追加戦士になりたくない黒騎士くん   作:クロカタ

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お待たせしました。

恐らく2023年、最後の更新です。

前半がカツミ視点。
後半から別視点でお送りいたします。

※今回の一部特殊タグはPCで見るにはちょっと見にくいかもしれません。
文章の内容的には問題ないので、その点はご安心ください。


星界の輝き

 群体怪人の迎撃は成功している。

 現れた岩石怪人もレイマが倒してくれた。

 だが、状況は依然として悪いままだ。

 

「汚染が拡大しています!」

「最小限に抑えたが、避けられないか……!!」

 

 大森さんとグラトの焦る声を耳にしながら、怪人の紫の血により浸食・汚染されていく映像を睨む。

 指令室で状況を確認しつたないながらも指揮を行っていたが、この状況になるのは予想できていた。

 むしろ、血を巻き散らす怪人の目論見を阻止した上でのこの結果なのだから、今俺が考えるべきことは現状を憂うことではなく、これからどのような判断を下すべきかだ。

 

「グラト、アカネ達が担当する場所の汚染状況は?」

「彼女たちは血液そのものを蒸発させているので、他よりは汚染されている範囲が狭い。だが、汚染されていることには変わりない、ゆっくりとではあるが確実に広がっていく」

 

 群体怪人の掃討と汚染の拡大を同時に防ぐのは現状無理だろう。

 

「なら、まずは怪人の掃討を最優先。アルファ、自爆させないようにレイマが見つけた器官を破壊するように心がけるように伝えてくれ」

「分かった!!」

 

 汚染範囲はまだ狭い範囲に留められている。

 今の範囲なら、まだ力技でなんとかできるな。

 そう判断した俺は、声を押さえ、プロトに連絡を繋げてもらったタリアに声をかける。

 

「タリア、汚染範囲を特定して、地図にまとめることはできますか?」

『なにか解決策が?』

 

 声を抑えた俺に、タリアは訝し気な声色でそう尋ねてくる。

 

「俺が出て汚染範囲を熱で燃やし尽くします」

『……は?』

「俺が出撃して汚染範囲をピンポイントで消滅させます」

『いえ、あの、聞き取れなかったわけではありません……』

 

 タリアの機械的な音声が困惑したように震える。

 

『しかしカツミ様、それでは……』

「レイマ達のおかげで汚染範囲は絞られているなら、狭い範囲で済むはず」

 

 もちろん、今タリアが心配していることは俺にも分かるが、俺がこんなことをするのは今回だけだ。

 今回を凌げば、必ずレイマが対策を立ててくれるからな。

 

「あくまで狭い範囲です。無差別に攻撃するつもりもないし、多少の調整はできます」

『……かしこまりました』

「ありがとうございます」

 

 無理を言ってしまったかな、と思いながら再びモニターに意識を向ける。

 その時、背後の扉が開かれ指令室に誰かが入ってきたことに気づく。

 ソーリアさんが来たか、そう思い振り返るとそこには彼女以外に見慣れた二人の人物がいた。

 

「カツミ君!!」

「やっほ、カツミ君」

「風浦さん……? それにヒラルダも。どうしてここに?」

「私が連れてきたわ」

 

 風浦さんの隣にいた褐色肌の金髪の女性、ソーリアさんがそう答えた。

 彼女は自室に待機しているはずだが。

 

「へ、部屋で今起こっている事件を見て、私ならもしかしたら力になれるかもしれないって……」

「力になれるかもしれないって……」

 

 風浦さんの力は俺も見た。

 物体を直すなんらかの力。

 彼女の力なら、あの汚染もなんとかできるかもしれないが……保護している一般人の彼女を現場に出すわけにはいかない。

 

「どんな力を持とうとも、貴女が俺達が守るべき一般人だということには変わらない。力を持っているから、なんて理由で現場に出るべきではありません」

 

 ハクアの時と同じだ。

 あいつは自分に戦う力があるから戦う選択肢を選んでしまった。

 その選択をさせてしまったのは俺のせいだ。

 

「一度、俺達と同じ選んでしまったら、貴女の中に常に戦う選択肢が出てしまうようになるんです。そうなれば、もう見て見ぬふりはできなくなる」

「半端な気持ちじゃないよ!」

 

