追加戦士になりたくない黒騎士くん   作:クロカタ

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前回の続きとなります。


裏切りの侵略者

 二人の大森さんと共に俺とレイマは店の外に出ることになった。

 その際、レイマはハクア姉さんに自身の持つカードを渡して出て行ったので、会計に関しての問題はなさそうだったが……。

 

「隣の部屋を見て驚いたのだが……」

「はい?」

「白川くんってあんな食べるの……? 鉄板を埋め尽くすほどのお好み焼きが作られた上に、皿が積み重ねられていたんだが」

「育ち盛りらしいですからね。はは」

「恐るべし、一歳児……」

 

 なにやら戦慄しているレイマと共に少し歩いた先にある大きな公園へと足を運ぶ。

 大きな公園なようで、ウォーキングコースなどで使われる広さの公園へと移動した俺達は、街灯に照らされた場所で立ち止まり、二人の大森さんへと向き直る。

 

「では、話を聞こうか」

「ナツ、どうする……?」

 

 ナツ? もう一人の大森さんはナツと呼ばれているのか?

 おどおどしている大森さんの視線にもう一人の大森さん……否、ナツはため息を零す。

 

「白状するしかないだろう」

「でも貴方が……」

「ここまできたらしょうがない。受け入れる」

 

 軽く深呼吸をしたナツは、意を決したような顔と共に俺とレイマを見る。

 

「私は、グラト。星将序列072“飢餓のグラト”」

「「!?」」

「マナがナツと呼んでいるのは、私の序列が72位だからだ」

 

 星将序列……!?

 まさかの正体に俺とレイマが驚く。

 

「ま、待ってください! え、えーと、確かにこの子は星将序列とかいう傍迷惑な侵略者の一人ですけど、今は違うんです!」

「違う? いったいどういうことだ。大森君」

「彼は……えーと、友達なんです!!」

 

 友達……侵略者と友達になったの!? 大森さん!?

 すると、勢いのままに言葉にした大森さんが、続けて声を発する。

 

「始まりは、一か月と少し前です」

「割と最近ではないか」

「私は、いつものように家でティータイムアロマキャンドルに興じながら、海外ドラマを見ていた時……」

「いや、マナ。その時のお前は缶ビールつまみで、B級サメ映画を――」

「見ていた時の話です……!!」

 

 ……今のグラトの呟きは聞かなかったことにしよう。

 ちらりとグラトを睨みつけた大森さんは話を続ける。

 


 始まりは、いつものように疲れ切って自宅に帰った夜のことでした。

 最近流行りのウォーキングデッド? 確かそんな名前だったよね……? の続きを見ながら気分を落ち着け日頃のストレスを解消している時に、彼はやってきたのです。

 

「くぅーっ! やっぱり仕事の後はこれだなーっ!」

「動くな」

「ひぇ!?」

 

 いつの間にか背後にやってきた侵略者。

 そいつの目的は、ジャスティスクルセイダーの本部で働いている私に成り代わり、情報を盗み出すためだった。

 

「大森真奈! 悪いが、お前にはここで死んでもらう!!」

「いやぁぁぁぁ!?」

 

 他人に化ける能力を持っていた彼は、私に成り代わるために私を殺そうとしたのです。

 肌白い男の姿から、私そっくりに変身した彼から逃れようとするけど、相手は人の力を超えた怪物。

 私のようなか弱い女の子には太刀打ちできるはずもなく、すぐに首を掴まれ止めをさされそうになってしまいました。

 

「終わりだ……!」

「うぅ……」

「悪く思うなよ……ん?」

 

 吊り上げた私の首を掴む手が放された。

 彼の視線の先には、テーブルの上にのせられた、用意されたおつまみがのせられていたのです。

 

「……これはなんだ」

「え、なにが……?」

「これだ。なんだこれは」

「スルメ……だよ?」

「食べ物?」

「食べ物」

「……言っておくが、この私に毒は効かないぞ?」

 

 そう言葉にしながらスルメを口に運ぶ。

 すると、彼は目を見開きながら驚愕に打ち震えました。

 

