本日もXにて『追加戦士になりたくない黒騎士くん』2巻の挿絵の一部を公開いたします!
挿絵『蒼花ナオ』
挿絵『必殺技』
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そして三日目、三話目の更新です。
今回はアカネ視点でお送りいたします。
不意打ちだった。
カツミ君からのいきなりのお出かけ宣言に私は、ろくな反応を示せずにあれよあれよという間に状況は動いていってしまった。
なぜいきなり外に行くのか?
なぜ、作戦扱いなのか?
そこはかとなくカツミ君が説明してくれたような気がしていたけど、正直まったく頭に入ってきていなかった。
「レイマ、モニターを頼む。ああ……ああ、悪いけど今回は俺に任せてくれ」
気づけば私とカツミ君はジャスティスクルセイダー第二本部から、ゲートを通ってサーサナスとは別の場所へとワープしていた。
場所は、都心から少し離れた観光地の近く、ゲートが設置された建物から人の通りの多い道に出た私は、ここでようやく我に返って隣のカツミ君を見上げる。
カツミ君は帽子に眼鏡、私はブロンドのカツラにサングラスという派手目ではない変装をしており、一目見ただけでは私たちの正体が分からない。
「よし、行くぞ。アカネ」
「あ、え……ぅん」
……行くってどこにぃ!?
ごめんだけど、予想外の展開過ぎて全然話を聞いていなかったけれど、これって私浮かれた気分でいていいわけじゃないよね!?
社長に話を通していた時点で察しているけれども!!
「すぅー……ふぅぅ」
とりあえずゆっくり深呼吸をして、落ち着きを取り戻してから周りを見る。
今歩き始めた場所はそれなりに大きな駅の近く。場所自体は私でも聞いたことのあるくらいの観光地……というより、昨日九位を相手に戦ったところから少しばかり離れたところだ。
観光客らしき人たちもそこそこいるけれど、私とカツミ君の変装はバレていないみたいだ。
「……」
これって普通にデートじゃね!?
最早、カツミ君がそう思っていなくてもデートだよね!?
冷静になろうと努めても状況が私を冷静にさせてはくれなかった。
「さっきから静かだけど、大丈夫か?」
「全然平気ですけどなにか???」
「お、おう」
テンパったあまりに葵みたいな答え方をしてしまった。
とりあえず、表面上は落ち着いた体で改めてカツミ君に話しかけてみる。
「あの、カツミ君。私達、いきなりどうして出かけているんだっけ?」
「え、ここに来る間に説明しただろ?」
「実は、ちょっと聞いていなくて」
衝撃的過ぎて説明とか聞いている場合じゃなかった。
人間、衝撃的なことがあると周りの声が聞こえないくらい頭が真っ白になるんだって初めて知ったよ。
「大丈夫か? 調子が悪いなら葵かきららに代わって」
「ううん、すっごい元気が有り余っているから私で大丈夫……!!」
断言する、ここで代わることを認めればきららと葵の間で戦争が起こる。
私の気迫にちょっと慄いたカツミ君が「そ、そうか」と返す。
「九位…アイシャの能力は不幸を引き寄せるって話してたよな」
「うん」
それはちゃんと知ってる。
というより、午前中に話したし、実際に目の前でその能力の応用を見ていたくらいだ。
「フィンガは彼女の能力により起きた現象を利用して戦っていたが、その不幸をもたらす能力はより広い範囲で作用するんだ」
「より広いって……」
「不幸を引き寄せる力は、その対象であるフィンガ自身に不幸をもたらせる存在も引き寄せちまうってことだよ」
……フィンガにとっての不幸。
隕石や落雷ではなく、より強い不幸をもたらす者といえば……。
「あっ、もしかしてそういうこと?」
「葵と晴とモールに行った時に遭遇したのも、その能力が作用したんだろうな。そして昨日の怪人とお前達と戦ったのもそう」
九位にとっての最大の不幸。
それは自身を倒しうる存在であるカツミ君との遭遇。
「それじゃあ、カツミ君は今からその能力に引き寄せられにかかっているってこと?」
「厳密にはもう引き寄せられようとしていたな」
「え、それじゃあ、これから九位にカチコミに行くとか?」
カツミ君は苦笑しながら首を横に振る。
「逆だな。俺じゃなく、相手の方からやってくるようにしてやるんだ」
「……そんなことできるの?」
疑問に思っていると、カツミ君の懐から黒色の機械仕掛けのオオカミ、プロトちゃんが顔を出す。
「アルファにはそれぞれ固有の能力がある……っていうのは、お前もなんとなく察しがついてるだろ?」
「うん。アルファちゃんの認識改変とか、ヒラルダの生物に憑りつく能力とかでしょ? もしかして、プロトちゃんにもなにかしらの力が?」
私の言葉にカツミ君が頷く。
「プロトのアルファとしての能力は“運命”を司るものだ」
「……運命」
「まあ、今の状態じゃおいそれと自由に使える能力ではないんだけどな」
カツミ君が変身する力の一部が“運命”、か。
いくつもの破滅の運命をぶちこわしてきた彼が持つ能力としてはぴったりだなって思えてしまった。
「だが、能力が近いおかげで、俺を引き寄せようとする運命を、逆に利用してやることもできるってわけだ」
