追加戦士になりたくない黒騎士くん   作:クロカタ

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昨日に引き続いての更新となります。
前話をご覧になっていない方はまずはそちらをー。

今後はフリガナをつける方向で行きます。
好評であれば、過去のものにもつけていきます。


心を震わす衝動

月明かりバックとかOSRポイント高い これ黒騎士くんの可能性ある? シルエットだけじゃ分かんねぇwww

ゼロワンゼロワンゼロワン……(幻聴) 仮面ライダーやんけ!

エターナルのコスプレだろこれwww さあ、地獄を楽しみなぁ!

嫌いじゃないわ!! コスプレじゃ怪人は倒せないんだよなぁ

黒騎士くんじゃないだろ、だって頭使った戦い方してる 黄色い複眼と微妙に見える角がエターナル

知能あるから黒騎士くんじゃないな! おかえり!!

 

「むむむむ……」

 

 なんか見られてる。

 ものすっごい見られてる。

 パソコンとにらめっこをしていた姉さんが、おもむろに俺に訝しむような視線を向けてきている。

 どういうわけか知らないが、ものすごい視線を感じながら、前を向いた俺はソファーに座りテレビを見る。

 

「なんか大変なことになってるなー」

『ガウ』

 

 抱えたシロが呑気に一声鳴くが、テレビの方ではもう正体不明の戦士についてすごい話題になっていた。

 まさかあそこで撮られているとは思わなかった。

 幸い、鮮明な姿は映されていなかったけれど。

 

「ねえ、かっつん」

 

 すると、今度は隣にまで移動してきてソファーに座ってくる。

 今日は俺も姉さんも仕事が休みなのだが、今日に限っては気まずい雰囲気が部屋を支配していた。

 

「本当に、昨日はどこにも寄り道してないよね?」

「いやいや、してないよ」

 

 あぁ、でもマスターのまかないがなぁ。

 弁当箱ごと壊されちゃったのが申し訳なかった。

 帰りに処理はしておいたけど、後で弁当箱を弁償していかなきゃ。

 

「じゃあ、どうしてシロがこんな綺麗になってるの?」

「え、なんか脱皮した」

「脱皮!? するの!?」

「うん」

『ガウ!』

 

 脱皮なのだろう。

 罅割れていたけど、なんかはじけ飛んで綺麗になったし。

 

「姉さんは昨日からどうしたの? なにか気になることもあったの?」

「んふ!? ど、どどどどうしてそう思うのかなー?」

「いや、その反応だよ。推理披露された犯人よりも動揺してるじゃん」

 

 近くの公園で起こった事件だし心配になるのは無理もない。

 俺にとって唯一の家族が姉さんであると同時に、姉さんにとっての唯一の家族は俺みたいなものだからな。

 自分のことばかり考えずに、ちゃんと考えておかねばならない。

 

「……休みだし、街に買い物でもいく?」

「え? なんでかな?」

「いや、気分転換にって。嫌なら別にいいんだけど」

 

 俺の突然の提案に姉さんは少し思い悩むように腕を組む。

 数秒ほど悩んだところで、彼女は顔を上げる。

 

「よし、行こう」

「ほぼ悩んでなかったよな」

 

 どうやら行くようだ。

 今は午前九時半頃か。なら、街に着くころには店が開いているかな。

 


 

「ハクア姉さん、なんで俺だけ眼鏡やら帽子を被らなきゃいけないんだ?」

 

 宣言通りに姉さんと一緒に街に向かうことになった。

 当然、肩にかけるタイプのバッグにはシロも一緒にいる。

 しかし、毎回思うことだがなぜか街に行くときは俺は、伊達メガネと帽子を被らされる。

 帽子のつばに触れながらそう訊いてみると、こちらに振り返った姉さんは答えてくれる。

 

「外に行くならそっちの方がかっこいいかなーって」

「そ、そうかなぁ?」

「うんうん。……バレないようにしなくちゃなぁ……」

 

