総集編回(のようなものです)
Xプロトチェンジャーは、記憶のない彼ではまだ使いこなせない代物であった。
だがいつか解放されるであろう彼の記憶が戻れば使えると考えれば、それほど悲観する必要はない。
しかし、一つ問題があるとすれば、それはXプロトチェンジャーに存在するエナジーコアに秘められた意思が表面化してしまったことだ。
それは片言ではあるが地球の言語を口にし、記憶のない彼に精一杯語り掛けた。
『……ツーン』
現在は、カツミ君が住んでいた独房で私達はテーブルのケースにいれられたプロトチェンジャーを囲み、彼女? との対話と説得に取り組んでいた。
社長曰く、プロトチェンジャーのコアの精神性は子供に近いというので、下手な大人よりも私達が説得した方がいいとのこと。
『ジャスティスクルセイダー、キライ』
「いやいや、なんで?」
もう最初から好感度が低い時点で駄目な気がするが、とりあえず理由を聞かなくては。
『カツミ、イジメル』
「いじめてないよ!」
『カツミ、タオストキ。サンニン。ヒキョウ』
「えっ、戦いに卑怯もなにもないと思うんだけど?」
『……』
「……」
なぜかプロトちゃんだけではなく、その場にいるアルファにまでもドン引きされてしまった。
きららと葵は引いてはいなかったが「そこで正直に言うか……?」的な目で見られてしまった。
「ねえ、プロトちゃん。分かってくれないかな? 今、カツミ君の記憶が戻ると危ないの」
『アブナイ?』
「うん。今、彼はね。とっても強い敵と精神が繋がっているらしいの。だから、今彼が記憶が目覚めてしまうと……その人にまた記憶を消されることになるの」
『……』
「だから、今は彼を助けながら待つしかないの」
いつかは記憶が戻る。
だけど、私達のことを覚えていない彼を見ているのはプロトちゃんも、私達も辛い。
『……ワカッタ。ガマンスル』
なんだかすごい申し訳ない気持ちにさせられるのはなんなのだろうか?
コアなのにものすごい子供みたいな反応をされることに罪悪感を抱いてしまう。
「ね、ねえ、それじゃあ、ジャスティスクルセイダーじゃなくて私達個人のことはどう思っているのかな?」
『レッド、ズウズウシイ』
「……」
一瞬で撃沈されたんですけど。
プロトちゃんから見て私は図々しい女だったの……?
『ブルー、ヘンジン』
「人はそれを個性という」
『イエロー……。……。……ゲンキ』
「たった一言なのに、こんなに傷つくことある……?」
きららが一番ダメージを負うことになってしまった……!
変な関西弁以外にもきららは十分にキャラが立っているから大丈夫だよ!
『アルファ、キライ』
「えっ、なんで……?」
『カツミガ、ミエナイコトヲイイコトニ スキホウダイ シテタ』
「「「……」」」
「ひんっ」
認識改変を用いて逃げようとしたアルファの首に手刀を添える。
がたがたと震えるアルファを取り囲むようにした私達に、彼女は涙目で俯きながら声を絞り出す。
「出来心だったんです」
「斬るか……」
「アカネ、落ち着いて。まずは尋問が先や」
「なんとなく、気まぐれにだけど、銃の手入れをしたくなってきちゃった」
テーブルにチェンジャーから取り出したブルー専用のハンドガンを分解しては、布巾で磨き始める葵。
これからアルファを尋問し、色々と吐かせようとしたところで、チェンジャーに通信が入る。
『ジャスティスクルセイダー+α! 今すぐ私の研究室に集合!!』
そんなドでかい声と共にぶつりと通信が切れる。
「なんだろう?」
「研究室って珍しいよね」
「新装備ができたのかな?」
「……ほっ」
なんかアルファが安心したような顔をしているが別に忘れたわけじゃないからね?
君がカツミ君になにをしていたのか聞き出すからね?
