追加戦士になりたくない黒騎士くん   作:クロカタ

179 / 224
更新が遅れてしまい申し訳ありません。
インフルにかかってしまい体調を崩してました……。


今回はアカネ視点でお送りいたします。


救出任務

 怪人により正体が明かされた私たちは社長が経営するKANEZAKIコーポレーションの社員として雇われることになった。

 元より選択肢として存在していたもので、他にも大学進学やジャスティスクルセイダーとしての役目以外の夢を追うという選択肢もあった。

 正直言うと私自身は今の結果に不満はない。

 怪人と戦うと決めた時から、こうなることは覚悟していたから。

 

「葵はどう?」

 

 僅かに揺れる機内で対面の席に変身した状態で座る葵にそう尋ねる。

 私の質問に葵は、拳銃を整備している手を止める。

 

「私? 副業としてフーチューバーやるから問題ない」

 

 うち副業禁止じゃないの?

 いや、そこらへんは社長が許可しそうだ。

 薄暗く、頭上の小さなライトだけが照らす飛行ビークル“ホワイト5”の機内。

 見た目より広い機内に変身した状態で二人だけで向かい合いながら目的地への到着まで、暇つぶしの雑談を交わす。

 

「今回の任務。きららはいないんだね」

「きららは力が強すぎるから。ピンポイントで殺気飛ばせるブラッドが適任と社長が判断した」

「だーれがブラッドだ」

 

 もう完璧に定着しちゃったよね。

 

「じゃあ、お姉さま?」

「それマジでやめて? エゴサするたびに私のことを本当の姉だと思ってるやばい人いるから」

 

 しかもアカウント的に女の子なのがガチ感がすごいのが怖い。

 

「一人くらいなによ! カツミ君は架空の姉に妹に幼馴染にライバルがいるんだからっ!」

「うぼぁ」

 

 口調まで変えて平坦に言葉にする葵にげんなりする。

 

「カツミ君に業の深さを見出すの本当度し難いと思う。義憤に駆られる」

「アカネも人のこと言えないと思う」

「葵ってブーメラン投げるの巧いね」

 

 虎視眈々と後輩ポジションに落ち着こうとしている葵に言われたくない。

 でも、まだお姉さま勢が湧いている私に比べたらカツミ君の方がずっと大変なことになってるもんね。

 ネットミームって本当怖い。

 

「で、そこのところどう思う? ハクア姉さん」

「うぐっ」

 

 白のスーツに変身し、ホワイト5を操縦していた白川ちゃんに葵が声をかける。

 ぎくり、と肩を震わせた彼女は声も震わせる。

 

「もう許してくれない?」

「え、当分擦るけど?」

「ひぃぃん」

 

 実際に姉として数か月一緒に暮らしたのは割とやばいと思う。

 白川ちゃんが当時一歳未満という特殊すぎる事情がなければ許していなかったくらいだ。

 

「それで、葵」

「ん?」

「葵ときららの家族。どこに住むことになったの?」

 

 そこらへんはまだ聞いてないんだよね。

 社長が現在進行形で色々計画しているのは聞いているけど、多分私の家族も無関係じゃない。

 

「今は大本部内の居住区画に仮住まい。ゆくゆくは区画を広げて住みやすくしていく……感じらしい」

「あれ以上に住みやすくするんだ」

 

 今の時点で全く不自由ないんだけどね。

 でも本部内のスタッフのメンタルケアとかあるから、そこらへんはぬかりないんだろうな。

 

「……カツミ君にとっては、第二本部は家みたいなものだからね」

「そだね。元々住んでたところがああなっちゃてるし」

 

 最初に住んでいたアパートはもう場所が知れすぎて住めない……というか、最早観光地みたいになっているし、次に住んでいた独房も襲撃のせいで住めなくなってしまった。

 なので今彼が住んでいる第二本部が正真正銘の彼の家ってことになる。

 

「ぶっちゃけていい?」

「どうぞ?」

「広義的に見て一つ屋根の下だから役得だなとは思ってる」

「解釈すごすぎない?」

 

