追加戦士になりたくない黒騎士くん   作:クロカタ

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書籍版『追加戦士になりたくない黒騎士くん2』について追加報告です。

許可がいただけたので、Xにて表紙と口絵イラストの方を公開させていただきました。
申し訳ありませんが一巻の時と同じように、こちらにXのURLの方を張らせていただきます。
興味のある方は是非ご覧ください。
口絵イラストその1【変身】
口絵イラストその2【お仕置き】
https://twitter.com/koxHhDrnIZIMYJZ


そして、二日目、二話目の更新です。
前話を見ていない方はそちらをお願いします<(_ _)>

最初はカツミ視点、中盤からアカネ視点でお送りいたします。


アカネ、最大の試練

 観光地近くで発生した星将序列九位と怪人との戦闘。

 その知らせを受けたレイマはすぐさまアカネ達を派遣し事態の対応に向かったが、怪人は九位の圧倒的な戦闘力により倒され、奴はそのままアカネ達と戦闘を行った。

 結果からすれば撃退できたんだろう。

 だが、事実としては九位は戦う気はあっても決着はつけるつもりもなく、それどころかアカネ達を排除しようとも思ってもいなかったようだ。

 

「……九位、いや、あのアイシャって人の能力か」

 

 ジャスティスクルセイダー第二本部内の自室。

 九位とアカネ達が戦闘を行った次の日の昼、俺は昨日の九位とアカネ達の戦闘記録に目を通しながら思考していた。

 

「プロト。こいつは……お前に近い能力、だよな?」

 

 機械音痴の俺の代わりにモニターにケーブルを繋いで操作してくれている黒いオオカミ型のメカ、プロトは、目元を点滅させながらこちらを見上げてくる。

 もう一人、シロはモニター係をとられて、ベッドの上で不貞腐れているけど……まあ、いつものことなのですぐに機嫌を戻すだろう。

 

『うん。あの人は運命を歪める能力を持ってる』

 

 プロトのアルファとしての能力は“運命”。

 ザインの野郎がそう言っていたし、他ならないプロトが否定していないので確かなことだ。

 単純な話で言うなら、プロトの能力の方が上位互換ともいえるだろうが、そう単純な話じゃない。

 

「自分に降りかかる不幸を逆に利用しているって考えてもいいか?」

『そうだね。非効率的だけど、中々厄介だよ。実際、アカネ達も苦戦していたし』

 

 不幸だから急所に攻撃が向かっちまうし、不幸だから隕石も雷だって降り注いてしまう。

 排除するための戦闘ではなかったアカネ達からすれば、殺さないように意識した攻撃が無理やり急所に引き寄せられたって考えたら、困惑するのも無理ない。

 

「……強いな」

 

 そう呟くと、プロトが小さな頭を不思議そうに傾げる。

 

『カツミなら戦えるよ』

「やるからには全力で戦う。でも、フィンガの強さはまた別のモンだ」

 

 大事なモンが近くにいるからこそ、あの男は最大限の力を発揮する。

 理屈とかそういうものじゃなく、形にできない湧き上がる力がフィンガという男をどこまでも強くさせてしまっているんだ。

 

「……愛、か」

『え?』

 

 一瞬考えに耽ってしまった俺にプロトが声をかける。

 

「愛ってなんだろうな? プロト?」

『!? あ、え、その』

 

 誰かを守りたいと想うほど強くなること。

 それはなんとなくだけど、分かる。

 だがそのことは頭では分かっているけど、すんなりと受け入れられない自分がいる。

 

「……危ねぇ。また一人で悩むところだった」

 

 以前の悪い癖だな。

 一人で悩んでいても解決しねぇもんは解決しない。

 ちょうど昼飯時だし、こういう時は信頼する誰かに相談してみるか。

 


 

「なあ、愛ってなんだと思う?」

 

 それは、カツミ君の口から突然切り出された言葉だった。

 瞬間、サーサナス二階に集まっていたカツミ君以外の面々———具体的には私、きらら、葵は時間が止まったように一様に反応することができかった。

 

「え、あ、あい? あ、あーAIね。うんうん、最近流行っているよね」

 

 真っ先に硬直から帰ってきたのは意外にもきらら。

 彼女の言葉にカツミ君は不思議そうな反応を返す。

 

「えーあい? いや、愛だよ愛。ラブアンドピースのラブ」

「アイラブユー!?」

「そこまで言ってないけど」

「そこまで私のことが好きじゃない!?」

 

 駄目だぁ! 硬直から帰ってきたけど混乱したまま、まともな反応を返せていない!?

