今回もきらら視点でお送りいたします。
天塚きららは激怒した。
衝動的に遊びに誘って即OKを貰い挙句の果てに日和ってデートに妹を同伴した葵と、流れでデートみたいな雰囲気になり、和風スイーツを食べに行ったアカネに。
そんな邪道な方法でデートに誘ってどうなん?
でも正直に言う、ものすごく羨ましい。
なんかもう、なんかの拍子で二人が三歩くらい前に進んだように見えるくらいに先を行かれた感じもする。
「私もカツミ君を遊びに誘いたい……!」
怪人の出現があった日の午後。
いつも集まっているサーサナスの二階のテーブルに突っ伏した私は、アカネと葵、そして桃子さんとヒラルダにそう白状した。
「誘えばいいじゃん」
「逆になんで誘えないの?」
「おどれら、ほんまにしばくぞ?」
こいつら、自分に関係ないからって本当に友達か?
ずぴぴーっとメロンソーダをストローで飲むアオイに、ケーキを突いているアカネに青筋を立てる。
その一方で桃子さんは苦笑いしていて、ヒラルダは子供の姿でアイスクリームに舌鼓を打っている。
「だって私だけ仲間はずれじゃん!!」
「私たちは仲間だよ、きらら」
「抱え込むなよ。一人でさ」
こいつら……!! 自分はカツミ君と遊びに行って、どうでもよくなっている……!!
いや、でもデートだと思っているのはこっちだけでカツミ君は、シンプルに友達と一緒に遊びに行ったとしか思っていない。
「あはは、カツミ君なら普通に誘っても受けてくれるんじゃない?」
「……誘う勇気が、ないんです……!!」
「ヘタレ」
「戦闘以外ポンコツ」
「なんで君ら、そんなブーメラン投げ合ってんの?」
アカネ、アオイ、ヒラルダのツッコミにキレそうになる。
お前らだってヘタレでポンコツでしょうが……!!
「んなことあんたらに言われる筋合いないわ!! 棚ぼたデートしただけでしょうが!!」
「知らないの? キララ、運も実力のうちだよ? 例え、カツミ君がそう思っていなくても、ね」
「あんた自分で言ってて悲しくないの……?」
「二人の思い出が作れた時点で私の勝ちなんだよなぁ」
こ、こいつぅぅぅッッ!!
普段のアカネならば撃たれ弱くなっているところなのに、どうしてそんな勝ち誇れるの!?
顔を赤く染めながらどや顔をするアカネにわなわなと震える。
「そもそも私はカツミ君から誘われたんだよ」
「……くっ」
「ねえ、桃子。醜い争いってのはこういうことを言うのかな?」
「うーん、否定できない……」
いくら棚ぼたといえどもカツミ君自身が外に出ることを誘ったのは事実。
それが恋愛感情抜きにしても羨ましい……!!
「きらら、貴女の口撃は私には当てはまらない。私は真正面から遊びに誘ったから」
「OKされるとは思わなかった癖に。前日にハルちゃんに泣きついたヘタレチキンの癖に」
自分の言葉で遊びに誘ったのは素直に凄いと思うけれど、その後に日和ってハルちゃんを巻き込んだのは普通に情けないと思った。
「まったく誰ですの? 自分から誘っておいて妹に頼っちゃうおバカさんは」
「あんただよ」
「わたくしですわ~」
「喧嘩売っとんのか……?」
こんなに腹立たしいお嬢様言葉を使うやつ他にいるだろうか? 黙ってれば深層のご令嬢みたいなくらいにはなりそうなのに、すべて口から放たれる残念な言動が台無しにしてしまっている。
「待てい、私たちの喧嘩ルールは進化した。出せよ、テメェのスマホ。私のベトベトンで叩き潰してやる。このカイリューいや、デカパイリューが」
「そういうあんたはペタペタン」
「鳴っちまったなぁ、ゴングが……!!」
スマホを取り出し、アプリを起動する葵をスルーする。
「キララに好き勝手言わせておいていいの? ギャラドス」
「私としては貴女の口を止めたいんだけど」
隣で微笑むアカネに危険を感じたのか、距離を取る葵。
「桃子さん、なにか方法はありますか」
「え、わ、私!?」
「桃子さん、大学生ですし……!」
桃子さんに助言を頼むと、彼女の隣にいるヒラルダがけらけらと笑う。
「いや、桃子のこと買い被りすぎ。この子、中高一貫して女の子しかいない学校に通ってたらしいし、恋愛の知識は外付けのものしかないと思う。大学は共学のところだったらしいけれど、そっちもたかが知れてると思———」
