追加戦士になりたくない黒騎士くん   作:クロカタ

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お待たせしました。

前半がコスモ視点。
後半はハクア視点となります。


変態と、過去の失言

 白騎士にボクは勝利した。

 力で上回り、奴に最大の攻撃をぶち当て気絶にまで追い込んだ。

 ボクの力で勝った。

 そのはずだった。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 暗い路地。

 湿気に満ちた陰鬱な雰囲気を醸し出す、その場所で変身を解いたボクは、ジャスティスクルセイダーのレッドに切り裂かれた肩を押さえていた。

 

「どうして……」

 

 この胸に渦巻く不安と疑念が晴れることはない。

 勝ったはずなのに、これでルイン様に認められるはずなのにちっとも嬉しくはないんだ。

 それどころか、喜びとは異なる焦燥にも似た感情だけがボクの胸を占める。

 

ボクは勝ったのか? 

倒したはずだ

あれを勝利と言えるのか?

勝ちは勝ちだ

本当に?

なんの不満がある。

そう言い切れるのか?

勝ち方に拘るなんて今更だ。

ボクを倒す寸前にまで追い詰めた。

結果が全てだ。

その一瞬の差で僕は勝っただけにすぎない。

立っていたのはボクだ。

 

 ルイン様との修行の結果、力を引き出した。

 力が無限に溢れてくると思えるほどの全能感。

 なんだってできる。

 なにをされても許される。

 これまで抑圧してきた衝動のままに暴れたボクは、その果てに自分の持つ力に疑問を持ってしまった。

 

「ボクは、こんな戦いをしたかったわけじゃ……!!」

 

 技術もなにもない獣同然の戦い方。

 だがその一方で白騎士は、経験と技術でボクと渡り合った。

 相手は憎き怨敵……のはずなのに、ボクの心に浮かんだ感情は、憎悪とはまた別の感情だった。

 

「くっ、うぅ……」

 

 肩の傷がうずく。

 それほど深くはないけど、傷口からは血が滲んでいる。

 ボクは、懐から注射型の鎮痛剤を取り出し、肩へと突き刺す。

 

「……ッ」

 

 ジャスティスクルセイダー。

 地球の守護者と呼ばれている者達の力は、はっきり言って異常だ。

 下手をすれば、星将序列30番台か、それ以上の実力を有している可能性ある。

 

「ルイン様……ボクは、どうしたら……どうしたら、いいんですか……」

 

 ボクの問いにルイン様は答えてくださらない。

 空しくボクの声が響いたことにうなだれながら、壁に背を預ける。

 

「分かりません……ボクは、今の自分が正しいのか……分かりません……」

 

 地面に座り込み、膝を抱える。

 レオは、変身を解いてもなお物言わぬベルトの一部となり、沈黙し続けている。

 

「それは貴女が自分の本心を誤魔化しているから」

「……ッ!」

 

 ボク以外の何者かの声に立ち上がる。

 咄嗟にベルトを構えて見せると、そこには派手な服装に身を包んだ変態がそこにいた。

 

「へっ、変態!?」

「変態とはご挨拶ね。通りすがりの乙女よ

「乙……女……?」

 

 何者だ……?

 謎のふてぶてしさと共に腕を組んだ得体のしれない乙女を名乗る男は、ボクが背を預けている壁とは反対の壁に移動し、向かい合うように背中を預ける。

 

「私はサニー。星将序列に名を連ねる女傑とは、私のことよ」

「……。な、なんの、用だ」

 

 こ、こんな衝撃的すぎる見た目なやつはいただろうか……?

 なんか、普通に怖い。

 警戒を露わにするボクにサニーと名乗った男は、肩を竦める。

 

「観光よ」

「は?」

「か・ん・こ・うよ。私、別に戦いに来たわけじゃないの」

「なにを、言ってる……?」

 

 まさかそんな理由で?

 ルイン様の指令はどうするつもりだ?

