追加戦士になりたくない黒騎士くん   作:クロカタ

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前の掲示板回と一緒に出せばよかったと今更後悔。

初の社長視点となります。


焼肉と再会(レイマ視点)

 私、金崎令馬は宇宙人である。

 力こそが全て、そのような理屈がまかり通る組織で科学者をしていた私は、組織が行っている残虐極まりない所業と、組織の頂点に立つ者との相対により、脱走者として逃げ出すことを決意した。

 持ち出すことのできたコアは二つだけ。

 一つは、プロトスーツに使われたもの。

 もう一つは、ジャスティススーツに使われたものだ。

 それらを持って私は地球という辺境の惑星へと潜り込み、密かに組織に対抗するスーツを作っていた。

 外宇宙の脅威とこの私が宇宙人だということは、既に政府に説明しており、友好な関係を築くことができた。

 それから、準備を整えオメガの作り出した怪人を相手取り、来るべき侵略者たちとの戦いに備えていたわけだが―――、

 

「想定通りにいかないものだ」

 

 侵略者はやってきた。

 しかし、予想を超えてアホ丸出し連中がやってきたことに驚きながらも、その結果カツミ君が行方不明という事態が生じた。

 まさか記憶喪失になっているとは思わなかった……。

 いや、今はそれよりも先日の戦いからレッドがものすごくウザい方が問題だった。

 

『えへへ~、やっぱりカツミ君は分かってるよねぇ。私の色だなんて』

 

 本当にうざいことこの上なかった。

 イエローとブルーの殺気にも似た視線を向けられながら、頬に手を当てていやんいやんしてる奴は、どのような言葉を投げかけても意味はなさなかった。

 

『え、羨ましいの?』

 

 無敵かこいつってくらいに無敵だった。

 そして、果てしなく鬱陶しかった。

 

「さて、と」

 

 現在私は秘密裏に会社を抜け出して、ある場所にやってきていた。

 丈の長いコートで身分を隠し、顔を上げた私の視界に映りこんだのは、二文字の漢字であった。

 

焼肉

 

「ここだな」

 

 私は焼き肉を食いにきたのだ。

 地球の飯は素晴らしい。

 宇宙の半生(はんなま)のゲテモノ生物よりも遥かに美味い。

 現在、作業室では死んだように眠るスタッフたちがいるが、そんな彼らを出し抜き一人だけで私は焼き肉を食べる。

 

「フッ、部下を出し抜いて食う飯は美味い……」

 

 誰にも邪魔させない。

 誰が、今の私を邪魔できるというのか。

 ネクタイを緩めながら、扉を開き中へ足を踏み入れる。

 従業員に案内され一人用のテーブルへと案内された私はコートを脱いだ後に、メニューとにらめっこをする。

 

「いいの? 焼肉で」

「いいよいいよー。それで許すから、一緒に食べようよ」

「まあ、ハクア姉さんがそれでいいなら」

「~♪」

 

 不意に目の前に二人の男女が横切る。

 聞き覚えのありすぎる声に思わず顔を上げるが、既に二人は奥の座敷席の方へ行ってしまった。

 

「いや、まさかな。そんなはずがない」

 

 疲れているのだろう。

 このような場所にカツミ君がいるとは思えん。

 それこそ、天文学的な数値と言えるだろう。

 今はそれよりも注文だ。

 宇宙人でも腹が空くのだ、腹が空いた私は何をするか分からん。

 

「あ、すみませーん」

 

 店員さんを呼び注文をする。

 テーブルに置かれた水を一口飲み、ほっと一息つく。

 

「……記憶喪失か」

 

 カツミ君が記憶喪失なことは確実だろう。

 彼は恐らく、宇宙船から本拠地へと転移したはずだ。

 そこで、彼の身になにかが起こった。

 

「ルプスドライバー……」

 

 プロトスーツと同じエナジーコア。

 姉妹とも呼ばれるそれと見事適応した彼の戦闘力は、私が理想とする次世代プロトスーツ『TYPE1(タイプワン)』に迫る性能を見せた。

 無から有へ。

 0から1へ。

 進化そのものの名を冠する新スーツと比べ、能力の特異性ではあちらが上回るが、それ以外の部分ではきっと異なるだろう。

 なにせ、カツミ君が使うことを想定しているからな。

 まさしく、なにが起こるか予想がつかないスーツになるはず。

 

「……」

 

 私はあえて政府にもジャスティスクルセイダーとスタッフたちにも隠していることがある。

 それは、相手がその気になれば簡単に惑星を破壊することができ、人類を白紙化できるということだ。

 手を下さずともそれが可能。

 本来なら、そうなるはずだった。

 だが、どういうわけか、相手は段階的に序列を上げながら星将を投入してきている。

 

「なにか、作為的なものを感じてしまうな」

 

