追加戦士になりたくない黒騎士くん   作:クロカタ

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今回は閑話、
黒騎士くん改め、白騎士くんが敵宇宙船に乗りこんだ後の話となります。

前話でボコボコにされ、逃げ惑うベガさん視点でお送りいたします。


閑話 正義

 アルファとオメガ。

 それは星に生きる生命体に埋め込む特殊な因子により目覚める二つの雌雄個体を差す。

 アルファは全に影響する能力を。

 オメガは個に影響する能力に目覚める傾向が多く、我々は目的を以て星の生命体同士で“共食い”をさせる。

 オメガの因子を持つ者は凶暴だ。

 本能のままに、その星のものを食らい脅威に貶めようとする。

 その習性を利用することで、オメガの力を最大限にまで伸ばし、ようやく我々と矛を交える資格を得る。

 

 オメガの力が強大であれば確保。

 弱ければ処分、その星を初期化しもう一度オメガとアルファの因子を投与し、次の収穫まで待つ。

 我々、『セイヴァーズ』が所属する組織はそうしてランクの低い星を狩ってきたのだ。

 

 容易い、侵略だと思っていた。

 これまでの命令を無視し、秘密裏に地球と呼ばれる星の知的生命体を手中に収めようと考えた。

 弱く、文明レベルの低い星。

 そこに生まれ落ちたアルファもオメガも大した存在ではないだろうと予想していた。

 事実、我々が星のスキャンをかけたところ本来のオメガも、人間に倒され滅ぼされていた。

 

―――この程度の生命体ならば、いける。

 

 その星のアルファもオメガも既に息絶えてはいたものの、アルファは子を成し、新たなアルファを作り出していた。

 それは親の力を遥かにしのぐ異常個体。

 同じ人類に対する強力無比な精神干渉を得意としていた。

 異種族である我々すら欺くほどの能力だ。

 他の同業者すら潜在的に欺くこともできるしいいことづくめだ。

 ―――アルファも捕えれば、より簡単に都合の良い奴隷が手に入るはずだった。

 手に入る、はずだった。

 

「テメェゴラァ逃げんじゃねぇぇェェ!!!」

「ひっ、ひぃぃ!?」

 

 あのアルファが選んだのはオメガのはずだった。

 だが、その因子を微塵も持ち合わせていない、ただ特殊個体のアルファに選ばれただけの人間に過ぎなかった。

 ただの人間だった。

 適性が高いはずの、人間だった。

 だが、この状況はなんだ?

 奴を、我々のセイヴァーズの戦力が集中する宇宙船内に誘き寄せた直後、レーザー兵器によりハチの巣になるはずだった奴は、依然として船内で暴れながら必死で逃げるこの私を追いかけていた。

 帰還と同時に装着した足が今にも壊れそうだ……!!

 

「侵略者!?」

「侵略者だ!!」

「テメェらが侵略者だろ!! いいからそこどけ!! ベガァァァ!!」

 

 既にこの船は地球にはない。

 ワームホールにより、機能を失った宇宙船ごと我らが味方が多く存在する外宇宙の本拠地へと送られたのだ。

 だが、それでも奴は襲い掛かる同胞たちの攻撃をものともせずに、未だに船内で暴れまわっている。

 

「テメェ、コラァ!! どけぇ!! 全員宇宙人かこの野郎!! いや、お前らからしたら俺も宇宙人かァ!!」

「「ぎゃああ!?」」

 

 なんだあの人間なんだあの人間なんだあの人間!!

 機械化し、恐怖すら忘れたこの身体に寒気と身体の震えが止まらない。

 白い悪魔。

 その身に黄金色の光を纏った奴は、動くだけで周りの兵士達を残骸へと変える。

 

「既にこの宇宙船は外宇宙へと転移した!! 貴様にもう帰る場所はないぞ!!」

「うるせぇ!! 死なば諸共、貴様ごとこの宇宙船爆破して周りごとぶっ壊してやるわァァァ!!」

「ンヒッ」

 

 想像するのも恐ろしいことを口にする。

 マズイ。

 ワームホールを通ってやってきたのはよりにもよって、“あの方”がいる本部だ

 そんなところで爆発など起これば、死よりも恐ろしい罰が下される。

 

「捕まえたぜ……!!」

「しまッ」

 

 一瞬の恐怖に硬直してしまい、その隙を狙われ私の身体は掴まれてしまった。

 奴が拳を振り上げ、私を破壊しようとする。

 ここで終わりか―――!?

