追加戦士になりたくない黒騎士くん   作:クロカタ

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お待たせいたしました。

今回はイリステラ視点でお送りいたします。


謎の漫画家S

 今日は私にとってたくさんなことが起こった一日だったと思う。

 カツミさんとアオイちゃん、それにハイルさんと友達になれた。

 もうその時点で、私にとってはすごいことだ。

 

「……ふう」

 

 帰ってからすぐに絵の練習に取り掛かって、一息つく。

 本当はすぐに休むべきなんだろうけれど、なんとなく昼間に体験した“熱”を維持したかった。

 

「カツミさんの話か」

 

 漫画のモチーフにする上ではこの上ないものだと思う。

 怪人を倒す方法こそは乱暴だけれど、行動そのものは孤独に戦うヒーローそのものだから。

 

「……あ、そうだ。ツムッターのアカウントを作るんだった」

 

 喫茶店でカツミさんとアオイちゃんと約束したことを思い出し、ペンタブを置いてPCの画面を切り替える。

 えーっと、ツムッターでアカウント登録、だよね。

 

「……け、結構面倒くさいな……スマホでやろう」

 

 PCからスマホに持ち替え、こっちで登録することにする。

 必要なのは、メールアドレスとか電話番号とかなんだ。

 こ、こういうのってなにも考えず登録しちゃって大丈夫なのかな? 詐欺とか怖いし、もう一回サイトがちゃんとしたところかどうか確認しておこ。

 我ながら四苦八苦しながらなんとかアカウントを登録するところまで漕ぎつけて、いよいよアカウント上の私のユーザー名を決めるところまでたどり着く。

 

「名前……ステラでいっか」

 

 カツミさんの前ではビビってイリスって名乗っちゃったけれど、多分偽名にも気づいているし別に隠してもいないのでステラでいいや。

 ……というより、カツミさんにイリスさんって呼ばれるのすごい違和感があるから、次に会った時にちゃんと名乗っておこう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

ステラ@初心者漫画家

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「こ、こんな感じかな」

 

 淡々としすぎてないかな?

 でもあまりはっちゃけすぎるのも疲れるし、とりあえずはこれでよしとしよう。

 

「最初は自己紹介と、イラストをと……」

 

 色塗りの練習用に書き上げたネーム用のキャラクターデザインと、自己紹介のツムートを投稿する。

 

ステラ@初心者漫画家@iriSsuteR4se-KAi2

はじめて投稿させていただきます

拙作ではありますが、どうかご覧になってください

               

 

 初めての投稿。

 自分で踏み出した感じに我ながら感動する。

 でも当然ながら、反応がないことに苦笑しながらスマホを手に取る。

 

「……よし、次はカツミさんとアオイちゃんに連絡だ」

 

 恐る恐るラインなるものを起動させる。

 緊張しながらカツミさんにメッセージを送る。

 

< カツミさん

 

21:33

カツミさん

 

21:33

起きていますか?

+□

 

 ……。

 なんか取り返しのつかないことをしてしまった感。

 あ、あれ? これ気軽に送ってよかったのかな? いや、カツミさんのスマホには当然セキュリティがあるはずだから、私みたいな不審者宇宙人からのメッセージなんて普通にブロックされてる可能性が? そもそも気軽に連絡してくれって言っていたのはそもそもリップサービスというやつなのでは? 逆に厚顔無恥な感じでメッセージを送った私にドン引きされているのではないか?

 ぐるぐるとマイナス思考のあまり地面にめり込みかねないほどに落ち込んだ私の視界に映るスマホ画面に“既読1”という表示がつく。

 その直後に私が送ったメッセージの下に文面が表示される。

 

どうした? なにかあったのか? 21:35

 

 返信に私は頭が真っ白になりかけながら、手早く要件をメッセージとして送る。

 

< カツミさん

 
既読1

21:33

カツミさん

 
既読1

21:33

起きていますか?

どうした? なにかあったのか? 21:35

 
既読1

21:38

ツムッタ—のアカウント作りました!!

 
既読1

21:39

アカウント名は

「ステラ@初心者漫画家」です!!

