追加戦士になりたくない黒騎士くん   作:クロカタ

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お待たせしました。
アカネ視点となります。


触れてはならない、記憶 後編

 あらゆる怪人をその拳で打ち倒してきた驚異の存在。

 彼が今、その記憶と共に目覚めようとしていた。

 

TYPE 1! ACCELERATION!!(行こう! 至高のその先に!!)

 

 彼の復活を祝うように躍動し、重なるように鳴り響く音。

 弾み、歓喜に満ちた歌声を奏でる少女の声。

 暗闇に包まれた周囲に一際、目立つ星空を彩るエネルギーフィールドを展開させた彼の体に黒を基調としたアンダースーツが装着される。

 頭部を黒い仮面が覆い、周囲に粒子化されたプロトゼロを思わせるアーマーが出現。

 そのさらに上に銀色のアーマーが二重に展開されたことで、彼の“変身”が行われる。

 

EVOLUTION!!(進化!!)

STRONG!!(最強!!)

INVINCIBLE(無敵!!)!!』

SUPER(最高!!)!!』

 

 重厚な金属音の後にアーマーが装着、組み込まれる。

 腕、脚部、背中、首回りに被さる銀色の襟型の機構が装着。

 ゼロから1へ。

 無から有へ。

 始まりにして、至高の姿へ変えていく彼に怪人は怯え、その場にいる一般人さえも魅入られてしまっている。

 

CHANGE(その名は)TYPE 1(タイプ・ワン!!)!!』

 

 漆黒の複眼が深紅に染まり、胸部アーマーに“1”という数字が刻まれたことで光が弾け変身を完了させる。

 現れたのは漆黒と銀の戦士。

 かつて、地球に生まれ落ちた怪人のその一切合切を拳で打ち破った驚異の戦士、黒騎士は闇夜の中で怪しく輝く赤い複眼をゆらりと動かしながら、自身の両手に視線を落とす。

 

「……なんかいつもと違うな」

『私は私だよ、カツミ』

「ん? 今、なにか声が……」

『空耳ダヨ』

「……なんだ空耳か」

 

 この天然さはカツミ君だ……!

 自身のアーマーの変化を気にしながらも、両腕を軽く伸ばした彼はつま先で地面を叩き——一瞬にしてその姿を消す。

 

「っ!」

 

 見えるのは闇夜を切り裂くように空間に残される赤い光の残滓。

 その先へ、すぐに視線を追うと———金色のスーツごと腹部を粉砕され、その上半身を宙に舞わせているガウスの姿が視界に映り込む。

 

「———え?」

 

 自分が破壊されたことにすら気づかず、機械の部品をまき散らした宙を舞うガウス。

 彼が先ほどいた場所には、一瞬にして左腕をもがれたもう一体の地球の怪人“惑星怪人アース”がおり、その背後にアースの左腕を無造作に捨てたカツミ君の姿を見つける。

 汚れ一つすらついていない黒いスーツ。

 その首元に装着された銀色の機構からは、まるでマフラーを思わせるような深紅のエネルギーの帯が伸びていく。

 

『ふ、ふる、フルスペックのプロトワン!! あぁ、まさしくあれこそが黒騎士の究極の姿!! 極めた物理はあらゆる超常現象を破壊する最強で最高の力!! ヴェハハハァ!! 深紅のマフラーは貴様ら侵略者の命の終わりを告げる導火線だァ———!! ひゃっはぁー!!』

『主任気が散るから黙っててください!!』

『レイマ、静かにしないとお前を食うぞ』

『はい、ごめんなさい……』

 

 私もうるさいと言おうとしたが、大森さんとグラトに怒られ一瞬で静かになる。

 しかし、社長のいう通りとんでもない性能だ。

 スーツを着た私でさえ、動きを見ることができなかった……。

 

「なんか、いつもより思いっきり動けるな」

 

『エッ、いつもより?』

 

 耳元で今の光景を見ている社長の唖然とした声が聞こえる。

 口には出さなかったけれど、プロトゼロの時点で彼の能力はスーツの性能を凌駕していたってこと……?

 

『ア、アァァス!?』

 

 大地からエネルギーを吸い取り、残った腕を赤熱化させたアースが背中を見せているカツミ君に襲い掛かろうとする。

 その様子を見た私は、我に返りながら声を上げる。

 

「っ、危ない!! 黒騎士君!!」

「……?」

 

 背中を向けたまま裏拳を突き出し、アースの腹部の一部分をさらに粉砕させた彼が、驚いた様子で私を見る。

 

「お前、敵じゃないのか?」

「やっぱり、記憶が……」

「は? どういう……。……!」

 

 顔を上げた彼に襲い掛かる影。 

 夥しい電撃を纏うナメクジ怪人、ビィム、グリッターが同時に彼に攻撃を仕掛けたのだ。

 

「ハッ、いくつか見ねぇ顔もいるが、んなことどうでもいい!!」

「ビィィィッムッ!!」

「ジィィィ!! ギィィ!!」

 

 ビィム怪人の両腕と頭から光線。

 ナメクジ怪人から落雷と見間違うほどの電撃が放たれる。

 ……ッ、あの威力はまずい!!

