前話を見ていない方はまずはそちらをお願いいたします。
閑話、ステラ視点となります。
まさか二百話目がこのお話とは……。
これまでの私の人生は白黒に塗れたものだった。
異常個体として生まれ、白と黒しか色のない世界に閉じ込められ、あらゆるものを制限されてきた私に許されたことは、ただ絵を書くことだけだった。
微かに覗き見ることができる他の世界の情景を絵にして、いつか、いつか、と夢見て過ごしていた。
でも、そんな虚無でしかなかった私の日常は黒騎士……カツミさんの力によって壊された。
それからは、本当に嵐のように私の周りは変わっていって、今は———、
「はい、皆さんはじめまして。お馴染み、ジャスティスクルセイダー公式広報担当Vtuberの蒼花ナオです」
「二回目の登場です! ステラちゃんでーす! 世界で一番———」
「かわいいのは私だよね?」
「はい……すみません……」
・相変わらず弱くて草
・草
・草
・すぐ調子乗るのかわいい
なぜかジャスティスクルセイダー公式Vtuberの蒼花ナオこと、日向晴ちゃんと共に公式チャンネルに出演していた。
私が、この場にいるきっかけとなったのは、一週間前に社長から連絡をいただいた時であった。
広報活動は重要である。
もう一度言う、広報活動は重要である。
昨今のネット情勢は、どのようなところから炎上が発生するか分かったものでない。
たった一人の嘘を信じた第三者により、誤った情報が拡散され、それが事実と認識されてしまうことも少なくもない。
ジャスティスクルセイダーも黒騎士も同じ。
彼ら彼女たちは有名になりすぎたせいで、ネットという大衆が最大の敵になりかねないリスクを背負っているのだ。
だがそれを活用すれば、最大の味方になりえるのだ。
そして、ステラ氏、君はまさに光る原石!! ダァイヤモンドだ!!
先の配信での堂々とした立ち回りに光るものをビビッと感じ取ったので、君の活動を支援することも合わせて、ジャスティスクルセイダー、黒騎士の広報活動を行ってみるのはどうかな!!?
なんというか、すごくうるさかった。
我ながら身内、というか自分相手にマウントをとっていた経験を生かすことに複雑な気持ちにはなったけれど、私を助けてくれたカツミさんの助けになるなら、と思いこの話を受けてしまった。
……ボーっとしていられない、今は生放送、ドジらないようにやらなきゃ。
「このチャンネルでは、漫画家初心者であるステラさんの制作活動を支援するための企画などをするものです」
「うんうん」
私の制作活動の支援ってどういうものなのかな?
「———というのが、表向きに説明したものですが」
「えっ?」
即座に前提が崩れちゃったんだけれど……!?
困惑する私を他所に晴ちゃんがすらすらと言葉を発する。
「実際は、私とステラさんの二人三脚で黒騎士さんとジャスティスクルセイダーのイメージアップ活動を行うチャンネルとなります」
……え? え?
事前に受けていた説明と違う……!? 私の物語づくりのためにあれこれ企画をするやつじゃなかったの!?
ハルちゃんがいたずらっ子のように微笑む。
「え、あ、あの、私聞いてない?」
「うん。今言ったからね」
「なんで!?」
「ドッキリは漫画的にも大事な要素かなと思いまして」
「ハッ!? ……た、たしかに、そうかも……」
・ちょろくて草
・もう素になってるじゃんwww
・この子大丈夫なんか?
・素直だぁ
・ポンコツ宇宙人www
・なおなおめっちゃ笑顔
ドッキリはお笑い要素としても大事らしいし、ギャグ的にも大事だよね……。
「企画の趣旨はバラエティ方針で進めるとのことですが、ステラさんの作家活動を支援するというものもあります」
「そ、そうなんですか!?」
「漫画を描くにはストーリーが必要です。でもステラさんはストーリーを作った経験がない……らしいですよね?」
「アッ、ハイ、人生経験が乏しいので……」
・悲しい
・まるで俺みたいだ……
・陽なのか陰なのかはっきりしろ
・宇宙人が人生経験
「貴女の想像力を刺激するために様々な企画を経験していこう、というのが主題となります」
「は、はぁ」
困惑しながらも納得していると、私とハルちゃんのアバターが映し出されているモニターにポンッ、という可愛らしい音と同時にテロップが表示される。
あ | ぶっちゃけステラ氏の潜在的なキャラクター性に光るものが見えたので企画をゴリ押しした。 |
「え、これ誰の言葉?」
「社長です」
「社長さぁん!?」
あ | あ、どうも天才社長です |
・社長草
・面白いことばかりするなwww
・生放送でテロップに意思持たせられる技術力なんなんwww
・やってることえげつなw
・自己主張激しいなおい
・草
・こういうところがやり手すぎるwww
「では、社長さんの挨拶も済んだところですし、そろそろ企画の説明をさせていただきます」
晴ちゃんの言葉と同時に今回の企画のテロップが表示される。
そこには———、
……あの人に聞いてみよう?