 少し照れていると、ふと道の先にひとだかりができていることに気付く。

 あ、この先は昨日戦った公園がある場所か。

 しまったな、駅に行くにはあそこを通らなきゃいけなきゃいけないのを忘れていたぞ。

 

「なんか封鎖されてるね」

「多分、怪人の残骸とかを処理しているんじゃないかな? 勝手に持ち出して問題にならないように」

「すごい。よく知ってるな、さすがハクア姉さん」

「え、う、うん。えへへ……」

 

 公園の周りにはテープと立ち入り禁止という看板が立っている。

 今日は日曜なので、ここで遊ぶ子供たちには申し訳ないことをしてしまったな……。

 

「ッ!?」

「おわっ、またか。ハクア姉さん」

 

 そんなことを考えていると、なにを思ったのか姉さんが腕に飛びついてくる。

 やや引っ張るように移動しはじめた彼女に驚く。

 

「ちょ、ど、どうしたの……」

「い、いやぁ、ちょっと人通りが多いから早く移動しようかなって」

「まあ、確かに多いけど……ん?」

 

 困惑しながら周りを見ていると、人混みから少し離れたところに三人の少女がいることに気付く。

 俺達と同じ年頃の女の子は、誰かを探しているのかしきりに周囲をきょろきょろと探している。

 

「あの声は、絶対に彼だ。私には分かる」

「どこなの……どこ……? ここ……?」

「この理系ダウジングで……周囲30メートル以内に反応!?」

 

 なんだあのやべー子たち。

 ものすごく剣呑な目をしながら、周りをきょろきょろしてる。

 スパイ映画で、主人公を血眼で探す人達みたいだ……。

 

「は、はやく行こっ!」

「あ、ああ」

 

 姉さんに手を引かれながらその場を離れる。

 ……どこかで、会ったことがあるような気がするなぁ。

 

 

 街へは電車で10分ほどで到着した。

 今日が日曜なこともあって、街は多くの人で賑わっていた。

 駅から出て、街中を歩きながら最初にどこに行くか姉さんに尋ねてみる。

 

「最初にどこに行く?」

「うーん、そこらへんはよく考えてなかったなー。別に服が欲しいわけじゃないし。家具とか見に行く?」

「あ、いいね。そのついでに弁当箱買ってもいいかな?」

「いいけど、どうしたの? 無くしたの?」

 

 マスターからもらった弁当箱を駄目にしてしまったことを説明する。

 

「マスターのまかないを道中駄目にしたの!?」

「あははー、うん。そう」

「昨日の怪しい返答は私にそれを隠すためだったのかー! このー! 食べ物の恨みは恐ろしーぞー!」

 

 ぽかぽかと背中を殴りつけてくる姉さんに苦笑しつつ、そのまま移動を開始する。

 それから、家具専門店に入って一通り家具を見に行ったり、そのついでにマスターへ弁償する大きめの弁当箱を買う。

 まあ、家具に関しては中々に値段が張るのでその場で買うということはなかったが、そこそこ楽しかった。

 

「次は電気屋でも行く?」

「その前に早めにご飯食べちゃわない? お昼時は混むだろうし」

「それもそうだね。……うん? かっつん、鞄にいるシロがなんか自己主張してる」

 

 ホントだ。

 カバンの口を開けるとひょこ! とシロが顔を出し、頭である方向を指し示す。

 そちらを見ると大き目な店があり、そこにはバイクなどが展示されているのが見えた。

 

「ん? バイクが見たいのか?」

『ガウ!』

「同じロボットだから興味があるのかな?」

 

 こくり、バッグの中で頷くシロ。

 さすがにあれは買えないけど、見るだけなら大丈夫そうだな。

 

「かっつん、免許持ってないよね?」

「当たり前だろ。記憶喪失だぞ」

「自信満々で言うことじゃないよね」

 

 でもシロが見たいっていうならな。

 もしかしたら将来的に乗るかもしれないし、男心に興味がないわけじゃない。

 シロが外を見れるようにバッグの口を少し開けて店へと入る。

 一風違った空気のある店内に呑まれそうになりながら、展示されているバイクを眺めていく。

 

「やべぇ高い」

「非売品もあるみたいだし、すごいお店に入っちゃったね」

 

 どれも軽く何百万もするやつだ。

 ま、まあ、どうせ俺は買わないし?

