追加戦士になりたくない黒騎士くん   作:クロカタ

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三日目、三話目の更新となります。

前話を見ていない方はまずはそちらをお願いいたします。

前半がカツミ視点、後半から別視点でお送りいたします。


磨かれていく心

 こんな心持ちで戦うのはいつぶりだろうか。

 なにも考えずに敵をぶん殴り、ぶっ壊していくこの感覚。

 覚えている限りだと、俺がアカネ達ジャスティスクルセイダーに負ける前か?

 黒騎士として夜の街を駆け、どこからともなく現れる怪人どもを毎日のようにぶん殴っていた頃。

 あの時の俺は、プロトゼロスーツを着た全能感で動いていた―――わけではなく、

 日々のうっ憤を発散するためにいた―――わけでもない。

 ただ、俺にとっての自由がそこにあったから。

 別に怪人に対する個人的な憎しみもなにもなく、俺は怪人を狩り続けた。

 今になって思えばひでぇ理由だったと思うし、やられる怪人側もたまったもんじゃなかったことだろう。

 

 ———まあ、どちらにせよ悪意で人間に危害を及ぼそうとしている時点で同情の余地はない。

 

 だからこそ、俺が本格的にあの頃のような精神状態になることはもう難しいだろう。

 世間知らずで未熟だった穂村克己は、多くの助けを得て人間にしてもらった。

 

「次が来たな」

 

 絶えず空から降り注ぐ攻撃と、光の柱。

 レイマのナノマシンにより攻撃は防がれ、それらを搔い潜り地上に差し込まれた光の柱から武装した侵略者どもが武器を構え、人々に狙いを定める。

 

「———」

 

 それを視界に納めると同時に、侵略者の一人の傍に着地。

 拳を叩き込み、上半身と下半身を分断させその勢いのまま、次の奴の頭を吹き飛ばす。

 

「化けも―――」

 

 スーツの翻訳機能によって変換された死に際の声。

 また別の武装した奴を投げつけたルプスダガーで刺し貫いた後、ようやく俺の接近に気付いた最後の一人がこちらに武器の銃口が向ける。

 

「死ねぇぇぇ!!」

 

 だが、それも遅い。

 構わず拳を繰り出し、打ち出されたエネルギー弾諸共打ち砕く。

 そのまま跡形もなく吹き飛んだ最後の一人を確認し、またその場を跳躍し次の侵略者を探す。

 

「次はあっちか。……いや」

 

 宇宙船から降り注ぐ一つの光の柱。

 次の侵略者と判断し、そのまま始末しに向かおうとした直後に夜の暗闇をジグザグに切り裂く光のようなものが、光の柱が落ちた場所に殺到する。

 

「……さすがだな」

 

 ジャスティビットによる超精密射撃。

 直接敵を狙うわけではなく、ジャスティビットでレーザーを反射させ、中継点にすることで射線上の障害物すらも無視し、超長距離の攻撃を可能にしている。

 とても、俺じゃできない芸当だ。

 

「……少し、余裕ができたか?」

 

 その場を跳躍し、また空が見える高層ビルの屋上に着地した俺は轟音が鳴り響く空を見上げ一呼吸をつく。

 また少しすれば上からやってくるだろうな。

 一時の、ほんの短い休憩にほっと一息つきながら俺は今の今まで俺に付き合ってくれている葵に連絡を繋げる。

 

「葵、平気か?」

『まだまだだいじょぶ』

 

 大丈夫ではなさそうだな。

 当然だろう、作戦が開始してもう20時間以上経っている。

 逃げ遅れた民間人の避難がほぼ完了し、ハクアとコスモには一端帰還してもらっているが、葵はずっと集中を絶やさずに俺のサポートと超遠距離射撃による侵略者の迎撃と排除を行ってくれている。

 だが、それにも限界がある。

 

「あとは俺に任せて、少し休憩しろ」

『や』

「赤ちゃんかお前は」

 

 や、ってなんだ。

 一言で返事してくる葵に肩の力が抜けそうになる。

 

『まだいける』

「無理そうだからいってんだ」

『だってまだカツミ君が戦ってる』

「……」

 

 そりゃ、俺も人のことは言えないけどさ。

 疲労に関してはまったく感じていない。

 慣れているということもあるが、スーツの機能で補助されているので全然余裕だ。

 伊達にルインと50何時間もぶっ続けで戦ったわけじゃない。

 

『じゃあ、ここで一端仮眠する』

「タワーの上でか? 落ちないように気をつけろよ?」

『すぅ……すぅ……』

 

 寝るの速いなおい。

 でもそれぐらい頑張ってくれていたってことなんだろう。

 

「……後は任せておけ」

 

 このまま葵には休んでもらおう。

 そして、通信を切り替え、つい先ほど民間人の避難を終えたハクアをアジトに送ったコスモへと連絡を繋ぐ。

 

「コスモ、そっちは動けるか?」

『ああ! ハクアは無傷で送り届けたぞ!!』

「ありがとな。今、葵を休憩させた。そっちにまだ余裕があるなら、避難した人の多い区画の護衛を頼めるか?」

『それは構わないけど、そろそろアカネときららを出した方がいいんじゃないか!?』

 

