追加戦士になりたくない黒騎士くん   作:クロカタ

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二日目、二話目の更新です。
前話を見ていない方はまずはそちらをー。


今回は前半がレッド視点
後半からカツミ視点でお送りいたします。


片割れの獣

 カツミ君が戦っている相手は確かに得体が知れない。

 強いし、平気でカツミ君の攻撃に対応するタフネスもある。

 見た目は、人型の狼といった感じだけれど創作で言う狼の愛嬌さなんてどこにもなく、全体的に瘦せ細っているような印象の怪物のよう。

 そんな相手とカツミ君が激突し、凄まじい肉弾戦が広げられている一方で、私達も一歩遅れるように五位と奴が率いる軍団を相手にする。

 

「イエロー、ブルー。手筈通りに」

「んじゃ、木っ端はこっちで片付けるよ」

『思う存分血を啜っていいぞブラッド』

 

 葵は後でアイアンクロー。

 背中のジャスティビッドを手元に引き寄せ、身の丈を超える大太刀へと形成する。

 それを肩に担ぐように構え、息をゆっくりと吐き呼吸を整えた私は、前へと飛び出す。

 

「来るか……!!」

 

 他の敵に眼もくれず大太刀を肩に担ぐように構え一直線に突撃し、射程に入ると同時に首を狙った振り下ろしを叩き込む。

 空を裂き、真っ赤な軌跡を宙に残しながら振るわれた刃は、五位がかろうじて挟み込んだカトラスに遮られ火花を散らす。

 

「これが純粋な地球人だと……! 冗談も大概にしろ……!!」

 

 五位が声を荒げながら深く間合いへと踏み込む。

 大太刀で対応するには難しい至近距離。でも、その程度の対策でこっちの動きは止まらない。

 一気に大太刀の間合いの奥へと潜り込んだ五位はいつの間にか取り出した銃を向けてくるが、それよりも先に瞬時に引き抜いた匕首で銃口を切り裂き、前に倒れるように大きく踏み込みながら大太刀の重さを乗せるような回転切りへと繋げる。

 

「ッ」

 

 真っ向からの唐竹割りに対して奴は自身の右腕で受け、自切しながら後ろへ跳び新たな腕を転送と同時に取り付けながらまたカトラスを手に取る。

 

「……」

 

 不格好だけど防いだね。

 どれもかろうじて防いでいるように見えるけれど、手傷を追わずに全て防ぎきっている。

 今の時点で、とても序列五位の強さには見えず、戦闘時の余裕さを考えれば、まだ九位や十位の方が強く見えた。

 ———けれど、怪人という理不尽と戦い続けてきた私達にとってはそれは油断する理由にはならない。

 こいつの強みはこれまでの序列持ちにある特殊な能力によるものじゃないことはもう分かっている。

 

「化けの皮を剥いでやる」

 

 大太刀をさらに再形成、ガチャン!! と音を立て切り離すと同時に二刀の太刀へと変える。

 刀を緩く握り片方を肩に、もう片方を前に構え、腰を深く落とし軽く息を吸い―――気炎と同時に切りかかる。

 

「十二天・二刀ノ型」

「———ッ!!」

 

 目を大きく見開いた五位が慌てて武器を捨て、その手に転送させたのは両腕を覆う盾のような手甲。

 それを目にしてから、胴体への薙ぎ払いから両足の両断へと目標を変え斬りかかるが、奴はギリギリで足を引いて右足のつま先の両断で済ませる。

 たった一撃では終わらせない。

 一切の防御を捨て、攻撃のみに特化した両手の二刀で五位の足、手、武器を削ぎ首を切り離す。

 

「“羅刹(ラセツ)”」

 

 反撃の隙を一切与えない炎を纏わせた連撃は、繰り返すごとにその速度を増す。

 その猛攻に奴が防御に構えた手甲は一瞬のうちに斬り飛ばされ、右腕を両断されようとも対応する手は緩めない。

 

「ッ、ガッ……クッ……ハァ……!!」

 

 一瞬で繰り出された十数撃の斬撃を満身創痍ながらも凌ぎ、それでも致命傷を避けた奴は膝をつかずに損失した四肢を切り替えようとする―――が、それよりも早く二刀の柄を繋ぎ合わせ薙刀へと変えた私が炎を纏ったソレを回転させながらそれを武器を失った奴へ投げつける。

 

「———“(エン)”」

 

