2分割してもよかったのですが、長い方がお得感があると思ったのでそのまま更新させていただきます。
前回の続きから。
初めてのジャスティスクルセイダーとの正式な共闘。
それに胸が躍らないはずがない……!
これまで疑念を抱いていた彼女達を信じ、共に戦うことは俺にとっては初めてのことだ。
だからこそ、今の俺は心に余裕を持って戦いに臨むことができている。
「白騎士君、もっと早く行ける!?」
「ああ! なら、こいつだ!」
『
ルプスストライカーの後部にロケットエンジンのような機構が追加され、急激な加速を得る。
そのままジャスティスクルセイダーの飛行機と共に、亜音速で夜空を突き進むこと数秒―――視線の遥か先に、五本の光の柱が現れるのが見える。
「五本だと!?」
つまり侵略者が五体もくるってわけか!?
しかもまた街中のど真ん中とは、相変わらず現れる場所が最悪だ!
「司令! 敵怪人、5体!! 周辺の避難を全力で行わせて!! ここは戦場になる!! はい!? 十分!? 五分でやってください!! ブルー! イエロー! 着地と同時に怪人の足止め! 避難が終わるまで時間を稼ぐよ!!」
「あいよ!」
「了解」
レッドがすばやく指示を出し、俺のバイクの隣に並ぶ。
ルプスストライカーからロケットエンジンユニットをパージさせ、粒子へと変えながらレッドの声に耳を傾ける。
「白騎士君もいけるかな!」
「任せろ!」
『
「それは周りに被害出ちゃうからまだ駄目!」
し、しまった、浮かれてフルスロットルで戦うところだった。
グラビティグリップを左手から消し去り、バイクから飛び降りる。
着地と同時にバイクから降りると、視線の先には鎖でつながれた四体の拘束された怪人と、一人の宇宙人型の怪人が立っている。
「おおっと、待ちたまえよ」
「ッ」
言葉を話した!?
いや、喋る怪人はいたにはいたが明確に地球の言葉を話す奴は初めてだ。
警戒しながら、背後の鎖に繋がれた怪人に目を向けるとそれぞれが立ったまま眠ったように沈黙している。
見る限り、獅子のような頭を持つ人型の怪人と、そのまま大きな蛇の怪人。
そして悪魔のような角が生えたやつと、背中に翼が生えた怪人か……。
拘束具の番号は、188、143、141、132ってところか。
「そして……」
「地球という蟲毒を勝ち抜いた人間達か、確かに面構えが違うなぁ」
蝉のような頭をしたメタリックな宇宙人。
その手には巨大化怪人に繋がれた鎖が握られており、一目で気に入らない奴という印象を抱く。
「我を忘れ、獣となり果てたオメガとも異なる。まさしく異質な存在か」
「何者だ」
「星将序列100位“星吸いのセギラ”。今宵は甘美なる狩りを楽しも――」
その瞬間、怪人の首が斬り飛ばされる。
レッドが剣を振り斬撃を飛ばしたと認識した時には、飛ばされた首がゴトン! と地面へと落ちる。
「……」
「レッド、手ごたえは?」
「あった、けど。倒した感じはしない」
は!? 思わずレッドの方を見ると身の丈を超える長剣を軽々と振った彼女が依然として警戒した様子で、前を向いていた。
「……レッド!? まだ相手がなにか話そうとしてたんだけど!?」
「白騎士君、敵にはね。言葉で催眠をかけてくる奴とかもいるから気をぬいちゃいけないんだ」
「!? た、たしかに……」
これまでが見境なく暴れるようなやつだったからその可能性を除外していた。
さすがはジャスティスクルセイダーだ……。
戦いに対する姿勢が俺とは全然違う……!
