きなため息をつくコスモ。
嫌なら着なくてもいいとは俺もマスターも言ったんけど、なんか本人的に意地になっているようで最近はほぼ毎日着て仕事している。
「そういえば、ブルーは大丈夫なのか? 正体バラされたんだろ?」
「ん? 心配はないと思うぞ」
「うん。情報が拡散されてすぐに社長が基地内に避難させたから」
予測はされていたからな。
アカネの情報が暴露された時点で、怪人側はアカネ達の正体を把握している可能性が高いことから、アオイとキララの暴露も時間の問題なのは分かっていた。
そのための準備をレイマが怠るはずがないし、実際事が起きてから一時間も経たずに葵と———きららと彼女たちの家族が第二本部に避難させられた。
「まあ、きららに関しては……」
「あー、うん……」
「なんか、かわいそうだったね」
ハクアとアルファと顔を見合わせ気まずくなる。
アカネと葵の身分がバラされた時点で、高校在学時の繋がりやらなんやらで芋づる式にきららの正体がジャスティスイエローだと判明してしまった。
『なんかさ……!! こう思っちゃ駄目なん分かるけど……私のバレ方なんか地味じゃない!?』
あまりにもあっけなく、アカネや葵ほどの話題にすらならずに正体がバレてしまったイエローにちょっといたたまれない気持ちになった。
そしてきららがショックを受ける一方で、保護された彼女の家族はというと——、
『あらあら、ここがジャスティスクルセイダー本部なのねぇ。台所はあるかしらぁ?』
『レイマさん。貴方とは一度、ちゃんとした形でお話をしてみたかったんですよ。ああ、カツミ君も一緒にどうかい?』
『カツミお兄ちゃんだー!』
『ここならいつでも遊べるねー!』
避難生活に微塵も不安を抱いていない天塚一家のポジティブさがもう凄かった。
そして、葵とハルのご両親も———、
『賑やかなところですね』
『……機械がいっぱいだ』
『あなた、仏頂面していないでなにか喋りなさい』
『……世話になる』
『威嚇しないでください』
『……ごめんなさい』
改めて見てもアカネ達三人の家族って凄いんだなって思い知らされた。
日向家と天塚家の家族の反応を思い出し密かに慄いていると、喫茶店の扉が開かれ来店を告げる鈴の音が鳴る。
音と同時にすぐにコスモが仏頂面からにこやかな笑顔へ切り替わる。
「いらっしゃいませ、喫茶店サーサナスです!」
「ひぇっ……」
来店してきたのは丈の長いスカートに全体的に白を基調としたゆったりとした服装の20代前後の女性であった。
「? おひとりでしょうか?」
「一人です……」
肩にかかるくらいの銀髪に緑と青のメッシュが入った変わった髪色の女性は、前髪で目元を隠すように俯く。
そのまま大きめの白い手提げを抱えるように持ちながら、店の窓際の席へと案内される。
「変わったお客さんだね」
「私知ってるよハクア。あれ森ガールっていうんだよね」
「へえー」
森に行く服装には見えないな……。
ハクアとアルファの会話を聞きながら店員としてカップなどを取り出していると、戻ってきたコスモが厨房にいるマスターに声をかける。
「シンドウ、注文だ。コーヒー1、ケーキのショート、チョコ、チーズを一つずつ」
「おう」
一人で三つか。
ハクアなら五つは平気で食うからまだ普通だな。
そんなことを考えていると、どこか険しい顔をしたコスモが話しかけてくる。
「……ホムラ」
「どうした?」
「あいつ、ボクと同じ宇宙人だ」
「確かか?」
「ああ、敵意が全くなくてちょっと分かりづらかったけど」
もう一度、来店した女性を見る。
そわそわと挙動不審気味に、落ち着きがない……が、危険な感じはしない。
「お前が話に行け。ボクはここから
変形させたレオをベルトに巻き付けたコスモが、変身しないまま右目を金色に光らせる。
コスモが変身した姿で行っていた未来視ってやつか。
「ハクア、アルファ、一応レイマに連絡しておいてくれ」
「分かった」
心配はないと思うが、ここに来ている時点で偶然ではない。
警戒をしながら宇宙人である女性の元へと近づくと、一応は予想していたのか目の前に来た俺を見て顔を真っ青にさせる。
「えーっと、俺のことは知っていた?」
「……ぁい」
「ここに座ってもいいか?」
「どうぞ……」
声が小さすぎて一瞬分からなかった。
話しやすいように対面の席に座ると、前髪の隙間から金色の瞳が見える。
「貴女はなんのためにここに?」
「……ぇぁ、あっ、その……」
しどろもどろになってしまった。
……俺のことを知っているからって圧をかけるのは違うな。
もうちょっとゆっくり、優しく話しかけてみるか。
「ゆっくりでいい。……どうやってここを見つけたんだ?」
「……サニーから、教えてもらって……」
ちゃっかりこの店の場所も把握してんのかあいつ。
だがあいつの性格上、マスターを危険に晒すような奴にここの場所を教えるとは考えづらい。
もっと突っ込んでみるか。
「地球にはなにをしに?」
「……」
そう尋ねてみると、床に下ろしていた白いバックからごそごそと何かを引っ張り出す。
一瞬だけプロトとシロが警戒を露わにするが、出されたのがスケッチブックだったことから呆気にとられる。
「スケッチブック?」
震える手つきでぱらぱらとページをめくって見せる。
イラスト……じゃないな? もしかしてこれは———、
「……漫画?」
「ハイ……」
「地球に漫画を書きに来たのか?」
「ハイ……」
「この店に来たのも?」
「ぉ、ぇ……も、モデルにしたくて」
……ハッ!? 危ねぇフリーズするところだった。
九位との異次元の会話を体験してなけりゃ危なかったぜ。
軽く深呼吸したあとに、スケッチブックに触れる。
「……見てもいいか?」
「ど、どうぞ……」
許可をもらってからスケッチブックを開いてみる。
正直なところ、俺は最近になって漫画というものを本格的に読むようになったが、ちょっと見た感じは絵がすごく上手い。
内容は……虐げられていた女の子が力に目覚めて成り上がるヒーローもの、か?
