追加戦士になりたくない黒騎士くん   作:クロカタ

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前回からの続きとなります。
視点は、ハクアです。


真実と介入(ハクア視点)

 かっつんが戦いに向かった後はいつも不安だ。

 彼が帰ってこなかったらどうしよう。

 彼が怪我をしたらどうしよう。

 彼の記憶が戻ってしまったら、どうしよう。

 そんな考えばかりが頭の中をぐるぐると回り他のことに手がつけられなくなる。

 なぜ、彼が戦わなければならないのだろうか。

 彼は、黒騎士として十分に戦ったはずなのに、記憶を失うくらいにまでに戦った……はずなのに。

 

『怪人が来ると、音が聞こえるんだ。俺を呼ぶみたいに』

 

 普通じゃない。

 少なくとも以前までの彼にそんな能力はなかったし、黒騎士時代の記録を思い出してもそんなことはなかったはずだ。

 これではまるで、なにか見えない存在が彼を戦いに駆り立てているようではないか。

 

「……はぁ」

 

 テーブルで頭を抱えたまま思わずため息を零してしまう。

 ……そろそろ、テレビをつければ彼が怪人と戦っていることを報道されている頃だろう。

 気休めにしかならないが、その姿を確認しよう。

 そう思い立ち上がろうとしたところで、ピンポーンと扉の方からインターホンの音が聞こえてくる。

 

「……誰かな?」

 

 配達かなにかかな?

 ついこの前日用品を頼んだ記憶があるのでもしかしてそれかもしれない。

 そう思い、手に持ったリモコンをテーブルに戻し、扉へと駆ける。

 

「はーい」

 

 チェーンをかけたまま扉を少し開ける。

 

「グッドアフタヌーン、白川君」

「……えっ」

 

 扉の隙間からヌゥ、と滑らかな動作で顔を見せたのはかつての私の職場の社長、金崎令馬であった。

 あまりにも予想外すぎる彼の登場に一瞬唖然とした私に、彼は静かな様子で声をかけてくる。

 

「用件は分かっているな?」

「……え、えぇと……はい」

 

 大人しくチェーンを外し、社長を招き入れる。

 しかし、彼一人かと思いきやもう一人、誰かがいることに気付く。

 黒い髪の、もんのすごい可愛い子だ。

 一瞬、誰かと思ったが目を合わせた瞬間、その雰囲気と自分と波長が合うような感覚でようやく目の前の少女が誰なのかを悟る。

 

「姉、さん」

「本当に、妹……なんだ」

 

 顔を見合わせお互いに無言になってしまう。

 かっつんの周りにこの子がいるのはなんとなく分かっていた。

 だけど、私には姉の姿に気付けるほどの力がなかったし、そういう挨拶程度で済ませるはずだった……けど、まさか、今日こんな形で顔を合わせることになるなんて思いもしなかった。

 

「「……」」

「おい、気まずい家族関係なのは理解しているが、早くいれてくれ」

 

 社長に促され、二人を中へと入れる。

 どうして?

 どうしてここに来た?

 どうやってバレた?

 そんな考えを頭に浮かべながら、コーヒーを淹れた私はお茶菓子と共にそれを社長と姉の前に差し出す。

 

「あ、え、姉さん、砂糖とミルクは?」

「じゃ、じゃあ、もらおうかな」

 

 気まずいなんてレベルじゃない。

 実の姉妹じゃないのは私もあっちもよく分かっているはずだ。

 

「では、遠慮なくいただこう」

 

 当の社長は驚くほどの空気の読めなさを発揮させながら、カステラを二口で食べる。

 そのままコーヒーで流し込んだ彼は、ほっと一息ついた後に居心地が悪いどころじゃない私に声をかけてくる。

 

「白川克樹。今の彼はそう名乗っているようだな」

「……うん」

「喫茶店サーサナス。そこでバイトをしており、客からの反応も上々。コーヒーとオムライスも美味しかった」

 

 さらっと食べに行っていることはスルーしてもいいのだろうか?

