今回はアカネ視点でお送りします。
冷気を操る侵略者、凍土のアリスタによる影響はかなりのものであった。
日本だけではなく他の国にまで奴の冷気による干渉による一時的な環境の変化が起きてしまっており、夏にも関わらず肌寒い日が続いたり、体調を崩す人などが続出したのだ。
これはこれで大した被害じゃないと思われるかもしれない。
まあ、実際、アリスタを倒さなかった場合の事態を考えれば、大分マシな状況だと思う。
しかし、だ。
つまりなにが言いたいのかというと……。
カツミ君もアリスタの冷気被害の影響を受けて風邪を引いてしまったのだ。
そもそも彼は病み上がりだったのにあれだけの戦闘をしたのだ。
体調を崩してもおかしくはない。
当然、私達もものすごい心配しているわけだが……ここで一つ問題がある。
「じゃあ、責任を以てこの私がカツミ君のお見舞いに向かうのでよろしく……!」
「ちょいまち、ブラッド」
「待てよ、ブラッド」
本部の一室へと集まっていた私達は、誰がカツミ君のお見舞いに向かうかを話し合っていた。
三人で行くのはさすがに迷惑がかかるんじゃないかってのは分かっていたので、私以外の二人が出し抜く前にこうやって話し合う機会を設けたのだ。
「私はリーダーだよ?」
「負けヒロインのね」
「おい、今、なんて言った?」
「ぴゅるる~♪」
聞き捨てならないことをボソリと呟いた葵を睨みつける。
素知らぬ顔で下手くそな口笛を吹いた葵はそのまま、親指で自身を指さした。
「先輩方。ここは後輩である私がシチュエーション的に最高だと思う」
「似非後輩が何かほざいてる」
「ゲームのやりすぎだよ?」
「マジ? アオイ、キレそうだわ」
無表情のまま、頬を膨らませてぷるぷる震え始める葵。
この何をするか分からない葵を行かせるほうがずっと危険だ。
「きららはなんか、危ない」
「分かる」
「なんで……?」
唐突に話を振られ本気で訳が分からないといった顔をするきらら。
この子、自分に個性がないとか思っているようだが、全然そんなことはないのだ。
少なくとも今の時点でも大分目立っている。
「色々大きいし……間違いがあったらいけないし」
「そのビッグボインは犯罪だよ」
「関係ないでしょ!? なんで私の時だけアダルトな方向で危険視されなきゃいけないの!?」
葵が親の仇を見るような視線を送り、きららは顔を真っ赤にさせながら自分の身体を隠す。
あざとっ……!?
駄目だ、こいつは一人で今のカツミ君に向かわせるわけにはいかない。
母性に悪魔が爆誕してしまう。
「今は幾分か熱も下がって寝ているらしいけど、まだ治ったわけじゃないって白川ちゃんが言ってたから、無理をさせるわけにはいかないの。分かった? きらら?」
「いや、私なにも喋ってないし、なにもしていないんだけど」
現在、カツミ君は白川ちゃんとアルファのいるマンションで療養している。
その周囲には彼の護衛を担当する人たちと社長が作った
それを決めるために話し合っている、のだが――これが一向に決まらない。
「分かった。それじゃあ、ここに来るまで買ってきたお見舞いの品で決めよう」
「多分、決まらないと思うけど」
「私が勝つのは理系の神の思し召し」
とうとう意味分からない神様を崇めだした葵に首を傾げながら、それぞれが持って来た品を持ってくる。
「きらら、なにそれ」
「えっ、おかゆの具材……。アルファちゃんも白川ちゃんも料理得意じゃないって言ってたから」
エコバッグにいれられた具材。
ある意味で予想できていたが、さすがに手強い。
「アカネは?」
「桃缶とか、消化にいいやつだね」
「……」
「なんでそんなに意外そうな目で私を見るの……?」
無言で目を見開かれたんだけど。
ちょっと失礼じゃない? きららは私をなんだと思っているの?
釈然としない気持ちになりながら、葵の方を見ると彼女の前には……うん?
「葵。一応聞いておくけど……なんでそれ?」
「ネギ」
「「……」」
いや、名前を聞いたわけじゃなくて、どうしてそれをチョイスしたのか聞いたんだけど。
とりあえず……。
「きらら、葵からネギを奪い取っておかゆの具材に放りこんどいて」
「りょーかい」
「ネ、ネギー!?」
首に巻くようにするだろうけど、なんだか嫌な予感がしたので没収させておいた。
首に巻くことが目的なんだよね? 葵? 私はそう信じてるよ?