「ど、どどどどうでしょうか?」
「……うーん」
「で、できれば忌憚のないご意見を……」
いつのまにか漫画家と編集の打ち合わせみたいな構図になっている。
しかし、忌憚のない意見というからに拝見する立場として応えなくては。
「まず、ちょっと描写が生々しすぎる。主人公が虐げられるシーンはこんなに尺はいらないんじゃないか?」
「ぅッ」
「そのせいで最初にあった主人公の紹介のインパクトが薄れるし、なにより主人公を虐げるキャラの紹介の方が長いしくどい」
「ァッ」
「あと主人公と虐げるやつの名前が似てるのはどうなんだ? 一文字違いって紛らわしくないか? もしかして伏線とかそういうの?」
「ぴぇ」
「他の登場人物との会話も集団でいるにも関わらず全員が主人公とだけ話している感がする」
「ふぐゅ」
「あとシンプルに説明台詞が多い。設定を詰め込みたい気持ちが先行しすぎて会話のテンポが悪い」
「へぅ」
「大事なことだってことは分かるけど、全部が全部キャラクターに説明させないで読んでいる側に興味を持たせる余地があったほうがいいって感じた」
「あばぅ」
「あと意味が分からないところにギャグが入ってシリアスにしたいのかコメディにしたいのか分からない」
「ふぇぇ」
『い、いたたまれない……いたたまれないよ、かっつん』
『カツミ、漫画は最近読み初めたけど本は結構読んでたもんね……』
『ホムラ、えげつねー』
内容はしっかりしている分、ところどころに感情が乗っている感じがする。
もちろんそれが悪いことではないし、むしろ長所ともいえるものだ。しかし今となってはその長所が足を引っ張っているように思えてしまう。
「でもキャラクターに個性があるのがすごくいいな」
「え?」
「大筋のストーリーもしっかりしてる。戦闘シーンは力が入っててすごく見応えがあるし、見ていて楽しい」
「ぇ、え、えへへ……」
「でもタイトルはもっとひねった方がいいと思う」
「フヘッ」
思いの外真面目に感想を言ってしまった。
色々と粗があったけど、全体的に面白かった。
「色々言っちまったが面白かった。すげーよ、こういうのを書けるなんて」
「……ァ、ェマ、マママママッ」
突然壊れたように「マ」を連呼し始める。
「ど、どうした?」
「マ……また見てもらっても、いいでしょうか……?」
「それくらいなら別に構わないけど」
なんだそんなことか。
なんか話してみた感じ危険もなさそうだし、放っておいても大丈夫そうだな。
そもそもあのサニーが紹介したってんならある程度信用してもいいだろ。
「お待たせいたしました。コーヒーとケーキ三つです……ホムラ」
コーヒーとケーキをトレーにのせてやってきたコスモに声をかけられ立ち上がる。
「邪魔して悪かった。……あー、一応。名前を聞いていいか?」
名前を尋ねてみると何度目か分からない震える挙動の後に彼女は口を開いた。
「イリステ……ァッ……ゥ……ステラちゃ……」
頑張って名乗ろうとして、またしどろもどろになる女性になにも言わずに待つ。
「イ、イリス、です……」
思いっきり偽名だが、まあいいだろう。
勇気を出して名乗ってくれたみたいだし、偽名は名乗ったが彼女の素振りに演技のようなものは感じられないからな。
大事そうにスケッチブックを抱えている姿を見て、それが本当に彼女にとって大切なものだということが分かってしまう。
今回登場した彼女はこっちが素です。
そしてひっそりと正体バレするイエローでした。
今回の更新は以上となります。
次回は恐らくイリステラ関連の閑話になります。