追加戦士になりたくない黒騎士くん   作:クロカタ

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三日目、三話目の更新です。

理由は分かりませんが新しく作成した自作フォントが認識されなくなりました。
自作フォントはちょっと正直色々できすぎたので、ちょっとだけ安堵してます。




配信回

 世間における謎の漫画家Sの評価は二分されている。

 生い立ちが暴露され、孤独なイメージが付きまとうカツミ君が自らの意思で話題に出すことに素直に喜び、驚いている者もいれば、正体不明の存在に不信感を抱き、中には嫉妬の感情で適当な憶測を書き連ね、あたかもそれが真実のように吹聴している。

 集団心理というものは厄介だ。

 例え、事実でないとしても多くの声が真実だと思い込み声を上げれば、それが事実として扱われてしまうことになる。

 

 だが、それをうまく扱えればなによりも頼もしい武器になることも事実だ。

 とどのつまり———とりあえず世論を味方につければ大抵の罵声ややっかみなどそよ風程度にしかならんということ……!!

 

 

『はい、皆さんこんばんは。KANEZAKIコーポレーション広報担当Vtuberの蒼花ナオです』

『突然の配信ですが、今回はゲストを招いての放送回となります。まず先に最初のゲストの方、お願いします』

 

『ゥンKANEZAKIコーポレーション社長兼、ジャスティスクルセイダー総司令兼、開発主任兼、ジャスティスゴールドのカネザキ・レイマだ。諸々の事情説明のために私も配信に同席することになった』

 

きたぁぁぁぁぁ!!

概要欄こわい・・・

待ってた

きちゃ

社長おるやん!!

変態エイリアン!!

肩書多くて草

投コメホラーか?

www

待っってた!!

 

□    ライブ
 
     

【ゲスト回】私も知りたいあの人に色々聞きます

#蒼花ナオ#黒騎士くん#謎の漫画家S#社長

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XXXXXXX人が視聴中 3分前にライブ配信開始

黒騎士さん黒騎士さん。ステラって誰?

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 いい加減私のことを変態と呼ぶのはやめてほしいのだが。

 変態な部分を見せたことないのに、なぜ変態と呼ばれてしまうのか。

 ジャスティスクルセイダー第二本部内の配信専用スタジオ。

 前回3D配信用として用いた場所とは別の部屋で、現在私たちは全世界へ向けた配信を行っている。

 

「今回の騒ぎを簡潔に説明するのならばカツミ君の他愛のない呟きである。それ以上もなにもない、君たちが普段している日常の一環に過ぎない」

 

・でしょうねwww

・草

・よく考えなくてもそう

・草

・え社長カツミ君呼びマジ

・マジでおもろいwww

・それはそう

・www

 

 まず最初に今回の騒ぎ、陰謀やなにかしらの作戦やらの深い理由などではないことを説明しておく。

 というより、これを最初に説明しておかなければどんどん話が膨らんでいくからな。

 

「今後はこのようなことがないように私から、指導する所存だ」

「いえ、社長」

 

 ……え、なんでここで隣の日向君から否定が?

 あ、あれ? いきなり台本と違うよね?

 困惑の視線を隣の日向くんに向けると、彼女はにこりと微笑み頷く。

 

「私が教えます」

「え? でも……台本と違っ」

「社長がお忙しいですから、ね?」

「……ァ、ウン」

 

・圧つよ

・ガチ勢こわい

・社長ビビッてて草

・台本言うたがな

・黒騎士くんはずっと機械音痴でいてほしい

・逆にこなれるのも嫌だなwww

・台本と違うこと言ってんのかwww

 

 目を薄め、笑みを浮かべた日向くんにビビりながら頷く。

 いや、別に構わないのだが……うん、まあ、気を取り直していこう。

 

「そして、皆最も気になっているのは、謎の漫画家S……ステラとは何者かについてだ」

「私も気になります」

 

 あれ、おかしいな? 日向くんはついさっき顔を合わせたはずなのに。

 謎の圧を放つ日向くんを不思議に思いながら、説明を続ける。

 

「ステラ氏は地球人ではなく、カツミくんが働いている店に訪れた一般宇宙人だ。地球のサブカル文化、特に漫画に感銘を受け漫画家としての道を志していた彼女は、偶然カツミくんがバイトする店に迷い込み、なんやかんやで漫画を見せ親交を深めることになった」

 

・待て待て待て

・社長!?