 一つ屋根の範囲が広すぎるんですけど。

 でも、気軽にカツミ君に会いに行けるし、なんなら彼が昼間手伝っているサーサナスにも気軽に足を運べるのは普通にいいとは思う。

 

『レッド、ブルー、目的地が近い。準備しろ』

 

 社長———司令の声が聞こえると同時に私も葵も思考を切り替える。

 その数秒後に司令から今回の任務(・・)について話しはじめる。

 

『作戦については出動前に指示した通りだ』

「生存者は?」

『確認している。最悪の事態には陥ってはいないが、迅速な対応が求められる。レッド、お前は強襲と奴らの排除、ブルーお前はジャスティビットによるサポートと生存者の確保』

「「了解」」

『白川君……ホワイトは索敵モードで上空に待機』

「りょーかい」

 

 簡単な指示に頷くと、ハクアがホワイト5の速度を緩める。

 

「目的地上空に到着したよ。いけるよ、ブルー」

「りょ」

 

 ブルーが出現させた六角形の形状のジャスティビットを展開し、開いた後部ハッチから外へと広げていく。

 後部ハッチから見える眼下の景色は、星のように明かりが散らばる街の景色。

 そこにジャスティビットの青色の輝きが地上のあるビルを取り囲むように広がっていき、その内部構造を把握していく。

 

「生存者と怪人の配置を把握。スキャンした情報を視界で共有する」

 

 バイザーの側面に手を当てると、葵がビットでスキャンした建物内の構造と生物の反応が色として表示される。

 赤が怪人、青が人間……ね。

 司令が掴んだ情報通りに、建物内を怪人に完全に占拠されているみたいだ。

 

「確認した」

「うむ。そっちのタイミングでいいよ」

「よし……」

 

 立ち上がり、ジャスティスチェンジャーから取り出した刀をもう一度確認し、粒子へと変換しながら後部ハッチの前に移動する。

 

『目標はブルーの情報を暴露した企業を秘密裏に占拠した怪人の掃討と生存者の安全の確保だ。KANEZAKIコーポレーション正社員“新坂朱音”として初任務ではあるが、いけるな?』

「やることは変わりませんから」

 

 赤いアーマーを纏った姿のまま、軽い足取りで後部ハッチから飛び降りる。

 夜空に放り出され、そのまま落下しながら私の視線は目標の建物から揺るがない。

 

『屋上に穴をあける』

 

 葵が展開したジャスティビットから放たれたレーザーが屋上の一部を円形に切り裂き、人ひとり分が入れる穴を作る。

 屋上に激突すると同時に私は居合を解き放つようにチェンジャーから赤熱する太刀を抜刀———屋上の床を切り裂き、速度を落とさないまま建物内への潜入を果たし———怪人の頭上に飛び出す。

 

『その部屋に三体……いえ、二体』

 

 怪人の頭から股下までを両断しながら、無音で床に着地。

 次に、視界の先に出版社の職員を捉えた怪人の一体が映りこみ———相手がこちらを認識する前に、首を落とす。

 

「———エ?」

 

 紫の血(・・・)を噴き出した怪人の血が付着した刃を払い、さらに四肢を切り落とす。

 葵のジャスティビットからさらに送られる位置情報を確認。

 振り向きざまに指で挟みこむように展開させた手裏剣を投げつける。

 

「アバッ!?」

 

 近くにいる怪人はこいつらだけか。

 額、首を手裏剣に貫かれ、血だまりを作りながら床に倒れ伏す怪人の首に刀を突き刺した直後に、その場を駆けだし次の反応がある地点まで突っ切る。

 

『次の角、接敵』

「うん」

 

 葵の声に頷き、刀を握る右手から力を抜く。

 そのまま減速せずに角を曲がり、昆虫のような姿の怪人と相対する。

 

 

「レッドだころあヴぇッ」

        

 

「遅い」

 

 怪人相手にいちいち警告する方が無駄なのは分かっている。

 なので視界にいれた瞬間に首を落とし、すれ違う時には四肢を落とす。

 血しぶきすらも浴びることもなくうじゃうじゃと怪人が潜伏する階層を駆け、殲滅し———最後の社員が集まるメインルームへとたどり着く。

 

