追加戦士になりたくない黒騎士くん   作:クロカタ

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箸休め回となります。
前半はレッド視点。
後半が主人公視点となります。


今後の方針と新たな同居人

 私達が怪人と戦っている間、社長とアルファは白川ちゃんの自宅へと向かっていたらしい。

 シグマ、オメガに生み出された存在である白川ちゃん。

 彼女によって見つけられたカツミ君は、記憶喪失の弟として過ごしていたらしく、私達との共同戦線の後、マンションに帰った彼と社長とアルファが遭遇した。

 それから先に、彼の記憶を目覚めさせようとしたわけだが、そこで問題が生じてしまった。

 

「結局のところカツミ君はこちらに戻された。傷一つなくな」

 

「「「……」」」

 

「操作されていた記憶は、記憶を戻すやり取りについて。それ以外は特に変わりはなかった」

 

 ブリーフィングルームにいる私達は、社長が語った内容のあまりの情報量の多さに言葉を失うしかなかった。

 

「とりあえずその青い肌の人を斬ればいいの?」

「それで万事解決やな」

「私の先輩……」

「落ち着け、オプティマスブラッド、仁侠イエロー、似非後輩ブルー。敵はあまりにも強大すぎる。本来なら地球という星の生物を塵とすら認識しない超越存在だが……なにがどういうわけか……うぅむ」

 

 言い淀み腕を組む社長。

 なにを答えにするか迷っているようだ。

 

「恐らく、名もなき組織(アンノウン)の首領、ルインはこの地球という舞台の上でカツミ君を鍛えようとしている」

「は?」

「なんやて?」

 

 首を傾げる私ときらら。

 今まで段階的に強い宇宙人が攻めてきたのは彼を鍛えるためってこと?

 でも、なんのために……?

 首を傾げる私ときららだが、顎に指を当てた葵が口を開く。

 

「なるほど、育成ゲームの要領で彼の記憶……いや、戦闘経験(レベル)をゼロにして自分好みのビルドにしようとしたんだ」

「その理解度は逆に怖くなるが、その通りだブルー」

「でも腑に落ちないのは、どうして彼……あっ、先輩なの?」

 

 わざわざ先輩と言い直し、後輩キャラを思い出す葵。

 自分好みに……育てようと。

 なにそれ度し難い。

 カツミ君をなんだと思っているんだ。

 

「分からん。可能性があるとすれば、ルインは―――力こそが世の理、正義と考えている存在だ。その強さは……我々の想像すら及ばない次元にある」

「そんなにすごいんか?」

「星将序列。あれに奴は位置されてはいない。序列を定めるまでもなく、誰も奴には勝つことができないからだ。『変わることのない頂点』『美と破壊の女神』『時空を統べる者』例え序列一桁でさえも、彼女をその場から移動させられるかどうか怪しい」

 

 俗にいうラスボスというやつか。

 それに時空を統べるということは、時間とかも操れるってことかな?

 

「少なくとも私の知る限り奴を少し驚かせた程度でじゃ、あそこまで執着されん。それだけの何かを、カツミ君は奴に見せてしまったと言うことになる」

「……あの、今更だけどなんでそんなの知っているんですか?」

「私は星将序列元61位だ。それで、話を戻すが――」

「「「いやいやいや!?」」」

 

 三人でツッコミをいれる。

 さらりと言っていたがものすごいとんでもない言葉を口にしていた。

 

「はぁ、まったく私が宇宙人なのは話しただろう? スーツが敵方のデザインと似通っている時点で察してくれてもいいだろうが」

「私達が驚いているのは、あんたの序列のことや……!」

「スーツ開発者であるこの私、金崎レイマこと、ゴールディは宇宙で名をはせた悪魔のてんっっさい科学者だ。……ある日、自分の発明がパクられ、粗悪品を広められた上に、ルインが銀河の枠を超えたやべーい存在だったことにドン引きして、命からがら逃げだした逃亡者が私だ」

「えぇ」

「因みに、その頃のルインは子供だったが、その時点で誰も太刀打ちできなかったぞ」

 