 赤く燃え上がった炎の円環は五位のいる空間へと激突し、爆発を引き起こす。

 それを目の前にし、私は———さらに引き寄せたジャスティビットを刀に変え、止めを刺すつもりで幾重にも重ねた斬撃を放ち眼前の爆炎を切り裂く。

 一瞬にして燃え上がり、消し去られた爆炎。

 地面が焦げ付いたそこにいたのは、全身が焦げ付きボロボロになりながらも全ての攻撃を凌ぎ切った五位の姿があった。

 

「下手な芝居はおしまい?」

「……もうここまで来ると黒騎士より怖いな」

 

 既に四肢の欠損は切り替えて修復済みか。

 超速再生……じゃなくて、パーツを交換するタイプ……私達からすればこっちの方が面倒だね。

 

「あの老いぼれが目をかけるのもよく分かる」

 

 体力を削り取って再生できなくするって戦法も使えないし、軍団のリーダーっぽいこいつが交換する四肢のストックが十個とかその程度のはずじゃない。

 でも手っ取り早いのは——、

 

「そうなると、俺とお前にも多少の因縁が―――」

「首を刎ねれば終わる点かな」

「ッ!!」

 

 話をまるっと無視して首へ斬撃を飛ばす。

 奴はそれを今度は余裕を以て防ぎ、後ろへ下がらずに刀を受け止める。

 

「本当にお前達地球人は話を聞かないな……!!」

 

 そっちはよく口が回る。

 こっちはさっきからずっと無視して斬りかかっているのに。

 赤熱した太刀を緩く握り、その首を断つべく振るう。

 

「ハッ、問答無用か!!」

 

 ……こいつ、私の動きに慣れてきたな?

 さっきと同じほどの力は出していないけど、それでも私の繰り出す斬撃に対応するようになってきてる。

 怪人のような物真似するような特殊能力って感じはしない。

 多分、観察眼とかそういう純粋な技量ってやつなんだろう。

 

「さすがの強さだな……!!」

 

 さっきから戦闘中にごちゃごちゃうるさいなぁ。

 どうせこちらの動揺を誘うためのものだろう。

 この五位は能力そのものは多分七位とか八位には遠く及ばず、そもそも特殊な能力自体はないとみてもいいかもしれない。

 分類としては武装を使いこなしていた十位……並行世界の私に近い。

 でもそれでもこいつが五位である理由は———、

 

「そこだ」

「!」

 

 振るう刃にサーベルを合わされ、斜めに弾かれこちらに刃が振るわれる。

 それを弾きながら舌打ちしカウンターで割り込んできた剣を柄で受け止め、後ろへ下がる。

 

「チッ……」

 

 こいつは戦う相手をよく見ている。

 それも、今回の戦いの中だけじゃなくその前から戦う可能性のある私達やカツミ君の戦いを観察しその動きに対応しにかかっている。

 派手さはないけれど、ものすごく面倒くさいやつだ。

 

「そして……」

 

 ———カツミ君がこいつに対して呆れた理由もよく分かった。

 私の攻撃を全力で凌ぎ、無様を晒そうとも生きぬいて戦おうとするこいつが、死に場所を求めて戦っているだなんて意味不明なことを口にしたらカツミ君だって呆れる。

 

「———そろそろか」

「?」

 

 斬撃を放とうとすると、手元の刀の異変に気付き足を止める。

 見れば、ジャスティビットにより形成された刀が腐食するように黒く変色し、煙を放っている。

 

「好き放題に斬られているとでも思ったか?」

 

 ……さっき私が斬り飛ばした足から半透明のガスのようなものが出てる。

 それを確認した直後に、マスク内に本部でモニターをしている大森さんからの通信が入いる。

 

『アカネさん! それはナノマシンを汚染する特殊な物質です!! 貴女が扱う刀剣類にも効果を及ぼす可能性があります!!』

「了解。それだけ分かれば十分です」

 

 金属を腐食させるなんらかの気体……と液体もかな? 私たちの武器に対するメタってやつ?

 溶けていく太刀をすぐに捨てながら、さらに手元にジャスティビットを引き寄せ、刀に形成する。

 

「そんなものを取り出しても無駄だと」

「イエロー!」

 

 刀を手元に作り出しながらイエローに声をかける。

 電撃をまき散らし、取り巻きと寄ってくる怪人の対処していたイエローが、返事もしないまま頭を潰した怪人の胴体をこちらに放り投げてくれる。

 五位と私の間に飛び込んできた怪人の死体を荒く切り裂き両断———紫の血をまき散らす。

 

「アギャ!?