 冷やかしにきただけだから?

 

『ガオ!』

「ん? ここか?」

 

 すると、鞄の中にいるシロが、小さく一鳴きする。

 その声に足を止めると、俺の前には一台のバイクが置かれていた。

 

「CBR1000RR……? おお、かっこいい……」

「見た目がシャープだねー」

 

 黒と流線型のボディ。

 まさにライダーとバイクの一体化を突き詰めたシンプルかつ大胆なデザインに目を奪われる。

 これも非売品。

 展示用のバイクってことか。

 

『ガウ』

 

 ひょこり、とカバンから小さな頭を出したシロが、黄色い目からなにかを放出する。

 それは、バイクの下から上までをスキャンすると、もう用はなくなったとばかりにカバンの奥へと引っ込んだ。

 

「シロ、今、なにかスキャンしなかった?」

『ガーゥ』

「……まあ、いっか」

 

 別に盗むとかしてないし大丈夫だろう。

 ……大丈夫だよな? なにか影響を与えることしてないよな?

 ちょっとだけ不安になりながら、姉さんと一緒に一通りバイクを見てから店を出る。

 

「結局、見てみたいだけだったのかな?」

「分からない。まあ、シロは結構大人びた一面あるからね」

「……そうなの?」

「ああ」

 

 戦いの最中に凛々しい声でアドバイスしてきてくれるし。

 普段がのんびりしているし、今は鞄の中でお腹を上にして眠っているけど、年齢的には年上には思える。

 

「さあ、お腹空いてきたな」

「そうだねー。なに食べる?」

 

 たくさんの人で溢れた道を歩く。

 家族連れ、カップル、友達同士などなど、多くの笑顔で溢れている。

 その光景を見て、なぜか無性に嬉しくなる。

 俺はここまで感傷深い性格だったか? と思う一方で、その感情を受け入れる。

 

「———ッ」

 

 しかし、その時不意に頭の中に音が鳴る。

 リィィン、という鈴の鳴るような音。

 耳鳴りではない、頭に直接語り掛けてくるようなソレに思わず顔を顰める。

 

「かっつん、どうしたの?」

「いや、頭になにか音が……」

 

――来たぞ

 

「ッ!?」

 

 シロの声が頭に響く。

 カバンを見れば、ちょうどシロがその口から顔を出していた。

 それと同時に、俺達からそう遠くはなれていない場所に光の柱が落ちる。

 

「な、なんだ……!?」

「あれは、もしかして……」

 

 光の柱の先は見えない。

 だが、その光が収まると、そちらにいた人達は恐怖の叫び声を挙げながら一様にして逆方向へ―――俺と姉さんのいる方向へと逃げ出していく。

 俺達も逃げようとしたが、それよりも早く人の波が俺と姉さんへとぶつかり、離れ離れになってしまう。

 

「かっつん!?」

「ハクア姉さん! ッ、駅前で!!」

 

 せめて合流する場所を口にしながら、人の波に呑まれる。

 音が収まらない。

 それどころか、ずっと強くなっている。

 

――やるべきことは、分かっているはずだ

「俺に、戦えっていうのか……!」

 

 昨日みたいに!?

 命を懸けて、やれっていうのか!?

 独り言に近い言葉を口にしながら、通りの端の壁に押しやられると、少しの沈黙の後に再び声を投げかけられる。

 

――貴様以外に 誰が戦える?

 

「……ッ、でも、怖いんだ……」

 

 昨日みたいに戦わなければならないのか?