「なんだこれは、噛めば噛むほど味が出てくる!? 地球人はこんなものを食べているのか!?」

「え、スルメ程度で……?」

「程度、だと……!?」

 

 それから、私は冷蔵庫やらコンビニからで食べ物を持って彼に食べさせました。

 え? お金? 生きるか死ぬかの瀬戸際にいたらお金なんて紙屑ですから、糸目はつけませんでした。

 持って来た食べ物全てをあっという間にたいらげた彼は、暫し腕を組んだ後に、緊張した面持ちで座っている私に向けて、言葉を言い放つ。

 

「侵略、やめる」

「えっ?」

 

 聞き間違いかと思い聞き返してしまいました。

 恐らく、この時の私は呆気にとられた表情を浮かべていたことでしょう。

 

「侵略やめる」

 

 まさか、ただご飯食べさせただけで侵略をやめるとは思いもしなかったから。


 

「こうして私とナツの奇妙な生活が始まりました」

「……大体は間違っていないな」

「ちょっっっっと、待ってください……!!」

 

 駄目だ、理解が追い付かなかった……!?

 経緯を話してもらっても意味が分からん!?

 大森さんが危険な目に遭っていたのは分かった。

 それは理解できたけど、そこから先が問題だ。

 

「どうして食べ物で心変わりするんだ……!?」

 

 そこが一番よく分からない!

 最早、頭を抱える俺の肩に、先ほどから沈黙していたレイマが手を乗せてくる。

 

「正直、気持ちはよく分かる」

「分かるんですか!?」

「ぶっちゃけ地球外の食べ物は、基本的にマズイ。いや……そもそも、食に味を求めるという考えそのものすらなかった。芸術性の欠片もない、長方形の粘土のような保存食。無味無臭のガムのような食感の栄養食。水に苦味と生臭さを混ぜ込んだ栄養水。……あの味を知っている身として言わせてもらうと、食に関する感動はとてもよく理解できる」

 

 すげぇ語るじゃん……。

 レイマに軽く引いていると、話はまだ終わっていないのか今度は思い出に浸るように瞳を閉じた。

 

「フッ、私の舌が初めて“美味い”と認識したものは、皮肉にも先せ……ヴァースに押し付けられた飴玉だったか……今となっては懐かしい話だ」

 

 遠い目をするレイマ。

 宇宙の食事事情が少し心配になってしまっていると、グラトがレイマに声をかける。

 

「……分かるのか? ゴールディ」

「分かるさ。同じだからな。君も地球の食文化に魅入られた一人だ。変身能力から察するに、君はグルゥトゥ星の生き残りだろう?」

「流石は、元61位というべきか……」

 

 観念したとばかりに近くのベンチに腰掛けたグラトは、地面を見つめる。

 

「グルゥトゥ星に住む我々は、食べれば食べるほど力を増す特殊な性質を持つ……ということは知っているか」

「ああ。資料で目にした時がある」

「……。ただ食べられればいい、とだけ考える同胞の中で私は異端だった。食べれば食べるほど強くなるのだから、そう考えてもおかしくはないが……私は、食に味という概念を求めた」

「そして、ついにこの地球を見つけたというわけか」

 

 レイマの言葉にグラトが頷く。

 

「皆、食欲に呑み込まれその身を壊し、果ては自身の星までもを食らいつくした。だが、私は理性という力で己を律し、誘惑を振り払いながら己の目的を成し遂げようとした。……だからこそ、マナには感謝している」

「ナツ……」

「普段がだらしなく、私の用意した菓子を白騎士に渡しに行く馬鹿者でもあったが……」

「そういう貴方だって私の給料勝手に使い込んで、飯食いに行っているでしょうが……!!」

「「……」」

 

 お、大森さん同士が睨み合っている……!?