「ッ、キヅカレタ!! キヅカレタぁ!!」

「ひっ、た、助けて!!」

 

 勘が良いね。

 私が入ると同時に脅していた記者の首を掴むエビのような姿をした怪人。

 恐らく、葵の暴露記事を書かせた記者を人質にし、優位をとろうとしているようだろうけど……。

 

「オマエ、コイツヲ

                

                  ロッ」

 

「ブルー、残りは?」

『もういない。お疲れブラッド』

「ブラッド言うな」

 

 幹部クラスでもなきゃ強化装備を纏った私たちの相手にすらならない。

 人質を害する暇すらも与えず、頭部を三枚におろされた怪人が言葉もなく床に崩れ落ちる。

 

「大丈夫ですか?」

「ヒぇっ……あのっ、記事の件は脅されてっ……本気じゃないです!!  い、いいいいつもありがとうございまぁぁす!!」

「……」

 

 ものすごく怖がられてしまった。

 まあ、怪人に脅されていたんだし当然だよね。

 

『うむ。建物内の怪人の掃討を確認。レッド、ブルー、ホワイト、よくやってくれた。後の処理はスタッフに任せ、君たちは帰還してくれ』

「はい」

 

 司令の通信に応答して、肩の力を抜く。

 怪人も前以上に狡猾に動くようになってきた。

 今回の件も葵の正体を暴露する以外になにかしらの思惑があるだろうけど、まだ敵がなにがしたいのか見えてこない。

 

「……ん?」

 

 倒れ伏した怪人の傍にしゃがみ、血を見る。

 

「紫の……血?」

 

 返り血は浴びていないし、人質にされた人々も血に触れていない。

 床に染み込むように見える血は、ゆっくりとだが床そのものを浸食しているように見える。

 

「……司令」

『どうした?』

「現場に残った怪人の血痕ですが、スタッフに触れないように警告してください」

『! サンプルを確保次第こちらで解析する。建物内にいる人々も一時的に隔離し検査を受けさせよう!!』

「頼みます」

 

 嫌な予感がする。

 毒、のような感じではないけれどこの怪人の血はよくないもののような気がする。

 

「……一応、現場に残っておこうかな」

 

 この血のことがきがかりだし、スタッフさん達の到着を待とう。

 そう判断し、まずは葵と白川ちゃんに連絡を寄越そうとした———その瞬間、マスク内に聞きなれた警報音が鳴り響いた。

 

『怪人警報発令!! 怪人警報発令!! ジャスティスクルセイダー出撃準備!!』

 

「……!!」

 

 このタイミングで怪人が現れた!?

 すぐに窓を開き、屋上へ一気に駆け上がり屋上にまで降りてきたホワイト5に乗り込む。

 

「司令!!」

『ああ、怪人が現れた!! それも大群な上に分散した場所に出現ときた!! 今、出現した怪人の座標を送る!!』

 

 瞬時にマスク内に映し出されたのは、都内各地に現れた紫の体表を持つ怪人の群れ。

 昆虫を人型のような姿にした見た目が同じ怪人は、周囲の建物を破壊し周囲の人々を襲おうとしている。

 

「白川ちゃん!!」

「うん、すぐに向かう!!」

 

 ホワイト5が勢いよく離陸し、目的地へと発進する。

 

『本部にいるイエローとグリーン、そして私も出撃する!! お前たちは各地で怪人の掃討を頼む!!』

「カツミ君はどうします?」

『彼は有事の際に本部に待機!! いや、この際私の代理を任せる!!』

 

 そんなぶっつけ本番でやらせても大丈夫なんですか!?

 

『心配するな、彼以上に怪人と我々を知る存在はいない!! お前らのやる気も出ることだろうしな!! ガハハ!!

 

 切迫した状況なのにオヤジみたいなことを言い出した司令に頬が引きつる。

 しかし、周囲の騒がしい音からして現在司令は本部内で全力疾走しているのが分かるので、これ以上なにも言わずに私も怪人の掃討に意識を向けるのであった。




レッド専用の血しぶきフォントを作ったのですが、文字色を赤くすると普通に怖くてヒェッってなりました。

赤ver↓
あいうえお

今回の更新は以上となります。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。