たくさんの投票、本当にありがとうございましたm(__)m
キャラ設定とストーリーも結果に沿ったものへと進むことになります。
アンケートの方は締め切らせていただきます。
前半が主人公視点。
後半がコスモ視点となります。
境遇もあまりいいものでもない。
周りにいる人たちも、あまりいい人達ではなかった。
『俺は、必要とはされていなかった』
両親の代わり、のような人たちは俺を追い出したがっていた。
引き取った俺を邪魔者扱いして、俺がいないところでは悪態をついて、俺の前では話しかけもせずに無視を決め込んでいた。
家族じゃない人たちとの生活。
歩み寄ろうとしたことをすぐに諦めた俺も悪いのかもしれない。
『俺は、生きていてもよかったのか?』
死んだ両親の記憶。
記憶にべっとりと張り付けられたそれが、いつも夢に出てきたせいで、楽しい思い出もなにもかもが全て無意味なものに思えて仕方がなかった。
正直、一人になれて助かった。
例え、押し込められた場所が目も当てられないオンボロアパートだったとしても、一人になれればそれでよかった。
まるで生きたまま死んでいたようだ。
『プロト、スーツ? なんじゃこりゃ』
それを見つけたのは、まるで誰かの声に導かれるように俺はどこかの建物に入り込んだ時であった。
特になにも考えずに、誰かが助けを求めていた気がしていた。
誰かが俺を呼んでいる泣き声が聞こえていた。
『呼んだのは、お前か?』
招かれたその先。
暗闇に包まれた空間に、置かれたスーツ。
それに触れた瞬間、俺の凍り付いた心に、これまで感じることのなかった熱が溢れだした。
「ッ!?」
目を覚まし、身体を起こす。
気だるい感覚に身を任せながら、俺は嫌な汗をぬぐいながら額を押さえる。
「ッ……な、なんだ……今の、夢……」
誰の……俺の、記憶か!?
思い出したくない、でも思い出さなければ……!!
そんな相反する衝動に駆られながら、ベッドから降りた俺は、そのまま部屋内の冷蔵庫へと歩み寄り、いつも通り水を手に取る。
乾いた喉を潤し、平静を取り戻したころで俺はようやく今いる場所が自分の部屋ではないことに気付く。
「……そうか、俺はここで寝ていたんだな……」
深夜に侵略者の襲撃があってジャスティスクルセイダーの本部に泊まることになったんだよな。
それでどういうことか、この部屋で寝るように勧められたわけだけど……。
「どう見ても独房だけど、そうとは思えない見た目なんだよなぁ」
鍵こそかけられていないが重厚な扉が取り付けられた部屋。
しかしその内装は、まるでたくさんの差し入れが持ってこられたようにもので溢れている。
本や、勉強道具、映画、それにサボテンまでもが置かれいるのもびっくりだ。
『カツキ!』
「……ん? ああ、そうだね。君もいたんだった」
テーブルに置かれた台に差し込まれたスマホのような機械。
そこから、少女のような声が聞こえてきたことに一瞬驚く。
『おはよっ! よく眠れた?』
「おはよう、プロト。ちょっと微妙かな、ははは」
深夜、本部に戻った直後にレイマに紹介された、携帯端末型AIの『プロトちゃん』というらしい。
プロトチェンジャーで話しかけてくれた声と同じらしく、本当に生きている人のように受け答えできるすごいAIだ。
『二度寝する?』
「いいや、起きるよ」
前よりも流暢に話していることに、成長速度の速さを改めて認識する。
「大分、話し方が自然になったな」
『頑張ったの! カツキのために!!』
「そうなのか……ありがとな」
『嬉しい!』
ものすごい自然に受け答えしてくれるな……。
すると、そんなプロトのいるテーブルの上に、オオカミ型のロボット、シロが飛び乗ってくる。
『ガウ!』
『むっ! 来たなー!』
なにやら険悪な様子。
声が波紋のように映し出させるプロトに、ぴょんぴょんと近づいたシロは何を思ったのか、尻尾でプロトを倒してしまう。
『や、やめろぉー!』
「こらっ、シロ! 駄目だろ!!」
『ガオ!! ガオォー!』
なぜか言い訳するように鳴くシロ。
どんな理由があっても、いじわるは駄目だぞ。
『わたしが姉なのにー!?』
『ガウァ――!! ガウガウ!!』
『ぬるま湯!? 温室育ち!? うわー、尻尾で叩くのはやめてー!?』
また喧嘩を吹っ掛け始めるシロを引きはがしながらため息をつく。
どうやら、シロとプロトの相性は悪いかもしれない。
シロはいつも俺の傍にいてくれるし、プロトはハクア姉さんからアルファに任せておくべきかな……。
「時間は、朝の八時か」
今日は幸い、バイトも休みなので急ぐ必要はないだろうけど、とりあえず着替えだけは済ませておこう。
部屋の中の棚から着替えを取り出し……って……ん?