 と、止めようかと思いおどおどとしていると、腕を組んで考え込んでいたレイマが首を傾げた。

 

「む、気になったのだが、なぜグラトは大森君の代わりに職場に出ていたんだ?」

「あ、そ、それはあのですね! 海よりも谷よりも深い事情が――」

「マナに頼まれただけだ」

「ぎくっ……」

「……ほう」

 

 レイマの目に光が走る。

 俺はなんとなく事情を察したので、何も言わないことにする。

 

「働かざる者食うべからずという言葉がこの地球にあるらしくてな。地球の美味たる食べ物を得るためには、この私も働いて賃金を稼がなければならないと知り、マナの仕事の半分を肩代わりすることになった」

「なるほど……」

 

 ぐるんっ! とレイマの視線が大森さんへと向けられる。

 

「大森ィ……無垢な侵略者騙して仕事サボるとはいい度胸だなぁ……」

「出来心だったんです……」

「正座しろ! 正座!!」

 

 その場で正座させようとする彼に慌てて止めにかかる。

 ここに人が通らないと限らないし、誰かに動画や写真でも撮られたら大変なことになる!?

 

「ま、まあ、大森さんも怖い目に遭っていたんですし……正直、それまで気付けない俺達も悪かったことですし……」

「……うぐっ……」

「か、カツキくん……!」

 

 下手をすれば大森さんは殺されていたかもしれなかったのだ。

 

「とにかくグラトに対する処遇についてだが……こちらで監視をつけることになるだろう」

「殺さ、ないのか?」

「我々は殺人集団ではない。こちらに害する意思がなければ、我々も手は出さない。こちらに協力する意思があるというのならば、ある程度の生活の補助はするつもりだ」

「……感謝する」

 

 戦うようなことがなく正直安心している。

 これまで会ってきた侵略者のほとんどが殺意剥き出しで襲い掛かってきたからな……。

 そういう意味では、グラトという存在はこれからの状況を変えるカギになるかもしれない。

 

「これで一件落着か……」

「あ、じゃあ、私さっきのお店に戻りたいです。まだ何も食べてないので」

「それは私もだ。あの程度では腹が膨れん。……白川君が、どれだけ暴食の限りを尽くしているかも不安なので、店に戻るとするか」

 

 とりあえず先ほどの店に戻るために歩き出す。

 しかし、その時前方から誰かがこちらへ近づいてきているのが見える。

 

「ほっ、ほっ」

 

 ……どうやら、夜にランニングをしている人のようだ。

 暗闇の中から走ってきたのは灰色のパーカーを着た少女。

 暗いからか、どこか瞳に光がない少女に、ちょっと怖くなる。

 

「こんばんわー」

「あ、こんばんわ」

 

 こちらに微笑み、軽く挨拶をしてくれた少女に反射的に挨拶を交わす。

 こんな時間に危ないな、と思いながらすれ違ったその時……。

 

――……逃げ、て

 

 頭に響いてきた誰かの声。

 猛烈な悪寒を感じ取り、背後を振り向く。

 振り向いた先の視界では、歪んだ笑みを浮かべた少女がその手に持った丸みを帯びた長方形の物体を俺に突きつけようとしている姿が映り込む。

 咄嗟に物体ごと手を掴み、腰に取り付けられそうになったソレを止める。

 

「カツキ君!?」

「ッ!? お前は……!?」

 

 何者かの襲撃に気付いたレイマとグラトが驚きの声を上げる。

 俺は、少女とは思えない力に抗いながら、突き出されたソレを見て驚愕する。

 

「ッ、な、なに……?」

「ざーんねんっ。惜しかったなぁ」

 

 伸ばされた手に持たれていたのはバックル、のようなもの。

 棘のついた緑と赤の入り混じった不気味な色合いをしたソレを、突き出した見知らぬ少女は歪んだ笑みを浮かべながら、俺から一歩離れる。

 

「あと少しでSランクの宿主を手に入れられたのに」

「ッ」

 

 触れたバックルから手が離れると同時に、心がかき乱されるような感覚に陥る。

 喉が渇いたと錯覚するほどの寂しさ。

 胸の奥底で煮えたぎるような怒りと、何かを焦がれ、心を引き裂くような形容しがたい感情に、無意識に目から涙が溢れ出る。

 

「ッ、泣いている……? 誰が?」

「……。は? え、嘘でしょ……今ので……?」

 

