追加戦士になりたくない黒騎士くん   作:クロカタ

199 / 224
三か月以上更新を空けてしまい申し訳ありませんでした……!!
次章の展開などで悩んでいたり諸々の理由で更新できませんでした。

今回は九日に分けて九話ほど更新する予定です。
前話からかなり間が空いてしまいましたが、第六部エピローグです。

レイマ視点です。


戦いの後

 カツミ君は元より、第九位を殺すつもりなんてさらさらなかった。

 そのことは事前に私に言ってくれていたし、私自身彼がその選択をしていたことに特に驚きもなかった。

 彼が敵を殺傷しうるケースは大抵、相手が邪悪な者でそうではない者……例として挙げるならば大森くんの替え玉にされていたグラトや、改心したヒラルダ、そして以前戦闘を交わした歌を現実化するアルファである序列八位は別だろう。

 そして、第九位は各地で挙げられている報告からして地球観光しているバカップルであることに加え、フィンガもアイシャも進んで争いをすることは好まない性格だった。

 

「カツミ君、体調に変化はないか?」

「全然平気だ」

 

 フィンガと戦闘し、和解した翌日。

 私は、カツミ君を第二本部内のラボに招き精密検査を受けさせていた。

 その理由は、彼がフィンガ戦で見せた技……いや、あれを技と形容していいか判断できない現象だが、とにかくあのような“アルファの能力を壊す”などという(ことわり)を捻じ曲げるような行いをした彼になにかしらの異常が起きていないかをちゃんと調べねばならなかったからだ。

 

「心配しすぎだよ、レイマ。あれはプロトがやってくれた封印の範疇でやったことだからそれほど危険じゃない」

「それでも、だ。いくら数値上は心配ないとはいえ、なにがあるかは予想できないからな。……それに、見てくれ」

 

 ラボ内の回転椅子に腰かけるカツミ君に、映像を見せる。

 それはカツミ君がアイシャのアルファの能力を壊した一撃を放った場面であり、彼が宇宙模様に染まったその人差し指をデコピンのように放つ姿が映し出される。

 

「この技を放った瞬間、君の反応が一瞬だけ消失したんだ」

「んん?」

 

 疑問に思ってしまうのはよく分かる。

 だが、この現象を説明するには矛盾した説明をするしかないのだ。

 

「正確には君は変わらずそこにいたが、そこにいない。まるで君のいたその場所だけ、瞬間的に別の世界に切り替わったかのような状態だった」

「……俺がいた場所だけ、別の世界に塗り替えられた……って感じか」

「そうとも捉えられるな」

 

 瞬間的にだが、空間そのものを塗り替えられた。

 それも単純なものではない、空間を、世界を従え、己の色に染める驚異的な支配力によりもたらせられるものだ。

 

「やっぱり、ルインと同じ力か」

「……やはり、アレも同じことができるのか……?」

「最初に戦った時もやってたしな」

 

 空間を作り出し、時間の流れすらも操る。

 カツミ君が一度目の失踪をした時に相対したルインが用いた技は、得体のしれないものだったが、その能力が判明した今となっても常軌を逸したものであった。

 

「……時折、考えるんだ」

 

 カツミ君が自身の掌を見つめながら呟く。

 

「俺はいったい何者なんだろうなって。生まれも育ちも人間だってことは分かっているし……過去に色々あったけど、それも言ってしまえば不幸な出来事にすぎない」

 

 カツミ君は人間だ。

 それは生物学上的にも科学的、そして私自身がそう証明する。

 でもそれでどうして彼がここまでの力を扱えるか、最初からプロトゼロスーツの完全適合者だったのか、ということについては、そういう“運命”にあったとしかいいようがない。

 

「私が証明しよう。君は人間だよ、カツミ君」

「……ありがとな、レイマ」

 

 そう、カツミ君の力は我々に証明できるようなものじゃない。

 なので、考えても分からないことを考えても時間の無駄なので、ここは希望的観測と、そうあってほしいという“希望”を抱いて言葉にしていく。

 

「そういえば、フィンガとアイシャはあれからどうしてる?」

「……あぁ、あの二人か」

 