あえてそれを口に出さずに、私達は社長がいつも作業をしている研究室へと向かうのであった。
「よく来たな。空いている席にでも座ってくれ」
社長専用の研究室は中々に広い。
様々な機材や試作品などが置かれており、そこに社長がいた。
「ああ、Xプロトチェンジャーは持って来たか?」
「あ、はい」
「どうだ? レッド達とコミュニケーションは取れたか?」
『……』
社長の声を無視するプロトちゃん。
声すらも返してもらえない社長は、地味にショックを受けたような顔をする。
「やっぱり、プロトスーツを処分しようとしたことを怒っている……!?」
「あー、そりゃ怒るわなぁ」
「違うんだ! 処分するのはプロトスーツだけでエナジーコアはちゃんと抜き取るはずだったんだ……!」
『……』
それでも尚プロトちゃんは無言。
それに一層にショックを受けながらも社長はゆらゆらと立ち上がると、なんらかの機械を操作し、空中にホログラムのような映像を映し出した。
映し出されたのは、どこかの誰かの視点のようなもの。
「社長、これは?」
「カツミ君の視点だ。正確に言うのならば、シロに記憶されていた戦闘記録のようなものだ。これは、ベガとの戦いの後、敵宇宙船に乗り込んだ彼の戦いの……その一部だ。Xプロトチェンジャーも見たほうがいい」
『ベガァァ!! テメェ、待てコラァァ!!』
『ヒィィィィ!?』
サイボーグの身体に車輪のようなものをつけたベガを追いかけるカツミ君。
宇宙船らしき部品で組み合わされたような場所を破壊しながら駆け回る彼の姿は、私達にとって見慣れた黒騎士としての姿だった。
しかし、その姿にもノイズが走り、映像が飛ぶ。
「だがこの時点で記憶されている映像はかなり破損が目立ってな。修復出来て数分ほどであったが……」
『フフ、いい子だ。その調子だぞ?』
『ッ、とんでもねぇ奴だな!!』
『フハハハ!!』
『ハ、ハハハ!!』
『この時間を終わらせたくない。貴様もそうだろう?』
『んなこと思うゴハァァァ!?』
「ん? 貴様もそう思ってくれているようで安心したぞ」
『地球人の時間に換算すると、56時間34分57秒、か』
『ぐ、がはっ……』
『このまま私好みに育てるのもいい。だが違う、そうではないな。それだけでは遊び心がない。そうさな……』
『元の世界に帰してやろう』
ルインの一撃を叩きつけられた彼は、ワームホールを潜り地球へと戻される。
空に開いた穴が閉じ、彼の身体がどんどん地上へと落ち、彼が見つかったという雑木林へと落ちていく。
「「「……」」」
「つまりは、彼は敵船で大暴れした後にベガと戦い、ルインと遭遇し戦闘に発展。奴と、約二日間戦い続け、滅茶苦茶気に入られてしまったことになる」
カツミ君、本当に何しているの……!?
とんでもなく強いラスボス相手に二日間も戦い続けるとか、そんなの――、
「そんなの気に入られるに決まっているじゃん……!?」
「やっぱり、規格外やわ。黒騎士くん時代のカツミくん……」
「お腹とか空かなかったのかな……」
どうやって帰ってきたと思ったけど、逆に送り出されてきたとは……。
相手も相当カツミ君のことを気に入っているようだ。
……そもそも、あのとんでもないパワーを秘めた、ベガ戦の彼を片腕だけで倒せる時点で、別次元の強さを持っていることは確定だ。
「この事実を知った時、私は現実を受け止めきれずに一人焼肉に行くほどに動揺してしまった」
「ただ飯食べに行っただけやん」
「後で、大森さんにチクッとこ」
「おいマジでやめろ。……衝撃的な事実ではあったが、ルインはカツミ君を成長させるために星将を送り込んでいることは確定した。敵がわざわざ彼を強くしてくれるなら、それでいい」
今私達にできることは成長する彼をサポートし、同時に私達も強くなることだ。
そのために自己鍛錬を忘れないようにしなくちゃな。
「さて、この戦闘記録には彼が白騎士として活動し始めた時のことも記録されてある。今まで彼の現状を知ることのなかったXプロトチェンジャーに、教えがてらに彼がこれまでに変身したフォームについておさらいしてみよう!」
『シロキシ?』
不思議そうな声を発するプロトちゃんに、社長は新たな映像をホログラムとして投影させる。
『俺がするべきことは分かった!!』
『
『
「まず最初に、記憶喪失の彼が初めて変身をした姿、セーブフォームだ。戦った敵は、ベガ戦の残党、アクス。彼に復讐を行おうとしたが、覚醒したセーブフォームの力に敗れ去った」
「この姿は、蹴りとダガーで戦うんですよね?」