「そんな私の大学生活の大半を乗っ取って過ごしていたのはあんただけどね」
「アッ……スゥー……」
静かに、微かな殺気を混じらせて放たれた言葉にヒラルダが顔を青ざめさせる。
ぷるぷると震え、私達に助けを求める視線を向けるヒラルダの頭に桃子さんの手が乗せられる。
「どうしたの? 続けていいよ」
「桃子ってものすごくモテそうだよね……!!」
「同性にはね」
「もうなにが桃子の地雷か分かんない」
桃子さん、大人っぽいし頼りになるカッコいい系だからアカネとは別ベクトルで同性にモテそうなのは分かる。
引きつった笑みでそう言葉にした瞬間、むんず、とヒラルダの顔を桃子さんが鷲掴みにして締め上げた。
「ぎぃぃやぁぁあ!?」というヒラルダの悲鳴を聞きながら私たちは声を潜める。
「桃子さんってなんかそれほど年上って感じしないね」
「うん。まあ、言うて2歳くらいしか変わらないし、大学生ってだけで大分大人びたイメージだったから」
「彼奴とは同族の匂いがする」
葵がまた変なことを言っているけれど、今後も桃子さんと交友を深めていこうと思った。
この人も今の立場が自分で選んだものとはいえ、ここにいる切っ掛けは彼女自身が選んだものじゃないから、私たちで助けていかなくちゃね。
「……あれ、なんだかみんなの視線が生易しくなったような」
「桃子さんも仲間だね」
「どうりで同じ匂いがすると思ってた」
「仲間認定されるのがこんなに不名誉なことある……?」
不名誉……ではあるかもしれない。
でもそう思われてしまう桃子さん側もこっちに染まってしまったともいえる。
「いや、私は君たちほどぶっ飛んでないし……言動にまだ慎ましさがある、はず」
「慎ましさ……?」
「カツミ君に依存ムーブかましてた人がなんか言ってる」
「卑しい女してたピンクが……」
「よし、君たちはもっと年上を敬おうか」
「こっちは形式的に社会人ですけど?」
「くっ……」
私たちは立場としては社長の会社に就職している形だもんね。
桃子さんもゆくゆくはそういう選択をするかもしれないけれど、まだこの人は大学生として在籍しているはず。
結構愉快な人だな桃子さん。
アカネに言い負かされ、呻いている桃子さんからアイアンクローから解放されて顔をさすっているヒラルダを見る。
相談っていってもヒラルダは……うーん。
「ヒラルダは……ヒラルダは別にきかなくてもいいかな」
「私にも聞いてよ!?」
勢いよく訴えてくるヒラルダに、微妙な表情を返す。
「いや、他人の身体に寄生する奴だったし、まともな恋愛したことなさそうだなって」
「簡単に人をものにできたから逆に恋愛下手くそっぽい」
「あ、分かるー」
「事実だけど辛辣すぎない!? そして桃子もわからないでよ!?」
私とアカネの指摘にヒラルダは涙目になる。
事実、カツミ君に敗れた後はなんかもう前の悪人ムーブしている時の面影がなくなるくらいにキャラ崩壊している。
こっちの顔が素顔ってことなら別にそれで構わないのだけど、カツミ君への懐きようからしてものすごくちょろそうではある。
「君たちはいったい私のことどう思ってるの!? 私に対しての認識が酷くない!?」
ヒラルダの訴えに私たちは顔を見合わせる。
ヒラルダへの認識……認識ね。
「いつでも斬れるくらいの仲間」
「あざとい小娘」
「そろそろ狩るか……♠︎」
「桃子、私ここで死ぬかもぉ!?」
桃子さんに泣きつくヒラルダ。
本当に面影がないなぁと思い、依然として私の切実な悩みへのアンサーがないことを思い出す。
「あぁ、もういっそのこと自爆覚悟で遊びに誘いに行こうかな……」
「どこに誘うつもり?」
「……そこまで考えてなかったぁ……!」
なんかもうカツミ君とどこかに出かけたいって考えだけが先行して、どこに行こうだなんて考えもしてなかった。
アカネは甘いものを食べに行ったし、葵とハルちゃんはデパートでしょ?
なら、そこと被らないところがいいけれど、カツミ君も楽しめそうな場所ってどこだろう?
完全にいじられキャラに堕ちたヒラルダでした。
次回の更新は18時を予定しております。