「そうだったんだ。でも、引き寄せてどうするの?」
このまま遭遇しても変わらず戦うしかないような気がする。
「勝手に呼び出した挙句、不幸をもたらせって扱いが気に入らなかったこともあるが、とりあえず問答無用で戦うつもりはない」
「カツミ君らしいね」
「そうか?」
他人に自分の運命———ましてや、不幸の死神みたいな扱いをされたことに納得がいってないんだろうね。
怪人や侵略者からしてみれば本当に死神みたいなものなのだろうけど。
「前は終始相手のペースに呑まれっぱなしだったからな。今度こそはまともに———ん?」
「あれ、私にも」
ピコン、と私とカツミ君のスマホが鳴る。
先にカツミ君がスマホの画面を開くと、メッセージの通知が来ているようだった。
「フッ、きらら達が連絡してくれたみたいだな。ほれ」
「んー?」
私にも見れるようにスマホの位置を下げて画面を見せてくれる。
カツミ君へ送られたメッセージには———、
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| B |
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| A |
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| C |
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| F |
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カツミ君を送り出す暖かいメッセージがそこにあった。
そのメッセージを目にしたカツミ君は苦笑する。
「アルファあたりはずるい、とか言いそうだったが……まあ、作戦だからな」
「……」
「アカネ? どうした?」
「皆、快く送り出してくれて嬉しいなーって」
私には分かる。
このグループラインではこいつらが猫を被っていることを。
なぜ分かるって? 私の手元のスマホには、今まさに嫉妬に支配された悪鬼羅刹共の地獄の怨嗟のようなメッセージ通知が連続してなっているからだ。
私は、ため息をつきながらカツミ君を除いた女子メインのグループ画面を開く。
| K |
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| A |
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| C |
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きらら、葵、ハルちゃん、ハクアちゃん、アルファちゃんの順番で送られた怨嗟のメッセージ。
その後にドン引きするコスモちゃんと桃子さんのメッセージもある。
まあ、このくらいのメッセージは想定の範囲内、というより逆の立場だったら私もやるつもりだし。
「ふー」
これは無事に帰っても、私には戦いが待っていそうだ。
しかし、この状況に一片の悔いもないし、むしろ役得だと思っている。
なので、私は思考を放棄し、考えずに己の欲望に導かれながらカツミ君の手を取り、握りしめる。
「よし、カツミ君。とりあえず九位が来るまでどこかに行こう!!」
「ああ。大森さんにこの辺で美味しいスイーツのお店を聞いていたんだ。そこに行こう」
「じゃあ、そこで!」
大森さんって結構な多忙のはずなのに食べ物関係のお店にすごい詳しいよね。
でもまあ、甘い美味しいものは私も大好きなので、さっそくカツミ君と一緒に向かってしまおう。
「いらっしゃいませ」
プロトちゃんのナビゲートもあって甘味処へと辿り着いた。
見た目はお洒落な和風喫茶店といった感じのお店で和服姿の店員さんに出迎えられた私とカツミ君は、奥の席へと案内される。
「それほど混んでなくてよかったな」
「そうだね」
案内されたところもまさかの畳のところで、窓際から見える景色には青い海と白い砂浜が広がっている。
「景色も綺麗だね」
「ああ。喫茶店にしては結構変わったところだよな」
景色を楽しみながら、なにを頼もうかメニューに目を通す。
普段はジャスティスクルセイダーの活動があるから、こういうところに来るのって結構稀なんだよね。
「それじゃあ、私は……抹茶パフェと抹茶にしようかな」
「俺も抹茶と、白玉ぜんざいだな」
……なんだか抹茶抹茶になっちゃったな。
しかも私だけめっちゃがっついて食べてる感じになっちゃうけれど……カツミ君はそういうことを気にする人じゃないから別にいいか。
店員さんに注文した後、私はおもむろにスマホを取り出す。
「どうした?」
「お土産の写真」
「あー……店の迷惑にならないようにな?」
「分かってるって」
店員さんに撮っていいか許可をもらってから、軽く写真を撮る。
「今度は皆で来れるといいね」
「そうだなぁ。いきなりだけど、俺達だけでここに来たのはあいつらにも悪いもんな」
お土産と言う名の煽りだけどねっっ!!