「レッド、再生してる」
「はぁ……」
心底面倒くさそうにするレッドが、宇宙人セギラへと目を向ける。
飛ばされた首が灰になると同時に、頭を再生させた奴は信じられない奴を見るような目で俺達を指さす。
「と、とんでもないやつだな! いきなり攻撃するやつがあぱ!?」
また次にレッドの斬撃が怪人の首を刎ねる。
次の瞬間には、またその場に無傷の怪人が現れるがその顔はこれ以上にない焦りに満ちていた。
「無駄だってのが分からないのか! 俺は不死身———」
「あのさぁ。なんで私達に話を聞いてもらえると思っているの?」
「ぎ、きさ」
「狩り気分で来たら、当然自分が狩られる覚悟くらいはあるよねぇ?」
言葉を最後まで喋り切れずに首が飛ぶ。
「お前達は地球を侵略しに来た。私達はお前達を倒す」
「くぷっ!?」
「それ以外になにかあるの? 降参するなら巨大化怪人を引き連れてくるはずがないし、交渉するなら無駄な話はしない」
「ふざけッ」
続けて再生し、なりふり構わず飛び掛かるセギラ。
その手に怪しい輝きが灯されていることに気付きすぐに迎撃しようとすると、とんでもない早撃ちでブルーがセギラの腕と足の関節を撃ち抜き、地面へと叩き落とす。
「すごいなぁ」
―貴様も 見習うといい
―よい 手本だぞ?
ルインさんの声に頷く。
そうしている間にも攻撃は続いていく。
「ま、待て――」
「待たんわ」
その次の瞬間には、首が消え元に戻るがすぐにその上からイエローが斧で叩きつぶす。
さらに再生しようとする奴を目視したイエローはそのまま無言で、斧を振り下ろし攻撃し続ける。
鎖に繋がれた怪人たちを動かす暇もないまま、電撃と斬撃で攻撃され続ける敵を見据えながら、レッドはブルーに話しかけていた。
「ブルー、どう見る?」
「相手は確実に死んでる。でも、死んでいないのは残機があるからだと思う」
「その根拠は?」
「不死身ならあんなに焦らない」
「言えてる」
ブルーの考察を聞き、顎に指を当てたレッドは次に俺を見る。
正直、圧倒的すぎて手持無沙汰だ。
頼もしすぎるぞ、ジャスティスクルセイダー。
「白騎士君はなにか気付いたことはある?」
「気づいたこと、か。近づいて手で君に触れようとしていたから……なにかしようとしていたんじゃないか?」
「触れられたらアウト系ね。順当に見て生命力を吸い取る系かな? んー」
その場で場違いな間延びする声で背伸びをするレッド。
「ようやく地球産怪人っぽくなってきたじゃん。この理不尽さ、久しぶりの嫌な感じ。二度と味わいたくなかったよ」
「レッド、大丈夫なのか?」
「うん。任せて。こういう相手は慣れてるから。慢心は絶対にしないけど」
まさしく潜った修羅場が違う、か。
この場において俺は学ぶ側だということをよく理解させられる。
「ガァァァ!!」
轟音が鳴り響く。
軽く後ろに跳ぶようにこちらに戻ってきたイエローに、セギラを見ると再生する奴の周りには動き出した四体の怪人がいる。
「手段は、選ばん!」
近くの仲間を盾にするようにしてレッドの斬撃を防いだセギラはそのままその隣の怪人を掴み取り、あろうことか怪人同士を融合させた。
「四体の怪人を混ぜ合わせ、さらに強く! 強靭に! 凶暴化させる!」
苦しみ、もがきながら一つになっていく四体の怪人たち。
混ざり合い、無理やり一つの生物へと変えさせられる彼ら。
「酷い……」
「無理やり、融合させたんだね……」
4体の巨大化怪人は敵だ。
だが、理性もなく、意志すらも剥奪された彼らは元はちゃんとした自分の感情を持っていたはずだ。
もしかするなら本当は戦うような存在ですらなかったのかもしれない。
俺達と同じように侵略された人たちなのかもしれない。
それを、あんな風に……。
『ギ、ギィァァァ!!』
それは、雄叫びというより悲鳴のようだった。
獅子と山羊の頭、背中に生えた大きな翼に、蛇の尾。
合成怪獣とでも呼ぶべきだろうか。
これまでの四倍近い質量を持つ怪獣の出現に、レッド達の判断は早かった。