 カツミ君の姿に魅入られているヒラルダを無視し、まずは一般人に向けられる被害を防ぐ!!

 

「ブルー! イエロー!! 一般人に被害がいかないようにして!!」

「あいよ!」

「オーケー」

 

 攻撃を叩き落すべくそれぞれが武器を構えようとすると再びカツミ君のスーツの首の部分から赤いエネルギーが放出される。

 風になびくマントのようにエネルギーを漂わせた彼がその拳を構え、加速と共に打ち放つ。

 彼へと向かう電撃とレーザーが、何もない空間で宙で霧散し、弾き飛ばされる。

 目視すら不可能なほどの“打撃”。

 

「全部、かき消した……!?」

「これが、プロトワンの力なんか……?」

 

 あれだけの広範囲に渡る攻撃すらも、消し去ってしまうなんて……。

 

「いまいち状況が分かってねぇが、とりあえず倒していいやつは分かった」

 

 腕をぐるんっ、と一回転させたカツミ君は、そのまま地面に着地しようとするナメクジ怪人を指さす。

 

「まずはテメェからだ。ナメクジ野郎」

「!?」

「お前はしつこいし、ナメクジだから念入りに始末する」

 

 ものすごい理不尽な理由だ……!?

 でもそういうところも昔の彼っぽいと納得させられながらも、彼の姿が掻き消え———先ほどからなぜか棒立ちだったグリッターの胴を殴りつけ、貫通させる。

 

「ガっ、ぁ!?」

 

 ナメクジからじゃないの!?

 まさかのグリッター狙いに驚いていると、血を吐き出したグリッターの虚ろな目に光が宿る。

 

「ひっ、あ、な、なんで俺は、ここに!? ひっ、黒騎士!?」

「……こいつも再生能力持ちか?」

 

 記憶を持っている……?

 たしかグリッターって最初にカツミ君に仲間だと騙そうとして近づいて瀕死になるくらいまでボコボコにされて、逃げ帰ったらしいけど……まさかその時の恐怖が細胞レベルにまで刻まれていたってことだろうか?

 腹部を貫かれながらもみっともなく泣き喚くグリッターに首を傾げるカツミ君だが、すかさず隙をついて襲ってくるナメクジ怪人とビィムに振り向く。

 

「単純な奴らだな」

 

 グリッターから無理やり腕を引き抜きぬいた彼が、超高速で拳を放ちレーザー怪人の頭部をレーザーもろとも一撃で粉砕。

 同時に、ナメクジ怪人の首をつかみ取りながら、さらにその拳を一度振るい、六度の炸裂音を響かせる。

 

「ジッ……ギィ……!!」

「どんだけ電撃を貯めていようが、なくなればもう治せねぇよなぁ!!」

「ぴぎぃぃぃ!?」

 

 首をつかむ手を放した次の瞬間、彼の纏う赤いエネルギーがさらに放出され、夥しい打撃音が周囲に響き渡る。

 

「ジィィィ!? ギィィィィ!?」

 

 斜めに吹き飛ぶナメクジ怪人に宙に刻まれた赤い軌跡が迫ると同時に、逆方向へと吹き飛ぶ。

 音が遅れて届いてくるほどの高速の連続打撃。

 そのあまりの脚力で空を蹴り、ジグザグに空へと上昇しながらナメクジ怪人を電撃を吸収することのできない空へと突き進む。

 

「再生能力を力技で上回るつもり……!?」

 

 あの一瞬でいったいいくつの攻撃を行っているの……!?

 今の私たちでは彼の動きさえも目で追うことは不可能だ……!

 

「う、うわあああああ!!」

「ッ、グリッター! 逃げるつもり!!」

 

 成すすべなく、電撃を弱らせながら黒ずんでいくナメクジ怪人を目にしたグリッターは悲鳴を上げてその場から逃げ出す。

 咄嗟に追おうとするも、奴は自身の周囲の光を吸い取り、暗闇に逃げ込んでしまう……!!

 しまった、逃げられた……!!

 でも、遠くにはいってないはずだから、すぐに追えば……!!