少なくとも皆が知っているような人物なのかな?
いや、このチャンネルがある理由を考えれば、ジャスティスクルセイダーの三人とか……?
「今回はある方々にアンケートを取り、その結果を私とステラさんがクイズ形式で解答するお話しとなります」
「く、クイズですか。が、がんばります」
・一気に俗物的な企画になったな・・・
・誰が答えるんだ……?
・おもろそう
・宇宙人にクイズができるのか・・・?
・黒騎士くん出てほしい
「あ、それと今回ステラさんには問題に対してのリアクションを見たいので、頑張ってください」
「それ結構な無茶ぶりすぎませんか!?」
「おお、早速いいリアクションですね。……では」
い
「……なにこの音!?」
・いいね!?
・イイネ!
・なんの音ぉ!!?
突如鳴り響いた謎の声に私もチャット欄も困惑する。
当の晴ちゃんは手元にスイッチのようなものを置いて、それを見せるように前へ差し出した。
「ステラさんのツッコミと反応に対してこうやって評価をいれていきます」
「私の負担大きくない!?」
い 「……」
「今のはツッコミじゃないよぉ!!」
う 「……」
「そういうバリエーションもあるの!?」
しかもダメなんだ!
私のツッコミをスルーした晴ちゃんは気を取り直すようにカメラへ視線を向ける。
「では、はじめましょう。社長さん、お願いします」
あ | 第1問:もし無人島になにか一つだけ道具を持っていけるなら何を持っていきたいか? |
・地味に気になるやつ
・定番のやつ
・ありきたりなのキタ!!
・絶対まともなやつ出ないやんwww
・ボケ大会になりそう
・イエロー頼むぞ・・・
あ | 回答者は4人。その中の三人を例として紹介しよう。 まずは一人目から |
軽快な音と共にモニターに画像が映し出される。
一瞬、問題の内容をもう一度二度見してしまうような回答に、恐らく私と晴ちゃんを含めたすべての視聴者の思考が停止する。
え、これ、無人島に持っていく……なんで人?
「ブルーさん……?」
「……これは典型的なおバカですね。欲望が駄々洩れです。黒騎士さんは物ではありませんが?? もしかして姉は黒騎士さんを物だと思っているのですか?」
・欲望に溢れだしてる
・禁止カードwww
・字うま
・すっげぇ早口になるやん
・場外乱闘始めようとすんなw
・達筆なのが腹立つな・・・
・煽り散らかしてて草
あ | 続けて、レッド、イエローの答えがこちらだ |
「……」
「……」
・ひぇっ
・ヒッ
・サバイバルナイフとかじゃないのが怖い
・刃物ならなんでもええんか!!
・文字がかわいいの悍ましくない?
・これはブラッド
・果物ナイフで野生のイノシシ狩ってそう
・こわぁ
なぜだろう。
文字自体はそこまでおかしくはないのにとてつもなく物騒に見える。
というより、無邪気さすら感じさせる文体が怖い。
私も晴ちゃんもリアクションすらとれずにいると、空気を読んだのか社長さんが画面を切り替えてくれる。
次は、黄色い画面からしてイエロー、きららさんみたいだ。
「……普通だぁ」
い「……普通だ」
・安心する
・普通だァ
・っぱイエローだわ
・良心
・水は大事だもんな
・なんで青繋がりのブルーがこの解答じゃないんだよwww
思わず手元のイイネボタンを押してしまうハルちゃん。
なんでここまで普通な解答にここまで胸打たれるようなことがあるんだろう。
……ハッ、これって表現に生かせるのでは?
衝撃的なシーンの後にあえて、静かな演出で際立たせる……とか!?