 とりあえず隣でスライムのように震え始めるきららのわき腹を手刀で軽く突いて正気に戻らせる。

 

「葵、こういう時こそあんたの変なノリで突っ込んでいってよ……!!」

「私にも出来る無茶と、出来ない無茶がある。失敗したら二度と立ち直れない自信がある」

 

 そもそも、いったいどういう意図の質問なのこれ!?

 割と怪人が出現した以上の緊迫した状況に私たちは醜くも追及する役目を押し付け合う。

 私たちの反応を見て、カツミ君がちょっと申し訳なさそうな顔をしてしまう。

 

「……なんか変なことを聞いちまったな。悪い、忘れてくれ」

「いやいやいや、全然大丈夫だよ!? そのくらいのことだったら答えられるから!!」

「流石、アカネのいう通りや!」

「うんうん、アカネならやってくれるから」

 

 こいつら本当にチームなのかな? 最大の敵に思えてきたんだけれど。

 でも、ここで遠慮してやめられるほうがもっと気まずい……!

 私たちの反応を見て、カツミ君が「ん?」と訝し気な反応をしてから、ハッとした顔をする。

 

「あ、いや待て。悪かった。今のは俺の聞き方が悪かった」

「え?」

「さすがにそんな気恥ずかしい話題じゃないんだ」

 

 額に手を当てて申し訳なさそうにするカツミ君に私達も顔を見合わせる。

 どうやら、恋愛とかそういう感じの話題ではなさそうだ。

 ……安堵したというか、ちょっと残念なような。

 いや、それより!!

 

「カツミ君、愛を知ってたの!?」

「知ってるに決まってんだろ!?」

「かつみん、それは解釈違い」

「かつみん言うな」

「愛を知らない黒騎士くんじゃないの……?」

「そこまで行くと失礼だろ……!」

 

 私たちの反応に怒涛のツッコミを見せたカツミ君が頭を抱える。

 

「俺をなんだと思ってるの……? そんな無神経なやつだと思われたのか……?」

 

 無神経ではないし、なんなら鋭いまである。

 でも、カツミ君変なところで常識が抜けてるところがあるから……。

 

「普通に考えて、お前らにそんな踏み込んだ話するわけないだろ」

「え、なんでしないの? 」

「カツミ君は私達に話す義務があるんだよ?」

「君に私たちの青春を投資したことを、一応言っておく」

「こえーよ……」

 

 むしろ、話してくれなかったら普通に病みますけど?

 葵もきららもそうだと思うけど、私自身重いのは自覚してる。

 誤解も解けたようなので、カツミ君が聞きたいことについて尋ねてみよう。

 

「それで、カツミ君。いったいどうしたの? いきなりその……あ、愛について聞いて……」

「昨日の九位の戦闘記録を見返して、ちょっと思うところがあってな」

 

 その言葉で内心で納得する。

 昨夜の第九位との戦闘。

 自身に降りかかる不幸を武器とした立ち回りで、私達を翻弄した九位の戦闘技術はカツミ君にとっても興味深いものだったのだろう。

 問題はそこからどうして愛について相談してきたのかってところだろうけど。

 

「九位……フィンガとアイシャの間には確かな信頼関係があった。片方が少しでもパートナーの力を疑えばそこで死ぬかもしれないって状況でさえも、あいつらは少しも揺らぐことがなかった」

「そうだね。相対していた私もそう感じた」

 

 いや、なんかもう負けてないのに敗北感すら抱かせたからね。

 目の前で砂糖が常に生成されているような状況だったもん。

 

「それに加えて、かなり実戦慣れしてたね。状況をよく見て、周りをうまく使ってる」

「私たちの連携が崩されるのって久しぶりだった」

 

 最近まで侵略者も怪人も対応できなかった私達の連携に対処されてしまった。

 こちらも九位との交渉やら、急所に攻撃を強制されるという不可思議な能力のせいでぎこちない部分もあったけれど、九位は確かに強かった。

 

「カツミ君は、なにが気になっているの?」

「……正直なところ、俺にもよく分かっていないんだ」

 

 カツミ君の言葉に私達も訝しむ。

 

「九位の強さは理解している。もちろん、あの揺るがない信頼関係から成り立つ戦術の厄介さも。でも、それでも頭のどこかしらでは、それを理解したくないって思い込んでいるんだ」

「思い込んでいる?」

 

 理解しているのに、理解したくない?