「じゃあ、私かきららのどっちかが行くことになったわけだけど……」
「そうだね。私かアカネのどっちかだけど」
「ネギあります……」
ええい、うるさいぞ葵。
そもそもネギオンリーしか持ってこない時点で貴女の敗北は決定していたようなものだ。
結局は、私達三人でお見舞いに行くことになってしまったが……まあ、全員で部屋に入らなければ大丈夫だろう。
「……うーん、白川ちゃんもアルファちゃんも電話に出ない。取り込み中かな?」
スマホに連絡が通じないことに疑問に思いながらしまう。
まあ、時間を置いて連絡すればいいか。
「前の戦いでさ」
「うん?」
「カツミ君。ちょっと昔に戻ってたよね」
きららの言葉に私と葵は無言になる。
昔、とは彼が黒騎士と呼ばれていた頃の話だろう。
あらゆる敵を拳で打ち倒す戦士。
厄介な能力が相手だろうとも、愚直なまでの力技で突破し、敵を穿つその姿にまだ戦士として未熟だった私達は何度も助けられた。
そんな彼の影を、前の戦いで“白騎士”に見た。
「カツミ君は帰ってくる」
厳密にはもう帰ってきているのだろう。
でも、今は目覚めてはいないだけなのだ。
「彼が帰ってくるまで、私達が……私が頑張らなくちゃね」
思い出すは、金色の光を纏って転送されていく彼の姿。
もう二度と、あのような思いはしたくはない。
彼にそんなことをさせないためにも、二度と負けないためにも私達はもっと強くなっていかなければならないんだ。
「そのために、ルインとかいうストーカーを倒さなければならない」
「優先事項だね」
「許すまじ」
そもそもルインがカツミ君の記憶を消しているからこんなややこしい状況になっているのだ。
彼が力を見せてくれたおかげで地球は存続しているが、その代わりにカツミ君が囚われの身になっていたとか、笑えなさすぎる。
彼が元に戻ったら、一気に攻勢に出るつもりだ。
それだけの力が、カツミ君にある。
「だから――」
『ジャスティスクルセイダー!! 出撃だ!!』
私達のいる部屋に社長の声が響く。
どこか焦ったようなその声に、同時に立ち上がった私達はその場を走り出しながら出撃準備を行う。
「社長! 侵略者ですか!」
『相手はカツミ君を狙ってきた!!』
「ッ!!」
彼を狙って来たのか!?
それなら社長の焦り様にも納得がいく。
でも、取り乱していないのならまだ彼は無事だと言うことだ。
『攻撃そのものはこちらの防護シールドによって完全シャットアウトし、逆に電磁ネットにより雁字搦めに固めてやったが、それも時間の問だ――んん!?』
「どうしました!?」
『白騎士が、出てきた……』
「カツミ君がですか!?」
今、体調最悪なのに……。
いくら彼でも風邪を引いている状態で侵略者と戦うのは難しいはずだ。
瞬時に変身を行い、ビークルに飛び乗った
なら急いで——、
『いや、違うのだ。すまない、私も困惑しているんだが……』
「もったいぶらずにはよ言ってください!! 彼は大丈夫なんですか!?」
一瞬の躊躇いと、通信越しの周囲のざわつき。
まさか彼になにかあったのか……? だとしたら、正気でいられない自信があるけど……。
『女、なんだ……』
「「「は?」」」
オンナ? どういうこと?
『今、チェンジャーを通してこちらの映像を映す』
ビークルの画面端に現場の状況が映し出される。
そこには、予想を超えた映像が映し出されていた。
『な、なんで私が変身してるの~!?』
『待てやゴラァァァ!! 白騎士ィィ!!!』
『ンヒッ!? お、おおお追いかけてくるぅ!?』
『ガウ!!』
『あう!? シロ、電気流さないで!? 戦う! 戦うからぁ!!』
『
『わ、私が護るんだ! や、やるぞぉ!!』
そこには怒り心頭の頭に角が生えた馬の頭を持つ異星人に追いかけられている白騎士の姿。
しかし、明らかに違うのは、白騎士の姿。
カツキ君の体形ではない、細く女性っぽい姿の上からそのまま白騎士のアーマーを纏った何者かは、泣き言を口にしながらその手に持つレイピアのような武器を馬頭へと向ける。
「……」
「……」
「……」
『仮面もアーマーも、姿は白騎士そのものだが性別が変わっているのだ!!』
どういうことなの!?
緊急事態だけれど、まったく状況が分からないよ!?
声と体格と素振りで、カツミ君じゃないのは丸わかりだけど……!?
「これでカツミちゃんとガールズトークできるね」
「ブルーが正気を失ってる!?」
「それは元からでしょ!? 急いで現場に向かおう!!」
一瞬で白騎士君ないし、白騎士ちゃんを受け入れたブルーをスルーし、私達はビークルを加速させる。
いったいなにが起こっているのか全然分からないけど、とりあえず大変なことが起きていることだけは分かった!!
白騎士くんが女の子になりました(嘘)
なにもしてないのに危険視されるイエローと、単純にやべーやつなブルーでした。
次回、少しだけ時間を遡ってハクア視点から始める予定です。