 命をかけて? 昨日はそうするしかなかったが、今は無理だ。

 

――戦うのではなく 守れ

 

「え?」

 

――怖いだろう。恐ろしいだろう

――だが、それでも……

 

 顔を上げ、光が落ちた先を見る。

 人の波の先にいるのは、長身の人ではないなにか。

 異形の姿をしたそいつは、機械と生物を合体させたような奇怪な姿をしており、正体不明な言語を吐き出しながらその手に持った大剣を振り回している。

 

――家族が 大切なのだろう?

 

 手に力が籠る。

 

――何も失いたくないのだろう?

 

 震えた足で立ち上がる。

 

――ならば立ち上がれ

――貴様にしか できないことだ

 

「……ああ、その通りだ」

 

 ここで尻込みなんかしていられない。

 あれは敵だ。

 頭に訴えかける音が、本能がそう伝えている。

 

「シロ、行くぞ」

『ガオ!!』

 

 カバンから飛び出したシロを掴み、バックルへと変形させ人混みへと入る。

 光と共に腰にベルトが巻き付かれながら、真っすぐ人の波に逆らい、進んでいく。

 すれ違う人全員が、俺の顔を見ている場合じゃない。

 それ以上に、あの、この先にいる何かが恐ろしいんだ。

 

LUPUS(ルプス) DRIVER(ドライバー)!!!!』

 

 バックルを差し込み、獣の唸り声と音楽を合わせた待機音が鳴り響く。

 軽く深呼吸をした後に、俺はバックルを叩く。

 

「変身……!」

FIGHT(ファイト) FOR(フォァ) RIGHT(ライト)!!』

 

 俺の身体が光に包まれたことで周囲の人も異変に気付き、その足を止める。

 その時には既に俺の顔、全身は黒のアンダースーツに包まれ、空間に形成された白いアーマーが連続して装着されていく。

 

SAVE(セーブ) FORM(フォーム)!!! COMPLETE(コンプリート)……』

 

 変身を完了させ、光の柱が落ちた場所へと辿り着く。

 周囲で逃げ惑うだけだった人々はその足を止め、呆然となにかを呟いている。

 

「もしかして……」

「嘘……」

「来てくれた……!」

 

 その声を気にしている余裕のない俺の視線の先には、大きな生物的な意匠をこらした剣を持つ角の生えた怪人がそこにいた。

 サイボーグと言うべきか、身体の半分を機械で構成されたそいつは、俺を見るなりその頬を歪に歪めた。

 

OMAEWO KOROSEBA JYORETUGA AGARU

 

 何を言っているか理解できない。

 ただ、その剣の切っ先を向けてきていることから、敵なのは理解できた。

 

「早く、逃げてください」

「え?」

「ここは俺に任せて、皆さんは逃げてください」

 

 静かな俺の言葉にざわつきを見せる人々。

 そりゃ呆然とするよな、と自嘲気味に笑いながら俺は空気を大きく吸って後ろに振り向きながら叫ぶ。

 

「早くッッ!!」

 

 その大声に我に返った何人かがその場にいる人々に逃げるように促す。

 後ろが動き出したことを音で確認した俺は、目の前のサイボーグ怪人と戦う決意を固めながら前へと歩み出す。

 

「シロ、武器」

『LUPUS DAGGER!!』

 

 手にダガーを握りしめる。

 サイボーグ怪人は、肩に大剣を担ぎながらこちらでも分かるような笑みを浮かべる。

 

seisyoujyoretu458i arugosu zakaru da

 

 名乗りでも上げたのだろうか。

 だが、地球の言葉とすら思えない言葉は、俺には届かない。

 

nanda yowasoudana omae

「誰も殺させない」

hagotaega aruto iina

「俺が、お前を倒す」

 

 この俺の出せる力を以て。

 瞬間、前触れもなく怪人の振るった大剣が迫る。

 それを最小限の挙動で避け、逆手に握りしめたダガーをその腹部へ突き刺す。

 

「ッ!?」

「……」

 

