今回はカツミ視点となります。
遊園地はそれなりに楽しめていた。
以前は着ぐるみを着て炎天下でバイトしていた時は全然楽しむ余裕とかなかったので、改めて来てみると色々と新鮮な気持ちで見ることができた。
一緒に来ていたこうたも楽しそうにしていたし、きららは———、
『ご家族三人ですねー』
『はい。夫婦です』
アトラクションのスタッフさんに呼ばれた時にそう答え―――、
『あらあらお若いねぇ』
『はい。新婚です』
並んだアトラクションで前にいたお婆さんにはそう返していた。
こいつ役に入りすぎでは?
恥ずかしくないんだろうか?
正直、俺は臆面もなく夫婦とかそういう扱いをされて恥ずかしかったが、それを顔に出すとガチな感じになってしまいそうなので動揺を表に出さないようにしていたけど。
『パパ、あっちに行きたい』
そしてこうたもお父さん呼びからいつの間にか変わっていた。
これって俺がおかしいのか? 仲の良い友達とその弟とこんなことをしているのは普通なのか?
割とアブノーマル寄りなんじゃないか?
いや、常識人よりのきららが普通にしているから実は世間じゃこれが普通……?
……そして。
遊園地の回り方もそれなりに分かってきた時間帯、そろそろ昼飯を食べようって時に―――まさか、此花と再会するだなんて思いもしなかった。
かつて、俺のせいで巻き込んでしまった同級生で、隣の席の友達。
幽霊怪人の精神攻撃の影響で記憶を消さなければ廃人になっていた彼女は、アルファの認識改変の力で記憶を封印することで助かった。
本来は、怪人に襲われた夜の記憶だけで済んだはずだった。
だがこれ以上俺のせいで此花を巻き込みたくないという身勝手な思いから、彼女から俺と関わった記憶そのものを封印することになった。
これ以上、あいつを戦いに巻き込みたくはない。
でも、俺がどれだけそれを思っていても否応なく、あいつは巻き込まれてしまう。
そんなことは分かりきっていたのに、また俺は———
遥か空高く現れた宇宙戦艦。
俺たちの前に現れた海賊と軍服を混ぜ込んだような装いに身を包んだ鉄仮面の侵略者。
当たり前のように、平和に過ごしたい人たちの日常をぶっ壊した侵略者どもに俺は内心の怒りを押さえつけながら眼前の敵に意識を向ける。
「———!!」
「あん?」
いきなり襲い掛かってきた五位のカトラスを赤色の片刃の剣、フレアカリバーで弾き返す。
火花が散り、腕力で押し返された奴はその口の端を僅かに歪ませながら続けて斬撃を見舞ってくる。
―――今までの敵とは違ぇな。
こいつの目は、侵略とか殺戮目的とかじゃない。
かといって俺を相手に命を捨てて戦っているわけでもねえ。
気概に関してみりゃ、戦う目的はルインに近いように感じる。
「……」
周囲に意識を割きながら片手で構えたフレアカリバーで斬撃を捌く。
カァァンッ! と甲高い音を響かせながら奴は反動で後ろへ下がり、背中を見せるように反転すると同時に明滅するような光が―――、
「!」
コートの裏地を貫いたのはエネルギーで構成された弾丸。
不意打ち気味に迫ったソレを体をずらして避けると、眼前の奴は既に剣を腰だめに構え、なにかしらの技を繰り出そうとしていた。
「ッハァ!!」
剣の間合いの外に関わらず奴が眼前の空間を薙ぎ払う。
瞬間、俺と奴の間にある空間が
空間を削り……斬り取った? フレアカリバーでの防御は間に合わないな。
即座にそう判断し、あえてさらに前に踏み出し、奴の持つ柄に近いカトラスの根本の刃を肩の装甲で受ける。
「チッ……!!」
力の入りにくい刃の根本且つ、勢いが乗る前に攻撃を当てさせたことから僅かに装甲の表面を削るだけに留めた俺を見た奴は、即座に左手の光線銃をこちらに向ける―――前に、俺の繰り出した拳がその胴体に直撃する。
「ッッッッ」
「……あぁ?」
始末する気満々で拳を叩き込んだものの、妙な感覚に遮られた。
……なんか違和感のある敵だな。とりあえず、もう2,3発ぶん殴ってみれば分かるか?