「その通りだ。恐らく、この時点でルインの“教育”は始まっていたのだろう」
映像は切り替わり、マンションの上の階から映し出された時のものになる。
月を背景にし、アクスを蹴りで穿つその姿は、まさしく彼の白騎士としての始まりとも言える。
「ハァァァァ!!」
『
「必殺技はバイティングクラッシュ。身体能力を向上させ、エネルギーを纏った蹴りで相手を砕く強力な技だ。その後も結構な頻度で使われている技でもある」
その時は彼は白川ちゃんにも内緒で戦い続けていたんだよね。
まさかの彼自身から明かされたってところはカツミくんらしいけど。
『
「オッケー!」
『CHANGE!! SWORD RED!!』
「そして次は……形態変化だ。セーブフォームが通用しない敵と相対した彼が目覚めた“赤”の姿。そしてレッドがウザがらみしてくるきっかけとなった忌々しいフォームだ」
「そこまでウザくはなかったはずですよ?」
「あんたそれ本気で言ってるの……?」
「神経を疑う」
「自覚した方がいいよ……?」
ここまで言われるとかよほど羨ましかったようだ。
ふふん、どんなにあとでブルーとイエローが出てこようが初の形態変化はこの私、レッドがいただいたのだ。
「ソードレッドの力は剣と炎。最もバランスがいいフォームであり、カツミ君にとっても使い勝手のいい姿だと推測できる」
「セェェイ!!」
『
「必殺技のバーニングスラッシュは、あらゆる敵を切り裂き内部から燃やし尽くすのです……!」
「……いや、なんでお前が説明するの……?」
社長の代わりに必殺技の説明をしておく。
こればかりは譲れなかったので、満足した。
次の映像は順当に青色の姿への変形へと移る。
『
『
「はえ?」
『CHANGE!!
「ちょぉ!? なんで私のマヌケな声が入ってんねん!!」
「マヌケな声を出すお前が悪いんじゃい!! ……ショットブルーは精密な動きと射撃を得意とするフォーム。その正確さは高速で動く敵すらも捕捉できるほどだ」
「ぶい」
葵が自信満々にピースする。
この時の戦いでは、きららが偶然その場に居合わせたんだったなー。
妹のななかちゃんが巻き込まれなくて本当によかった。
『
「俺はお前を、許さない!」
『
「必殺技はアクアフルパワーブレイク。凝縮させたエネルギー弾を相手に叩きつけるスゴイ技だ。撃破率100%、レッドとは違うのですよ、レッドとは……」
「いや、だからなんでお前まで私の説明を奪う……?」
フッ、ショットブルーはすぐにフォームチェンジされちゃうからそうなっているだけだから別に気にしない。
それじゃあ、次はイエローだね。
そう思っていると、ホログラムにノイズが走る。
『
「ん? 映像が荒いな……暫し待て」
首を傾げた社長がかたかたと端末を動かす。
数秒ほどすると、映像は鮮明なものになり、初の百番台のライオン型の異星人を前にしてイエローフォームになる場面が映し出された。
『
「勿論だ!!」
『
「イエローフォームはパワーとスピードを兼ね備えた強力な姿だ。だがそのあまりの力に周囲に被害が及ぶ可能性があることから、変身できる状況が限られるフォームでもある」
「高速移動に斧での攻撃で、相手をボッコボコにできる一番カツミ君向けのフォームやね」
レッドが扱いやすいバランス型。
ブルーはテクニック型。
イエローは、パワーとスピードに特化させた型。
なんだかんだでしっかりと役割は分けられているんだよね……。
「「「ハァァァァァァ!!」」」
『
「よしっ、必殺技は――」
「ンゥ必殺技は、ライトニングフルクラッシュ!! 高速移動による多連続キックにより相手を確実に粉砕する超強力な技だ! 斧での攻撃もあるので攻撃面に特化させた形態とも言えよう!!」
「なんで私の台詞だけ取るの!?」
「社長にもプライドというものがあるのだ!」
根に持ちすぎだろ、とは思いつつ連続で蹴りが叩き込まれ爆散する怪人を見る。
この後、巨大化して私達が出るんだよね……。
そして血まみれになった私が……うぅ。
『
『
『
「アナザーフォーム。重力を操る特殊な姿だが……これには謎が残されている」
「謎?」
黒いアーマーの上からさらに被せるように白いアーマーを被せられた戦士。
風になびく腰のマントと、これまでとは違った重厚な雰囲気からして異質とも思えるフォームでもある。
「これは私の端末で撮った映像だが……」
「フッ、まあ、いい」
『DOMINATE……』
目を青く光らせたカツミ君が、社長とアルファと白川ちゃんの前で変身している光景。
これは、まさかカツミ君がラスボスに乗っ取られた時の……?