教えてくれてありがとう 21:41

+□

 

 その直後に持っているスマホがピコンという音が鳴る。

 それがツムッターからのものと思い開いてみると、通知欄に3件ほど通知が入っていた。

 

黒騎士@HOMURA‗KATUMI

返信先@iriSsuteR4se-KAi2

応援してる

               

黒騎士さんが1件のあなたのツムートにリツムートしました

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黒騎士さんが1件のあなたのツムートにいいねをしました

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 昼間の言葉通りにちゃんと反応してくれた彼に思わずだらしない笑みを浮かべてしまう。

 私、こんなに恵まれていいんだろうか。

 少し前までは自分に自由はないものだって思って、諦めていたけれど今はそんなことはなく、幸せだ。

 

「……っ、うぅーん……シャワーでも浴びようかな」

 

 なんだか浮足立ちそうな気分だったので、頭をすっきりさせるべくシャワーを浴びよう。

 それから今日はもう休もう。

 そう思い、着替えを引っ張り出しながら私は浴室へと足を運ぶのであった。


 

「ふぅ」

 

 シャワーを浴び、手早く髪を乾かした私は冷蔵庫から水を取り出しながら部屋へと戻る。

 ……ん? なんだか騒がしくない?

 BGMがてらの音楽をつけっぱなしにしたわけじゃないはずだけ——、

 

「ひぃ!?」

 

 部屋に戻った私を出迎えたのは絶えず通知を響かせるスマホであった。

 ピコンピコンピコン!! と延々と通知音を繰り返すスマホに恐怖に陥る。

 な、ななな何事!?

 

「え、あ、こ、壊れた!? 怪人の仕業!?」

 

 まだ買って半月も買ってないのに!?

 機能だって検索と動画くらいしか見ていないのに壊れたように通知を繰り返すスマホに泣きそうになりながら、手に取ってみる。

 通知は……え、ツムッターから?

 

 

 

 

 

 

 

 

ステラ@初心者漫画家

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54   1万  3.3万  

 

「ぎゃあああああ———!?」

 

 思わず自分の声とは思えない汚い悲鳴が漏れてしまった。

 怖い怖い怖い怖い!?

 私がシャワーを浴びていた15分くらいの間でフォロワーが一万を超えっ、え、なんでぇ!?

 と、とりあえず設定画面から通知消すと、絶えず鳴り響いていた通知音が消えていくが、それでもフォロワー数の増加が止まらず白目を剥きかける。

 

「か、カツミさんに、助けを……!!」

 

 今の私だけでは冷静な思考ができない……!!

 迷惑に思われても構わない! 恥を覚悟でカツミさんに連絡をする!!

 数コールの後に、彼はすぐに出てくれる。

 

『ん? ステラさん、どうした?』

「か、かかかカツミさん!?」

『あ、さっきの絵よかったぞ』

「え!? ふえへへ! ありがとうございます!! って、違うそうじゃないんです!!」

 

 絵を褒められてだらしなく笑ってしまった。

 でも、そんな場合じゃない!

 

「私の呟きがた、たたた大変なことに!?」

『大変なこと? さっきのツムートが? ……ちょっと待ってろ、今確認してみる』

 

 私も動揺しながらPCでツムッタ—を開いてみる。

 まず目に入ったのがトレン—――、

 

For you

#黒騎士

120323tm

日本のトレンド ・・・

謎の漫画家S

1045tm

トレンド    ・・・

ステラ

8634tm

トレンド    ・・・

 

「ひんっ」

 

 た、大変なことになっちゃってる……。

 恐る恐るトレンドを押してみると、早速目に入ったのはある人物たちのツムート。

 

レッド戦隊ヒーロー@AKARED_JCAKR

ツムートしたの?

私達以外の誰かを???

#黒騎士

               

ブルー戦隊ヒーロー@Rikei_JCBE

知 っ て た

#黒騎士

               

イエロー戦隊ヒーロー@Huthu_JCYE

ちょっと黒騎士くんと話さなアカンなぁこれ

#黒騎士

               

 

『……』

 

 れ、れれれれ、レッドさんに目をつけられたかもしれない。

 ルイン様とエンカウントした次くらいの恐怖に襲われていると、通話状態のスマホからカツミさんの声が聞こえてくる。

 

『———イリスさん』

「は、はい」

『全て、俺の認識の甘さが招いたことだ。そのせいで、君にいらない注目を集めてしまった。……下手をすれば、君の作家人生を邪魔してしまうかもしれない、だから俺が……責任を取る』

 

 せ、せせせせ責任!?

 まだ知り合って少ししか経っていないからそういうのは段階を踏んでですね!?

 

『俺がこの身に代えても、いや、アカウントに懸けてこの騒動を鎮圧させる』

「はえ?……え、カツミさん!? お気を確かに!?」

『くッ……なにが非常識な行動をとらせるなだぁ!! 肝心の俺が非常識の塊みてぇなもんじゃねぇかバカ野郎が……!!」

 

 すっごい責任感じてる。

 今もなお私のアカウントは際限なくフォロワーが増えていっている。

 

『出した唾は吞み込めねぇのと同じように、一度呟いちまったツム―トもなかったことにはできねぇ……。安心しろ、イリスさん、このケジメは俺に任せてくれ』

「具体的にはなにを……?」

『土下座配信、というものがあることを知っている』

「絶対やっちゃ駄目ですからね!? フリじゃないですからね!?」

 

 そんなことがあれば私は罪悪感で精神的に潰れるし、下手をすれば物理的に潰されちゃう!!