 戦闘から数日が経ち、九位の二人には監視がつけられている。

 ……といっても、凄まじい戦闘力を有しているフィンガならば容易く振り切られてしまうだろうが。

 

「一日傷を癒した後に、また外に出歩いてな」

「まーた、観光地でも巡ってんのか? あいつら俺より外のこと知ってんじゃねぇのか」

「不幸の力が作用しなくなったことで、周囲に被害を及ぼす心配もなくなったこともあるのだろうな」

 

 からから、と明るく笑うカツミ君に監視しているスタッフから送られてきたフィンガとアイシャの写真を見せる。

 そこには……いったいどういうわけか、スタッフと肩を組んで自撮りしている二人の姿が映りこんでいる。

 

「……あいつら監視されてんの分かってるよな?」

「う、うむ。スタッフも顔が引きつっているからな」

「はぁー……まったく」

 

 序列一桁の実質的な無力化ではあるが、あらゆる意味で大変ではある。

 具体的には現場スタッフの心労的に。

 ……特別手当でも用意しておくか。

 

「さて、重苦しい話はここまでとして、先日のお祭りは楽しめたかな?」

「……あー、祭りかぁ」

 

 写真を消し、話題を変える。

 九位との戦闘後、カツミ君とアカネは本部で待機していたイエロー、ブルー、ハクア、アルファ、そしてコスモと風浦氏を誘い地域で行われていた祭りへと参加した。

 コスモは純粋に祭りの料理に食い意地が張って、風浦氏は気分転換に参加した一方で、イエロー達はというと———、

 

『アカネ、あんた随分調子よかったみたいやなぁ』

『メッセージ見たよ』

『楽しそうだったねぇ』

『許されると思わないでね?』

 

 なんだかもうお馴染みのやり取りをしていた、わけだが、笑顔の面々に囲まれたレッドは「ふっ」と微笑んだ。

 

『お祭り、みんなで楽しもうね』

 

 九位のアイシャに変な影響を受けたのか、どんどん言動のタガが外れて色々はっちゃけたレッド。

 奴は色々とやりきったような表情に逆に取りかこんでいたはずのイエロー達が動揺し始めた。

 

『アカン!? こいつ満足しすぎて逆に悟っとる!?』

『それは禁止カードだろ……!! プロレスはどうしたブラッド!!!!』

『私、分かったの。争いって無駄なんだなぁって』

『なんだろう、至極真っ当なことを口にしてるのにすっごい腹立たしい……!!』

『つ、強い……!?』

 

 そして祭りから数日経った今は言動を思い出してカツミ君と顔を合わせられないくらいに悶えていたが、恋愛強者であったアイシャとフィンガの気に当てられて一時的に無敵になってしまったアカネはとてつもなく強かった。

 

「祭りは、賑やかで楽しかったな」

「うむ、楽しんでくれてなによりだ。大森君もグラトも悔しがっていたぞ、ハハハ」

 

 大森君はともかくグラトはグルメ宇宙人だからな。

 現地で作戦の補助していた人員にお土産として屋台の食事を頼まなければそのまま不貞腐れていたくらいだ。

 

「祭りはいいぞ。なにより美味いものだらけだ」

「レイマも行ったことがあるのか?」

「無論。スタッフを出し抜き、足を運んだものだ」

 

 りんご飴、焼きそば、たこ焼き、イカ焼きetc……。

 店で食すとは異なる野外で味わうグルメの数々は、初お祭りデビューの私を心躍らせたものだ。

 ……その後にしっかりと大森君を筆頭にしたスタッフ共に吊るしあげられたが。

 

「今、楽しいよ。レイマ」

 

 私との会話に苦笑いしていたカツミ君が不意にそう口にした。

 

「侵略者や怪人共が今もいる中でこんなことを口にするのは不謹慎なのは自覚してる。でも……」

「不謹慎なものか」

 

 カツミ君の精神性は未熟ではあるが、その別側面はある意味で完成されている。

 揺るぎない正義の心。

 悪に傾くことのない善性。

 そして、自己犠牲。

 