 きっと、マヌケな顔になっているであろうボクに、サニーはくすくすと笑みを浮かべる。

 

「今日はそうね。貴女のことが気になって話しかけようかなって思ったの」

「ボクを殺しに、きたのか?」

「ふふっ、そんなことするわけないじゃない」

 

 おどけたように肩を竦めるサニーに毒気が抜かれる。

 ヒラルダのように人を小ばかにしたような雰囲気じゃない。

 まるで、温かい明かりのような穏やかな声と雰囲気に、ボクは不思議と警戒を解いてしまう。

 

「ヴァースったら。子育てが下手ねぇ。不器用っていうのかしら?」

「……ッッ」

 

 父の名を親しみを込めて呼ぶ。

 その事実だけで、ボクは相手が遥かに格上の序列だと認識する。

 軽く歩み寄ってきた彼が、煤汚れたボクの頬を懐から取り出したハンカチで拭う。

 相手が序列が遥か上の格上だと察して、動けないでいるボクにサニーは微笑ましそうに笑う。

 

「あら、怪我をしているじゃない! 大変、女の子なんだから怪我を放っておいちゃだめじゃない!」

「え、あ、ちょ!? おい! やめ!!」

 

 一瞬で外套を剥ぎ取られ、傷を診られる。

 血が止まっているが、信じられないほどに綺麗な切り傷に我ながらびっくりしていると、サニーが治療用のキットを手元に転送させ、傷の手当をしてくれる。

 抗えない強引さに、ただ成すすべなく治療されるしかない。

 

「余計なおせっかいをするなぁ!」

「嫌ならどけてみなさい。言っておくけど、私序列一桁よ?」

「嘘!?」

「嘘じゃないわよー」

 

 予想を遥かに超えた上の存在に素っ頓狂な声が漏れる。

 父を含めた序列一桁――精鋭中の精鋭であり、まさしく全宇宙から選び出された超常の戦士達。

 その中の一人が、サニーというのが本当なら、なんで序列67位のボクなんかを気にかけるんだ、こいつは……。

 

「白騎士ちゃんに勝った気がしない?」

「! ……見て、いたの?」

「私、あの子達の大ファンなの。むしろ、応援しちゃってるかも」

「……裏切って、いるの?」

「フフ、中立なだけよ」

 

 ボクではなく、倒すべきはずの白騎士を応援していた……のか?

 胸の奥底で粘りつくような嫉妬心が溢れ出る。

 

「どうして、勝ったと思えないか分かる?」

「……」

 

 それが分かれば苦労しない。

 無言のボクに治療用のスプレーを吹き付けたサニーは、呆れたため息を漏らす。

 

「貴女の戦う理由はなに?」

「認められたい……から」

「はい、だめー」

「あうっ……!? な、なにするんだ!」

 

 額に衝撃が走る。

 ボクの額をサニーが指で弾いたと気付きながら、その威力に額を押さえる。

 

「戦う理由を、他人に依存させてどうするのよ」

「……依存……なんかじゃ……」

「貴女は戦う相手を見ていたの? 貴女と真っ向から戦う白騎士ちゃんの姿を見ていたの? ただ自分のために倒される敵としか見ていなかったんじゃないの?」

「違う……」

「はい、うそー」

「またっ!?」

 

 また額を小突かれ涙目になってしまう。

 

「貴女は誰も見ていなかった。認められたいって思いだけで、白騎士ちゃんと、そのバックルと……他ならぬ自分自身さえもね」

 

 ボクは戦うべき相手の白騎士を見ていたのだろうか?

 レオと向き合えていたのだろうか?

 それさえも、分からない。

 ボクは、ボクが分からない。

 

「貴女は戦いに余計なものを持ち込みすぎているのよ。ごりっごりに固めまくって、あなた自身が身動きを取れなくしてしまっている」

「……」

「一度、荷物をぜーんぶ放り投げてみたら? 貴女に必要なのは遊び心、お堅い心を解して、柔軟に物事を考えられれば、世界が変わって見えるわよ?」

 

 放り投げるって、そんな無茶苦茶な。

 唖然とするボクにサニーは人差し指を立てる。

 

「近いうちにもう一度、白騎士ちゃんと戦ってみなさい。それで答えが分からなかったら……その時は、私もとやかく言うつもりはないわ」

「もう、一度……」

「……はい、治療終わりっ! 我ながら完璧な仕上がりねっ!」

 

 肩の傷を治療し終えたサニー。

 無言で外套を羽織ったボクは、なんとも言い難い表情を浮かべる。

 

「さーって、それじゃあ私はそろそろ行くわね」

「どこに……?」

「行きつけのカフェよ。一緒に来る? 私の推し、いるわよ?」

「こ、断る……」

 

 あら残念、と呟いたサニーはそのまま路地から光が差し込む通路へ向かおうとして、不意にこちらを振り返る。

 