「ッ、は、ははは!!」
拳を受け、後方にぶっ飛びながらそれでも好戦的に笑った奴は、コートの裏地からピンポン玉ほどの球体を雑にばらまく。
それらは追撃を仕掛けようとする俺に迫ると、爆竹のような炸裂とけたたましい音が鳴り響かせた。
「しゃらくせぇ!!」
今更目くらましなんぞ効くわけねぇ。
構わず光の中を突っ込み、態勢を整えようとする五位に虚空から出現させた雷の斧、ライトニングアックスを叩き込む。
「ッッ!」
防御に回したサーベルが砕かれながらもさらに後ろへ跳んだ五位は、背中からメリーゴーランドに突っ込み激突する。
「……面倒な奴だな」
崩壊するメリーゴーランドを目にしながらライトニングアックスを肩に担ぐ。
なにかしらの能力がある怪人や侵略者ならどういう動きをしてくるのかなんとなく予測できる。
だが、五位と名乗ったこいつにはそれがない。
特別速くもねぇし、腕力もそれなりだ。
さっきの空間を斬り取る現象も多分、技によるもんだ。
……。
こいつはある意味で今の俺に近い、あらゆる状況に対応できる戦い方をする奴なんだろう。
「……そろそろ避難が終わるな」
もうすぐ、この遊園地内にいる一般客の避難が完了する。
シロの広域サーチでそれを把握しながら、斧を短く持ち―――空間を切り裂き、一瞬で眼前まで距離を詰めた五位が振るった剣をその前腕ごと切り飛ばす。
「それはもう見た」
「ッ!」
地面に落ちる右腕を見もせずに奴は即座に懐からナイフを引き抜く。
こちらも逆手に持ったルプスダガーで刃を逸らし、斧を手離した手で顔面に拳を叩き込む。
「……またか」
しかし、返ってくるのは謎の手応えの無さ。
10メートルも飛ばずに復帰した奴が、片腕のまま拳銃を抜きその引き金を引く。
「……」
虚空から青色の拳銃、リキッドシューターを召喚し、エネルギー弾を撃ち落とす。
さらに引き金を引こうとする奴に、さらに右手にもう一丁のリキッドシューターを召喚、連続して放ちその両足、肩を打ち抜く。
「……ッッッ」
だらり、と脱力するように地面に膝をつく奴を油断なく見る。
「避難も完了した。周りに気を遣う必要もねぇ。全力で始末する」
「……業腹だが、あの色狂いが貴様に執心する理由が理解できてしまったな。お前は———」
「時間稼ぎには付き合うつもりはねぇ」
黒の姿に変わると同時にグラビティバスターを召喚、必殺技を発動させる。
ガンモードにさせたグラビティバスターの砲口に漆黒のエネルギーが収束され、引き金を引くと同時に巨大なエネルギー弾が放たれる。
有無を言わせぬ速攻の必殺の攻撃に奴は、その場を動けない。
「———エス」
直撃するその瞬間、五位の影からなにかが溢れ出てくる。
それは重力弾をその身で受け止め、その腕で払うように切り裂き、消し去った。
重力弾の粒子が周囲にまき散らされる中、五位が注射器のようなものを自身に突き刺す。
「……っ、ふぅ」
すると、身体から煙を吹き出しながら立ち上がる。
そして俺に切り裂かれた右腕を肩ごと取り外し、新たな腕を光と共に取り出し嵌め込んだ。
『……』
「そんな目で見るな。勝てないことは理解していた。だが、試したくなったのだから仕方がないだろう」
『……』
「ああ、満足した。この戦いだけでも、地球に来た甲斐があったな」
薬品かなにかで治療した? 再生持ちではないみてぇだが、右腕は元から義手だったのか。
気になんのは、五位の影から現れた大きさ3メートルを優に超えるボロ衣を纏った人かどうかすら分からねぇなにかだ。
さっき五位は……エスっつったか?