「なんで俺、着替えの場所が分かるんだ……?」
……俺は以前ここにいた時があったのか?
「まさか、これが葵の言っていた理系シックスセンス……?」
『違うと思うの……』
そういえば昨日、レイマが貸し出してくれた服があったな。
寝巻用のジャージに着させてもらったものと、部屋着用のジャージがあるので部屋着用の方に袖を通し、手早く着替える。
すると、丁度いいタイミングで扉がノックされる。
「かっつん、よく眠れた?」
「おはよー」
やってきたのは姉さんとアルファだ。
アルファは姉さんと同じ場所で眠っていたようだ。
「おはよう。正直、戦いの後だから眠れたとは言えないかな」
「え、大丈夫?」
「ははは、大丈夫。一応は眠れたし、そこまで深刻な感じじゃないから」
一瞬、悪夢じみた夢を思い出し頭から振り払う。
「あ、そうだ」
「「?」」
俺はテーブルの上に置いていたプロトを二人に見せる。
「この子がプロトだ。二人はもう知っているのかな?」
「うん。カツキと会わせる前に何度も話しているからね」
『アルファ、私、友達』
「そうだったのか……」
へぇー、仲がいいんだな。
すると興味が惹かれたのか姉さんがプロトへと歩み寄る。
「わ、私は白川ハクア。えぇと、プロトちゃん?」
『ハクアは嫌い』
「ええええ!? なんで!?」
『つーん……』
なぜに姉さんが嫌いなんだ?
特に悪いことはしていないのに。
「姉さん、プロトになにかしたのか?」
「い、いやいや!? なにもしてないよっ! ……心当たりがないわけじゃないけど……」
ちらりと俺を見る姉さんに首を傾げる。
まあ、これから仲良くなっていけばいいだけの話だ。
それはそうと、プロトと仲がいいというなら……。
「アルファ、プロトのことは君に任せるよ」
「あ、い、いいけど……プロト?」
『え? ど、どうして? カツキ……?』
「シロと喧嘩するからな。もし壊されたら大変だ」
シロが誤って壊してしまったらレイマにも悪いし、なによりプロトも可哀そうだ。
そういう考えでプロトはアルファに任せることになった。
すると、静観していたシロが姉さんの肩に飛び乗る。
「ん? どうしたの、シロ? って、あたっ!? なんで頭をつつくのさ!? え、プロトの方を向けってこと!?」
『ガルー』
つんつんと頭を口で突かれ、涙目でアルファと向かい合う姉さん。
アルファとプロト、姉さんとシロという対照的な組み合わせだな。
『アルファァァ……』
「そ、そんなこと言われてもどうにもならないよっ……」
『ガルー』
「あ、ちょ、いたた!? 肩に爪が食い込んでるよ!?」
そろそろシロの方を叱るか。
いくら相棒でもやっていいことと悪いことがあるからな。
「シロ、それ以上やると俺も怒るぞ?」
『ガル……』
感情が豊かになるにつれて、行動できることも増えていったがその分やっていいことと駄目なことを教えていかなくては。
しゅんと落ち込むシロを姉さんから受け取っていると、ふと空腹にお腹を押さえる。
「……お腹空いてきたな……」
「なら、食堂に行こうよ。ここ、ちゃんと朝食メニューとかやってるし」
「すごいな、なら行ってみよう」
昨日の戦いの後から何も食べていなかったからな。
てか深夜だったし、寝ている最中だったし食べるとか関係ないんだけども。
『お前がヴァースの子か。また随分と幼いな』
齢にして10になった頃、ボクは自身が仕えるべき絶対の主との出会いを果たした。
姿は見えず、暗黒に包まれた玉座から見下ろした“あの方”はその声のみでボクに語り掛けてくださった。
理解が及ぶことの敵わないほどのお力。
姿は見えずとも、魅入られる存在感。
ただその存在を認識しただけで、あらゆる有象無象の頂点に君臨なさっていると確信できていた。
思えばこの瞬間からボクは魅入られていたのだろう。
強制されることもなく地に膝を突き頭を垂れたボクは、御身に意識を向けていただけている事実に至上の喜びをかみしめていた。
『ぎ、義理の父でございます。ボ……私など、父上の技量の足元にも及ばない未熟者です……』
『そう自分を卑下するでない。さて……』
玉座を包んでいた暗闇が晴れ、そこから青い肌を持つ女性が現れる。
それが“あの方”の姿と即座に理解した私は、高揚と畏怖に身を震わせる。
