追加戦士になりたくない黒騎士くん   作:クロカタ

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二日目、二話目の更新となります。
前話を見ていない方はまずはそちらをお願いいたします。

今回はカツミ視点でお送りいたします。


我儘の代償

 星将序列五位が率いる艦隊が現在進行形で地球を攻撃しており、今はナノマシンを利用した防衛システムを用いたレイマがそれを食い止めている。

 今のところは地表に攻撃が直撃する心配はないが、それでもレイマが動けない状況に追い込まれたことには変わりない。

 

「あまり時間はないだろうな」

 

 遊園地での戦闘後、すぐさまきららと合流し本部に帰還した俺は、スタッフとアカネたちが集まる作戦室でまずはそう切り出した。

 現在、対応に当たっているレイマには負担をかけるべきではないと判断して、現場の指揮は俺と大森さんかすることになったが……。

 

「奴らの攻撃手段が砲撃だけなはずがねぇ。次に来るのは戦闘員によるゲリラ戦ってとこか……」

「あんな大きい船だからね。たくさんいそう」

 

 アカネの言葉に頷く。

 これまでの侵略者や怪人どもとは違う。

 組織で攻めてくる面倒な奴らだ。

 

「ほ、本当に直接降りてくるの?」

 

 不安なのか、風浦さんが震えた声を発する。

 彼女はまだ戦ってから日が浅いから、不安に思って当然だ。

 そのあたりヒラルダがフォローしてくれるだろうが……。

 

「想定ではあります。ですが、このまま上の奴らが単調な攻撃ばかりしてくるはずがありません」

「……そっか。それなら、私も覚悟を決めなきゃね」

「モモコには私がいるから大船に乗った気でいなよ」

「……どうしよう、ものすごく不安になってきた」

「モモコ?」

 

 この様子なら大丈夫そうだ。

 独特のやり取りで緊張を紛らわしている二人を見て、そう判断しながら次に葵へと話しかける。

 

「葵、あの船を撃ち抜けるか?」

「撃ち抜くことだけはできる。でも、構造も把握しないと一撃じゃ破壊しきれないと思う」

「そうか……」

 

 プロト1かトゥルースフォームなら宇宙空間に突撃してぶっ壊しにいけるんだろうが、今の俺にそこまでの力はない。

 いや、それなりに無理をすればいけるだろうが、それじゃ()の相手をすることができねぇな。

 

「幸い、どこを襲撃されてもレイマが用意していた探知システムで場所を把握することができる。ですよね、大森さん、グラト?」

「ええ、敵性侵略者の位置情報については我々に任せてください」

 

 自信満々に答える大森さん。

 その隣で大森さんの色違いの姿をしたグラトが、手元の端末を操作しながら顔を上げる。

 

「住民の避難についても自衛隊含めた各所と連携をとっている。司令が事前にマニュアルを用意していることもあり、現状指示系統に乱れはないが……奴は自身が動けなくなる状況まで想定していたのか? ふざけているように見えて恐ろしいやつだ」

「それがレイマだからな」

 

 やれることは全部やる。

 それが今日、俺が見てきた金崎レイマという頼れる仲間だ。

 

「あとは現れる戦闘員への対処だが……」

「それは戦闘員の私たちが個別で対処に当たる、でしょ?」

 

 いつものやり方ならそうだ。

 だが、今回ばかりはちょっとばかし先を見なきゃならない。

 

「……いや、お前たちは待機だ」

「え?」

「降りてくる奴らは俺だけで対処する。お前たちは力を温存しておけ」

 

 俺の言葉にアカネ達が驚く。

 彼女たちの疑問にすぐに答えるように俺も続けて言葉を発する。

 

「どういうことだよ、ホムラ。まさか、ボク達を頼らず一人でやろうとしてるのか?」

 

 壁に背を預け、不機嫌さを隠さないコスモが睨みつけてくる。

 彼女に同意するように、アカネときららが動揺しながら俺に詰め寄ってくる。

 

「それならカツミ君こそ余力を残しておくべきだよ!?」

「君が戦っている間、私たちは指をくわえてみているだけってこと……?」

 

 実際、そう思われても仕方がない。

 だが、違う。

 

「心配すんな。そういうわけじゃねぇんだ」

 