 姉さんも驚愕の視線を送っているのだが。

 

「そんな彼の姉を名乗る……白川伯阿。君の正体は何だ?」

「!」

 

 姉から私がただの人間ではないことを訊いたのだろう。

 ここまできてしまっては隠しても意味がない。

 

「私は、オメガが最後に生み出した生命体……シグマ」

「父が、君を?」

「貴女を再現するために作られた……人間でも怪人でもない、半端者さ。だから、本当の意味での姉妹じゃなくて……クローンの方が正しいかもしれない」

「私の、クローン」

 

 私の持つ能力についても話しておく。

 姉さんの持つ力ほど強くない、認識改変の力。

 

「なるほど、つまりは君にも微細な認識改変が備わり、この私すらも欺きジャスティスクルセイダーの本部に入りこんでいたということか」

「いや、社長には効かなかったから、単純に貴方が気付かなかっただ―――」

 

「この私すらも欺いたということか……!」

 

 認めたくないんだ……。

 まあ、この人スーツ開発とか会社経営やらなにやら忙しいってレベルじゃないだろうし。

 一社員をそこまで知るということはないのだろう。

 むしろ、名前を一人一人覚えていることの方がすごい。

 

「アカネ達は君達がここにいるのは知らないの?」

「ああ。彼女たちがここを知れば何をするか分からんからな。特にレッド」

「特にレッドは」

 

 社長と姉さんにここまで言われるあたりなぁ。

 すると、社長は目の前にあるテレビのリモコンを手に取る。

 

「少しテレビをつけてもいいかな? そろそろジャスティスクルセイダーの新ビークルによる怪人攻略戦が始まっている頃だろう」

「あ、ああ、どうぞ」

 

 社長がテレビにリモコンを向ける。

 するとテレビにニュースの生放送と思われる映像が流れる。

 

『このッ、角ナシのトカゲ野郎め!』

「雨が降りしきる悪天候で行われた一戦。雨雲を切り裂き天から現れた赤色の巨人は、宇宙からの侵略者に牙を剥くゥ!!」

 

『弱いぞォ!!』

「貴様の血は、このレッドの血化粧だ。そう主張するように腕を増やした侵略者へ猛攻を繰り出し続ける我らがヒーロー! あっ、今更ですが、幼いお子様には大変ショッキングな映像ですのご視聴をお控えください!!」

 

『そら、どうしたの! 立ち上がりなさい!!』

「フッハッ、どうした怪人、なぜ立ち上がらない! その程度で侵略者を名乗れるのか! 大きさで上回らなければ勝てないのか! まるでそう言わんばかりにレッドが……脳天に一撃ィィィ!!

「テレビはつけなくてもいいな。うん」

 

 執拗に顔面を殴り倒れたトリケラ怪人を蹴り飛ばす赤いロボットに、慣れたように実況しているレポーターという映像が映し出されたが、それもすぐに社長の手によって切られる。

 相変わらずあの番組だけ、他と違ってやってることがプロレス中継なんだよなぁ。

 

「大森君、レッドにいますぐ顔面破壊大帝ムーブはやめろと言え!! え、あれはレッドマン!? どちらでもいいよ! え、カツミ君がファングでジョーカーな、クロエボ!? すまない、宇宙語はさっぱりだ! 後で日本語で説明してもらおう!!」

 

 恐らく本部に通信をしていた彼がそれを切り、大きなため息をつく。

 気まずい沈黙が部屋を支配する。

 

「カツミが記憶喪失になってるのって、君のせいなの?」

「違う!」

 

 姉さんの言葉にやや感情的になりながら否定する。

 びくっ! と姉さんがびっくりしていることにやや申し訳なく思いながら、彼を見つけた時の状況を説明する。

 

「かっつんを見つけたときは、彼がいなくなって……私が会社をやめた後……だよ」

「ふむ、カツミ君を見つけて辞めたわけではないのだな?」

「辞めてなければ、君達の元に連れて行ったかもしれませんね。……でも、私も彼がいなくなったときは、その、消沈していましたし……いっそのこと、放浪の旅にでも出ようかなって……」

「失恋したOLみたいな自暴自棄っぷりだな」

 

 とんでもない偏見を口にしている社長を睨む気力もない。

 

「今、かっつんが使っている変身アイテムに意志があって、それにつれてこられて……気絶してる彼を見つけて、私が治療しました」

「ダスト……いや、ルプスドライバーか。それに見つかった場所というのは近辺で確認された雑木林の破壊痕がカツミ君が落下した形跡だろう」

 

 険しい表情で思考に耽る社長。

 

「……あの破壊はベガ達が襲撃した際に生じた破片によるものかと思えば、落ちた角度と破壊の威力からしておかしな点が見られていたが……うぅむ、やはり自力で戻ってきたということなのか……?」

「それは、私にも分かりません」

 