 袖で乱暴に涙を拭った俺に、少女は呆気にとられた表情を浮かべる。

 

「ッ、シロ!!」

『ガオ!』

LUPUS(ルプス) DRIVER(ドライバー)!!』

 

 近くにいてくれているシロが草陰から飛び出し俺の手に収まる。

 ベルトが出現したことを確認し、バックルを嵌め込み、ボタンを叩き変身を開始させる。

 

BREAK(ブレイク) FORM(フォーム)!! COMPLETE(コンプリート)……』

「レイマ!」

「ああ既に、レッド達を呼んだ!!」

 

 仕事が早い!!

 なら俺はここで守りに徹して援軍を待つ!!

 変身し、アーマーに包まれた拳を握りしめる俺を目にした少女はその場にそぐわない笑顔を浮かべる。

 

「いいなー、嫉妬しちゃうなー。私はこんな様(・・・・)なのに、君はそうなんだー。いい宿主に恵まれてるなー」

「その身体は、お前の身体じゃないな?」

「そこまで分かっちゃうんだ。もしかして、声も聞いちゃったのかな? あ、そっかぁ、だから気付かれちゃったんだぁ」

 

 嫌な感じはあのベルトからしかしない。

 それ以外は、むしろ生身は……地球に住む人間そのものだ。

 

「はじめまして、私は星将序列46位“贄のヒラルダ”でっす♪」

 

 そう名乗った少女、ヒラルダの手には俺にとりつけようとしていたバックルが握られていた。

 それを出現したベルトに嵌め込んだ彼女は、ぺろりと自身の指先を舐める。

 

「いっつも適当にやってるけど……今回だけは、ちょっと味見でもしようかな。裏切り者も始末しなきゃいけないし」

SCREAM(スクリーム) DRIVER(ドライバー)

 

 少女の声と同じ音声がバックルから流れる。

 ドッ、ドッ、ドッ、という心臓の鼓動に似た不気味な音声が流したヒラルダが、掲げた手をバックルへと添える。

 

「変し……うん?」

「?」

 

 変身を行おうとして背後を振り向いた彼女に、構えかけた手を止める。

 視線を追ってみると、そこにはボロボロの外套に身を包んだ、新たな人影が現れていた。

 頭に被ったフードの隙間からは、無造作に伸ばされた長い緑色の髪が見える。

 

「あれ、もしかしてコスモ? うわぁー、見違えたなー。ねえ、どうしたの?」

「……」

「……。あー、はいはい。分かったよ。今回は貴女に譲ることにする」

 

 ベルトからバックルを外したヒラルダは、降参するように両腕を上に掲げながら後ろへと下がる。

 コスモ、だって?

 でも、前に変身を解除した時はあそこまで髪が長くなかったはずだ。

 ゆっくりと前に歩み出たコスモと呼ばれたそいつは、ゆらりと右手を上げ、立てた指をレイマの後ろに立っているグラトへと向けた。

 

「星将序列の恥さらしめ……ルイン様への忠誠を忘れた不届き者に、裁きを下す」

「……なん、だって?」

 

SIN(シン) LEGURUS(レグルス) DRIVER(ドライバー)

 

 青色から黒色へと塗り替えられたバックルがひとりでにコスモの腰へと装着される。

 獣が爪を立てるような不快音がバックルから響き、コスモの足元から黒いヘドロのようなオーラが溢れ出てくる。

 

WARNING(ワーニング)!! WARNING(ワーニング)!! WARNING(ワーニング)!!』

 

 鳴り響く警告音。

 彼女はそれを意に介さないまま、迷いなく掌で押すようにバックルを起動させる。

 これは、前と同じ……!?

 黒い泥のオーラに全身が包まれた彼女に俺はその手にグラビティグリップを取り出し、変身を開始させる。

 

GRAVITY(グラビティ)!!』

COME ON(カモン)!!

 

 俺の青いエネルギーフィールドと、コスモの緑色のエネルギーフィールドがぶつかりあい、衝撃波と電撃を周囲へまき散らす。

 

BLACK(ブラック) & WHITE!!(ホワイト)!!』

DEVASTATENING(ディヴァステイティング!) RANPEGE(ランペイジ)!!