「白騎士くん! 私達があの怪獣の相手をする!」
「……ああ、あの野郎は俺に任せろ」
「ッ……黒……いえ、任せたよ!!」
ビークルを出現させ、それに乗り込むレッド達。
「パワータイプなら私や! フォーメーション3!」
「OK!」
「了解」
「「「合体!!」」」
ローラースケートのような足を覆うアーマーのようなものを纏ったレッドと、バイク型のビークルに乗ったブルーが分離し、上半身が黄色で構成された巨人が現れる。
「いっくぞぉぉ!!」
赤色の腕に形作られた鎌状のエネルギー刃と共に巨大化した怪人へと立ち向かう。
そんなイエローの攻撃を補助するように空を飛ぶレッドとブルーが援護を加えていく。
「ッ、優先目標からわざわざ向かってきてくれるとはな」
「……!」
俺は自分の相手に集中しよう。
序列100位というからには、それ相応に強いってことだ。
さっきジャスティスクルセイダーたちにボコボコにされていたけど。
「俺も!」
『
『
剣を握りしめ踏み込みと同時にセギラに剣を叩きつける。
肩に叩き込み炎が溢れだす剣に奴の表情が苦悶に歪むがそれに構わず必殺技を発動させる。
「ぐ、あ、お前もかよ……!」
「セェイ!!」
『
力の解放と同時に剣を振り切り、セギラの身体を炎と共に切り裂く。
傷口から炎をあふれ出させるセギラ。
だが、苦悶の表情から途端に笑みを浮かべた奴は、そのまま俺に強烈な拳を叩きつけてきた。
「ッ」
「ようやく、俺も本領が出せる……! 様子見なんてするんじゃなかったぜ……!!」
「な……!?」
奴の身体は痩身のメタリックな姿から、大きく様変わりしていた。
全身に浮き上がった銀色の装甲に、腕、背中から伸びた生物的な触手と蟲のような鎌。
まるで複数の生物を掛け合わせたようなその姿に、どことなく嫌悪感のようなものを抱きながら、俺は立ち上がる。
「この姿になれば、あの小娘共にも遅れを取ることはない」
「……最初から油断して負けそうになったのはお前だろ」
「……」
「……」
「……殺す!!」
こちらに飛び掛かってくるセギラ。
その速さはその自信に違わず早く、なんとか剣で防御するも腕が痺れるほどの衝撃が伝わる。
「ッ」
『
バックルを操作し、力と速さに特化させたアックスイエローフォームへと変身。
そのまま電撃と共に高速移動を行い、奴の背後に回り込み蹴りを叩き込む。
「中々の速さだが」
「!」
後ろを見ずに足を掴まれた!?
驚愕に奴の頭を見れば、まるで昆虫のような複眼が奴の頭の側頭部に作られており、なんとも不気味な姿へとさらなる変貌を遂げている。
「気持ち悪っ!?」
「生命の進化だ。それが分からないとは、価値観の違いとは度し難いなぁ。人間」
「ぬぉ!?」
掴まれた足からなにかが吸収される。
これは、スーツのエネルギーを吸収しているのか!?
『
「強制的にセーブモードに落とされた……!?」
その吸収量はすさまじく、一瞬にしてセーブモードに戻される。
このままじゃ変身解除される! 咄嗟に出現させたルプスダガーを肩に投げつけ、拘束を脱出する。
「迂闊だったなぁ。お前のエネルギーは上物だ」
「……そうやって、他の生き物からも吸い取っているのか?」
酔っているのか? さきほどと比べ上機嫌になったセギラは自身の腕を大きく広げる。
「フフフ、俺はな、取り込んだ生命エネルギーの分だけ能力を持っているんだ」
「取り込んだ生命だと?」
「力に長けた種族、速さに長けた種族、それらの生命体をこの身に取り込めば取り込むほど、俺はどこまでも強くなる。ここまで説明すれば、愚鈍なお前でも分かるな?」
悪辣な能力だ。
エネルギー吸収スピードの速さからして、十秒触れられれば動けなくされてもおかしくはない。
ジャスティスクルセイダーならそもそも触れさせずに倒せたのだろうが、俺の取った手段が悪手だったということか。
「そこらの、それこそ地球人程度の矮小なエネルギーでは何十億吸収しても満足にはならないけどな! この星の生命体の質は低すぎる。この俺が取り込む価値もない、クズ以下の命だよ」