「貴女が信じる神様は本当に正しい存在なのかしら?」

「え……?」

「神様が全てを決めるわけではないわ。彼の目覚めは近い。貴女は……どうかしらね」

 

 手を振りながらどこかへ歩いていくサニー。

 その大きな背中に畏怖の感情を抱きながら、ボクは冷たい壁に背を預けて目を瞑る。

 

「……」

 

 バックルを取り出し、物言わぬレオと目を合わせる。

 ボクのせいで心を閉ざしてしまった、相棒。

 

「ねえ、レオ。ボクは……どうすればいい……?」

 

 声をかけても、いつもの反応は返ってこない。

 その時、僕は力を得るためにどれだけ大切な存在をないがしろにしてしまった事実を、意識しレオを胸に抱きしめながら静かに涙を流すのであった。

 


 

 私がお好み焼きを食べている間に強敵と戦っていた彼は、大怪我をして入院してしまった。

 相手は、先日戦ったという青い戦士。

 さらに強くなったそいつを相手に、彼は懸命に戦い社長と大森さんを守っていた。

 

「かっつん……」

 

 病室の個室で静かな寝息を立てて眠っているかっつん。

 彼の負った傷は深くはあったけれど、命に別状はない。

 肩の傷と、全身の打撲を考えると大怪我だけれど、前に記憶喪失の彼を見つけた時の傷の方がもっと酷かった。

 

「すぅ……すぅ……」

「まったく、姉さんは……」

 

 アルファはかっつんがこの部屋に移された時から全く彼から離れようとはしなかった。

 彼の寝ているベッドに身体を預けて眠っているアルファに、タオルケットをかけながら、私は軽く吐息をつく。

 

「疲れてる? 白川ちゃん」

「……大丈夫。きららは?」

「私も平気。護衛としてここにいるけど、全然退屈じゃないし」

「……そっか」

 

 私の隣にあたる位置に座っていたきららの言葉に頷く。

 かっつんの正体が敵の一人にバレた。

 彼が今、戦えないと知ればその隙を狙って襲ってくる侵略者がいるかもしれないので、ジャスティスクルセイダーは護衛としてこの場にいてくれているのだ。

 

『カツミ……』

『ガウ……』

 

 彼の枕もとには喋る端末であるプロトと白色のメカオオカミ、シロが付き従っている。

 彼がここまでの傷を負うことは、あまりなかった。

 黒騎士と呼ばれていた時でさえも、彼は組織のバックアップを受けていないにも関わらず、ほとんどの戦いで変身解除にすら追い込まれることはなかった。

 

「私、なにもできてない」

 

 独り言をつぶやき、気分を落ち込ませる。

 私は戦いに向かうかっつんのために、何かできているのだろうか。

 

「無理になにかをする必要ないと思うよ?」

「そうは言うけど」

「帰りを待ってくれる人がいれば、それだけで、ありがとう、って気持ちになるんだ」

「きららもそうなの?」

「私はいつもそう思っているよ」

 

 きららには、弟や妹を含めた家族がいる。

 彼女にとってはそれが、家に帰る理由の一つになっているんだ。

 

「……きららってさ」

「うん?」

「普通だよね。いい意味で」

「褒められてる気がしない……」

 

 がっくりと肩を落とす彼女に苦笑する。

 キャラ付けのために変な関西弁を使っている子ではあるが、普通にいい人なのだ。

 

「本当に、アカネと葵とは違くて安心する……!!」

「二人、私の前になにかしたの?」

「……」

「あっ、いいわ。察した」

 

 とりあえず、寝ているかっつんは私とアルファで守り切ったと言っておこう。

 付き合いも長いからか、何が起こったのか大体を察したきららはため息を零す。

 

「カツミ君、早く元気にならないかな」

「シロが力を与えてくれているから怪我自体はすぐに治ると思う」

『ガウ』

『私も、その能力欲しい……』

 

 どこか誇らしげなシロに羨ましそうな声を零すプロト。

 きららの言う通り早く元気になって目覚めてくれればいいな……。

 私としてはそれだけで嬉しい。

 

「……なんか最近、ちょっと寒くなってきたよね」

「分かる。夏真っ盛りなのに、妙に気温が低いんだよね」

「……」

「……」

 

 病室で無言のままの時間が過ぎる。

 ふと、ボーっとしていた私の頭に、一つの疑問が思い浮かぶ。

 

「きらら。ジャスティスクルセイダーでさ、誰が一番強いの?」

 