 そこで風浦さんがそう声を上げた。

 

「私だって、ずっとヒラルダに身体を乗っ取られて怖い目にあった!」

「うぐっ」

「いつ自分がいなくなるか、ずっと怖かったし、もう自分が元居た場所に戻れないって諦めかけてもいた!」

「あぐっ」

「でも……」

 

 隣でダメージを受けているヒラルダに反応せずに、風浦さんは続けて言葉を吐き出す。

 

「ここにいて、ずっと悩んでた。私みたいに……怪人や侵略者に怖い目に合わせられる人を出したくない。居場所を奪われて、帰る家を奪われる人も見たくないって……」

「……」

「私は、皆の帰る居場所を守りたい」

 

 居場所を守りたい……。

 奇しくもアカネと同じ戦う理由に驚く。

 

「私はいいと思うわよ」

「ソーリアさん……」

 

 元星界戦隊のイエローであったソーリアさんの声に耳を傾ける。

 

「部外者の私だけれど、星界に選ばれた者として言わせてもらうなら……カゼウラが自分の意思でそう決意したなら、それはきっと彼女の力が最も強く輝ける時ってことよ」

「ソーリアって意外と詩的なこと言ういだぁ!?」

 

 ヒラルダに拳骨を落とすソーリア。

 ……ゼグアルさんが言っていたことか。

 

「いつつ……カツミ君」

「ん?」

「桃子は私がいるから大丈夫だよ。もしもの時に戦える手段はあるから」

 

 ヒラルダの言葉にいよいよ止められないと悟った俺は、頭に手を置く。

 普段、レイマやアカネ達が俺に戦ってほしくないって感じている気持ちってこんな感じなんだろうな。

 これは本当に心配だ。

 

「……はぁぁ……分かりました。でも敵は貴女を狙っている可能性があります。異変があったらすぐに俺が向かいます」

「うん!!」

 

 強く頷いた風浦さんに、俺は両手を掲げ———バックルに変形したプロトとシロをキャッチする。

 

「え、カツミ、どうして変身を……?」

「ワームホールを使う。今の制限された状態じゃ何度も使えないが……タリア、汚染が一番広い場所の座標とその現場の最も近くにある高い位置の映像を出してください」

『かしこまりました』

 

 場所は……葵が担当しているところだな。

 映像は近くのビルの屋上。

 それらをしっかりと確認し、俺はバックルを用いて変身を開始する。

 

「やるぞ、プロト、シロ」

『なにが起こるか分からないから、力の扱いに注意して』

『ガァァウ!!』

 

 腰に出現したベルトにバックルを装填し、変身を開始させる。

 同時に音声が鳴り響き、俺の身体を黒色のスーツが覆い始める。

 

←←←ARE YOU READY?←←←

 

 

→→→NO ONE CAN STOP ME!!→→→

 

 白色の装甲が装着され、その上から拘束具のように追加の装甲が取り付けられる。

 鎧の隙間から蒸気が噴出したことで———プルートルプスへの変身を完了させる。

 

OPTMIZATION

 

 

NOITAZIMTPO

 

 変身が完了すると同時に大剣型の武装———グラビティバスターとグラビティグリップを転送し、そのまま装填させる。

 ビルの屋上の景色を思い浮かべ、そのままグラビティバスターの引き金を引くと目の前の空間にワームホールが展開され、その先に映像で映し出された屋上の景色が広がる。

 

「……繋がっているな」

 

 ヒラルダがチェンジャーに変わり、光と共にジャスティスピンクへの変身を終えた風浦さんがワームホールの前に立つ。

 

「風浦さん、すぐに葵と合流してください」

「分かった。……信じてくれてありがとう。カツミ君」

 

 そのまま風浦さんは迷うことなくワームホールへと足を踏み入れる。

 瞬時に映像の建物の屋上に降り立った彼女の姿を確認した俺は、すぐさま近くにいる葵に連絡を送るように指示を出すのであった。

 


 