 ものすっごい早口で言われてしまった。

 情報量が多すぎることしか言わないなこの人……。

 

「でだ、俺は追っ手を巻き込んで自爆……という体でちゃっかり脱出して地球に逃げ込んだ。まあ、その際に怪我を負い自ら戦うことが難しくなった」

「だから、普段はへなちょこなんだ……」

「それは前からだ」

 

 前からなんだ……。

 やはり元々はスーツを着て戦うタイプの人なんだろうか。

 いや、それよりも―――、

 

「どうすれば、彼を救えるんですか?」

 

 やはりそのラスボスとやらを倒すしかないのか。

 ならば、どのようにして倒しにいくか。

 私の質問に、社長は肩を竦める。

 

「いや、救うもなにも今のところは方法もなにもないぞ?」

 

「「「は?」」」

「むしろ、ようやくこの地球が初期化されていない理由にも納得がいった。ここにカツミ君がいるからだ。彼がここにいるから、ルインは星を滅ぼさない」

 

 あっけらかんとそう言葉にした社長に私達が呆気にとられる。

 

「今まで黙っていたが、ルインがその気になれば地球のような小さな星は一瞬で滅ぼされていてもおかしくはない」

「フリーザみたいなやつやな……」

 

 あっさり地球滅亡案件……。

 いつも通り過ぎてあまり驚きはない。

 

「だがしかぁし! どういう経緯か分からんが、カツミ君はとても、とても! 気に入られている!! それこそ意味が分からんくらいに!!」

「い、いきなり大きな声を出さないでくださいよ……」

「今後は段階的に星将序列に属する宇宙人がやってくるだろう!! カツミ君を成長させるために! この地球という星を見極めるために!!」

 

 突然テンションを振り切らせた社長に驚く。

 私達に気付かないまま、彼は拳を握りしめながら続けて熱弁を始める。

 

「もうカツミ君を戦いに巻き込まないようにすることはできん!! 何故なら、既にルインの影響下に彼がいるからだ!! だが、奴が止めるのは恐らく無理やり記憶を蘇らせようとする行為のみ!! つまり、それ以外なら何をしてもオッケーとなる!!」

「え、い、いいんか? そういうことしても……」

「相手は強い奴と戦いたいだけだから、我々が強化されるのは大歓迎しているようなものだ!!」

 

 なんとなくだけど、ものすごく傍迷惑な存在だと言うことは分かった。

 ……ん?

 

「つまりは、このままカツミ君……白騎士とジャスティスクルセイダーが協力関係を結んでもいいってことですか?」

「その通りだ。過度な干渉は控えるべきだろうが、カツミ君の利になることとなれば奴も何もしてこないはずだ。……してこないよな?

 

 そこで怖気づいちゃうあたり社長なんだよなぁ。

 でも、これからはカツミ君と協力関係を結ぶということでいいんだよね……?

 

「今後は変身せずとも交流することも許す。場合によっては彼を本部に招き、スーツの測定も行うことになるだろう」

「でも、記憶はないんやろ……?」

「彼の記憶喪失は普通のものではない。彼の記憶が封じられた場所を箱に例えるなら、それを出し入れする権利はルインが握っている。……いずれは記憶を全て戻すだろうが、その時は戦いが激化する時だ」

 

 彼の記憶が自発的に戻る可能性は低い。

 しかし、それなら彼の記憶が元に戻ったとしても白川克樹としての記憶がなくなることはないということになる。

 

「あ、レッドにはいくつか禁止事項を設ける」

「……うぅ」

「そんな泣きそうな顔をしても駄目だぞ」

 

 当然とばかりの視線を向けられてしまう。

 あの時のことはすごく反省しているし、ブルーにもイエローにも滅茶苦茶怒られた。

 アルファにもものすごく―――、

 

「……あれ? アルファちゃんは?」

「? そういえば、おらへんな」

「話がすごすぎて気付かなかった……」

 

 気づけばアルファがどこにもいないことに気付く。

 思えば、この場に最初からいなかったような……。

 

「ああ、アルファなら白川宅に居候することになったぞ」

「「「は?」」」

 


 

 この家に居候が増えることになった。

 俺と姉さんの義理の姉にあたる新不破 黒江(あらふわ くろえ)、愛称アルファさんという人だ。

 俺と姉さんとほとんど年が違わない人らしいが、ちょっと訳ありでここに住むことになったらしい。

 先日知り合ったレイマ曰く「ホームステイ」らしい。

 見た目はものすごく美人な日本人なんだけれど、どういうことなんだろうな?