 黒騎士、否、白騎士を倒せば星将序列が上がる。

 それを許すのは組織の頂点に立つ彼女のみ。

 もしや、彼女がカツミ君に目をつけた? 可能性はないとは言えない。

 時空に干渉する超越存在が、種族的にも劣る地球人に目をつける理由としては、カツミ君の特異性とその常軌を逸した精神力が考えられる。

 

「……ま、まっさかぁ、ないない……うんうん」

 

 さすがにカツミ君でもあの怪物に気に入られるような行動はしていないだろう。

 頭に浮かんだ考えを否定しながら、もう一度手元の水を口に含む。

 

「む?」

 

 すると私の前を一人の少女が横切る。

 特徴的な白い髪は忘れるはずもない、元部下の姿を見つけた私は思わず声をかけてしまう。

 

「白川君?」

「!? しゃ、社長、どうしてここに……!?」

 

 なぜかものすごく驚かれてしまった。

 いや、当然だ。

 私は社長だからな。

 

「飯を食いに来ているからに決まっているだろう」

「……一人焼肉?」

「おい、なんだその憐れな人を見る目は。君も一人じゃ――」

 

「ハクア姉さーん、そこで立ち止まってどうしたんだー?」

 

「んひっ!?」

「ねえさん……?」

 

 変な声を出して肩を震わせる白川君と、座敷から聞こえてくる少年の声。

 男連れ!? いや、姉さん!? だとすれば弟か……。

 

「白川君……姉弟プレイでもしているのか?」

「ッ!? あ、ああ、あんた頭おかしいんじゃないかな……!?」

「フッ、冗談だ。君も弟くらいはいてもおかしくはない」

 

 あくまで私も彼女もプライベート。

 お互いにそこまで踏み込む必要もないし、そもそも私の思考は焼き肉一色なのでそちらの思考に割くリソースは既に残されてはいなぁい……!

 だがしかし、白川君の弟君か。

 

「どれ、元上司としてあいさつでも」

「い、いいんです! 私の弟、人見知りなんで!! 社長を見たら吐きます!!」

「それは失礼ではないか……?」

 

 泣いちゃうぞ……?

 変態と罵られたことは数あるが、そういう生々しい感じのことを言われると普通にショックである。

 

「で、では私はこれで!」

「あ、ああ」

 

 そそくさとその場を離れていく白川君。

 やはり元職場の上司とあって気まずいものもあったのだろう。

 ……もしかして嫌われていたのか?

 もしかして、カツミ君にも実は煙たがられていて、内心でウザいと思われていた!?

 

「タン塩、カルビ、ライスのセットです」

「あ……ありがとうございます」

 

 そんな思考に陥っているうちに頼んだものが来てくれたようだ。

 いただきます、そう言葉にして早速タン塩を焼いていくと、不意に懐にいれてある端末が振動を鳴らす。

 

「……なんだ。げ……」

 

 開発部の大森くんからだ。

 パソコンの前で気絶したように眠る彼女からの連絡に私は嫌な予感を抱く。

 もしかすると不測の事態かもしれない。

 ため息を零した後に応答する。

 

「レイマだ。どうした?」

『主任、今どこにいるんですか?』

「社長室だが?」

 

 息をするように嘘を吐き出す。

 すると不気味な沈黙の後にカタカタと端末を操作する音のようなものが聞こえる。

 

『嘘ですよね?』

「……。嘘じゃないぞ」

『呼吸音から貴方が嘘をついていることは分かっております。そしてその環境音、焼肉ですね?』

「ヒェ……」

 

 リアルタイムでスキャンをかけてきただと……!?

 なんという技術と才能の無駄遣いだ……! 気のせいだろうか、大森くんの周囲で呪詛のような声が聞こえる。

 それが開発チームのメンバーの声と気付き、SAN値がゴリッと削れるが、それでも私は気丈に立ち向かう。

 

『まさか、一人で勝手に場を抜け出して一人焼肉とは、いいご身分ですねぇ……!』

「しゃ、社長だからな」

『フフフ』

「ははは」

 

 互いに笑ってない笑い声をあげる。

 じわり、と額に汗が滲む。

 な、なぜ地球人は精神的に追い詰められると恐ろしさが増すのだろうか。

 普通、弱るのではないか? 死地に活路を見出す、これがサムライ……?

 

『戻ったら覚悟しておけよ。開発チーム一同、貴方の帰りを待つ』

「アッ」

 

 底冷えするような呟きの後にブツリと消える連絡。

 暫しの沈黙。

 一度目を瞑った私は、覚悟を決めながら傍らの箸を掴む。

 

「よし、食べるか!」

 

 帰ってからのことは帰ってから考えよう。

 私は自身の精神を保つために先ほどの通信のことを忘れることにするのだった。




プロトスーツの次世代型は「TYPE1」となりました。

専門以外は基本ポンコツな社長。
シグマちゃんはカツキ君と割り勘で焼肉を楽しみました。

もしかしたら、本日中にあと一話更新できるかもしれません。
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