 力を持っているから戦いたい……とは違うと、思う。

 確かに望まない力を得て、戦いに巻き込まれるというのは空想の作品ではありがちな展開だとは思う。

 だけれど、それ以上に私は……助けたいと思った。

 居場所を守りたい。

 私のような人を増やしたくない。

 そんな、胸から湧き上がる強い思いに従って私はカツミ君たちと同じように戦いの場へと踏み込む決意をした。

 

『桃子、ここが目的地だよ』

「うん」

 

 カツミ君の力で一瞬で建物の屋上にたどり着いた。

 ここは現場から近い場所、ここからなら葵ちゃんが戦っているところが見えるはずだけれど……。

 

「葵ちゃ……ブルーが戦ってる」

 

 屋上から戦闘音が聞こえる方向を見下ろしてみると、そこでは———建物の間で、何十体ものの紫色の怪人をワイヤーで宙づりにしている青い戦士の姿があった。

 

『ほい』

『ギャヒィ!?』

 

 ワイヤーで宙づりにされもがく怪人の胸にビームが撃ち込まれる。

 こんな北斗の拳マッドマックスでしか見たことないような所業を流れ作業のように繰り返していく葵ちゃんの姿に、私は怯えた声を漏らす。

 

『「ヒェ……」』

 

 思わずヒラルダと声を重ねてしまうが、今自分がここにいる理由を思い出し頭を横に振る。

 

「わ、私にできることをやらなくちゃ。ヒラルダ」

『ええ、例の武装ね』

 

 社長さんに用意してもらった護身用の武装。

 それを手首のチェンジャーから取り出す。

 

「お、オモチャみたいだけど……」

 

 拳銃の先端にスプレー缶のようなものがくっついた銃『カラースプレイザー』。

 それを汚染が広がっている範囲に向ける。

 

『それは貴女の力を安定して放つための道具。引き金を引いて、力を開放しなさい』

「やってみる……!!」

 

 一度深呼吸した後に、自身の胸の奥にある力を意識しながら引き金を引く。

 瞬間、私の身体から溢れ出る星界エナジーが収束され、銃口から光となって放たれた。

 訓練場の時と同じ桃色の光は紫の怪人の血に汚染された範囲に扇状に降り注いだ。

 

「え、こんな広い範囲いけるの……?」

 

 思っていた何十倍も広い範囲に広がった光に自分で驚く。

 私から生成された星界エナジーの光は地面と建造物に広がる紫の血の汚染を———せき止めるどころか浄化するように汚染を消し去っていく。

 

「か、カツミ君、これどうなってる!?」

『汚染が除去されています!! この調子でお願いできますか!!』

「が、頑張る!」

 

 できるという確信は漠然とあったけれど、実際にできてしまっていることに自分でびっくりしている。

 

『む、クリスマスの奇跡?』

 

 なんか通信越しで葵ちゃんが変なことを言っているけど、時期的にクリスマスはとっくに過ぎている。

 葵ちゃんの殲滅速度と、この浄化ペース……この調子なら———、

 

『ッ、葵! お前がいるところに増援が来ている!!』

『……引き寄せられた感じっぽいね』

 

 私の目元を覆うバイザーにも夥しい数の怪人の反応が現れる。

 その全てが紫の怪人だけど……。

 

『この程度の数なら問題ない。カツミ君、私を鼓舞する言葉を頂戴』

『分かった……すぅ……やってみせろよ! 葵!!

『ぇ、ぁ、ちょ……ソレチガッ

 

 わ、私も援護に行くべきかな。

 戦う手段がないとは限らないけど、葵ちゃんの邪魔にならないようにここで光を放って汚染を食い止めた方がいいのかな?

 

「ヒラルダ、どうしたら」

『ッ、桃子!!』

 

 ヒラルダの慌てた声が発すると同時にチェンジャーから機械仕掛けのフクロウが転送され、私の身体を押し出した。

 瞬間、私のいた場所にカツミ君が出したものと異なるワームホールが出現し、そこから六本の昆虫のような先端が刺々しい腕が飛び出した。

 

「か、怪人……!?」

『いえ、こいつは違う』

 

「ステアスピリチアァァ……」

 

 現れたのは怪人や侵略者のような人型ではない、黒色の六本脚の化け物。

 見えているか分からない潰れた目に、鋭利な歯が生えた凶暴な顔。

 カチカチカチ、とコンクリートの床を六本足で威嚇するように叩いた化け物はかすれたような不快な声で———ゼグアルさんから呼ばれた私の名を口にした。

 

「カツミ君、こいつって」

『スタバーズ! 風浦さんが力を使ったことで現れやがったか!! 今、変身してそっちに行く!!』

 

 カツミ君は指令室で指揮があるし、葵ちゃんは紫の怪人と戦わなくちゃならない。

 ———私が一人だったら、ここは迷いなくカツミ君に助けを求めていたけれど……!!