 

 重なるように鳴り響いていく音声。

 コスモはヘドロのようなオーラが身体に纏わりつきアーマーの形状を成していき、俺は空中に浮かび上がったアーマーが金属音と共に全身へとはめ込まれていく。

 

EVIL(イビル) OR(オア) JUSTICE(ジャスティス)!!』

GREAT(グレート) BEAST(ビースト)!! FALL(フォール) INTO(イントゥ) DESAIRE(ディザイア)!!!

 

 フィールドがぶつかりあい、拮抗しながらアーマーの展開が終了していく。

 

ANOTHER(アナザー) FORM(フォーム)!! COMPLETE(コンプリート)……』

ARMOR:ZONE(アーマー ゾーン)!! JOKER(ジョーカー) FORM(フォーム)!!!

 

 最後に余剰により生じたエネルギーが弾ける。

 アナザーフォームへの変身を完了させた俺の前に現れたのは、青いアンダースーツの上に、黒い禍々しいアーマーを纏わせた戦士。

 凶暴な印象を抱かせる頭部のマスクと、鋭利な形状へと変わった両手の爪と、腕に取り付けられた刃。

 まるで、身体そのものを武器へと進化させた相手に得体のしれない悪寒に襲われ、前に飛び出すと同時に拳を振るう。

 

「ッ」

「……」

 

 次の瞬間には、コスモが突き出した拳と俺の拳が激突する。

 破裂音が響き、腕に衝撃が伝わる。

 相手が微動だにしていないことに驚きながら、回し蹴りを叩きつけると、アナザーフォームで格段に強化されたはずの攻撃が、片腕のみで止められる。

 

「確信したよ」

「!」

「ボクは、お前よりも強い。ずっと、強い」

 

 強い踏み込み。

 認識できたのはそこまでで、次の瞬間俺の上半身に凄まじい衝撃が叩きつけられ、後方に吹き飛ばされる。

 殴り飛ばされたのか!? 反射的に腕を防御に使っていなければ危なかったな……!!

 地面に手をつき立ち上がりながら、後ろにいるレイマたちへと声をかける。

 

「レイマ!! グラトと大森さんを連れてここから離れてくれ!!」

「了解した!!」

 

 相手の狙いは俺と、裏切り者と呼ばれたグラトだ!

 

「かかっ、くひっ……あは……はぁ……!」

 

 力に酔いしれるように自身を抱きしめ笑い出すコスモ。

 まともじゃない……! なにかされたのか!?

 だけど、持っている力は本物だ……!

 

――コスモ

「ええ、ええ……分かっています。ルイン様

――うむ

「倒します。倒してみせます。裏切り者も、白騎士も全員葬ります!!!」

――ああ、見ているぞ

 

 独り言を呟くコスモ。

 誰かと通信しているのかと警戒していると、俺の頭にルインさんの声が響いてくる。

 

――強敵だぞ。

――今のお前では勝てない相手だ。

 

 断言する声に顔を顰める。

 この声は、今までの戦闘で間違ったことを口にしていない。

 そう言うほどに、目の前のコスモは驚異的な敵へと成ってしまった。

 

「それでも、俺は戦います!! 誰が相手だろうとも!!」

――!

 

 勝てないから逃げる?

 そんなことをしてどうなる!!

 俺が戦うことをやめて、誰かが傷つくことなんてあっていいはずがない!!

 

――ああ、私の可愛い、カツキ。

――死力を尽くして、活路を見極めろ。

――その末に、私の想定を超えたお前だけの道があるはずだ

「はい!!」

 

 両足を地面に打ち付け、構えを取る。

 この俺の後ろにいる人たちも、誰も傷つけさせやしない!!

 




主人公だけじゃなくちゃんとコスモにも話しかけてくれるルイン様でした。
本当に鬼畜優しい。

食べ物だけで裏切った序列072位のグラト君でした。
食べ物が絡まなければ割と常識人。

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