別作品関連で色々と忙しくなってしまい更新が遅れてしまいました。
続けてですがご報告です。
今月、8月30日より「追加戦士になりたくない黒騎士くん2ー白騎士編ー」が発売されることになりました!
2巻もイラストを担当してくださったギンカ様による挿絵イラストや、WEB版とは違った展開・戦闘描写などを加筆いたしましたので、WEB版とはまた違った部分で楽しんでいただければなと思います。
どうかよろしくお願いいたします<(_ _)>
今回は前回から引き続きフィンガ視点。
三話更新予定です。
劇的に力が上がるわけでもない。
防御力が高くなるわけでも、かといって速くなるわけでもない。
特殊な能力が追加するわけでもない。
両腕を自由にできる。
そんな単純な強化形態なだけである。
だが、それでいい。
劇的な強化なんぞ、必要ない。
なにせ、そんなモンがなくったって俺はいくらでも強くなれるからな。
「———」
相対するレッドが刀を振るい、斬撃を飛ばす。
空を裂き、意識の隙間を縫い、敵対者の首を刈り取る死の刃。
しかし、それらはアイシャの能力により、全てが俺の首を刎ね飛ばすであろう首へと誘導される。
軌道が分かればどんな攻撃だろうと対処できねぇ道理はない。
「
青炎を拳に纏わせ、斬撃を弾き飛ばす。
直後、六角形の宙を飛ぶ複数の武装が俺の周囲を取り囲むことに気づく。
「取り囲んだ」
「っ!」
狙撃銃のような形状の武装を構えたブルーによる射撃。
子気味のいい銃撃音と共に連続で放たれた青色の光線は、六角形のビットに直撃———連続で反射し、不規則な軌道を描いて殺到する。
だが、それでもアイシャの
「ハッハァ!!」
拳の一振りで一気に光線全てを散らす。
だが、この程度で地球の戦士たちの攻撃が終わるはずがない。
弾けた光を払いながら迫るは、雷をその背に背負った戦士。先日、観光したアサクサにて見物したライジンを思わせる電撃を身に宿しながら、身の丈ほどの大斧を横なぎに叩き込もうとする彼女に、俺は久方ぶりの死の予感を抱く。
「っ!!」
一旦斧の刃に拳を挟み、下から押し上げるように力を受け流す。
だが、その細腕からは想像すらしない剛力、そして近くにいるものを焼き焦がす電撃に歯を食いしばりながら、必殺の一撃を凌ぐ。
「攻撃を流された」
「技巧派だね。でも、避けられないみたい」
戦闘勘も冴えきっている!!
アイシャの能力の特性上、俺は攻撃を避けることがほとんどできない。
攻撃が自動的に急所に向かってしまうから……ということもあるが、アイシャの能力により引き寄せられた不幸から逃げないという俺自身の誓いが、回避を許さない。
「ハッ、だが、それがどうしたァ!!」
攻撃は終わらない。
凌いだ次の瞬間には、レッドが刀を上段から振り下ろし、その背後からは射撃からワイヤーでの拘束に切り替えたビットを向かわせるブルー。
「えっげつねぇ!!」
レッドの攻撃は一つ間違えれば致命傷!!
イエローの一撃は受け流し損なえば即死!!
ブルーは放置すると全力を出せなくなる!!
これが地球の戦士か!!
これがジャスティスクルセイダーか!!
すげぇぜ!! ヒーロー!!
「フハハ!!」
やべぇ状況だ。
なのに笑っちまう。
戦士としての愉悦? 否! 極めて否!!
