途中、注釈をいれましたので見ていただければ、より楽しんでいただけると思います。
どうやら俺は精神面がどこか病んでしまっているらしい。
自覚はまったくないのだが、自爆後の自分の取り乱しようとか、無意識に口から飛び出してしまった言葉を考えると、あながち間違いではないのかもしれないと思ってしまった。
「だからといって、本当に受けさせるとかここの奴らはお人よしなのか……絶対に、俺とは相いれないな」
頭を抱えながらテーブルの上に置かれている用紙を見る。
俺の担当医を名乗る女性から渡されたアンケートなのだが、これがまた曲者なのだ。
「あの人、どう見てもレッド達や俺と同年代だよな」
すっげぇ怪しいんだけど。
いや、なにが怪しいのか分からないんだけど。
「……」
無意識に心を許してしまいそうな感じがする。
もちろん、俺は未だに誰も心を開いていないし、開くつもりもないので絆されたりはしない。
今回、貴方の精神状態を調査するため紙媒体でのアンケートを行うことが決定しました。
質問にできるだけ正直に答えるようにお願いしますが、気分を害された場合や、質問の意図が理解できないようであれば無記入でも構いません。
アンケートの結果は、担当医である
Q1.貴方は今の生活に不満がある。
□はい □いいえ
Q2.ジャスティスクルセイダーは貴方にとってどのような存在か? 以下の空欄にご記入ください
Q3.貴方の言うワルモノとはどのようなものを指すのですか? 以下の空欄にご記入ください。
Q4.プロトスーツを着用した直後、なにか精神や身体に異常はありましたか?
□はい □いいえ
Q5.Q4にて“はい”と答えた場合にのみお答えください。
具体的にはどのような異常が感じられましたか?
(例:苛立ち、暴力的感情に支配される、など)
Q6.あなたが戦ってきた“オメガ”以外の最も強かった怪人はなんですか?(複数可)
Q7. ジャスティスクルセイダー以外の組織からの勧誘、接触などはありましたか?
□はい □いいえ
Q8.Q7にて“はい”と答えた場合にのみお答えください。
どのような組織ですか? 分からなければ特徴などを空欄にご記入をお願いします。
Q9.貴方の好きな食べ物はなんですか?
Q10.貴方の好きな本はなんですか?(ジャンルのみでも可)
Q11.ジャスティスクルセイダーのメンバーの中で誰が最も好印象ですか?
□レッド □ブルー □イエロー
Q12.貴方はジャスティスクルセイダーに入りたいと思いますか?
□はい □YES
以上、ご協力ありがとうございました。
次の問診にて今回の診断結果を参考にさせていただきたいと思います。
「ん……?」
はたり、と手に持った紙を一度机に置き、眉間を揉む。
おかしいな、見間違いかな?
今明らかにメンタルとかそういうのとは関係のない異物な質問が紛れ込んでいたんだけど。
気のせいか、と思いもう一度目を通しても―――その内容は現実のまま変わらなかった。
「なんか、後半おかしくない……? ねえ、おかしいよな? おい! 絶対これ途中でレッドとかの手が入ったろ!! おい白川ァ!!」
前半は普通だったよ?
まあ、相手からしたら気になるのも分かる。
このアンケートを作った張本人、今部屋のカメラからこちらを伺っているであろう白川を呼び出す。
すると、すぐにスピーカーから明るい少女の声が響いてくる。
『はぁい、カッツん! アンケートにはちゃんと答えてね!』
「誰がかっつんだ!? なんかおかしいだろ、これ!」
『おかしくないわー。心理テストなの』
そうかぁ、心理テストなんだ。
だったら、しょうがなくないだろたわけが……ッ!
「こんなのが心理テスト……?」
『そうよ、これも意味のある心理テストよー。だから正直に答えてくれないと駄目ね』
「心理テストってだけで騙されると思うなよ……? 俺、そこまでバカじゃないぞ?」
なんだかんだで独学でスーツの修理とかしてたし。
いろんなところで脳筋呼ばわりされてたけど、別に殴った方が手っ取り早いから別に頭が悪いってわけじゃないからな?