顔どころか全容すらも被っているボロ布のせいで分からない。
「レイマ。俺の視界を通じて見えているか?」
『見えているが、こちらのセンサーには反応はない。なんだあいつは……? 星将序列なのか……?』
レイマにも分からないか。
だが、直感的に奴が五位以上に厄介なやつだということは分かる。
「テメェの致命傷を防いでいたのはそいつだな」
「卑怯と思うか?」
「こっちは3人で戦ってんだ。んなことを言うつもりはねぇよ」
「ハッ……ますます、だな」
元より俺は一人で戦っているわけじゃなく、プロトとシロが一緒にいてくれている。
それを考えりゃ俺が五位を卑怯と罵れるわけがない。
「不甲斐ない話だが、お前の拳はあまりにも強すぎる」
……にしては嬉しそうだな。
致命傷を防御させていたのもどちらかというと長く俺と戦いてぇからって感じか?
迷惑極まりねぇし上の戦艦のこともあるからさっさ決着をつけたい。
そう内心で決断し、即座に行動に移すべく、踏み込みと共にまずは無防備になった五位を始末しにかかる。
しかし、奴の眼前にまで迫った拳はエスと呼ばれた正体不明のボロ布野郎が間に入り、受け止められる。
「らァ!!」
「……」
俺の拳がボロ布から覗く光沢を帯びた金属に包まれた腕に防がれ、拮抗する。
瞬間、衝撃で空気が弾け、余波で地面に罅が刻まれる。
『バカなッ!! カツミ君の攻撃を受け止めた!?』
「———ハッ」
強ぇな。
雑に現れる怪人連中よりかはずっと歯ごたえがある。
拳を引き、さらに踏み込み顔があんのか分からねぇ部分に飛び膝蹴りを食らわせる。
のけぞり、顔を上げようとした奴の顔面をつかみ取り、さらに連続の殴打を叩き込む。
『……!』
「一撃防いだ程度でなにを調子に乗ってんだ?」
今のままじゃ、ただしぶてぇだけの怪人となんら変わらねぇ。
仕上げとばかりに、力任せに地面に叩き込み、蜘蛛の巣状の罅を地面に刻む。
そのまま雑に蹴り上げ宙に浮かせ、バックルを叩きながら右手を向ける。
「
重力の檻に閉じ込め、重力のエネルギーが収束された右拳を放つ。
拳を起点にし、空間に亀裂が走り―――歪み、弾けるように元通りになると同時に黒衣の奴は地面に叩きつけられるように吹っ飛ばされる。
「立てよ。効いてねぇのは分かってんだよ」
『なんてやつだ……ここまでカツミ君の攻撃を受けて原型を保っているなど……』
ゆらりと、地面から湧き上がるように起き上がる。
だがその気配は先ほどのような無を感じさせるようなものからは打って変わり、獣のような獰猛さを感じさせた。
『グルァァ……』
「だんまりはやめたのか? さっさとかかってこいよ」
こいつは俺が対処しなきゃならない。
漠然と、そう予感しながら俺も奴も戦意を高めていくと―――それに水を差すように、五位がボロ布野郎の背に手を置いた。
「エス」
『グゥゥ』
「まだ枷を外すには早すぎる。抑えろ」
五位の言葉に獰猛な気配を滾らせていたボロ布野郎が落ち着きを取り戻していく。
……あいつがボロ布野郎を制御してんのか?
力関係云々じゃなさそうだな。
「今日のところは引くとしよう」
「逃がすと思ってんのか?」
即座にグラビティバスターを引き寄せ、重力を纏わせた斬撃を放つ。
ワームホールすらも破壊しその発動すらも妨害する一撃、しかしその斬撃が奴らを捉えることはなかった。
斬撃が放たれたその後には既に奴らの姿はどこにもなく、どういうわけかワームホールを使った痕跡だけが残っていた。
『……ダメ、カツミ。追跡できない』
『ガァウ……』
「こっちの技に干渉してワームホールの軸をずらしたのか? 器用なことしやがる」
……逃げる手段を用意したのは五位だが、それを助けたのはもう一体の奴だな。
怪人じゃねぇし、かといってこれまで戦ってきた侵略者ともアルファともオメガとも違う。
もっと異質なもんだ。
「……くそ、また面倒なことになりやがったな」
空に依然として浮かぶ巨大戦艦を見上げながら悪態をつく。
ひとまず、これ以上事態が動く前にきららと合流して本部に一端戻るべきか。
メンタルデバフが一切ないフルパワー(一部弱体化)カツミに一撃を与えている時点で五位も相当でした。
そして、無敵モードに突入していたきらら……。
今回の更新は以上となります。