こんな絶体絶命の状況だからこそ、この身に降りかかった
「こっちも気合いれなきゃなぁ!! アイシャ!!」
『ええ、やっちゃうわよ!!』
青い炎のように半透明にゆらめくアイシャ。
彼女の目が深い青に輝き、彼女がもたらす不幸の濃度を強くさせる。
『フィンガ、死なないでよね!! 愛してる!!』
「お前を残して死ぬわけないさ!! 愛してるぜ!!」
「ちょっとイチャイチャするのやめてくれないかなぁ!!」
「やりにくいわぁ本当に!?」
「戦闘中に私より変なこと言うのやめてね?」
闇夜の空に輝く星々———以外に点々と光りながら地球に迫る極小の隕石。
不幸に大気圏を超える前に燃え尽きなかったそれらが、まるで雨さながらに俺目掛けて降り注ぐ。
「
青く燃え上がる拳を構え、頭上から雨のように迫る隕石すべてを連続でジャスティスクルセイダーへと弾き飛ばす。
一撃一撃が多腕野郎のどてっぱらに穴を開けた一撃、それに対してレッドは凄まじい反応速度で一閃———あろうことか隕石を寸分たがわず真っ二つに斬り落とす。
他二人も難なく対処している、が構わず突っ込んでいく。
「オラァ!!」
「!」
繰り出した拳を避けられ、炎に包まれた刀がわき腹———から、強制的に首へと迫る。
急所に強制的に攻撃を誘導される
「ああ、そうさ! 俺は避けねぇ!! だがそれはお前らも同じだぜ!!」
「ッ!!」
意識しねぇうちはなにも感じねぇが、一旦自覚すりゃ攻撃する箇所を誘導されるっつーのは、思いのほか気持ち悪いもんだ。
強制的に急所に誘導される不幸の力。
引き寄せられる因果に抗うことは容易じゃぁない。
一見デメリットにしか見えない不幸は、俺にとってみれば幸運の女神にもたらされた祝福に他ならねぇ!!
「ぬぅん!!」
足に炎を纏わせた地面に叩きつける。
運悪く足を叩きつけた砂浜———地下深くの地盤が割れ、足場が崩れる。
一気に足場が沈み、ブルーの視界が外れた瞬間にこちらに攻撃を仕掛けようとしたイエローに拳を叩きこむ。
「ふん!!」
「
「っ」
斧で防がれるが、視界を外したブルーのビットから放たれたビームが俺達のいる場所に殺到する。
「くぅ……!!」
これも防ぐか、マジで化物だな!!
アイシャの能力で引き寄せた不意の攻撃すらも耐えきるイエローに軽く引きながら、追撃の拳を叩きこもうとしたところで、刀を構えたレッドが割って入いる。
「———そっちがその気なら分かった」
レッドの目が鋭く、冷たい殺気を帯びる。
ぞくり、と背筋が凍る感覚を抱いた次の瞬間、俺の首に赤熱した刀の刃が迫る。
「マジかッ」
動揺もなにも感じさせない、僅かな揺らぎすらない薙ぎ。
直感的に右腕を跳ね上げギリギリで刀の軌道を外しながら、ひきつった笑みを浮かべ、後ろから斧を叩きつけてきたイエローへの対応に移る。
「……!!」
頭目掛けて振り下ろされる斧は、さながら断頭台のように確実な死を俺にもたらそうとしている。
ジャスティスクルセイダーの他二人と比べ、明らかに常軌を逸した威力を内包する攻撃力を持つ一撃を前に、俺は極限にまで神経を研ぎ澄ませ―――固めた拳を斧の刃に添えるように当て、力の方向を流す。
「ッッ!!」
しかし、威力が威力。
溢れ出す電撃が炎と鱗に包まれているはずの右腕を焼き焦がす。
だがこれで済んだだけ幸運!!
激痛に構わず、蹴りを叩き込み無理やりに距離を取る。
「フィンガ!」
「心配ない……が、さすがだな!」
こちらの能力に当てをつけて、狙いをつけることをやめやがった!!