「……」
無言で立ち上がり、左手にグラビティグリップを出現させる。
「他人のエネルギーを使うのは勝手だけど、それで他人の命をクズ呼ばわりするのはムカつくな……!」
『
バックルの側面にグリップを嵌め込み、黒い煙と共にアナザーフォームへの変身を完了させる。
『
黒いアーマーの上から白いアーマーが展開されると同時に、強化された脚力のまま全力で奴の顔面に蹴りを叩き込む。
「ギッ、なぁ!?」
のけ反った奴の肩からルプスダガーを抜き取りさらに切り裂く、
この形態なら問題はない。
「ッ、調子に、乗るな……!」
「……」
『
近づかれる前にガンモードにさせたグラビティバスターを右手に出現させ、至近距離でエネルギー弾を叩きつける。
触れられないように触手をダガーで切り裂き、動きを削いでいく。
エネルギーを吸い取っているからか再生し続けていくが、それ以上の攻撃を重ねていけばいいようだ。
「ハッ!」
銃口部分で腹部を叩きルプスダガーを垂直に肩に突き刺した後に、のけぞり後ろに倒れた奴を見下ろしたままグラビティバスターをソードモードへと変える。
必殺技は使わない。
このままエネルギー切れまで切り続ければ始末できる。
「どうせ、不死身っつっても上限はあるんだろ? なら終わるまで攻撃し続ければいいだけだ」
「ま、待て!」
レッドの言葉通りに相手の言葉を聞かずにグラビティバスターを振り下ろす。
「やめ て」
「ッ! な、に?」
セギラに当たる直前、奴の胸にあたる部分から現れたのは、角の生えた男の子の顔。
銀色の、奴の身体から飛び出したその子は苦しみもがきながら、俺に助けを求めてきた。
「たす けて」
「くるしい よ」
「コロ シテ」
次々と現れる異星人の子供と思わしき顔。
振り下ろしかけたグラビティバスターの刃を止める。
まさか、こいつはエネルギーじゃなく命そのものを―――、
「ハァ!! バカだなァ、お前!!」
「ッ!?」
躊躇する俺を前に、突然立ち上がったセギラがその腕で俺の首を掴んだ。
しまった、そう思った時には既に遅く、首からエネルギーが吸い取られていく。
「ぐ、が……!」
「エネルギーを吸い取られたやつはな、もう死んでんだよ!! あんな芝居に騙されるなんてなぁ!!」
「……ッ! 子供も、殺したのか!!」
「ああ!? エネルギーになりゃ女も子供もジジィもババァも変わらねぇよ! みーんな、俺の栄養源だ!!」
アナザーフォームから白いエネルギーのみが消えていく。
白いアーマーが消滅し、全身が真っ黒な、焦げた色へと変わり果てた俺の首から手を離した奴は、さらなる高揚感に打ち震えた。
「は、はは! なんだこのエネルギーは!? 素晴らしい!! 濃度で言えば上位クラスに匹敵するぞ!? あの方が最優先目標とするのが分かるエネルギーだ!!」
「……が、は」
変身は解除されない。
力が失った気配もない。
だが、その代わりに俺の内側に溢れだしていくのは、絶望とは別のまた違った感情であった。
「いや、待て。だがおかしい、吸い取れたのは白いエネルギーだけだ。黒い、のは……」
「が、ああああ!!」
身体から荒れ狂うような衝動が溢れだす。
たがが外れたなにかが黒い煙をあふれ出し、身体を包み込み始める。
覚えのない、しかし心を揺り動かすような憎悪に突き動かされそうになる。
「なんだ、これ……!」
セーブモードの力で抑え込まれていたなにかが溢れだしている!?
今にも黒い煙に意識を支配されそうになりながら、必死に意識を保つ。
―大丈夫だ
―きっと できる
ルインさんの声。
その声に自分を奮い立たせ、胸の奥を掻きむしる衝動に立ち向かう。
「まさか、その白いエネルギーが、お前の力を押さえ込んでいたのか……!?」
勝手にバックルに伸び動き出そうとする手に力を籠める。
……ふざけるんじゃ、ねぇぞ……!!
こんな力に振り回されて、どうすんだよ……!!