 ……。

 いや、まだ状況は動いていない。

 今は単純に物量のみで攻めてきているだけで、相手の動きに変化も、怪人どもの出現もない。

 

「歯がゆいかもしれねぇが、アカネ達はまだ待機だ。現状、俺たちだけでまだ対応できるからな」

『……。分かった! お前もあんま無理すんなよ!!』

 

 はっきりとした声で答えるコスモにちょっと面を食らってから、苦笑いする。

 どんだけ心配されているんだよ、俺。

 でもまあ、それだけ危なっかしく見えるんだろうな。

 一端、コスモとの連絡を切り、空を見上げる。

 

「レイマの方はきつそうだな」

 

 単純な攻撃ならレイマだって60時間程度の攻撃は防ぎきることができるだろう。

 だが、それはあくまで計算でしかなく、レイマの精神状態を考えると防ぎきることができる時間はもっと短いと考えてもいいだろう。

 それは、もちろんレイマも理解している。

 一番の問題は———、

 

「奴らが生きて帰ることを目的にしえねぇってことは……十中八九アレ(・・)をやってくるだろうな」

 

 考える限りの最悪の可能性。

 五位の覚悟を見る限り、奴の部下が自分の命に執着がないってんならやってくる可能性は高いだろうな。

 

「一応、レイマに警告はしているが、もしもの時は俺がなんとかしなきゃな」

 

 万が一、最悪の事態が起こったら都市は壊滅に陥るかもしれない。

 絶対にそうはさせないが、なにが起こるのか分からないのが現状なのでプロトにつけてもらった枷を外すことも視野にいれなきゃならない。

 

「次だな」

 

 空に光の柱が降る予兆が出現する。

 その数、五つ。

 いくら数が増えようとも俺がやることは変わらない。

 足に力を籠め一気に力を解放する形で跳躍し、街を駆ける。

 


 

「凄まじいな」

 

 大気圏外からの爆撃。

 武装した配下による侵攻。

 そのどちらもが現状完全に対応されている。

 爆撃はゴールディ、そして侵攻はほぼ黒騎士一人によって転移した直後に襲撃され、その悉くが始末されている。

 

「分かっているんだろうな。こちらが送り出している兵士共が木っ端に過ぎないことを」

 

 雑兵、とまでは言わないがそれでも単体の戦闘力は心もとない戦闘力しか有していない。

 だがそれでも死兵……死を覚悟して地球に降り立った者たちだ。それが成すすべなく排除されているところを見ると、黒騎士とジャスティスクルセイダーは単体の戦闘力だけではなく、高度な連携もとれているということだ。

 

「残っている弾薬、エネルギー残量は?」

 

 短い問いかけに船のブリッジ内にいる配下の一人が、静かにデータを読み上げる。

 

「弾薬6割を消費。エネルギーも同様です」

「そうか。……このまま続けてもゴールディの防壁を破ることは難しいだろう」

 

 本来は地上を綺麗に掃除してから本番と行きたかったが、ここはさすがの悪魔の科学者ゴールディといったところか。

 だが、それでも計画は変わらない。

 

「期が近い。出撃の準備を進める。通達しろ」

「了解」

 

 出撃を今か今かと待ちわびている部下———歴戦の戦士達。

 そして俺自身もサーベルの鞘に触れながら、これから起こるであろう戦いに思いを馳せる。

 

「エス」

 

 そして、友の名を呟くと彼は音もなく俺の隣に現れる。

 そのことに特に驚きもないまま、俺は語り掛けるように言葉を発する。

 

「お前の相手は黒騎士だ」

「……」

「ああ、地球が舞台ならば、奴は本気を出すことができない。地球という星そのものがお前たちの力に耐えられんからな」

 

 外套の奥の獣のような瞳はなんの言葉も返さない。

 だが、俺には分かる。

 我が友は、黒騎士との闘いを待ち焦がれている。

 己が力を存分に振るうことのできる理由、合法的に己を解放することができる機会にエスは喜色めいた唸り声をあげる。

 

「———間もなく、総攻撃をかける」

 

 船内の同胞全てに声を届ける。

 この時点まで我々の侵略の悉くが防がれ、碌に地球に被害を与えてはいない。

 だがその程度では悲観することはない。

 相手は、これまで多くの星将を打ち倒し、俺すらも呆気なく倒しうる力を持つ恐るべき戦士達だ。

 

「総員、戦闘準備。船にいる皆、全員だ」

『『『ハッ』』』

 

 短く、言葉にした命令に対し、同胞達の答えに迷いはなかった。

 全て、全員が船を捨てて地球に降りていく。

 兵も整備士もどいつもこいつも全員だ。

 

「出撃と同時に船は落とせ」

「了解」

 

 砲撃が無効化されるのならば、船団という大質量で攻め落とせばいい。

 どちらにせよ、俺達には母船はもう必要ない。

 

「さあ、お前たちはこれを防ぐか。どう打って出る?」

 

 それともここまでの暴挙に出ればルインによって俺たちは殺されるか?

 そうなったとしても奴が必死に小さな星を守ろうとする姿を想像するだけで腹を抱えて笑ってしまいそうだ。

 




疲労のあまり幼児退行するブルーでした。

今回の更新は以上となります。
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