身体が勝手に指示とは違う動きをしているにもかかわらず、その動きに身を委ねる。
頭では分かっても、普通にできることじゃない。
「———すげぇな」
何度目か分からない賞賛の気持ちを抱く。
これほどまでの戦闘への順応性と、覚悟を備えるためにどれだけの修羅場を潜り抜けたのか。
「さぁて、もっと熱くなって———」
『ねえ、フィンガ』
「ん? どうした?」
傍にいるアイシャの声に耳を傾ける。
『そろそろ旅館に戻らないと旅館に迷惑がかかっちゃうかも……』
「何!?」
それは、まずいな。
宿をとっているところの女将さん、美味い夕食を準備してくれていると聞いている。
この地域の特産の海産物をふんだんに使った食事と、上手い地酒を出してくれると約束してくれているので早く戻らなければならない。
いや、しかし、ここで戦いをやめるのも———、
『お魚……』
いや、この戦いってそんなに重要じゃないな。
そもそも襲われた理由も怪人のせいだし。
それよりアイシャがお腹を空かせていることの方が問題だ。
「ジャスティスクルセイダー。悪いが急用を思い出したので帰る」
「は? 急用?」
「アイシャがお腹を空かせてる。最優先事項だ」
正直に言うと、半透明状態のアイシャが首に回した手を外して、俺の背中をぽかっと殴る。
『ばかっ、恥ずかしいから言わないでよ!!』
「!? 配慮にかけていた……すまない、ハニー」
即座に謝る俺に、アイシャは頬を
『……本気で怒ってないわ。もう』
「ハニー……!!」
「ねえ、この気持ちをどこにぶつけたらいいの私?」
「なんでこんな惨めな気持ちになるん……?」
「私の青春ドコ……?」
照れているところも可愛いとか最強か?
戦いは楽しいが、それ以上にアイシャと共に生きる方が大事なので、ここは引かせてもらおう。
そもそも、なし崩し的に戦っているようなもんだったしな。
「逃げられると?」
「真っ当な方法じゃ無理だろうな。———だが」
もう
頭上から地上へ落下してきたソレを見上げ、同時に跳躍する。
赤熱し、形を保ちながら猛烈な速度で落下する人工物———それを目にしたジャスティスクルセイダーは目を丸くする。
「人工衛星!?」
「普通こういうのって地球に落ちる前に燃え尽きるんちゃうの!?」
「運悪く燃え尽きなかったみたいだなぁ!! じゃ、こいつの対処頼んだ!!」
「ふざけんなぁー!!」
当然、対処可能なことが分かり切っているので、高笑いしながらその場を一気に離れる。
「いやぁ、危なかったな!!」
アイシャの能力のおかげで調子を崩せてはいたが、結局のところ俺の攻撃はほとんど対処されたようなもんだ。
常に進化を要求される戦いで成長してみせた戦士達が生半可なことで屈するはずがない。
分かり切った事実を再確認し、俺は笑みを零す。
「楽しかった? フィンガ?」
「ああ、満足だ」
「……うん。それならよかった」
……気を遣わせちまったな。
即座に心理学的考察力で思いつめたアイシャの内心を読み取り、早速言葉を交わすべく実体化した彼女を横抱きに抱え、街中を駆ける。
「アイシャ、俺は無理なんてしてねぇぜ」
「え?」
「俺は戦うのが好きだ。だが好きなだけで、一番ってわけじゃない」
強い奴と戦えば、そりゃ血が沸くし高揚もする。
元は戦いばかりしていた
「俺の一番大事な存在は、この先絶対に変わることはない」
捨てられずにいるモン、と今大事にしている存在。
どっちが大切だなんて考える必要すらねぇ。
「だから、我儘でいてくれ。俺が戦士でいられないようにな」
「……子供みたいに駄々をこねても?」
「ああ、もちろんだ」
でも子供みたいに我儘をするアイシャはちょっと見て見たいかも、と我ながら台無しなことを考えるのであった。
合間合間でアカネ達に無自覚デバフをいれてくる九位でした。
次回の更新は明日の18時を予定しております。