『答えたくないなら無記入で構わないわよー』
「……ハッ、ならそうさせてもら―――」
『かっつんは、恥ずかしくてかけないようだし』
……脳裏に浮かぶは、あのジャスティス連中。
空欄の目立つアンケートを覗き込み、一様に悪意の欠片のない笑顔を向けてくる奴らの顔。
「えぇ、あんなに邪険にしてたのに照れてるんだぁ」
「まあ、そんなにいいたくないなら? 私も? 別に構わへんけどね? えへへ」
「まったくもって素直じゃない。でもらしいといえば、らしい」
こんな恥辱耐えられない。
ただでさえ、俺の立場はかたなしなのにこれ以上俺の尊厳を削らせて溜まるか……!
「できらぁ!!」
『頑張ってね~』
例え、想像でも奴らに俺が照れているという憶測すら抱かせてはならない……!
白川の声を無視しペンを取った俺は、アンケートに書き込み始める。
「今の生活? 立場には不満だらけだが、この部屋の生活に関してはない」
よって“いいえ”!
「ジャスティスクルセイダー!? 対等に戦える好敵手!!」
それ以外の感情は多分ない!
「俺にとってのワルモノ……」
正直に書く必要はない。
嘘でもいい、のだが、ここは少し真面目に書いておくべきだろう。
いつまでも俺のことを勘違いされては困るからな。
中々の文を書き、次へと移る。
プロトスーツを着た時に異常があったか?
……。
いや、特にないな。
その後普通にスーパーに買い物もいってきたし、それからも全然不調はない。
「強かった怪人か……オメガ以外となると……」
怪人たちの大ボス、オメガ。
やつは日本列島そのものを宇宙へと浮き上がらせ、外宇宙へ進出しようとした怪人を生み出す怪人。
奴がなにを思ってそのようなことをしようとしたのかは理解できないが、そのバカげた計画を未然に防いだ今となっては分かりようもない。
……それ以外となると。
「えぇと、際限なく電気を食べるナメクジ怪人。あいつと戦った時は死ぬかと思ったな」
まあ、ある意味で俺の悪徳が冴えわたったというべきか。
夜中、都心の発電所付近で電気食ってる奴を見つけて戦闘になっちゃったんだよなぁ。
つーか、目撃者は殺す! 的ないきおいで襲い掛かってきたので応戦したわけだが、マジで強かった。
「まさか貯えた電撃の分だけ肉体を再生する上に、パワーも底なしだったもんなぁ」
ちょうど発電所から電気をかなり吸い上げた状態だったので相手のコンディションはほぼほぼマックスだった。
幸い、スーツのアーマーは電気を通さない絶縁体仕様だったので―――、
『治るんなら、電気なくなるまで殴り続ければ勝つじゃねーか!!』
『ぴぎぃぃぃぃ!?』
とりあえず、倒すまで殴り続けた。
んで、電気をすっからかんにして真っ黒な姿になった怪人を追い詰めたわけだが、奴はまた電気を蓄えようとしたのか、巨大化しながら発電所に突っ込んだ。
だが、俺に殴られ続けたせいか、身体が崩壊しかけていたナメクジ怪人は大量の電力に身体が耐え切れず―――そのまま破裂し、息絶えたのだ。
「……フッ、怪人の行動とはいえ、あの騒ぎで大規模な停電が起きたからな」
ある意味で俺と怪人、はじめてのコンビネーションの賜物といってもいい。
いや、本当に強かったな、ナメクジ怪人*1。
「まさしく、俺史上、最大最悪の悪事だぜ……」
怪人死んじゃったけど。
しかし、再生怪人としては破格の強さだったな。
マジでピンチだったし。
「あとは……実体のない幽霊怪人とか。超能力系は基本、遠距離じゃなけりゃ脅威じゃなかったしなぁ。あ、触れると強制的に笑わせてくるやつとかやばかったな。俺は笑えなかったけど」
まあ、ジャスティスクルセイダーが出る前に倒したやつらならこれくらいだろ。
……つーか、あいつらが襲ってくるから俺も満足に動けなかったし、本当に怪人って面倒な存在だったわ。
俺がこうなったのもあいつらのせいなんじゃね?