 あれほどの衝撃で落ちて生身で無事でいられるはずがない。

 なので、多分変身した状態で落ちてきたんだろうけど……。

 

「彼はどれほどの怪我を?」

「全身に打撲。それと……彼の身体に拳のような跡がいくつも刻みつけれていて」

「……拳だと? 男か? 女のものか?」

「大きさからして女性だと、思います」

「なっ―――!?」

 

 何かに思い至ったのか社長は顔を青ざめさせる。

 

「まさか、いや、ありえない。だが奴ならば彼をこの星に帰すことも容易だ。なぜ? まさか……そういうことなのか?」

「変態?」

「社長?」

「変態と社長をずらして言うのはやめろ……。このことについては、後に考える。……記憶喪失になったカツミ君は、最初から君を姉と認識していたのか?」

 

 するとさっきまで弱気な様子だった姉さんの目が鷹のように鋭くなる。

 ある意味で一番触れてほしくなかった質問をされてしまった私は、挙動不審になりながら視線を横に逸らす。

 

「わ、私は……」

「嘘は駄目だよ?」

「……うぅ」

 

 羞恥心に駆られ、顔が熱くなりながら言葉を絞り出す。

 

「私は、記憶喪失の彼に……自分が姉と名乗りました」

 

「いや、なんでだ」

「本当になんでなの?」

 

 当然の疑問に声が詰まる。

 だが、その答えを言葉に出すのは難しい。

 

「なぜカツミ君と姉弟プレイに興じていた? 君の趣味か?」

「訊き方おかしくない!? なんでいかがわしい言い方にするんですか!!」

「いかがわしいことをしていた疑いがあるからだ!!」

 

 そ、そそそ、そんなことは断じてしていない……!

 しかし、ここで正直に話さないとただでさえ姉を名乗った不審者だ。

 私は取り調べを受けている人のような心境になりながら、言葉を絞り出す。

 

「で、出来心だったんです……」

 

 余計に怪しくなってしまった……!

 だけど、続ける。

 

「わ、私、家族とかよく分かってなくて、父は私を生み出した後、牢屋に放ってそれ以降は会うこともなかったし……会おうと思った姉も、全然姿は見えなくて……」

「うっ……」

 

 家族というものは分からなかった。

 知識では知っているが、それだけだった。

 

「待て、オメガに生み出されたと言ったな? 君は何歳だ?」

「大体、生後十か月くらいだと……思います」

 

 落ち込みながらそう言葉にすると途端に社長と姉さんが気まずい顔になる。

 

「わ、わぁ、私、二歳と少しくらいだから年が近いね」

「あ、ああああ、安心しろ。私は1546歳だ。バランスは取れている」

 

 一番バランスを崩しているの貴方だと思うんだけど。

 しかし、先ほどとは違いものすごく可哀そうな子を見るような視線は、ちょっと耐えられない。

 

「その時、記憶喪失ならそのままでいいかもしれないって。……彼は、もう戦わなくていいと思ったから……」

「そうか、君はカツミ君の過去を知っていたな。嘘を吹き込むのは褒められたことではないが……彼の場合は、記憶喪失であった方が幸せなのかもしれない」

「……」

「……いや、これはどちらが正しいということではないか。記憶についてはカツミ君の意思に委ねられることだ」

 

 無言になる姉さんを横目で見た社長は首を横に振りながらそう言いなおす。

 

「本当は、かっつんを戦わせたくないんです……」

「では、なぜ彼は今……」

 

 私は今彼の身に起こっていることは社長と姉さんに話す。

 誰かに呼ばれるように、侵略者の接近を察知して向かって行ってしまうこと。

 時折、シロと名付けたバックルの声を聞き、会話をしていること。

 ぽつり、ぽつり、とそう言葉にしていく私に、彼は訝し気な顔をする。

 

「仮説は立てられる、が。最も手っ取り早い方法は彼の記憶を戻すことだ」

「……戻せるんですか?」

「アルファの認識改変を用いれば可能だ。そうだろう?」

「できるけど……カツミが許可してくれなきゃ無理だよ……?」

 

 姉さんの言葉に社長が頷く。

 

「そう、だからこそ、これは彼の意思に委ねなくてはいけない。記憶を戻すか、戻したくないか。難しい選択になるが……それを彼に問わなければならない」

 

 かっつんが記憶を取り戻す。

 そう考えると、猛烈な寒気を抱く。

 今日までの日々が彼にとって偽物だと気づいたら、どんな顔をされるのか。

 私が恨まれるのはいい。

 でも、なにより彼自身のことが心配だった。

 