 

『カツミ君、こっちは心配ないわ! ブルーも怪人に集中させて!!』

『おい、ヒラルダ!!』

『私も桃子も足手まといになるためにここにいるわけじゃないから! そうよね、桃子!!』

「うん……!! 私も、決めたんだから!!」

 

 半端な気持ちで逃げるようならこの場に立っていない。

 逃げずに立ち向かおうとする私に、黒い化け物は獣のように六本の鋭利な脚を広げてとびかかってくる。

 

『今更正義の味方面するつもりはない! でも、好き放題やったツケは払わなくちゃ、ね!!』

 

 対して私の傍に羽ばたいていた機械仕掛けのフクロウーーーヒラルダは、化け物の胴体に強烈な体当たりを叩き込み吹き飛ばす。

 床に叩きつけられ虫のようにももがき気持ち悪い動作を見せる化け物は、起き上がると同時にバネのような跳ね上がる動きと速度で、こちらに迫る。

 

『桃子、身体借りるわよ!!』

「任せた!!」

 

 この姿は私だけの姿じゃない。

 戦う時は、ヒラルダに身体を任せて動いてもらうことができる!!

 ヒラルダに身体の操作を渡し、今度は彼女自らがジャスティスピンクとして戦う。

 

『ステアスピリチアァァ!!』

「慣れ親しんだ身体なのよね!!」

 

 複数の腕を広げ迫るエイリアンに、ヒラルダは動揺もせずに前蹴りを叩き込む。

 呻いたところにスプレー缶が取り付けられた拳銃を鈍器のように叩き込み、その引き金を引く。

 

「ギィァァ! ッ、ウゥルルル!! ステァ……!!」

 

 

 銃撃は与えたものの、効いた様子はない。

 元より、今の姿は私の星界エナジーとしての力を使う姿。

 力は弱くて当然———でも、私たちの変身はそれだけじゃない。

 

「私向きの姿に変わろうかな。いいよね、桃子?」

『思う存分にやっつけて。私も力を貸すから!』

 

 私の声に頷いたヒラルダが手首のチェンジャーに手を添え、指をスライドさせる。

 

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 私の身体が光に包まれると同時に半透明の機械仕掛けのフクロウが出現。

 フクロウは私の頭から胴体を覆うように重なり、装甲となって展開されていく。

 最後に顔を覆った翼が交差しバイザーのように展開されたことで、追加変身が完了する。

 

CONVERT

FORM

 

 

 ジャスティスピンク“オウル・ジャック・フォーム”

 完全にフクロウキャラが定着したヒラルダの鎧に包まれた私の身体。

 私が直して、ヒラルダが戦う。

 前までは勝手に身体を使われることはすごく嫌なことだったけれど、今の私はヒラルダのことを知って、私自身の意思で戦うと決めた。

 誰もが帰る居場所を失わないために、私はジャスティスクルセイダーの戦士として戦ってやる。

 

「さて、と」

 

 カラースプレイザーを組み替え、剣の柄のような形状へと変形させる。

 彼女がそれを軽く振るうと、柄から霧状の塗料のようなものが噴射し、それらが硬質な刃へと変質させ、その切っ先を———化け物へと向ける。

 

「甘く見ない方がいいよ。スタバーズ、今の私達、ものすごーく強いから」

 

 ……え、決め台詞まで決めているのは全然知らないんだけど!? 

 

 




去年はジェミニクロスで終わり、今年はオウル・ジャックのお披露目で締めましたね。

プルートルプスの変身フォントについては新しく作り直しました。
マークのモチーフについては、プルートルプスは「星」、オウル・ジャックは「グラフィティー」でした。


今回の更新は以上となります。

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