 その時、私と私を掴む奴の周りが暗闇に包まれる。

 

「は? どこだここ?」

 

 ごとりと、上半身だけとなった私が落とされる。

 いつの間にか周囲は船の中ではなく、別の場所へと変わり果てていた。

 広大な空間。

 足元には黒色の硬質な床、

 その先には、階段と光に照らされた玉座に、そこに膝を組みながら座っている誰か。

 

「が、あ……そ、そんな……」

 

 まさか、あの一瞬で船団内部に転移させられたのか……!?

 玉座に座っているあの方が立ち上がる。

 そのまま、はっきりとした足音を響かせながら歩み寄ってきたのは―――青い肌を持つ女性であった。

 

「……はい?」

 

 紺色の長い髪、黒く染まった瞳にその場でひれ伏したくなるほどの美貌。

 右肩にかけるように白い布をドレスのように巻いた彼女を目にした瞬間、怖気が止まらなくなる。

 ま、間違いない……あの方だ……。

 初めて見るが、間違いない。

 

「は、肌が青い……?」

『ほう、面白い生命体がこの船に舞い込んだようだ』

「……?」

 

 地球人である奴にはあの方の言葉は通じない。

 首を傾げる奴に、あの方は手元にワームホールを作り出すと、そこから一冊の書物を取り出し、ぱらぱらとそれに目を通す。

 時間にして数秒。

 すぐに本を閉じ、後ろに放り投げると共にワームホールへと投げ捨てたあの方は軽いため息をついた。

 

「——地球の言語か。単純だな」

「……え」

「これで合っているか?」

「お、オッケー……」

 

 呆然としながら奴が頷くと、あの方は満足そうに玉座のしたの階段へと腰かける。 

 

「よく来た、侵入者。私は退屈しているんだ」

「……あんたが次の敵か?」

「……そうだ? 向かってくる勇気があれば、かかってくるといいぞ?」

 

 その時、私の身体が軋みながら地面へと叩きつけられる。

 見えない何かに押し潰されているのではなく、あの方の威圧感によりそうさせられていることを悟りながら、必死に意識を繋いでいく。

 

「が、うぁ……」

 

 能力も何も使われていない。

 圧倒的な存在感。

 殺気と圧力が形となって、全身へと襲い掛かり私の身体を地面へと縫い付ける。

 

「……」

 

 な、なんで、立っていられるんだあの化物……!

 本当に地球人なのか……!?

 素知らぬ様子であの方と向かい合っていた奴は、無言のままその場を走り出しあの方へと向かって行く。

 

『CHANGE!! →TYPE…』

『UNIVERSE!!』

 

「ハァァ!!」

「!」

 

 跳躍し拳を振り上げる奴を目にしたあの方は、その唇の端を吊り上げた。

 見惚れるような、これ以上にない楽しみを見つけたかのように喜色の表情を浮かべた彼女は、パチン、とその指を鳴らした。

 瞬間、彼女を中心に星空のような球状の空間が彼女自身と奴を飲み込む。

 

「な、なんだ……?」

 

 一瞬にして姿が見えなくなるあの方と地球人。

 だが、数秒と立たないうちに球状の空間は消え去り―――、

 

「———ガァ!?」

 

 ―――中から現れたダストドライバーを身に着けた地球人は、そのまま血まみれの姿で地面へと叩きつけられた。

 私が、なすすべもなくやられた奴を、ここまで一方的に……!

 奴の纏うスーツは罅割れ、割れたマスクからはその素顔が露わになっていた。

 血だまりに倒れる男の傍らには、その右手を赤く濡らす“あの方”が立っておられた。

 

「地球人の時間に換算すると、56時間34分57秒、か」

「く、がはっ……!」

 

 止めを刺すのか……!