「なっ……!?」

 

 宙へ巻き上がった怪人の血潮に刀を振るい、刃に血を付着させ五位へと切りかかる。

 血を飛ばさないよう、緩くそれでいてなめらかな軌跡を意識しながら振り下ろされた刃を五位は受け止めながらも、その口の端を引きつらせる。

 

「そういうのは自前のでやるだろ! 普通は!」

「自分を傷つけても痛いだけでしょ」

「この気狂いが!!」

 

 わざわざ自分の血でやってもこっちの動きが鈍るだけだし。

 次々とイエローが投げつけてくれる怪人を切り捨て、刃に血を塗りなおしながら五位へ斬りかかる。

 だけれど、いくつか斬撃を交わしていくとすぐに刃が黒く変色し、ぼろぼろと崩れていってしまう。

 

「……やっぱりこれだけじゃダメか。イエロー、もういいよー!」

『あいよ-』

 

 ごおぉ!! と電撃と打撃音を響かせながらイエローが眼前の怪人と侵略者を薙ぎ払う。

 その様子を横目で見ながら、私は最早柄だけになった刀を捨てる。

 

「少しも動揺しないな」

「する理由がない」

 

 武器を使えなくなった程度で諦めるほど、私達は簡単じゃない。

 むしろこの程度で万策尽きたと思っているそっちの方が、私達を嘗めている。

 次の戦法を繰り出すべく、思考を巡らせようとした瞬間———私達が戦う場所から一番近い高層ビルに黒と白の姿に変身したカツミ君と、獣のような咆哮を上げた外套を纏った異星人が激突する。

 

「「———!!」」

 

 カツミ君が異星人を殴り、異星人もまた傷を再生させながら彼へ反撃する。

 ―――互角。

 弱体化しているとはいえ、彼と真っ向から殴り合っている相手に私は内心で驚愕する。

 

「黒騎士は、エスには勝てん」

「……」

 

 くだらない妄想を口にする五位に殺気を向ける。

 奴はそれを受け流しながら、挑発するように口の端を歪める。

 

「本気で戦えば、黒騎士はエスを上回るだろう。それだけの超常の戦士だ」

 

 だが、と奴は嘲りの声で続ける。

 

「この地球で戦う限り、奴が正真正銘の本気で戦うことはない。だがこちらはそんなこと関係なく、全力で奴を殺しに行く」

「!」

 

 カツミ君は全力で戦うことはできない。

 それは悔しいけれど事実だ。

 彼の力が制限されているからじゃなくて、彼が私達に秘密にしている本気の力を出すことを危険に思っているから。

 だからこそそれを悔しく思う。

 

「お前らの守る地球が、黒騎士にとっての一番の枷になっているのだ」

「……」

 

 枷になっているのは地球だけじゃなく私達自身も同じだ。

 こんな奴に言われなくてもそれはちゃんと理解できているし、だからこそ私達は彼を信じて今こいつと戦っている。

 やることは変わらない。

 私は、一刻も早くこいつを始末してカツミ君への援護を……ん?

 

「……何?」

 

 カツミ君と異星人が戦う空間の頭上になにかが浮いている。

 マスクの望遠機能で見ると、そこにいたのは見覚えのある漆黒の鎧を身に纏った褐色の女の姿。

 特徴的な花の模様を顔に浮かべたその女は、大きく息を吸う。

 

「チッ、そこまで俺の邪魔をしたいか。サニー」

 

 頭上に現れた気配にカツミ君も異星人も同時に頭上を見上げる。

 小型の戦艦が落下しその火花が降り注ぐ中、星将序列八位(・・)イレーネは、鎧が変形した大型のスピーカーを展開し声を発する。

 

watashino(わたしの) sekaiha(せかいは) anatanomono(あなたのもの)♪』

 

 歌うように紡がれた声。

 それを認識した瞬間、イレーネを中心にして星空のような空間が広がり、カツミ君と獣のような敵を巻き込んだ。

 そこから巨大な円形の球体が現れ、それは宙へ浮き上がってから縫い付けられるように停滞する。

 

「黒騎士君を隔離した……!? 司令! あれは!!」

『状況はこちらも分からんから憶測で判断する!! 恐らく八位はカツミ君と敵異星人を別空間に隔離した!! 彼が全力で戦えるようにな!! ———ってうわぁぁ!? こっちには七位の電気娘も来てるぅー!?』