「君がそう感じてくれていることは、我々にとって喜ばしいことなんだ」

 

 カツミ君は自身を悪事を行うヴィランと信じて戦い続け、その果てに自らの命を絶とうとするまで人生に生きる意味を見いだせなかった。

 そんな彼自身の口から自発的にそんな言葉を聞くことができたのだ。

 

「君はもう自分の心を押し殺す必要もない。そのようなことを強いる者達は、この基地にもいない」

 

 仮に我々が守る民衆がそのようなことを強要したとしても、絶対に彼にそのようなことをさせない。

 十代の少年が自分の心のままに生きることのなにがおかしい? カツミ君は大きな使命を背負っているが、常にその重圧を背にしなければならない理由も、それらに縛られていい理由も決してない。

 

「君たちがこの星を守ってくれるなら、我々は大人として君たちを守る」

 

 君たちがなんのしがらみもなく戦えるように。

 侵略者や怪人以外の悪意に晒されないように。

 

「それが、私の責任だ」

「……ありがとな、レイマ」

「フッ、それに加えて私は書類上は君の保護者だからな」

 

 重い空気を切り替えるべく、軽くそう口にするとカツミ君もつられた笑みを零す。 

 

「はは、なら父さんとでも呼ぶか?」

「ゴフォ!?」

「レイマ!?」

 

 予想だにしないダメージを受け、胸に手を当てながら椅子から崩れ落ちる。

 その瞬間に私のデスクの画面に待機していたタリアがカツミ君の「父さん」発言に反応し、虹色に発光し始める。

 

「カツミ君……!! そのワードは危険だ……!!」

「お、おう」

 

 椅子に座りなおし、ズレた眼鏡をかけなおす。

 私が父親ポジションになると、後々とんでもない騒ぎになりそうだからな。

 ……いや、そもそも私は父親というより兄では?

 

「ふぅ……祭りの話に戻すが……」

 

 もう一度話題を祭りの方に戻して、ふと報告にあった話を思い出す。

 

「確か、金魚すくいで捕獲した金魚を本部に持ち帰ったらしいな」

「おう。小さい金魚鉢ももらった」

 

 金魚自体は飼育方法はそれほど難しくないが、今日までどうしているかは私もよく把握していない。

 カツミ君のことだからちゃんと世話していることに疑いはないが……。

 

「元気すぎるくらいに泳ぎ回ってるよ。まあ、プロトとシロが金魚鉢の前で唸ってるけど」

 

 金魚にもジェラシーを抱くのか。

 脳裏に金魚鉢に威嚇する二体のメカオオカミというシュールな光景が浮かび上がる。

 

「特に心配はしていないが、うまく飼えそうか?」

「フッ、心配するな。俺の中学時代にアルファ、記憶喪失した時には姉を名乗るハクアがいた。あの赤ちゃん共に比べれば金魚の方がまだ育てやすいぜ」

「そ、そうか……」

 

 どちらも年齢一桁だし、部分部分で大変だったんだろうな、とは察した。

 なんだかんだでカツミ君自身は普通に家事とかできるからな……。

 

「名前とかは決めたのかな?」

「ん? ああ、名前はギュウドンにした」

「……ん……ぎゅ、ぎゅうどん?」

 

 金魚なのにギュウドン?

 なぜ牛になった?

 

「どうやって決めたんだ?」

「帰りに皆で名前を出し合ってくじ引きで決めた。ギュウドンはコスモが出したやつだな」

「……あー」

 

 彼女は微妙に食い意地が張っているし、この名前でもおかしくはない。

 

「因みに他の候補はなんだった?」

「えーっと、アカネは“アカネ”、きららは“チャッピー”、葵は“たい焼き”、あとは……」

「いや、もういい……」

 

 イエローはともかく、レッドはまだその時点ではタガが外れているし、ブルーはいったいどういう考えでその名前にしたのだ……? 相対的にギュウドンがまともに見えてしまうことが非常にまずいと思うのだが?

 




無敵モードに入っていたアカネでした。

次回は閑話となります。
明日18時に更新予定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。