 期待を込めて状況を見守っていると、あの方は見下ろしていた奴をその両手で抱き起こした。

 

「ありがとう。本当にありがとう……貴様はいい戦士だ」

「ッ!?」

 

 その白い装いが汚らわしい赤い血で汚れることをいとわずにあの方は奴を抱きしめる。

 慈悲すらも感じさせるその抱擁。

 だが、それでも奴は敵意を失わずにその拳を振り上げた。

 

「もういい、ここで命を落とすには惜しい」

 

 あの方と目を合わせた奴は、まるで何かに固められたように動けなくなってしまう。

 声すらも出せないのか、途切れた声を漏らした奴を横に寝かせ、その頭を自身の膝に乗せながら、あの方は朗らかに笑う。

 

「楽しませてもらった。この私をその場から動かし、あまつさえ手を出させるなど、星将序列内でも何人いるやら……」

 

 玉座の階段に広がる異常すぎる光景に、私は気が狂いそうになる。

 これは、悪夢か。

 分からない。

 自身に辛酸を嘗めさせた奴が、あの方に―――ッ!!

 

「肉体の水質変化も見事。だが存在固定の類の技を理解していなかったようだ。……それはちょっと残念。速さも力も及第点ではあるが、危機察知能力、経験に基づく攻撃予測は中々のものだ」

「ふ、ざ、け…………ぁ」

「でも最後のはよかった。とても、とてもよかった。拳による暴威。完成された暴力。あれはまさしく……私が正面から受けるべきだった攻撃ではあるが……それは、貴様には失礼に当たることだったことから、真正面から打ち砕かせてもらった」

 

 マスクを素手で引きちぎるように剥ぎ取り、そのまま露出した髪を撫でつける。

 カラン、と破片が無造作に転がる音が響く。

 

「だが満点だ。素晴らしい。こういうのを採点が甘すぎるというのだろうが、こればかりは譲れない。なによりこの私に向かってくるという点で+100点だ。本当に素晴らしい……」

「……が、はっ、ごほっ」

「しかし、無謀ではない。その素養もあるのだろう。経験も積んでいるのだろう。足りないのは、人数か? 仲間か? 装備か? ふふふ、あらゆるものが足りていないな」

 

 圧倒的な力を見せられた後であろう奴は、依然として変わらず抵抗の意思を見せようとする。

 

「睨むな、睨むな。死に体でも気丈な奴だ、そんな目で見られるとより愛おしくなってしまうではないか……」

 

 微笑みながら奴の頬に手を添える。

 

「このまま私好みに育てるのもいい。だが違う、そうではないな。それだけでは遊び心がない。そうさな……」

 

 あの方が手を目の前の空間へと向ける。

 どこかへ繋がっているワームホール。

 その先の光景を確認したあの方は、奴の襟をつかむように持ち上げた。

 

「元いた星に帰してやろう」

 

 ワームホールの前に掲げた奴に指を向ける。

 

「私の一撃に耐えられたら、な」

 

 その瞬間、スーツを纏っている奴の胴体に見えない衝撃のようなものが叩きつけられた。

 吐き出された血が、笑みを浮かべたあの方の青い肌へと付着させ―――そのまま奴はワームホールの奥へと消えて行ってしまった。

 あの方は、自身の頬に付着した血を口に含みながら、楽し気に笑う。

 

「地球の初期化は取り消そう。あの星に興味を抱いた」

 

 その場に誰もいないのにそう呟くあの方の視線が、地面に倒れ伏す私へと向けられる。

 まるで、今私の存在に気付いたように驚いた表情を浮かべ、その後にため息をついた。

 

「星将序列335位 ベガ 識別派閥『セイヴァーズ』」

「お、お待ちください……! わ、私はまだ―――」

「強さこそがこの世の理」

 

 指先がこちらへと向けられる。

 

「敗北者に、正義の名は必要ない」

 

 視界が霧散する。

 自身がバラバラになる感覚に苛まれながら、微かにその声を耳にする。

 

「私達が集う場に名はない。―――強さこそが我々を形作る基準(正義)に他ならない」

 




強化イベント後に、強制ラスボスエンカで負けイベを強制される主人公でした。
グランドジオウどこかで見たような……。

そして、遭遇した青肌系ラスボス。
プレッシャーで白騎士くんが尻込みしてたら、すごくしょんぼりした後に一瞬で始末しにきてました。
男性か女性のどちらかで悩みましたが、オメガが男ですし偏った部分は社長に補ってもらえばいいかなと思い女性にしました(無慈悲)
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