 戻した大剣の横薙ぎをダガーを盾にさせ、後ろに跳びながら受け止める。

 衝撃を緩和しているのに通る衝撃に驚きつつ、後転しながら立ち上がり、再度突撃を試みる。

 

hun!!」

 

 再度、横薙ぎに振るわれる大剣。

 侮られているのか? その場で軽く跳躍し、大剣の刃を足場にして奴の頭上を越えて跳躍した俺は、そのまま奴の首の後ろにダガーで斬りつける。

 

gaaaa!?」

 

 動きを最小限に。

 最短距離で相手に攻撃を届かせる。

 首を押さえ、半狂乱になり剣を振り回す奴の姿をみて頭の中で相手の挙動を記憶し、間合を把握する。

 

「……」

raaa!」

 

 腕の力はこちらが下、体格差もある。

 だけど、こっちの方が小さく小回りも利く!

 懐に入りこみ足を切り裂き、バランスを崩させ、今度は空いた脇腹に深くダガーを突き刺し、そのまま連続で三度ほど突き刺す。

 どうやら生身の部分ではなく機械だったようで独特のスパーク音を響かせる。

 相手の膝を蹴り砕きながら、相手の生身がどれほどかを観察する。

 

ooooo!!」

 

 すると、奴が機械に包まれた腕をこちらに向けようとする。

 ジャギン! となんらかの筒状の兵器へと変形する腕を目視してから、踏み込みと共に側面からダガーを突き刺す。

 

「その腕もなにか仕掛けがあるな?」

「!?」

 

 突き刺したまま、肩の部分までを切り裂く。

 さらに近距離からの回し蹴りを叩き込み、サイボーグ怪人の巨躯を後ろへと蹴り飛ばす。

 めぎぃ、という音と共に、きりもみ回転しながら成すすべなく地面へ叩きつけられる怪人に、軽く息を吐きだす。

 

「……思ったより、戦えているな」

 

 やはり昨日のアドバイスが効いているのだろう。

 でなくちゃ、俺がこんなに戦えているはずがないからな。

 

「よし、止めだ」

 

 バックルに手を当て必殺技を発動させようとしたその時、起き上がったサイボーグ怪人の胸の部分がぱかり、と開く。

 その中から覗いたのは、九つの円筒型の何か。

 それがミサイルだと理解した直後に、奴は激怒の表情のまま無造作にそれを放った。

 

「ッ、こんなもの!」

 

 誘導式ではないのか、迫る三つのミサイルを切り裂き無効化させる。

 これで終わり――、そう思った直後に俺のいる場所の近くから子供の泣き声と、他のミサイルの音を捉える。

 そちらを見れば、電柱の影に隠れて泣いている男の子と、そこへ落ちようとするミサイルが――、

 

「———ッ!」

 

 考えるよりも先にその場を飛び出し、男の子を庇うようにミサイルに背中を向ける。

 背中に走る衝撃と轟音。

 それを歯を食いしばりながら受け止めた俺は、視界で怯えている男の子に声をかける。

 

「……大丈夫?」

「……う、うん! ぁ、ありがとう!!」

 

 こくり、と頷く男の子の頭を撫で立ち上がる。

 背中への衝撃は少なくない。

 じわりとした痛みが広がるが、血は出ていないはず。

 

「……」

 

 振り向いた先には、なんとか立ち上がろうとしているサイボーグ怪人の姿。

 その目は恐怖に怯えてはいるが、未だにその手に持っている大剣からは手を離そうとはしていない。

 

ko konnatokorode owareruka!!」

「なにしにここに来たのか、分からないが!!」

 

DEADLY(デッドリィ)!! TYPE(タイプ) LUPUS(ルプス)!!』

 

 必殺技を発動させ、右手に持ちかえたダガーを構える。

 バックルから右手のダガーへとエネルギーが流れ込み、刃の黄色の光が赤い光を放ち始める。

 

aa aaaa!?」

 

 苦し紛れに放たれるエネルギー弾を全てダガーで切り裂く。

 赤い電撃が迸り、さらに切れ味と威力を増したダガーを強く握りしめ――、

 

「ここには、俺がいる!!」

BITING(バァイティング)! SLASH(スラァッシュ)!!』

 

 そのままサイボーグ怪人の胴体を切り裂き、両断させる。

 一瞬の静寂の後に、断末魔もなく爆発を引き起こす奴の姿を確認する。

 

「か、帰ってきたんだ!」

「黒騎士くん!!」

「ありがとう!!」

 

「!?」

 

 すると、建物にいた逃げ遅れた人達が一斉に喜びの声を上げる。

 それはいい。

 それはいいのだが、誰が黒騎士だって?