 

「ごめんな、アルファ。手伝わせるようなことをしちゃって」

「いいんだよ。居候させてもらっているんだから。ハクアも起こしてこようか?」

「ああ、頼むよ」

 

 最初は新不破さんと呼ぼうとしたわけだが、敬語も呼び捨てもいらないし、愛称で構わないというらしいので普通に話すことにしている。

 

「今までハクアを起こしていたのは君なの?」

「ん? ああ、そうだよ?」

「ふーん……」

 

 にこりと微笑み首を傾げた彼女は、そのまま姉さんの眠っている部屋へと向かう。

 突然一人同居人が増えてしまったわけだが、日常にはそれほど影響はしなかった。

 俺自身も特に思うところもなく、どこか慣れたような心境で、この生活をすぐに受け入れた。

 

『ガゥ』

「……シロ」

 

 テーブルに飛び乗り声をかけてくるシロに笑いかける。

 椅子に座りながら、俺は目を閉じる。

 

「貴女は、誰だ」

 

 シロを抱え、一人でそう呟く。

 するとなにかの存在を心の中で感じ取る。

 

――ルインだ

「ルイン、さん?」

 

 呟き、頭の中に聞こえてくる声に応える。

 今まで平然と受け入れていたが、ふとした時に俺はこの声の異質さに気付いた。

 いや、気づかされたのか。

 

「どうして、俺を助けてくれるんだ?」

――そうする必要があるからだ

「……ありがとう、いつも俺に助言とかくれたのは、貴女でしょう?」

――フフフ、礼など必要はない 貴様自身の力で乗り越えたのだ

 

 こんなこと、誰にも言えないよなぁ。

 俺に話しかけてくる謎の存在がいただなんて。

 姉さん心配性だから、絶対病院とかに連れていかれる。

 

――少しずつ 私の干渉も減っていく

「そう、なのか?」

――ふふふ そう寂しがるな 時が来れば な

 

 慰めるようなその声に俺は顔を上げる。

 

「それって――」

「かっつーん! 姉さんがぶって私を起こしてきたんだけど!? どういうことなの!?」

「いや、寝ぼけて抱き着いてこようとしたからびっくりしちゃって」

「絶対それ以外の理由だぁ……」

「なにか言ったかな?」

「イイエッ! ナニモ!」

 

 居間に頭を押さえた姉さんとアルファが入ってくる。

 そこで声は途切れたことに気付き、一瞬唖然とした俺は思考を切り替えて二人の姉へと意識を向けるのであった。

 

「ああ、そういえばマスターに連絡しておいたから」

「アルファのこと?」

「そうそう。なんだかんだで受けてくれそうだよ。……社長も援助するらしいしね……

 

 テーブルにつき納豆をかきまわし始めた姉さんに答える。

 

「え? 私のこと? なにが?」

「アルファ、レイマから聞いてないのか?」

「う、うん」

 

 まあ、今日の話じゃないから今から伝えておくか。

 アルファの保護者はレイマってことらしいし。

 

「社会勉強として、君も俺と同じところでバイトさせられないかって」

「……へ?」

 

 呆気にとられた顔をするアルファ。

 社会勉強をさせてやれ、というレイマのお願いではあるがバイト先に知り合いが増えるのは俺としても嬉しいことなので、彼女には頑張ってほしいな。

 




新不破という無理やりすぎな苗字……。
今後は社長とジャスティスクルセイダーのバックアップもされつつ戦うことになります。

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