・これ喋りすぎじゃないですか!?

・情報量がががが

・かつみんバイトしてんの!?

・いつもの情報爆撃

 

 こういうのは適当にはぐらかして宇宙人ってバレてバッシング食らうのが目に見えている。

 なら、最初からバラして情報量で誤魔化し、隠したい部分に微妙に嘘を混ぜ込めばいいのだ。

 思惑通り、チャット欄は大混乱に陥っている。

 

「社長、カツミさんがバイトしてるってバラしていいんですか?」

 

 一時的にミュートにした日向くんが小声で話しかけてくる。

 彼女の懸念も分かるが、それに関してもノープロブレムだ。

 

「なんの仕事かなんて一言も口にしていないので問題なぁい」

「……た、確かにそうですね」

 

 カツミ君の年齢でバイトをするなんて全くおかしなことじゃあない。

 

・なんか黒騎士がバイトしてるって聞いて泣きそうになった

・人並みのことしてるだけなのに感動してる

・お姉ちゃん嬉しいよ

・バイトしてるんだ

・お金に困ってるの?

 

 それに、彼が黒騎士時代よりも社会性が育まれていることもアピールできているのでヨシ。

 

「素行についても、当然問題はない。今日もジャスティスクルセイダーを含めた面談を行ったからな」

 

・圧殺面接か?

・相対しただけで30歳くらい老けそう

・ジャスクルと面接とか前世でなにかやらかしたんかwww

・あの三人の判定通ったんなら・・・

・なんかかわいそうになってきたな

 

 ネット界隈のレッド達の信用度の高さがすごいな。

 黒騎士とは別ベクトルでこれまでの積み重ねがいい方向に……まあ、いい方向に作用しているのだろう。

 

「レッドさん達いい人だけれど、怖いのはちょっと分かる」

 

ナオちゃん?

怖かないよね?

なんでそんな酷いこというの?

 

 即レスするレッド達に日向くんがちょっと震える。

 お前たちが怖がられるのは、そういうところだと思うぞ。

 

「彼女をどうするか、についてだが。彼女が類まれな技術を有していることも考え、我が社の専属絵師として雇用することが決定した」

 

・AI絵疑惑あるのに?

・決定が早すぎwww

・類まれな技術・・・?

・昨日の今日でえぐ……

 

「これには理由があってだな」

「え、そうなんですか?」

「うむ。これまでは極力外部にイラストなどの作成を要請せず、私自身が実際に作成しそれを用いていたわけだが……最近、やることが多すぎて正直辛くなってきたので、いい機会だと思い有望な漫画家であるステラ氏をスカウトしたのだ」

 

・思っていたより切実www

・ジャスクル関連のイラスト社長!?

・やば

・なんでもできるなこの社長

・絵もかけるとか変態かよ 変態だった

・いつ寝てんのこの人・・・?

 

「普通にドン引きですね。実際いつ休んでいるんですか?」

「右脳と左脳を別々に使っているだけだ」

「……」

「……ジョークだぞ?」

 

 普通に滑った。

 以前まではマルチタスクで並行して作業して、徹夜したり適当な時間とって睡眠に当てたり不規則極まりない生活をしていた。

 タリアが戻ってきてからは、過度な作業をしようものならば強制的に休ませられている。

 

「さて、と」

 

 そろそろステラ氏に出てもらおう。

 ちらり、と視線を目の前に動かすと、今我々が配信をしている前方方向に今回の手元配信用にテーブルとカメラなどが設置された場所が視界に映りこむ。

 そこに、配信が始まった時から深呼吸を繰り返していた肩ほどまでの銀髪の少女———ステラ氏がいる。

 

「できるできる私はできる、やれるやれる私はやれる」

 

 ……。

 

 一応配信に出てくることに不安はないか再三の確認をしたが、意外にもステラ氏は生配信でも大丈夫らしく、謎のやる気を見せていた。

 この配信が始まる直前には———、

 

『わ、私、ちょっと性格変わるかもしれませんが……頑張ります……!!』

『う、うむ? 性格変わるかもしれないが頑張る……?』

 

 不安すぎる意気込み配信開始5分前にもらってしまったが……まあ、そこは私と日向くんのアドリブでカバーできるはず……!!