 考えなしにこんなこと言っているわけじゃない。

 正直、全員で対応に当たれるんならそれでいいんだが。

 

「理由は三つある」

 

 まず人差し指を立てる。

 

「一つ目の理由は、単純に俺一人でも十分に対応できる」

「それは……そうかもしれないけれど」

 

 ルプスストライカーと変身した状態での全力の移動、そしてワームホールでの転移を使えば多少の無茶はできる。

 そしてもう一つ指を立てる。

 

「二つ目の理由が、俺たちが相手をしているのは上の連中だけじゃねぇってこと」

「っ!!」

 

 下を指さしながらそう言うと、アカネ達も理解したようでその表情が強張る。

 アズを筆頭とした怪人勢力。

 奴らがこの混乱に乗じて横やりをいれてこねぇとは限らない。

 スタバーズとかいう連中と手を組んでいることもあって、絶対に無視できねぇ連中だろう。

 

「そして、三つ目。これはある意味俺の勝手みてぇなもんだが……」

 

 三本目の指を立て、アカネ達の顔を見る。

 

「———俺が本腰をいれてやりあわなきゃならねぇ奴がいる。その前に勘を取り戻しておきてぇんだ」

「そこまでの敵が……?」

「俺が戦ったボロ布野郎のことだ。あいつ、明らかに普通じゃなかったぞ」

「君が脅威に感じるほど……」

 

 ぶん殴ってみて分かったが、相当やるな。

 こっちの攻撃を素で耐えやがったし、恐らくアカネ達の手に余る不気味なやつだ。

 

「だからといって、なにもしないで引っ込んでいるってのは通らないよ?」

「葵? でも……」

「皆まで言わなくてもいい」

 

 葵が作戦室のホログラムを起動し、都市の地図を投影させる。

 立体的に現れた都市を再現させたホログラムの最も高いタワーを彼女は指さす。

 

「私の強化スーツなら都市拠点のバッテリーと装備を繋げば、エネルギーの消耗の心配もない。それに、この高層タワーの高さと私のジャスティビットがあれば余裕でカバーできる」

「……いけるか?」

「ガンタンクの射程でも楽勝」

 

 そのガンタンクがどれだけのものかは分からないが、葵の狙撃能力は疑うまでもない。

 そう考えていると、今度はハクアが少し緊張した面持ちで右手を上げる。

 

「私は戦闘には貢献できないけれど、ビークルでの救助活動は任せてほしい」

「……」

 

 ハクアだけでは危険じゃないか?

 いくらスペック的に高くてもハクアは戦闘が得意なわけじゃない。

 

「ハクアの護衛はボクがやってやる」

「コスモ?」

 

 不意に声を発した彼女に俺だけではなく、この場にいた全員が驚く。

 集まった視線に少しだけ狼狽えながらも、誤魔化すように視線を逸らしたコスモはそのまま言葉を発する。

 

「……実力的に文句ないだろ。それに、ボクは目がいいからな。救助活動なら役に立てるはずだ」

「分かった。二人とも、頼んだ」

 

 コスモが護衛にいるなら大丈夫だろう。

 ……自分で一人でやるって言った手前、みっともねぇ話だが悪い気分ではない。

 気持ちを切り替えるべく、軽く深呼をした後に改めてその場にいる全員を見回す。

 

「それじゃ改めて指示を出すぞ。葵は外で長距離射撃で対処。ハクアとコスモはビークルで救助活動。アカネ、きらら、風浦さんは待機。それでいいか?」

 

 待機するアカネときららに向けて話すと、二人は仕方ないといった素振りを見せる。

 

「納得はしてないよ。でも君が必要だって判断したんなら、多分間違っていない」

「怪人の横やりも全然ありえるからなぁ」

「……悪い。ありがとな」

「その代わり、君の我儘を聞いてあげるんだから後でこっちの我儘も聞いてね?」

 

 冗談めかしてそう言うアカネに俺も笑みを返す。

 

「フッ、その程度でいいならいくらでも聞いてやるよ」

「葵、言質は?」

「とった」

「でかした」

 

 ……。

 え、いや待って冗談じゃないの?

 こういうのって映画とかでよく見るお互いを鼓舞する掛け声みたいなものじゃ……ない?