力と根性で、腕を無理やり上に掲げ、固く拳を握りしめる。
「フゥンッ!!」
『
拳で自身の胸を殴りつけオーラを吹き飛ばし、意識を保ち気合で制御する。
瞬間、歓喜するかのようにバックルから音声が鳴り響く。
『
白いアーマーが消え去り、黒い薄い装甲に包まれた姿のまま、肩で息をした俺は目の前のセギラを睨みつける。
しかし、この形態も長くは持たないと悟る。
『
『
秒読みが始まると同時に、奴の目の前に瞬間移動をし、その顔面に拳を叩きつける。
吹き飛んだ先にさらにワープし、その脇腹に蹴りを叩き込む。
『
原理は分からん。
ただそう思い浮かぶだけで黒い渦に包み込まれる。
「ッ、あの方と同じ、なぜその力を!?」
『
腕を機械の銃へと変えた奴が大量のエネルギー弾を放ってくるが、それを目の前に作り出したワームホールが飲み込む。
『
その次の瞬間にはセギラの側面に作り出したワームホールから奴自身が放ったエネルギー弾が飛び出し、奴を攻撃する。
火花を散らしながら吹き飛んだ奴は地面を転がりながら立ち上がると、そのまま俺に背を向けて逃げ出そうとする。
「が、こ、これは俺の攻撃!?」
『
「こ、こんな化物と戦っていられるか!!」
『
視線で奴の姿を追い、掌を向ける。
瞬間、奴の前に現れたワームホールが動き出し、そのまま呑み込み俺の前に強制的に転移させる。
『
「な、あ、ああ!?」
『
「お前は、絶対に、逃がさない」
『
俺は迷いなく目の前に現れ、宙に浮かび上がった奴に黒い煙を纏った拳を叩きつける。
『
「オラァ!!」
『
『
空中で叩きつけられ、悲鳴を上げることもできないまま勢いのまま吹き飛ばされたセギラ。
しかし、奴の身体は俺から離れた地点で固定されるように黒い球体に閉じ込められ、身体を崩壊させながら身動きを封じられる。
「が、な、なんだ!? さ、再生する傍から、身体が……」
「はぁ、はぁ……」
『
身体から力が抜け、強制的にセーブモードに戻されてしまう。
バックルのグラビティグリップも消え、これ以上のフォームチェンジが無理なほどに疲弊した俺は、それでも立ち上がり、重力の檻に囚われている奴を睨みつける。
「最後の、仕上げだ……! クソ野郎……!!」
『
震える腕でバックルを三度叩き、セーブフォームの必殺技を発動させる。
俺の行動を目にしたセギラは、恐怖に歪んだ顔で必死に声を上げる。
「待て、やめろ! 身体が崩壊する! し、死にたくない!! まだ、俺は上に――」
「だからどうした! 誰かの命をなんとも思わない奴が!!」
そのまま全力で跳躍し、蹴りの先をセギルへと向ける。
空中で加速し、蹴りが奴の身体のど真ん中へと叩きつけられる。
「命乞いなんてするんじゃねぇ!!」
『
「が、ああああああ!?」
そのまま電撃と共に重力と奴の身体ごと蹴り穿ち、着地する。
背後で奴の断末魔と共に、爆発が引き起こされたのを確かめた後に、俺は身体から力が抜けるように地面に膝をつく。
「はぁ、はぁ……はぁ……」
これまでとは違う、恐ろしい敵だった。
能力も強かったが、あんな卑怯な手を使ってくるなんて……。
「レッド達は……」
『そいやぁ! まだまだこっちは元気やで!』
いつのまにか山羊の頭が潰された巨大化怪人の胴体に腕のエネルギー刃を叩きつけた黄色い巨人。
側方に回ったブルーがバイクから大量のミサイルとエネルギー弾を放ち、巨大化怪人のバランスを崩し―――首を露出させたところで、上空からとてつもない勢いで落下してきたレッドが高く振り上げた長剣を振り下ろし、その首を叩き落とした。
「わ、わぁ……」
すごいなぁ。
巨大化怪人四体分くらいの大きさあるのに、ロボットに乗らなくても首落としてる……。
俺も、まだまだだな。
「はぁ……」
「ハッハッハ、実に見事!」
「ッ!!!?」
すぐ後ろからの声。
まったく、気配すらも感じ取れなかったその声に、反射的にルプスダガーを右手に握りしめたまま後ろへ突き出す。
しかし、振り向く間もなく、背後から伸びた手が俺の腕を掴み取る。
「言葉は通じているな? いやはや、地球の言語は実に久しぶりだ」
「誰だ、あんたは」
「なるほど、いい面構えだ。仮面で中身は分からんが」
……はい?
いたのは甲冑のような重装甲の鎧に身を包んだ誰か。
全身を白色の鎧に包まれたそいつの背中と腰部分には、機械的な鞘に納められた刀に酷似した武器が二つ携えられており、見た目からしても普通ではない。
一部、ジャスティスクルセイダーのスーツのデザインと似通った点はあるが、目の前のこいつも侵略者なのか……?