 

「では、皆も気になっているだろうし、今回のメインゲストを紹介します」

 

 日向くんの合図でステラ氏が手元のマイクをオンにする。

 なにが起こっても大丈夫なように備えながら私は、彼女専用の立ち絵を用意すると同時に、大きく息を吸った彼女が———今日初めて会った時から、全く印象が異なる笑顔を見せた。

 

「皆さん はじめましてー! お茶目でかわいい宇宙人兼新人漫画家のステラでーす!」

 

 二度見した。

 え? だ、誰ぇ!?

 

「朝見たらフォロワー数が53万になって気分は宇宙の帝王って感じで震えが止まらなくなってびっくりだね!!」

 

 ……あ、あるぇぇ!? ステラ氏ぃ!? 昼間話した時、純文学が好きそうな内気な文学少女だったよねぇ!?

 なんで、そんな「きゃは☆」とか言いそうな感じになっているんだ!? 前髪軽く分けただけでそんな印象変わる!?

 

・え、キャラ濃・・・

・声かわいい

・立ち絵も声もかわいいな

・イロモノ枠だぁぁぁぁ!?

・ランキング変動!!

・ステーキかと思ったらラードが出てきたwww

 

 私の内心と同じようにチャット欄も混乱する。

 そんな中で、日向くんも驚きながら太陽のような笑顔を振りまくステラ氏に話しかける。

 

「え、ステラさん?」

「世界で一番かわいいステラちゃんだよ?」

「は? 世界で一番かわいいのは私なんですが?」

「エッ、アッ、ス、スミマセンッ……調子乗りました……」

 

・ムッ陰の気配

・草

・かわいい

・急にブルー化すな

・おもしれー女ども

・草

・草

・蒼花って急に自己主張激しくなるな

・やっぱりブルーの妹

 

 唐突にボケに回った日向くんに一瞬で素に戻るステラ氏。

 そんな彼女に一度咳ばらいをした日向くんは、台本に一瞬だけ目を向けながら質問を投げかける。

 

「では、社長さんからもお話がありましたが、黒騎士さんとはどのような経緯で知り合ったんですか?」

「彼とはねー、お店で働いていたところで会ったんだ!! それで色々あって私の漫画を見てもらって、そこから友達になってね!!」

「へぇ?」

 

・は?

・地雷踏み抜いてて草

・どういう幸運?

・えぐ

・は?

・圧草

 

「その間にブルーさんとも友達になって、なんか漫画とかアニメとか色々教えてくれるみたいで楽しみにしているんだー!!」

「お姉ちゃんと友達……!?」

「ああ!」

 

・ブルーの魔の手が……!?

・ブルーの不純さに気づかない点で純粋だなこの子

・ほならブルーが悪いか

・www

・さてはこいつポンだな?

・友達は選んだ方がいい

キレそう

 

 こういうところは逆にブルーが強いとすら思えてしまうな。

 なぜかって……こいつは生半可なことでは炎上しないな、というコンプライアンス的な安心感があるからだ。

 

「話はこの辺りにしてステラ氏の技術がどの程度のものか、手元配信という形でお披露目するとしよう。ステラ氏、準備を」

「ああ、任せてくれたまえ!」

 

 キャラのギャップが凄すぎて別人に声をかけてしまったと錯覚しそうになる。

 取り付けたカメラを起動すると、テーブルに固定された用紙と五本の鉛筆———そして、ステラ氏の両手が映し出される。

 

「あ、映ったかな? おーい?」

 

・手は人間だな

・手綺麗すぎるだろ

・鉛筆こんないる?