『楽にするがいい。少しばかり話そうではないか』
『ハ……ハイ……!』
序列二桁であろうとも、このお方の姿を見ることなどほとんどない。
ましてや、そのお名前を知る者も、一握りいるかどうかだ。
全てが謎に包まれた、あのお方の正体の一端に、ボクは声を上ずらせながらも頷いた。
『中々の潜在能力を秘めているようだ。あのジジィが目にかける理由も分かる』
ゆっくりとした足取りで玉座を降り、こちらにまで歩み寄ってきた彼女は跪くボクを見下ろしそう呟く。
『さて、お前は星将序列を得て、どうする?』
『どうする、ですか?』
『心配するでない、ただの興味本位だ』
強くなってどうしたいのか……。
これまでは、滅びゆく星からボクを救ってくださった父上の恩義と期待に応えるため、研鑽を重ねてきた。
だが、今この時からはボクの行動原理は大きく変わりつつあったのだ。
『貴女様のために力を振るう覚悟であります……!』
『……。ほう、それは勇ましいことだ』
短い沈黙の後にそう返した“あの方”。
この命は自らのものでは非ず。
今生の全てを、主に捧げるためのもの。
『励むがいい』
肩に手が置かれる。
冷たい手の感触に身体を震わせるボクに、“あの方”は静かに冷徹に語り掛けてくださった。
『期待しているぞ、コスモ』
『ぁっ……はいっ!!』
どれほどの喜びだったことか。
序列の名を持たない頃の自分が、“あの方”に認識された。
父を通して、ボクを見てくれた。
たったそれだけの事実が、嬉しかったのだ。
「……日が昇ったか」
どうやら暫し眠ってしまっていたようだ。
座ったままの状態から立ち上がり、どこかの屋上から眼下の景色を見下ろすと、地球という星特有の街並みが視界に映りこむ。
「おかしな星だ……」
地球人の姿は、奇しくもボクに限りなく近いが、その文明のレベルはあまり良いとは言い難い。
しかし、そのような場所にあれだけの強さを持つ奴らがいるとは……。
『ギャーオ』
「うん?」
ボクの足元に青色の生物型の機械がすり寄ってくる。
その子を手に平に乗せ、視線を合わせる。
『ギャオー!』
「おはよう、レオ。警戒ご苦労さま」
唯一の相棒であり、戦うための道具。
かの有名な悪魔の科学者、ゴールディが心血を注いで作り出した傑作強化スーツの一つ。
“LEGULUS DRIVER”
「……集合時刻か。変身して移動するか」
持ち込んだ端末を確認したボクは、手の中でレオを変形させ、変身工程を開始させる。
起動と同時に、腰にベルトが巻き付き変形させたレオ――バックルを、上からはめ込む。
『L・E・O』
全身をゼリー状のエネルギーが包み込み、それらがスーツ、アーマーを形作る。
『
あふれ出す力を押さえ込むように、上から装甲を重ねて、ボクという戦士を完成に近づけていく。
『
エネルギーが血潮のように弾け飛ぶ。
幾重にも重なった青色の装甲から空気を吐き出し、変身を完了させたボクは肩を大きく回しながら、手元の端末を操作し、専用のビークルを出現させる。
『
空間から現れた青色のレオを模した空中に浮かぶバイク型のビークル、レオチェイサーに跨ったボクはそのまま空を駆けて、目的地へと走り出す。
「……!」
透明化し、空を駆けながら思い出すは昨夜、遭遇した戦士。
地球の守護者の一人、白騎士。
可能性を秘めた戦士と父上が評していたが、その評価は誤りなどではなかった。
『コスモよ。我らが主は、白騎士にご執心のようだぞ』
地球に向かう前に、珍しく見送りにやってきてくださった父上のお言葉。
父としてではなく、星将序列一位として口にしてきたソレは、ボクの心を激しくかき乱した。
『名を教え、白騎士を導こうとしている。お前はどうだ? その地位に甘んじている場合か?』
胸の内がかき乱される。
『期待しているぞ、コスモ』
その言葉が、記憶が鮮明なものとなって思い起こされる。
あの方の興味は、ボクには向けられていない。
どこぞとしれない、辺境の星に住む一人の地球人へと向けられている。
『私を、そして“あの方”を失望させるな、娘よ』
握りしめたハンドルに力を籠め、さらにビークルを加速させる。
「白騎士ぃ……!!」
認められるか……!!
ボクはまだ、失望されていない!!