「心配するな、白川君。アルファの認識改変ならばこの四カ月の記憶を失うわけではない。……まあ、記憶を失った彼には怒られるかもしれないが、君のことを嫌うほど心の狭い男ではない」

 

『ただいまー。姉さん、いる?』

 

「ッ」

「カツミの、声だ」

 

 掠れた声を漏らす姉さんと、肩を震わせる私。

 彼が帰ってきた。

 それは、彼の記憶が戻ることを意味している。

 その事実に打ちのめされそうになりながら、私はぎこちない笑顔を浮かべ、居間にやってきた彼を迎えた。

 

「お、おかえりぃ、かっつん……」

「ハクア姉さん、えっと……ただいま」

 

「はくあ? ねえさん? そういうものもアリか……

 

 小さい声で姉さんがそんな怖いことを呟いていたのは気付かないようにしておこう。

 


 

「なるほど。つまりそのアルファさんってのが俺達の義理の姉で、その保護者が金崎さんか」

 

 帰ってきたかっつんにはそのような形で説明した。

 彼の過去を知っている二人、そして記憶を戻す方法を知っている特別な職についていると。

 普通ならば信じられないが、変身やら侵略者やらで何が起こるかおかしくない現在を生きている彼にとって、怪しくは思いはすれどそこまで警戒されることはなかった。

 

「アルファ姉さんでいいよ」

「レイマでいい」

 

 驚くほどの自然さで姉呼びを要求する姉さんに戦慄する。

 そんな彼女にかっつんは目を丸くした後に、困ったように笑う。

 

「えぇと、アルファ姉さん? これで……いいかな? なんか照れくさいな……」

「……」

「おい、アルファ。ここでお前が駄目になってどうする……!」

 

 呆気なく撃沈した姉さんである。

 そんな彼女を見てため息をついた社長は、私の隣に座るかっつんと向き直り真剣な様子で話しかける。

 

「我々には君の記憶を戻す手段がある」

「……はい」

「君が必要とするならば、記憶を戻す前に君の正体、行ってきた情報などを開示する所存ではあるが――」

「受けます」

 

 迷いもなくそう言葉にした彼に思わず息が止まる。

 

「俺が記憶を失っていることで苦しんでいる人がいるかもしれない。それなら、俺は記憶を目覚めさせる方を選びます」

「いいのか? 君の過去は……」

「俺には、ハクア姉さんが、いますから。もしもの時は大丈夫です」

「——かっつん、あのね……!」

 

 顔を上げて自分が本当の姉ではないことを明かそうとした私だが、こちらを見た彼の目を見て言葉が出なくなる。

 黒い、強い意志の籠った瞳。

 ……ああ、気づいているんだ。

 その上で私を姉と呼んでくれていたのか。

 今更、そのことに気付き身体から力が抜ける。

 

「記憶を失っても、君の根底は変わらないか。……アルファ、頼む」

「うん、分かった」

 

 トリップから立ち直ったアルファが席を立ち、かっつんの元へと歩み寄る。

 彼女にかっつんが身体を向けると、ゆっくりと視線を合わせて彼の頭に手を添える。

 

「……カツ……キ、私の干渉を受け入れて」

「え?」

「頷いて」

「あ、ああ、受け入れる」

 

 アルファの認識改変が発動する。

 これで彼の記憶が元に戻る。

 少し前は恐怖でしかなかったが、今は違う想いで見れるような気がする。

 十数秒ほどの沈黙の後、アルファはやや焦りの混じった表情で彼の頭から手を離した。

 

「———できない……」

「なんだと」

「記憶を戻せないの……ッ! 誰かに、邪魔されて……!!」

「誰かだと!? それは一体―――」

 

 立ち上がった社長と私が取り乱すアルファに歩み寄ろうとすると、彼女は何を思ったのか先ほどから無言のかっつんに掴みかかったではないか。

 

「お前は、誰だ!! カツミの中で何をしている!!」

「アルファ、落ち着け!! え、悪霊とかそういうやつなのか!?」

「カツミになにをさせるつもりだ!! 答えろ!!」

 

 瞳に涙を浮かべてそう訴えるアルファに、彼は依然として俯いたまま反応を示さない。

 さすがにおかしいと気づき、私もかっつんに話しかけようとしたその時、音もなく動き出した彼の手がアルファの首を掴み、宙へと持ち上げた。

 