 

「ジッ、ギィ……!?」

 

「ッ」

 

 私の前に落下してくる黒ずんだなにか。

 焦げたような見た目となり果てたナメクジ怪人だったそれは、再生に使える電撃をすべて使い切ってしまったのか、さらさらと光の粒子となって消えて行ってしまった。

 ナメクジ怪人が、こんなあっさりと……。

 

「おい、もう一体の怪人は?」

 

 いつの間にか私のすぐ近くに降り立ったカツミ君が、そう聞いてくる。

 目線だけをグリッターが消えた方向へ向けると、彼はため息とともに、その姿を消す。

 

「……ふぅっ」

 

 数秒ほどで、再び彼がその場に現れるが———その手には、先ほど逃げたグリッターの頭部が握られていた。

 怪人態の姿とはいえど、見た目は戦隊ヒーローに似たグリッターの頭に、私はちょっとびっくりしながら素直に賞賛の感情を抱く。

 あの一瞬で、グリッターを狩ってくるなんて……やっぱり、私はまだまだだな……。

 

「さすがだね」

「お前ら……そこの青いのと黄色いのが敵じゃねぇことは。なんとなく分かったが……いや、まずはあのマグマ野郎を、始末しねぇと。……!」

 

 徐々に光となって消滅していくそれを捨てながら彼は、背後に腕を回し何かをつかみ取る。

 サソリの尾のようなそれを平然と握りつぶし、敵意と共に後ろへ振り返った彼の前には、毒の刃を刺そうとしたヒラルダが、透明の状態から元へと戻っていた。

 不意打ちすら意味をなさない黒騎士の戦闘力に、ヒラルダは困惑とも喜びとも思わせる声を漏らす。

 

「あ、あはは……マジでやばいね。黒騎士……想定以上どころじゃないわー」

「毒食らったらお腹壊すだろ」

 

 そういう問題!?

 

「まっず……!?」

 

 待って、彼がヒラルダを始末したら、身体を乗っ取られてる人が危ない!!

 彼が攻撃すると直感的にそう確信した私は、彼が動き出す前に声を張り上げる。

 

「待って黒騎士君!! その子は体を乗っ取られた人間なの!!」

「はぁ?」

 

 ヒラルダの鼻先で拳を止めた彼が、怪訝な声を漏らす。

 それを好機と見たのか、あらかじめ握りしめていた桃色の銃から煙を放ち、ヒラルダはその場からの逃走を図る。

 

「それで逃げたつもりかよ……」

 

 その場から完全に消え失せたヒラルダから視線を外した彼が、遥か遠方にある高層ビルの上をにらみつける。

 

「まず、その泣き声ばかりでうるせぇベルトあたりをはぎとってみるか」

 

 逃げた位置を把握しているのかビルへと向かっていこうとする彼。

 完全にヒラルダの逃走先を把握し、排除しに向かおうとする。

 

『アァァァス!!』

 

 大地が怒りの声を上げるように震える。

 黒騎士のとどめを免れ、その体を再生させた惑星怪人アースの暴走。

 周囲一帯の温度が急激に上昇し、このままではここら一帯にいる一般人の命に関わる……!!

 

「とりゃっ!!」

 

 ほぼ反射的に剣を抜き放ち斬撃を飛ばす。

 私の挙動と同時にブルーとイエローもエネルギー弾と斧の投擲を行う。

 

「アァァス」

「おい、いっちょ前によけようとすんじゃねぇよ」

 

 地面に潜り、攻撃を回避しようとするアース。

 しかし、アースの周囲に赤い軌跡がよぎった次の瞬間には背後に高速移動したカツミ君の放った蹴り(・・)が背中へと直撃し、溶岩の破片を散らしながら私たちの放った攻撃に向かうように吹き飛ばされる。

 斬撃、エネルギー弾、電撃を纏った斧。

 そのすべての直撃を受けたアースが爆発に包み込まれる。

 

『ア、ァ、ア!! ワ、我は、惑星怪人……アァァス……』

 

 すべての攻撃の直撃を受けたアースは、肩に深々と斧を食い込ませながらも地面からエネルギーを吸収し立ち上がろうとする。

 やっぱり、大地にいる限り奴は無限に再生できる……!!

 近くに、ビークルもあることだし以前と同じようにこのまま奴をもう一度海まで運んで、海底に突き落とすしか。

 

「おい、こいつ借りるぞ」

 

 ッ、カツミ君がイエローの斧を!?

 アースに突き刺さった斧を力技で引き抜いた彼が、フルスイングでアースの体を下から突き上げ———地面から浮かす。

 

「テメェは、宣言するまでもなく引導を渡してやるって決めてたんだよ」

 

 赤いエネルギーを纏った斧を片手で軽々と振り回す。

 彼の姿が瞬時にブレ、斧を振り切った態勢に移った瞬間には、アースの両腕と両足が両断され、無防備な胴体が曝け出される。

 

「オラァ!!」

 

 目にも止まらない連撃がアースの体を穿ち、その体を削り取る。

 地に接触することもできずにぼろぼろにされていったアースは、その半壊した顔面をゆがめながら声を上げる。

 