彼の姿が黒い煙に呑み込まれ、禍々しい姿へと変身していく。
『
『
『POWER IS JUSTICE……』
「なるほど、私だとこういう姿になるのか。くくく、面白い」
「ルインがカツミ君の身体を乗っ取って変身した姿と酷似している。……恐らく、奴の影響を受けた姿を、押さえ込み、彼が扱えるようにさせた姿をアナザーフォームというのだろうな」
『コイツガ カツミヲ……』
アナザーフォームの力は強力だった。
重力を操り、相手を一方的に蹂躙するほどだ。
あと……多分、社長の考えは間違いではないと思う。
なにせ、最近の戦いでそれに近い姿に彼はなっていたからだ。
「フゥンッ!!」
『
『
『
「この姿はお前達にとっても記憶に新しいだろう。名付けるならば、アナザーフォーム・タイムハザードと言うべきか。十秒限定で、重力操作のその先——ワームホールを自由自在に作り出すことのできる常軌を逸した姿だ」
「相手の怪人がカツミ君の白い力を奪い取ったから、なってしまったんですよね?」
「ああ。本来なら暴走するのだろうが……フッ、彼はものの見事にものにしてしまったようだ」
十秒間限定だが、そのデメリットに見合うほどのパワーだ。
十秒経つと強制的にセーブフォームになって、パワーも著しく弱ってしまうらしいけれど。
「以上がカツミ君の……白騎士の持つ力だ。どうかな? Xプロトチェンジャー……いや、プロトよ」
『ワタシモ オナジコト デキル』
「いいや、君がそれをする必要はない。なぜならば、既に君は私の最強無敵の最高のスーツだからだ」
『!』
「カツミ君の記憶が戻れば、君は本来の力を発揮することができる。……その時は、まさしく最強だ」
自信に満ち溢れた社長の言葉にプロトちゃんは驚いた反応をしているように見えた。
数秒ほどの沈黙の後に、プロトちゃんは遠慮気味に社長に話しかけた。
『イモウトニモ カテル?』
「……妹とは?」
『ワタシト オナジコア』
「……あ、あれぇ、本当の姉妹だったの? こう、同時期に作られた的な姉妹じゃなくて?」
『ウン』
妹? って、もしかしてルプスドライバーのメカオオカミのこと!?
本当の姉妹だったの!?
『カツミ イモウト二 トラレタ』
「気持ちは分かるよ、プロトちゃん……! 妹ってやつはいつの間に溢れ出てきて大変だよもう……!」
「よく分からない共通点が……」
「これは昼ドラの予感」
「見たことあるの葵……?」
白川ちゃんという突発的に現れた義妹? 妹を持つアルファが滅茶苦茶共感している。
……これってプロトちゃんとシロを会わせるのってマズくないかな?
絶対なにか起こるでしょ、これ。
第二部話数的にも丁度いいので総集編回でした。
それぞれのフォームをプロトに見せつつ振り返りました。
(予定通りに進めば)次回からいくつか閑話を挟みつつ、第三部に入るかと思います。