 なんだかんだで気にすることのなかった疑問だ。

 この場にアカネと葵がいれば、間違いなく自分だと答えが分かり切っている質問でもある。

 

『一番強いの? 私……かな?』

『遠距離からズドンすればいけるいける。え、直感で避ける? SOA(そんなオカルトありえません)

 

 と、まあ、こんな回答が飛んでくるだろう。

 しかし、きららはそんな我の強い回答はせずに普通に考えてくれる。

 

「んー、状況によるかなぁ。一対一で勝負したとしても互角だし」

「普通だ……」

「何言っても普通っていうのはやめてくれない!?」

 

 いや、そうとしか思えなくて……。

 

「プロト、いいかな?」

『私を弄ぶ気?』

「どこで覚えてきたのそんな言葉?」

 

 訳の分からない知識を蓄えたプロトに軽い衝撃を受けながら、端末を手に取る。

 

「きらら、調べてみてもいい?」

「えぇ、やめた方がいいと思うよ? 不毛だし」

「暇つぶしにもなるし」

 

 とりあえず『ジャスティスクルセイダー』で検索してみる。

 

 ジャスティスクルセイダー 強すぎ

 ジャスティスクルセイダー ブラッド

 ジャスティスクルセイダー 敗北者

 ジャスティスクルセイダー 白騎士くん

 ジャスティスクルセイダー 黒騎士くん

 

 予測変換もなんか一部酷いなぁ。

 試しに強いを押して検索してみると、丁度いいサイトを見つけたので見てみる。


 

 

791:ヒーローと名無しさん

 

ランク付けを最新版にしてみた。

 

SS 黒騎士くん(オールマイティ) 二期ジャスティスクルセイダー(3人)

S  黒騎士くん(ブチギレ) ジャスティスクルセイダー(三人)

A  黒騎士くん(ノーマル) 二期レッド(ブラッド) 二期イエロー 二期ブルー

B  レッド ブルー イエロー 白騎士くん(ブレイク)

C  白騎士くん(セーブ)

 

ジャスティスクルセイダーは怪人編と、侵略者編で戦闘力爆上がりしてるから二期って表示で差別化してる。

異論は認める。

 

792:ヒーローと名無しさん

 

まあまあ、妥当でびっくりした。

 

793:ヒーローと名無しさん

 

こう見ると白騎士くんってまだまだなんだな

 

794:ヒーローと名無しさん

 

白騎士くんが弱いんじゃなくてジャスティスクルセイダーがやばすぎるだけ定期

 

795:ヒーローと名無しさん

 

さすが一年戦い続けた戦士達は違うなぁ(白目)

 

796:ヒーローと名無しさん

 

ヒロインランキング貼る?

 

797:ヒーローと名無しさん

 

やめなされ……(慈悲)

 

798:ヒーローと名無しさん

 

白騎士くんは、こうげき特化からとくこう特化として成長しているだけだから

 

799:ヒーローと名無しさん

 

まあ、白騎士君の強さ的にはBくらいが妥当だな。

成長性はA(超スゴイ)くらいあるだろうけど。

 

800:ヒーローと名無しさん

 

レベルダウンさせて種族値振り直している感じだゾ

記憶が戻れば、そのまま前の記憶分加算されて、ぶっ壊れになる可能性がある。

 

801:ヒーローと名無しさん

 

殴り一辺倒から武器と属性攻撃使いこなすようになったなー。

 

802:ヒーローと名無しさん

 

一位 ルプドラ

二位 プロドラ

三位 司令官

四位 イエロー

五位 ブルー

 

803:ヒーローと名無しさん

 

>>802

なんのランキングが明言されていないのに分かってしまう理不尽。

 

804:ヒーローと名無しさん

 

司令官は男だろいい加減にしろ!!

 

805:ヒーローと名無しさん

 

無機物ツートップとかどういうことなの……

 

806:ヒーローと名無しさん

 

司令は公式で黒騎士くんの友人だし、公式とツムッターの情報から見ても黒騎士くんからの好感度も高かったからな。

 

807:ヒーローと名無しさん

 

そもそもこのランキングおかしいだろwww

 

 

 

 

プロトドライバーちゃんが二位に落ちてるのはおかしいだろ

 

808:ヒーローと名無しさん

 

貼るなと言ったのに……(愉悦)

 

809:ヒーローと名無しさん

 

イエローええやろ!!