とりあえず、書ける名前を書いて次に移る。
「勧誘? ……あったな」
路地裏を駆けていると、見るからに怪しい真っ黒コートの男が話しかけてきたんだよな。
当時は怪しい宗教勧誘だと思って、無視したのだが今思えばあれがそうだったのかもしれない。
「
男が口ずさんでいたフレーズを思い出しながら、その特徴などなどを書き込んでいく。
まあ、こんなもの真面目にとられることはないだろうけどな。
俺もとらなかったし。
「さて、あとは軽い気持ちで書き込むか」
一度、背伸びをした俺はある意味で鬼門である質問へと意識を集中させる。
……本当に、なんで俺こんなところでアンケートなんてやっているんだろうな。
今回、貴方の精神状態を調査するため紙媒体でのアンケートを行うことが決定しました。
質問にできるだけ正直に答えるようにお願いしますが、気分を害された場合や、質問の意図が理解できないようであれば無記入でも構いません。
アンケートの結果は、担当医である
Q1.貴方は今の生活に不満がある。(はい、か、いいえ、に◎をつけてください)
□はい ◎いいえ
Q2.ジャスティスクルセイダーは貴方にとってどのような存在か? 以下の空欄にご記入ください
あの戦いで負けたことに関しては、思うところはなにもない。
Q3.貴方の言うワルモノとはどのようなものを指すのですか? 以下の空欄にご記入ください。
少なくとも、俺にとっては今生きている現実に自由なんてものはなかったから、黒騎士になった。 後悔はしていない。
Q4.プロトスーツを着用した直後、なにか精神や身体に異常はありませんでしたか?
□はい ◎いいえ
Q5.Q4にて“はい”と答えた場合にのみお答えください。
具体的にはどのような異常が感じられましたか?
(例:苛立ち、暴力的感情に支配される、など)
Q6.あなたが戦ってきた“オメガ”以外の最も強かった怪人はなんですか?(複数可)
電気ナメクジ怪人、幽霊怪人、マグマ怪人、笑わせ怪人、なんかアルファとか名乗ってた怪人
Q7. ジャスティスクルセイダー以外の組織からの勧誘、接触などはありましたか?
◎はい □いいえ
Q8.Q7にて“はい”と答えた場合にのみお答えください。
どのような組織ですか? 分からなければ特徴などをお願いします。
黒いコートを着た怪しい男。 邪悪は地の底から、正義は宇宙から、と謎の言葉を呟いていた。
Q9.貴方の好きな食べ物はなんですか?
Q10.貴方の好きな本はなんですか?(ジャンルのみでも可)
Q11.ジャスティスクルセイダーのメンバーの中で誰が最も好印象ですか?
□レッド □ブルー □イエロー ◎特になし!!
Q12.貴方はジャスティスクルセイダーに入りたいと思いますか?
□はい □YES ◎いいえ!!
以上、ご協力ありがとうございました。
次の問診にて今回の診断結果を参考にさせていただきたいと思います。
後日、いつもの如く勉強したり筋トレしたりと退屈な時間を過ごしている俺の元に、最早馴染みの顔となりつつあるレッド達が部屋へとやってきた。
「あ、カツミ君、今日たまたまハンバーグ持って来たんだけど、食べる?」
おもむろにお皿にのせられたハンバーグを持ってくるレッド。
「え、マジ嘘、奇遇やわぁー。私もなぜかカレー持って来たから、食べてーな」
大きな鍋を担いで(!?)カレーを持ってくるイエロー。
「ちょうど私も推理ものの本を持って来たから食べて?」
そして、前二人につられて本を食わせようとしてくるブルー。
ある意味で予想通りで予想外の行動をしてくるジャスティス共に、これ以上になく俺は頬を引き攣らせる。
「分かってたけど、お前ら露骨すぎだろぉ!」
もっとさりげなく隠す努力をしてくれよ!?
なんか、もう別の意味で怖くなってきたんだけど!?
こういう方式も色々とできそうで楽しい……。
テスト形式にすればめちゃイケの抜き打ちテスト回のようなこともできそうですね。
エネルギー供給兼貯蔵役を担っていたオメガ産ガチャUR怪人のナマコデンキ。
彼があまりにも早い時期に黒騎士くんに爆発四散されたことで、地味に怪人サイドが大打撃を受けたという意味不明な事態が起こってしまいました。
そら、怪人に目の敵にされるわ……(白目)