 葵ときららと顔を見合わせる。

 カツミ君にとっての“愛”。

 できることなら、いや欲張って言うならそれは私たちのことであってほしいけれど……多分、違うんだよね。

 

「ねえ、カツミ君。やっぱり君が本当に聞きたいのは九位の強さの理由じゃないよ」

「……そうなのか?」

「うん。……今からちょっと君の過去に踏み込んだ話をする」

 

 過去にカツミ君に愛情と、絶望を与えた人たちがいる。

 そのことを考えてみると、彼が悩んでいることに合点がいく。

 

「多分、小さい頃の君のお父さんとお母さんと、九位二人の関係を比べているんじゃないのかな」

「!」

 

 私の言葉にカツミ君が目を見開き、口元に手を当てる。

 暫し考え込むように沈黙した後に彼は、軽いため息をつく。

 

「そういうことか。だから俺は……内心で納得できていなかったのか」

 

 仲のいい家族。

 でも、そんな幸せな家族は彼にとってはもう遠い過去のもの。

 死に瀕していたといっても、大好きだったはずの子供に憎しみを向けてしまった両親の姿を強く覚えている彼にとって、九位の“愛”を理由にした強さが理解できなかったのかもしれない。

 でも、それはカツミ君がおかしいわけじゃない。

 

「それにさ、九位が強い理由。もっと簡単な言葉で言えるよ」

「なんだ?」

 

 きららの言葉にカツミ君が耳を傾ける。

 

「誰かを大事にしたいって思う気持ちだよ」

「! ……はは、なるほど」

 

 驚いた顔から、カツミ君はすぐに笑みを浮かべる。

 

「それなら、奴も俺もそう変わらねぇってことか」

「え?」

「大事にしたいって思う気持ちなら、俺もお前たちも負けてないだろ?」

 

 そう笑って言ってくれたカツミ君に、私達もつられて笑ってしまう。

 うん、その通りだ。

 私達もカツミ君も、今は皆を大事に思っているから強くなれているんだ。

 


 

 カツミ君の相談を聞いた後、一旦その場は解散することになった。

 解散といってもきららが基地内で勉強会を行っているななかちゃんと、こうた君を迎えに行って、葵はハルちゃんが案件配信をするっていうから、その手伝いに行くというもの。

 私は……役得……じゃなくて、流れでカツミ君と訓練場に行くことになり、今は基地内を一緒に歩いているところだ。

 

「え、アルファちゃんとハクアちゃんに聞いたの?」

「ああ」

 

 どうやらカツミ君は二人にも相談していたようだ。

 

「二人はなんて答えたの……?」

「赤ちゃんだから分からないってさ。あいつら口をそろえて言いやがって……」

 

 便利だね実年齢一桁。

 きっと二人もかつてないほどにあたふたしながら答えたのだろう。

 

「まあ、思い返せば俺の聞き方も悪かったしな。後で謝っておかねぇと」

「私もびっくりしたからねー」

「場合によっちゃ、訴えられてもおかしくなかったな。ははは」

「そんなことしないよ? 言質はとるけど」

「はは……え、なんの……? おい?」

 

 笑みだけ返しておく。

 

『カツミ』

「ん?」

「え、プロトちゃん?」

 

 カツミ君のポケットから顔を出したプロトちゃんにびっくりする。

 この子が自分から出てくるのは地味に珍しいし、どうしたんだろう。

 

『今、運命が歪む感覚があった』

「分かるのか?」

『そういう力が働くって分かっていればね。歪んだのは、カツミと九位が相対する運命』

「……なるほどな」

 

 運命が歪む……?

 九位ってことは、まさか……奴にとっての不幸としてカツミ君が戦うことになる、とか?

 なんとなくとしか察せないけれど、事態が動いているということは分かる。

 

「……よし! 行き先変更だ。アカネ!!」

「え!? へ、変更ってどこに?」

「プロト。レイマに連絡を繋いでくれ」

 

 プロトに指示を出しながら、こちらを見たカツミ君は指でちょうど通りかかった外へのゲートを指さした。

 

「今から外に遊びに行こうぜ」

「あ、いいよ。……!!!!?

 

 そ、外!? 遊びに!?

 そ、そそそそそれってもしかしなくてもデートでは!?

 

 




いきなり窮地に追い詰められるアカネでした。


次回の更新は明日の18時を予定しております。
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