絶対素で喋ると可愛いやつやろ!!

 

810:ヒーローと名無しさん

 

ブルーの不思議ちゃんキャラすこ

でも順位には納得してしまうんジレンマ

 

811:ヒーローと名無しさん

 

イエローは庶民派かわいい。

ブルーは不思議かわいい。

 

これは差別化がしっかりできていますね。

なんだかんだで、ジャスティスクルセイダー人気は計り知れない……。

 

812:ヒーローと名無しさん

 

ねぇ

 

 

 

 

誰か一人忘れてない?(アークドライバー!)

 

813:ヒーローと名無しさん

 

ねえ

 

 

 

 

レッドは?(エボルドライバー!)

 

814:ヒーローと名無しさん

>>812

>>813

 

ひぇっ

 

815:ヒーローと名無しさん

 

(;0m0)<ウワァァァァァァァ!?

 

815:ヒーローと名無しさん

 

あ、アークが唯一ラーニングできなかった女だ!

 

816:ヒーローと名無しさん

 

毎回レッドの扱いがラスボスなの草

 


 

「……たしかに、見ない方がよかったかも」

「でしょ?」

 

 アカネの扱いが中々に凄まじいことになってる。

 まあ、あの子はやりすぎちゃうところがあるし、ある意味でしょうがないんだろうけど。

 

『私、二番目……』

『ガウ♪』

『あ、煽りよる……』

 

 人知れずショックを受けているプロトを、かっつんの枕もとに戻しておく。

 

「きららは、四位だったね」

「いやなにが……?」

「四位の女だったんだよ。社長が三位だった」

「なんの順位付けか分からないけど、あの社長に負けている事実が酷く私の心を傷つけるんだけど!?」

 

 見事なツッコミをみせるきらら。

 ああ、常識人だからツッコミも任せられているんだなーと、今更ながらにその事実に気付く。

 

「むっ!」

「あ、アルファ、起きた?」

「……。カツミが起きる……」

 

 前触れもなく目を覚ましたアルファが、かっつんの顔を覗き見る。

 すると、彼女の言う通りに彼が、目を薄っすらと開いた。

 

『カツキ! だいじょ――』

『ガウぅ!』

『落とすなああぁぁぁぁ!?』

 

 げしっとシロに蹴られベッドの下に消えていくプロト。

 床に落ちる前に受け止めながら、目を覚ましたかっつんへと視線を戻す。

 

「ここは……アルファ?」

「うん、よかった……起きてくれて……」

 

 安堵の表情を浮かべるアルファを見て首を傾げるかっつん。

 どうやら、寝ぼけているようなので、ナースコールボタンを押した後にちゃんと状況を説明しておこう。

 

「かっつん、ここは病院だよ」

「まだ安静にした方がいいよ。傷もまだ治ってないから」

「ハクア姉さん、きらら? ……そうか、俺は、あの後気絶したのか……いつつ……ははは」

 

 肩の痛みに顔を顰めた彼は、力なく笑う。

 

「なんだか、記憶を失った俺が初めてハクア姉さんと顔を合わせた時を思い出すなぁ」

「!? そ、そうだね……」

「……」

「……」

 

 アルファときららの視線をすごい感じる。

 い、一刻も早く話題を変えねば……!!

 ただでさえ、記憶喪失の彼の姉を名乗ってしまった一歳児という事実を蒸し返されるのは私の精神衛生的に悪すぎ——、

 

「最初は恋人だなんて言うから、本当にびっくりしたよ。ははは」

「……。え、そうなんだ。もう、ハクアも悪戯好きなんだから。ねぇ、きらら」

「そうやねぇ。本当にびっくりするわぁ」

 

 にこやかに笑みを交わすアルファときらら。

 かっつんも穏やかに笑っているが、私から見た二人の目は決して笑ってはいなかった。

 

「おう、白川ちゃん。後で顔貸してくれや」

「お話しようか。ねえ? ハクア」

『これからの会話を録音して、アカネと葵にも聞かせよう』

「ンヒッ」

 

 懐かしそうに笑うかっつんとは裏腹に、私はあらゆる意味で追い込まれてしまうのであった。

 なんで私あんな冗談を言ってしまったのだろう……!!

 私は、これから待っているであろう取り調べを想像して心底身体を震わせるのであった。




今回は戦闘なし回でした。
サニーさんの立ち位置がだんだんと美味しいものになっていく……。

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