「う、うぁ……」

「かっつん!? なにやっているの!!」

「邪魔だ」

 

 首を掴まれ吊り上げられた姉さんが、突き飛ばされる。

 咄嗟に姉さんを受け止め、信じられない行動をしたかっつんを見上げ、言葉を失う。

 

「この星のアルファもまた特異な存在のようだ。些か興味を惹かれるが、この子ほどではないな」

 

 黒い瞳の彼じゃない、青色の目。

 普段のかっつんから想像できない、どこか妖艶さの伴う笑みを浮かべた彼はゆっくりと椅子から立ち上がる。

 

「今、とてもいいところなんだ。いずれ記憶は戻すが、それは今じゃない」

 

 彼ではない。

 別の誰かが、彼の身体を動かしている。

 その事実に私と姉さんは言葉を失うが、それ以上に驚愕していたのは社長であった。

 

「そんな、まさか……! 貴様が……彼の記憶を……!」

「大儀であった。星将序列元61位。悪魔の科学者ゴールディ。貴様の尽力により私は求めていた存在を見つけることができたよ」

『ガァゥ!!』

 

 青い瞳の彼にシロが牙を剥き出しにして飛び掛かる。

 そんなシロを片手で掴み上げた彼は、手になんらかの力を発動させると、それに合わせて腰にベルトが装着される。

 

「フッ、まあ、いい」

 

『DOMINATE……』

 

 おもむろにベルトにバックルを嵌め込むと、これまで聞いたことのない重々しい音声が鳴る。

 

WARNING(ワーニング)!! WARNING(ワーニング)!! WARNING(ワーニング)!!』

 

 アラートが鳴るが、それに構わずひとりでにバックルが作動し変身を始めさせる。

 彼の周りを黒い煙のようなものが溢れだし、その姿をどんどん包み込んでいく。

 

ENDLESS(エンドレス) RAGE(レイジ)!! WEAR(ウェアァ) DEATH(デス) WARRIOR(ウォーリアァ)!!』

 

「そんな、カツミ……」

「なんだその変身は……!?」

 

 禍々しい声と彼の身体は青色のボディスーツと仮面に包まれる。

 スーツにはまるで星空のような光に包まれていくが、それすらも煙に包まれ―――彼の姿ごと一瞬で消えてしまう。

 

EVIL(エビル) BLACK(ブラック)!!  HAZARD(ハザード)FORM(フォーム)!! 』

 

 次の瞬間には空間に突如として現れたワームホールと共に、真っ黒な禍々しい姿となった仮面の戦士が現れた。

 

POWER IS JUSTICE……

 

「なるほど、私だとこういう姿になるのか。くくく、面白い」

 

 最後の声と共に変身を終わらせた彼は、興味深げに自身の手を見るとくつくつと笑みを零した。

 しかし、おもむろに空中に手を翻すと、空間に黒い穴のようなものを作り出した。

 その先には、暗闇に包まれた空間と、明かりに照らされた玉座が存在しており―――その席には、目を閉じ愉悦の笑みを浮かべている青い肌の女性が座っていた。

 

「「「ッ」」」

 

 女性を目にした瞬間、私と姉さんは叩きつけられるように床に屈服させられた。

 唯一、社長だけが膝を突きながらも抗っているが、それも長くは続きそうにはない……!

 

「「褒美をとらす」」

 

 振り向いた彼が社長に言い放つ。

 その言葉に合わせ、奥の青肌の女の声も重なる。

 

「「私の名はルイン。この名、しかとその魂に刻みつけるといい」」

「待て! どこに連れていくつもりだ……!!」

 

 社長の怒声に怒ることもなく、上機嫌に彼―――否、彼女は答えた。

 

「「なに心配するな。すぐに帰してやろう。——少しばかり記憶を弄んだ後にな」」

 

 ワームホールへと足を踏み込み、彼は女性の元へと移動する。

 ルインと名乗った女が彼を迎えたところで、ワームホールは閉じられ、身体を押し潰そうとしていた重圧が消える。

 

「あ、ああ、カツミ……」

「かっつん……」

「まさか、万に一つもないと思っていたことが現実になるなんて……」

 

 彼が巻き込まれているなにかは、私達の想像を遥かに超える異常な事態だということを私は、この時嫌というほど理解させられてしまうのだった。




ハザードは出ないと言ったな、あれは嘘だ(ごめんなさい)
ラスボスさん専用フォームという謎のくくりで復活。

今回は社長関連でも情報が多く出ましたね。
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