「……ハッハッハッ、心配するな、こちらに戦う意思はない」
「どういう、ことだ?」
疲労していながらも睨みつける俺に、どこか砕けた笑みを零した何者かは、ゆっくりと俺の手を離す。
その雰囲気と明らかに異質な雰囲気からして、ただものじゃない。
「先の戦い、実に見事。ほれ、これをやろう」
おもむろに何かを差し出される。
それは、なにやら包みにいれられたキャンディのようなもの。
いや、宇宙人がキャンディくれるとかあるのか?
「え、あ、ありがとう、ございます?」
「うんうん、素直でよろしい。安心しろ、人間の味覚でもちゃんと味がするものだ」
「は、はぁ?」
がしがし、とマスク越しに頭に手を置いてくる男。
ものすっごいぐわんぐわん頭を揺らされ、困惑するしかない。
なんなんだこのやべぇ人。
こんなに友好的な雰囲気を醸し出しているのに、さっきからセギラ以上の危険ななにかばかりを感じてしまう。
「あの子が目をかけるのもよく分かる。いや、今この時ですら見ていらしているのか」
「なにを……」
「全く、貴女様は幼いころから身勝手すぎますぞ?」
―指南役のジジィがよく言う
―様子見にしては 干渉しすぎだぞ
「ハッハッハ!! これは失礼!」
なにがおかしいのかからからと笑う男。
そこで怪獣を倒し終えたレッド達が、この場に降りてくる。
「っ!」
レッドが剣を振るい不可視の斬撃を飛ばす。
しかし、それは鎧の男が軽く振るった手にとりあっさりといなされる。
「これは、まだまだ伸びるな。よい剣だ」
「……イエロー! ブルー! こいつ、さっきのやつとは比べ物にならないくらいに強い……!」
「見極めも早い。逸材に巡り合えたようだな、ゴールディ」
構えるレッド達にどこか嬉し気な様子を見せる男。
敵意はない。
だからこそ、恐ろしい。
これまでとは全く異なる、ただそこにいるだけで体の芯から底冷えするような気配を放つ男の底がまるで見えない。
「力を磨け、地球の守護者達よ。お前達の“星”は未だ輝きを知らず」
「な、に?」
男を見上げる。
仮面の奥に輝く二つの目はたしかに俺達へと向けられていた。
唖然とする俺を見下ろした男は、愉快気に笑いながら機械的な鞘から刀を引き抜く。
「この星の守護者であり、我々が好敵手と見定めたお前達に最大限の敬意と敵意を以てして、我が名を名乗ろう」
鞘と一変して原始的且つ、綺麗な刃紋を描く刀。
水に濡れたような怪しい光沢を放つ刃が月の光を反射させ、得体の知れぬ静かな威圧感を放った男は、その刀を緩く握りしめる。
「我が名は星将序列一位“ヴァース”」
いち、い? 待て、一位だって!?
待てよ、それじゃあいきなり一番強いやつが現れたってことか?
そう名乗った男は、くすりと笑う。
「まあ、寂れた老人には過ぎた肩書ではあるがな」
男、ヴァースの刀を持つ腕がブレた次の瞬間には、背後の空間に切れ込みが入り――その先に別の景色が現れる。
空間の先には、こちらをジッと見据えている数えきれないほどの視線を感じる。
そのどれもが一筋縄ではいかない雰囲気が込められており、あれがこれから俺達が戦わなければいけない“敵”だと認識する。
「理不尽に抗え、強敵に打ち勝て、力こそが我らの
「ッ、待て!」
「それだけが、お前達の正義を示すたった一つの方法。……期待しているぞ?」
空間に足を踏み入れ、最後にそう言葉にした男はそのまま消えてしまった。
残されたのは、徐々に粒子となって消えていく巨大怪獣と、その戦いによって破壊された瓦礫だけであった。
シロヾ(*´∀`*)ノ「AMAZING!!(すごいっ!)」
今回起こったことが多すぎるので3つにまとめると、
・星将序列100番内に突入
・10秒限定でハザードフォームが使えるようになった(使用後は強制的にセーブフォーム)
・星将序列1位は、渋くてノリのいい強キャラおじさん。
瞬瞬必生で書いているので白騎士くんのビークル戦闘はなしになりました(白目)
ノリと勢いで書いているからこういうことになるんだ……。