 

「大丈夫です!! 私、メンタルは弱いですけれど罵倒耐性はありますから!!」

『いや、そんな耐性つけるもんじゃないだろ』

「へう」

 

 真っ当な指摘に変な声が出てしまう。

 でも、実際ただの一般人にボロクソに言われても、途方もない長さを煮詰まった肥溜めに汚泥をぶちこんだ汚れそのものみたいな存在のイリステオの罵倒に比べたら、そよ風みたいなものだ。

 私はメンタルは弱いけど、多少の罵倒では響かない。

 

「と、とりあえず明日になったら収まっているかもしれません!!」

『……本当に悪かった。俺の軽はずみな行動で迷惑をかけた』

「……。いいえ、いいえ。最初に私の絵を評価してくれたのが貴方でよかった。だから、私は怒ってなんかいませんから……!!」

 

 心からそう思っている。

 私が今頑張っていられるのは、応援してくれる貴方とアオイちゃんがいるからだ。

 それに、私は人と会うのも話すのも苦手だけど、面と向かわなければ結構無敵なのだ。

 

「あいつらに比べたら、ね」

 

 通知だって、人は興味を失う存在だから数時間もすれば収まるでしょう。

 我ながら楽観視しながら、カツミさんとの連絡を切った私は、なんだかどっと疲れてしまったからか、その後はすぐに眠ってしまった。

 


 

 

 

 結論。

 

 翌日、 私のフォロワーは53万になった。

 

 朝になっても通知は途切れることはなかったし、今現在も増え続けている。

 穂村克己というその一挙一動に注目を集める彼の影響力を、私も、そしてカツミさん自身もまだ理解していなかったのだ。

 世間的には謎の漫画家ということになってしまって、イラストも一つしか投稿していないからなんだかもう噂が一人歩きどころか、一人旅に出掛けるくらい話が飛躍していたりしてしまってもう大変なことになっていた。

 

『黒騎士さんが話題に取り上げるのって珍しいですよね。しかもフォローまでしているって』

『確かにですねぇ。漫画家と記されていますが、なにかジャスティスクルセイダーの活動と何かしらの関連性があるのでしょうか?』

『もしかすると、今度行うであろう活動に関わる方かもしれませんねぇ』

 

 TVをつけたら普通にニュースでもコメンテーターが真面目に考察してて頬が引きつってしまった。

 そのすぐ後に、私の元にカツミさんから連絡が来て、彼が働いている喫茶店サーサナスへと赴くことになった。

 

『ジャスティスクルセイダーの新メンバーじゃね?』

『ブルーの別垢だろ。奴はそういうことをする』

『ニュースで取り上げられて笑う』

『ブルーじゃね?』

『ブルーと蒼花ナオのお絵描き配信みたらそんな考察出ないだろ』

『あの子はツムッター初心者だから、普通に漫画活動を応援したくてやっただけだと私は思うね。それ以外は解釈不一致』

『怖いから聞けなかったんだけど、あんたどこの視点から語ってるの?』

 

 電車も街中も、私とカツミさんの話題で持ち切りなことに余計に顔を青くさせる。

 そして、いつもより俯きながら喫茶店サーサナスへと辿り着いた私を出迎えてくれたのはカツミさんだけではなかった。

 

「ふむ、君がイリス氏か。私はKANEZAKIコーポレーション社長兼、ジャスティスクルセイダー総司令兼、開発主任兼、ジャスティスゴールドのカネザキ。レイマだ」

 

 ものすっごい肩書きが多い金髪の人、ゴールディことカネザキ・レイマさんとなぜか面接を行っていた。

 私の隣には保護者のように座るカツミさん。

 カネザキさんの後ろには、アオイちゃんを含めたジャスティスクルセイダー三人娘もいる。

 生半可な侵略者と怪人が速攻で命を諦めてしまうような空間に座らされ、ひたすらにビビっている私にカネザキさんが続けて話しかけてきた。

 

「ネームの方は持参したかな?」

「は、はい……」

「うむ。では面接を始めよう」

 

 ……いや、本当になんでこんなことになっちゃったんだろう。

 全然意図していないのにとんでもなことになってきちゃっているんだけど。




これ遠回しに前日に仲良くなったハイルにもダメージが行くのでは? と、投稿する前に気づきました。
SNSの反応とかは結構現実離れした感じにしました。

今回の更新は以上となります。
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