 

「お、俺にできる範囲の我儘にしてくれ」

「君にできる範囲でいいんだ。ふーん」

「か、カツミ君、それは大盤振る舞いすぎだよ……」

「……なんか二人とも押し強くない? え、私がまとも枠……?」

 

 こいつらいったいどんな要求をしてくるんだ?

 なんでこいつらこんな穏やかな目をしているのに寒気がするんだ?

 

「と、とりあえずいつでも迎撃に出れるように都市に戻る。葵、ハクア、コスモもついてきてくれ」

 

 時間がないことは確かなので、作戦室の指揮権を大森さんに委ね俺たちは作戦室を出て宇宙戦艦の真下に位置する都市中心部に通ずるワームホール生成装置へと向かう。

 

「プロト、シロ。本部のシステムからネットに繋いで情報を集められるようにしてくれ」

『ん、分かった』

『ガウ!』

 

 上の奴らが下りてくるまで猶予はあまりない。

 その前にいち早く情報を集められるように身構えておく。

 

「葵、ハクア。本部からの情報の他にこっちの情報も共有させる」

「ネットの情報はどこに悪意があるか分からないから、安易に信用しちゃ駄目だからね?」

「ああ、分かってる」

 

 葵の注意に頷きながら通路を進んでいくと、ワームホールを生成する入り口があるホールへと出る。

 そこには都市から避難していたスタッフ達の姿もあり、その中に一人見覚えのある少女の姿を見つける。

 緑と桃色のメッシュが混じった特徴的な銀髪の少女、イリステラさん。

 先日、会社専属の漫画家として雇われたはずの彼女がどうしてここに……?

 

「イリスさん?」

「あ、カツミさん、ど、どうも……」

 

 俺の姿を見て不安げな様子だった彼女の表情が明るくなる。

 彼女はきょろきょろと周りを見ながら駆け寄ってくる。

 

「あ、あの会社の方で漫画の講習を受けていたら、その、空にたくさんの船が来てそのまま流れるようにこちらに避難するように言われてしまって……」

「そういうことですか。ならもう大丈夫。ここなら安全です」

 

 レイマの会社で講習を受けていたのか。

 真っ先に狙われるかもしれない場所だから迅速な避難を求められたんだな。

 

「イリスっちはここにいて。私たちはまた都市に戻るから」

「え、都市ってっ、ど、どうするんですか?」

 

 葵の言葉に動揺するイリスさん。

 そんな彼女に俺は語り掛ける。

 

「俺たちにしかできないことをします」

「カツミさん達にしか、できないこと……」

「ええ。……大丈夫です。この騒ぎも俺たちがなんとかしますから」

 

 だから安心してここにいてください。

 そう伝え、俺たちはイリスさんから離れ入り口へと向かっていく。

 俺たちが入り口に到着すると同時にワームホールが起動し、白い渦巻きが発生する。

 

「こっからが長いぞ、いけるか?」

「その分の我儘の上乗せするから平気」

「かっつんに、なんて言うこと聞いてもらおうかなー」

「いい飯奢ってもらうから覚悟しておけよ」

「もしかして、この戦いが終わってから本番か?」

 

 思っていた以上に我儘の代償が大きかったかもしれん。

 いつのまにかアカネ達だけではなく、ハクアやコスモ……いやこの様子だと他の面々の言うことを聞かなければならないのでは? という状況に気付いた俺は、怪人や侵略者以上に恐ろしいと感じてしまうのであった。

 




おまけ「待機となった彼女たちは」

「さて、待機している間に―――きらら」
「んー、なぁに?」
「言いたいこと、分かるよね?」
「えー、なんのこと」
「遊園地で随分好き勝手ほざいていたみたいだね。似非若妻が」
「それはお互い様やろうが、おん? 湯呑あーんが」
「待機してるのに一番ここが危険ってどういうこと? 今、一番の危機を感じてるんだけど」
「モモコ、修羅場こわい」




カツミにできる範囲のことで十分すぎるアカネ達でした。
日和って妹を同行させた葵以上に、色々乗り越えたアカネときららのタガが外れかけてる……。


次回、掲示板回。
更新は明日の18時を予定しております。
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