激情を理性で押さえ込みながらもボクは指定された目的地へと到着する。
「……ここか」
ビークルから降り、周囲を見渡す。
地球人の寄り付かない古びた倉庫が立ち並ぶ区画。
周囲にいくつもの反応があることから、ここが呼び出された場所なのだと気付く。
「やあ、67位! 元気そうだねぇ!」
「!」
声に振り返ると、そこには制服に身を包んだ少女が立っていることに気付く。
腰には刺々しく不格好なベルトが巻かれており、その真ん中の宝玉――コアには怪しい意志のようなものが感じられた。
「ヒラルダ。なんだよ、その姿……」
「なんだって、そりゃあ、地球人の身体を借りているのさ」
くるり、とその場を回った少女の目には光がない。
星将序列46位“贄のヒラルダ”
その悪辣な特性と戦闘力を聞き及んでいたボクは冷たい視線を奴へと向ける。
「地球人は、身体が弱くてね。気をつけないとうっかり殺してしまうから大変だよ」
「……悪趣味な」
「あははは! そりゃ、生きたままコアにされたらこうなって当然じゃん! できれば私としては、君の肉体を奪いたいところだけどねー」
「言ってろ」
反吐が出る。
意識を表面化させたアルファの末路の一つがあれだとは……。
気づけば、倉庫内にちらほらとボクと同じ、序列持ちがやってくる。
ある程度見知った顔もいれば、見たことのない奴もいるが、全員が序列二桁の実力者、さすがに30位以上はいないようだけど……。
「それで、どうしてボク達は呼び出されたんだ?」
「うーん、多分あれじゃない? 今後の戦いについてじゃない?」
集められたのは序列30位から下の者達。
それも地球で順番待ちをしている面々だ。
「集まったようだね、諸君」
すると、倉庫内で声を発した男の姿を見つける。
円形のマスクを被った厚手のスーツを纏った大男は、ボクを含めた全員を見回す。
「072とジェム君が来ていないようだが、彼らはどうしたのだね?」
そう呟き首を捻りながらも、大男は顔も見えないマスクから声を発する。
「よく集まってくれた。俺は星将序列044位“ガウス”。君達には悪魔の科学者といった方が分かりやすいかね?」
悪魔の科学者ガウス。
ゴールディの強化スーツを、コピーし汎用性を高め流通させた奴だっけかな?
ボク自身、他の序列のものに詳しいわけではないが、その悪名だけは良く知っている。
「此度は、今後の侵略において、ある提案をしようと思い。お前達を呼び寄せた」
静観するボク達に満足そうに頷いたガウス。
彼は手元の道具を地面に放り投げ、空中に映像を映し出す。
「この星を守るジャスティスクルセイダーと白騎士の力は本物。これまでの侵略と同様のやり方では、奴らを排除することすら不可能」
「なら、どうするのさー」
楽し気に、場の空気を壊すようにヒラルダが野次を飛ばす。
まるでそんな野次が飛ぶのを分かっていたかのように、大仰に腕を広げた奴は仮面の奥で不快な声を漏らした。
「同盟を組もうというだけの話だ。力を合わせて、皆で足並みを揃えて侵略をしようじゃないか」
「……くだらない」
明らかに、同盟以外の目的を感じさせるガウスの提案にボクはそう吐き捨てる。
ボクに視線が集まるのを感じながらも、背を向けその場を離れる。
同盟を結ぶ者がいるだろう。
ジャスティスクルセイダーは、それだけの強敵なのも理解できる。
「ボクが戦う相手は、一人だけだ……!!」
今回のボクの目的は、白騎士だけだ。
他のことなんて、どうでもいい。
『———コスモ』
「!!??」
その場を離れ、隠れ家に戻ろうとしたところで声が頭に響いてくる。
この声を、聞き間違えるはずがない!!
「な、なぜ!? 貴女様がボクなんかに!?」
『自身を卑下するでない。そう言っただろう? コスモ』
「はい……はいっ……」
耳に手を当て、しきりに頷く。
なぜか、どうして、という疑問がぐるぐると頭の中を回るが、あの方が直接ボクに語り掛けてくる事実がなによりもボクの思考を優先させた。
『白騎士と戦うつもりなのだな』
「……その、通りでございます。出過ぎた真似をしてしまい申し訳ありません」
止められてしまうのか?
ボクの醜い嫉妬心など承知しているはずだ。
自然と身体を震わせるボクに、あの方は驚くほど穏やかな口調で語り掛けてくる。
『我が名はルインだ』
「ぇ?」
『些か不公平だと思ってな。お前にも我が名を授けてやろう』
「ぁ、あ……」
驚きに声を失う。
そんなボクの反応を楽しむように、あの方……ルイン様は語り掛けてくれる。
『白騎士とお前、どちらが強者であるか。証明してみるがいい』
「しょう、めい……」
『期待しているぞ、コスモ』
その言葉を最後に、ルイン様の声は途切れた。
呆然とその場に立ち尽くす。
心の奥底で溢れてきたのは、白騎士への怒りなどではなく、かつてないほどの喜びの感情であった。
「ボクが、証明……する……」
ルイン様のために、白騎士を打ち倒してボクの価値を示すんだ……。
嫉妬に駆られたコスモちゃんを激励してくれるルイン様は本当エボルトいい人。
頑張って流暢に喋れるようになったプロトと、宿主乗っ取り型ベルトの登場回でした。