・どうせ嘘

・本当に生放送なんだ

 

「ちゃんと映像が映し出されたようですね」

「うむ、言わずもがな今配信されている映像は生放送だ。これより、ステラ氏には……そうだな、黒騎士とジャスティスクルセイダーの誰かの絵を書いていただきたいと思う」

 

 本来はより確実性を出すためにチャット欄で募集をかけておきたいところだが、募集数が多すぎて飽和する可能性があるので、ここは今後のことを考え彼女が主に書くことになるであろう黒騎士達の誰かを書いてもらうことにしよう。

 

「制限時間は……とりあえず、一分にしよう」

 

・短すぎない?

・30分じゃなく?

・身近

・ん?

・あれ?

・はぁぁぁ!?

 

 ———ん?

 なんだ? いきなりコメントが加速したな。

 なにか嫌な予感を抱き、一応ステラ氏に視線を向け———えんぴつをテーブルに置いた彼女の手元に既に完成された黒騎士の絵があることに気づく。

 

「ステラ氏……? まだ早いよ?」

「……え? ……アッ、えっ、ご、ごめんなさい、もう始めちゃいました!!」

 

・え?

・は?

・え?

・え?

・十秒も経ってないぞ!?

・やば

 

「あ、あぁ、すみません!! すみません!! もう一回やります!!」

 

 慌てて大混乱に陥ったステラ氏がそのまま新しい紙にまたイラストを高速で描く。

 ものの数秒で描かれたレッドのキャラクターイラストに、チャット欄もとんでもない反応を返している。

 

・えぐ

・パ二くると素が出ちゃうのかわいい

・リアル岸部露伴みたいなことしてる

・かわいい

・スタープラチナかなんかか?

・これはスカウトされるわ

 

「と、いうことだ。お分かりいただけただろうかな? 諸君。ちなみに彼女の技術は特殊能力とは関係なぁい」

 

・社長www

・声が震えてるぞ

・こんなん見せられたら文句言えねぇわ

・関係ないの!!?

・えっぐいwww

・AIよりやばいやつやん

・ソーメン買ってきます・・・

 

 社長とは不測の事態もチャンスに変えてこそ社長なのだ。 

 多少予想外の展開になってしまったが、特に問題もなければ結果オーライ……!!

 

 


 

 世界から締め出された。

 ルインと、穂村克己という最高の見世物がある世界から。

 そうしたのはあの異物。

 本物(イリステオ)ではない偽物(イリステラ)

 

「ふざけるな」

 

 あれが()を上回るだって?

 あれが()を能力で凌駕しているだって?

 

「ふざけるな、ふざけるな、ふざけるなふざけるなぁぁ!!」

 

 次元の境目に手を伸ばすが、弾かれて触れられない。

 あの紛い物が干渉を徹底的に拒むせいで、()たちは誰も、一個体も入ることができない。

 それがどれほど我慢できないほどに屈辱的か。

 

「見せろ、見せろよ!!」

「独り占めするな!!」

「役目だろ!!」

「勝手をするな!!」

 

 我慢ならない。

 我慢できるはずがない。

 見れないもどかしさで狂いそうだ。

 でも、どれだけ叫んでも、喚いても世界は開かれず閉じられたままだ。

 

「あ、そうだ」

 

 そこで()は気づいた。

 

「僕達、増えすぎたんだ」

 

 増えすぎたから、イリステラのようなバグが生まれた。

 バグが生じるような不具合が生まれてしまった。

 なら、元に戻さなくちゃならない。

 強かった僕達に。

 思うままに他者を弄べた僕達に。

 

「それなら、これからすることも……仕方ないよね?

 

 また僕達は一つのイリステオになればいい。

 そうすればあのバグよりも、強くなる。

 そう結論づけた()は手始めに隣にいる私を———、




身内を煽りまくった(?)経験を生かしたステラでした。


次回の更新は明日の18時を予定しております。
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