 

 社長の方には七位も来ているみたいだ。

 ……本当に憶測でしか判断できないけれど、状況的にはそう考えるしかないか。

 

「ハッ、想定はしていたが、反吐が出るな」

 

 まあ、こいつからしたら愚痴の一つでも言いたくなるのは正直分かる。

 なにせ黒騎士君を隔離したのはかつて敵として戦った黒騎士を名乗る不届き者の八位。

 多分今回はカツミ君が思う存分に戦えるようにサポートしに来たんだろうけれど、別の意味でもアレは油断ならない。

 

「……すぅぅ」

 

 だけれど、憂いはなくなった今私の目の前の敵に集中する。

 ジャスティビットは使えない。

 普通の刀も同様。

 それなら―――、

 

「空気に触れなければいい」

 

 手元のチェンジャーに手を添え『鞘』を取り出す。

 そして、また手元に引き寄せたジャスティビットを刀の形にさせ納刀、構えをとる。

 

「さっきの挑発についてだけど……」

 

 柄に軽く触れながら、戦闘態勢をとる五位を睨みつける。

 

「そっちの最大戦力が、お前より強い四位か二位だとして、彼が負けることなんてありえない」

 

 カツミ君はそもそも勝つとか負けるとかそういう気概で戦っているんじゃない。

 彼が倒すと決めたなら、絶対にそうするつもりで戦ってるんだ。

 多分、彼のことだから地球で倒せないなら地球の外までぶっ飛ばして倒しにかかっていたことだろう。

 

「———四位か」

 

 私の声に、五位はただ一言そんなことを呟いた。

 その声色は、どこか呆れたような、嘲笑が混ざったようなものだった。

 

「お前らもそうだが、下手な上位序列持ちほど勘違いをする」

「……なにが言いたいの?」

 

 意味不明な言い回し。

 その疑問に対して五位は簡潔に答えた。

 

「現星将序列に4位は存在しない(・・・・・・・・・)

 


 

 八位、イレーネの介入によって異空間に隔離された俺とボロ布野郎。

 多分、サニーのやつが俺が思う存分に戦える場所を用意したっつーことなんだろう。

 それに関しては俺も多少無理をせずに済んだ……が。

 

「私もサニーに言われるまで、あれが四位だとずっと思ってた」

 

 隔離された直後、空間を作り出しているイレーネを真っ先に狙ったボロ布野郎から彼女を横からかっさらうように守った俺は、そのまま彼女を横抱きに構えたまま四肢を大地に突き立て獰猛な唸り声を上げる奴を見る。

 やっぱデカくなっているよな? 身体を拘束している鎖も軋んでいるし。

 

「てか、お前は降りろよ」

「あれは前宇宙の流れ者。地球でも伝わってる神話の元になった存在の一人」

「聞けよ」

「神話はそもそもが前宇宙の逸話の名残り。一部が事実だって、びっくり」

「呑気すぎだろお前」

 

 抱えたまま離れないイレーネに苦言を呈するが無視される。

 こいつ身長とか俺と同じくらいなのになんでこんなに幼く見えるんだ? 大丈夫なのか?

 

「片割れを失ったまま生き、死に場所を求める獣。名前は“スコル”。……太陽を食べたって言われる脅威の子」

「……太陽か。なるほどな」

 

 サニーが場所を用意したのもそういうことってわけか。

 俺にとっても奴にとっても本気で戦うにはあまりにも地球(・・)は弱すぎたってことだな。

 

「こっちと同じようにテメェも思う存分にやれるってわけか」

 

 奴の身体を縛る鎖が砕け、その体が巨大化していく。

 人型に押し込められたものではない奴本来の巨大な狼の姿へ。

 

『ガァァ……!! オォォォォォォン!!』

 

宇宙艦隊第一軍団長“太陽喰らい”

スコルネガバース

『星将序列』3位(同率)

 

 星が煌めく夜の異空間に獣の咆哮が響く。

 

 




レッドにドン引きの五位でした。(最初は五位の部下でやる予定でしたが、あまりにもアレ過ぎたので怪人さんに代わってもらいました)

そしてサニーと同格の同率三位のスコルさん。
元ネタは北欧神話に登場する狼。
感想欄で気づいている方がいてびっくりしました。

今回の更新は以上となります。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
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