しかもこの写真、貼るのは地獄のようなグループメッセージではなく、カツミ君もいる方に貼ってやるのだ。
五分ほどして頼んだデザートがやってくる。
緑の層を重ねた色鮮やかなパフェを見て楽しみ、次にスプーンで掬って口へと運ぶ。
抹茶の風味と甘味に自然を頬が緩むのを感じながら、暖かい抹茶を口にする。
「なんだか、ここに来た目的を忘れちゃいそう」
「普通に忘れていていいぞ」
「いや、駄目でしょ」
カツミ君に思わずツッコむ。
当の本人は、あんみつのかかった白玉を口にしながら、あっけらかんとしている。
「そんなすぐに戦いになるわけじゃねぇしな。それに、戦うとしても俺だけだ」
「え、戦って大丈夫なの?」
今のカツミ君の力は不安定で、長い戦闘は難しいって社長に言われていたんだけれど。
「限界以上の力を出そうとしなければ大丈夫だ。それに……九位を相手取れるのは俺だけしかいねぇからな」
「……カツミ君は私たちが九位に負けるって、思っているの?」
彼が力量を見誤るとは思っていない。
でも、昨日の戦闘を見てそう思ったなら心外だ。
九位は確かに強いけど、対処できないほどじゃない。
「いやちげーよ。お前らじゃ始末しちまうだろ」
「……。……手加減くらいできるよ?」
「その間が答えみてぇなもんだろ」
ぐぬぬ……でもカツミ君も私達と同じようなものだと思うけど。
いや、今の制限された姿はある意味で手加減ができるようになってるとも言えるのかな?
「つーわけで、戦うのは俺だけだ。もちろん、レイマにもそう言ってある」
「それじゃあ、私はどうして一緒に誘われたの?」
「? お前がいた方が心強いだろ?」
「っ」
なんの迷いもない真っすぐな言葉にちょっと顔に熱を感じる。
あー、もう、こういう無条件の信頼がなー、本当になー。
でも全然悪い気はしないし、むしろその信頼に報いたいと思ってしまう。
動揺したのを誤魔化すべく、手元のパフェをもう三口頬張る。
「そんなに甘いものが食べれて嬉しいのか?」
「……。それもあるけど、一番嬉しいのは君と一緒に、こんな時間を過ごせることだよ」
私の言葉にカツミ君はきょとんとした顔をする。
「普段結構いる気がするけどな」
「それはアジトでの話だからでしょ。思い返してみても、君とこんな形に出掛けるのって数えるくらいしかなかったじゃん」
「……確かに、それもそうか」
高校生の時は私もカツミ君も戦いばっかりだった。
特にカツミ君は、高校生活の後半を記憶喪失のせいで、過ごせなかったんだ。
それなら、時間がある時くらいは戦士としてではなく、普通の人間として暮らしてほしい。
「こちらのお席へどうぞ」
「最高の景色じゃないか。ハニー」
「また甘くて美味しい食べ物があるのね!!」
———と、その時私たちのいる席のテーブルに店員さんがお客さんを案内する。
やってきたのは、大柄な体格の男と、長身の美人さん。
確認するまでもなく、やってきた目的の二人組にカツミ君は振り返る。
「すみません。そちらの二人は知り合いなので一緒の席で大丈夫ですよ」
「ん?」
「あら?」
立ち上がったカツミ君が私の隣へと移動する。
その後に、私達の対面に九位———フィンガとアイシャが座る。
「おいおい、待ち受けられるなんて初めてだぜ?」
「その変装、とても似合っているわね? 隣の子は貴方のフィアンセかしら?」
はい、フィアンセです。
と口に仕掛けた言葉を理性で抑え込む。
アイシャの言葉をやんわりと否定したカツミ君は、変装用の眼鏡を外しながらニヒルに笑いかける。
「引き寄せられるのも癪に障ったんで、逆に引き寄せてやった」
「……はは! こりゃしてやられたぜ!!」
「とりあえず頼めよ。真面目な話をするのは、食ってからでいい」
不幸を逆に利用して、九位を引き寄せた。
でも、カツミ君は彼らになにを話すのだろうか?
ストッパーがいないせいで、だんだん図太くなっていくアカネでした。
3話更新の予定でしたが予定変更です。
間に合えば明日更新できそうなので、いつもの時間に次話を更新します。