あ | 衝撃的な回答の後に問題だ。 最後の解答者は、皆もよく知っている黒騎士。 彼が無人島に行くとしたら、なにを持っていくのか? 蒼花くん、ステラ氏、答えをどうぞ |
「……え、く、黒騎士さんが……ナオちゃんはどう思う?」
「黒騎士さんの性格上ふざけた解答はない。かといって一人暮らしも普通にこなしていたと考えるとある程度の家事はできる。というより、姉を名乗る不届き者と一時期同居していたなにそれ羨ま———同居していたはずだから、料理もできると考えてもいい。それならレッドさんと同じく刃物系? いえ、イエローさんみたいに常識的な解答をしてもおかしくない。可能性が高いとすれば変身するための装備……はないね、黒騎士さんは問題の趣旨を無視するような回答はしない。それじゃあ姉のように人? まさか社長!?」
・考察してるのやば
・黒騎士くんキタ!
・めっちゃ早口
・3Dの口だけ細かに動いてるのすごいな
・OS再構成してる?
・この時だけIQ爆上がりしてそう
・黒騎士くん天然だからなぁ
・ガチ勢が出てるよナオナオ!!
・ステラちゃんドン引きで草
・www
めっちゃ早口になるハルちゃんに普通に引く。
そ、そこまで深く考えるほどの問題なのかな?
カツミさんなら突拍子のない答えを出さないとは思うけれど。
あ | では、答えをどうぞ |
晴ちゃんに引いている間に答える時間になっちゃった!?
えーと、えーっとどうしよう。
カツミさんが無人島に持っていくなら———、
「え、鉛筆とスケッチブック!!」
「レッドさん家の飼い犬……!!」
……。あっ、これ私が持っていきたいものだ!!
咄嗟に答えたせいで、思いっきり的外れな答えを言ってしまい頭を抱える私とは対照的に、晴ちゃんはどこか自信ありげだ。
「フッ、レッドさん家の飼い犬は黒騎士さんに懐いていますからね。特に持っていくものが思いつかなければ、こう答えると判断しました」
・ステラちゃん頭抱えてて草
・無人島でも絵を書きたいのかわいいな
・レッドの飼い犬!?
・やべーぞ犬勢が出てくる!!
・レッドの家の犬とか狩猟犬だろ
・ゾルディック家みたいなのいそう
・犬に好かれる解釈一致
あ | 二人の解答が出たところで、黒騎士の答えを公開しよう。 |
社長さんの表示の後に、先ほどと同じような形で黒騎士さんの答えが表示される。
私は確実に間違っているだろうけれど、晴ちゃんの答えはどうなのかな……?
「……は?」
「そっちか~~~」
・金魚の牛丼……?
・黒騎士さん!?
・ブルーやったなオイ!!
・嘘だろ黒騎士くん・・・
・怪人かなにかか?
・ブルー! 黒騎士くんを汚したな!!
・俺許せねぇよ・・・
・許さんぞ……許さんぞブルー
・一瞬でブルー犯人にされてて草
金魚の、牛丼?
ぎゅ、牛丼って牛のお肉が乗っているご飯のこと?
よく分からない答えに困惑する私の隣で、晴ちゃんが悔しそうに唸っている。
「え、ナオちゃん? どういうこと?」
「先日、お祭りに行った際に黒騎士さんが屋台ですくった金魚です」
「なぜ、ギュウドン……」
「皆で出し合った名前をクジで決めました。命名はグリーンさんです」
・お祭りいったの!?
・グリーンって緑の戦士か
・食いしん坊キャラなのか・・・?
・大切に飼えてえらい
・関係ないブルーに飛び火してて笑うwww
・冤罪で草
・さらっとお祭り行ってて微笑ましい
・日頃の行いのせいだから・・・
・キレそう
「惜しかったですね……。犬まではよかったのですが……」
「私からすると、惜しいところまでいったことに驚いているんだけれど」
う「……」
「なんで駄目だしされたの!?」
「いえ、キャラブレブレなので……」
「今更そんなこと言わないでよ!!」
え「……」
「カス!?」
急に罵倒された!!
なんでそんなバリエーション豊かなの!?
というより、まだ第一問目でまだ放送十分しか経っていないことに驚きなんだけれどぉ!!
濃密すぎるところは創作活動の参考にはなるけれど、精神的な疲労とか諸々すごすぎる……!!
結局、その後も企画は続けられたけれど、終始私は予想だにしない回答へのツッコミに駆られてしまうのだった。
終わってみると普通に絵を描く以上に疲れてしまった。
でも、振り返ってみるとアオイちゃんの妹のハルちゃんと仲良くなれたし、なんだかんだでコメディやツッコミについて理解を深められたから一応結果オーライ……なのかなぁ?
ステラと青花のコラボ配信?回でした。
PCを変えてしまったので、恐らくしばらくは自作フォントが作れないかもしれません。
次回も閑話。
更新は明日の18時を予定しております。