 

「お、俺は黒騎士って名前じゃない!? 誰かと勘違いしているんじゃないのか!?」

 

「そんなこと言うあたり黒騎士くんじゃん!」

「ひねくれ具合と反応が同じ!」

 

 どういう認識されているんだ黒騎士って。

 俺は素直だから全然当てはまらないし、そもそも違う。

 この状況に困っていると、不意に空に大きな影が横切るのが見える。

 それは、大きなヘリコプターに似た乗り物であり、側面にジャスティスなんちゃらとかいう三色のロゴマークが貼られている。

 

「な、なんだかよく分からないけど、逃げよう!!」

 

 予想より大事になってきたので全力で逃走する。

 人々を守る決意を固めたはいいが、自分の正体がバレていいとは思っていない。

 なので俺はここらでドロンさせていただく!!

 

「待って!! 貴方に話が―――」

 

 上のヘリコプターからそんな声が聞こえたが、俺はそれを無視してその場からの逃走を図るのであった。

 まずは変身を解いて、姉さんと合流しなくちゃな!!

 


 

 変身を解くのに一時間くらい時間がかかった。

 もうどこに行っても見つかるし、逃げられないから一か八か変身を解いた後野次馬に扮することで、なんとか逃走に成功した俺は、そのまま急いでハクア姉さんとの合流場所に決めていた駅へと辿り着く。

 人で溢れたそこを懸命に探していると、街案内の看板の近くで体育座りをして座っている姉さんの姿を発見する。

 特徴的な白い髪ですぐに分かった俺は、急いで彼女に駆け寄る。

 

「姉さん!」

「か、かっつん……」

 

 俺の顔を見て安心したような表情になった彼女は、すぐにその表情を曇らせる。

 

「大丈夫、だった?」

「な、なんとかね。姉さんは怪我とかしてないよな?」

「怪我は、してない。あの後すぐに人混みから抜け出せたから」

「そっか、よかった……」

 

 心底安堵する俺に姉さんは何か言いたげな様子を見せる。

 きっと、怖い体験だったはずだ。

 俺とは違って、姉さんにとってああいう存在を間近で見るのは初めてだから怖くなってもしょうがない。

 

「ハクア姉さん、その……」

「ううん、帰ろう。私、疲れちゃった」

「……そうだね。帰りに夕飯の食材でも買っていこうか」

 

 ぎこちなく笑った姉さんは、俺の言葉に頷いてくれる。

 人で溢れかえる駅を歩く。

 周囲は妙な熱気に包まれてはいるが、この場を去る俺達にとっては関係のないことだ。

 

「やっぱり、駄目……なのかな」

「ん?」

「ううん、なんでもない」

 

 思いつめた様子の姉さん。

 そんな彼女を横目に見ながら、俺は迷う。

 俺は、昨日と今日、命がけの戦いを行った。

 一つ間違えば、自分の周りも命を落としかけない戦いだ。

 

「……明かす、べきか」

 

 いつまでも隠し通していられることじゃない。

 なら、姉さんが気付く前に俺から明かすべきだな。 

 




躊躇する主人公を叱咤する謎の声。
戦いのアドバイスもしてくれるし、まるでエボルトみたいだぁ頼れるお師匠さんですね。

今回現れたサイボーグ怪人の名前はアルゴス・ザカルさん。
強さ的にはベガよりも弱い宇宙人で、星将序列は458位となります。
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