『わだじは惑星怪人アース!! お前だぢを絶滅させる……地球の、代弁者ァ……!!』

「ふざけた遺言だな。さっさとくたばれよ」

 

 斧を手放した彼がその拳を握りしめる。

 プロトワンのシステムにより放出された赤い余剰エネルギーが拳へと集約し、その色を深紅に染め上げる。

 拳という暴力を極めに極めた姿。

 黒騎士という常識外の戦士が到達した強さの極致。

 未だに、底すらも見せない彼の一撃がアースの胴体のど真ん中を穿ち、その(コア)ごと衝撃を貫通させた。

 

『ガ、ァァァァァァ!?』

 

 断末魔を上げ、爆散するアース。

 しかし、アースを貫通しても止まらない衝撃は赤い本流となって空へと突き進み、頭上を覆うドーム状の暗闇を破壊してしまった。

 ……え?

 

「えっ、なにあれビーム……?」

「あれ本人的には力籠めて殴っただけなんやろうなぁ」

「拳ビーム、ついに理系の極致に至ったんだね……」

 

 葵が意味の分からないことを言っているのは今更なので無視。

 自分の放った一撃に、自分で驚いていた黒騎士君は、ふと、我に返るとそのまま私たちのいる方向とは別の方へと歩く。

 

「あと、息があるのはお前だけだぞ」

「すさまじ、い、力、だ。黒、騎士」

 

 半壊した金色の鎧を纏った侵略者、ガウス。

 上半身と下半身を分断されてもなお、いまだに生きていた彼は、断面からスパークと部品をこぼしながら、どこか悟ったような口調でカツミ君に口を開いた。

 

「とて、つもな、い力だ。やはり、わたし、は、ゴールディには勝てな、かったか」

「……」

「しか、し、満足、だ。私は、あの方の、命令通りに……君を、目覚め、させたの、だから」

 

 ガウスの仮面の複眼から光を消し、こと切れる。

 それと同時にガウスのスーツの変身が解け、彼の左腕に時計型のデバイスに粒子が吸収されていく。

 

『卑怯な手に染めることしか手がなかった科学者、か。所業は許せんが、私は少し奴を誤解していたのかもしれないな』

 

 こと切れたガウスを目にした社長がそう呟く。

 すると、それを見届けたカツミ君が大きなため息をつく。

 

「はぁ、なにがなんだか……とりあえず、帰ろ」

 

 ッ!? この流れで普通に帰るつもりなの!?

 アルファのことを覚えていて、私たちのことを覚えていないってことは、彼が持っている記憶は私たちが活動する前の記憶の可能性が高い。

 最初に遭遇した時のカツミ君の気難しさは尋常じゃないので、ここで逃したらもっと(・・・)話がこじれる!!

 多少、彼の気分を損ねてでも話をする必要があると判断した私たちは、彼が移動する前に声をかけようとする。

 

「く、黒騎士く———」

「あ、え、なに!? ええええ!?」

 

 彼の頭上に空いたワームホール。

 そこから、悲鳴を上げた誰かがカツミ君へと落ちてくる。

 声に顔を上げ、首を傾げた彼が落ちてきた誰か———黒髪の少女、アルファを受け止める。

 

「なんだ、アルファか」

「あ、あああ、あの、部屋で君の帰りを待ってて大人しくしてたら、いきなり足元に穴が開いて、それで……」

 

 は? お姫様抱っこ?

 ……じゃなくて、あたふたとあざとさ全開な様子で言い訳をするアルファにカツミ君は首を傾げる。

 

「はぁ? んなこと言ってねぇし、お前言っても聞かねぇだろ」

「……カツミ?」

「……いや、なんかスーツの見た目変わってるから疑問に思うのは分かるが、俺だっ———ぬぐぉ!?」

「カツミぃぃぃ!!! おかえりぃ!! ずっと、ずっと待ってたよ!!」

 

 抱きついた……!?

 周囲の注目にかまわず、アルファがカツミ君の首に抱き着く。

 それに合わせて、ものすっごい勢いで写真が撮られる音が響いてくる。

 

『なんだあの美少女……!?』

『か、かわいい……』

『いったい、どんな関係なのかしら……?』

 

 どんどん混乱が広がっていっている……!?

 そんな周囲の困惑を知ってか知らずか、ひっつくアルファに困惑した声を漏らした彼が、声を荒らげる。

 

「お前まで意味わかんねぇことになってるし、まずはここを離れるぞ!!」

「うん!!」

「……なんか、いつもと比べて無邪気じゃね? 熱でもあるのか?」

 

 かつてないほどに上機嫌なアルファを持ち上げたまま彼が私たちへと振り返る。

 やや困惑しながら、言いよどむように首をひねった彼は、おもむろに片手を掲げる。

 

「あー、じゃあな、ジャスティスクルセイダー」

「え?」

「……ん? なんで俺は、お前たちを……っ」

「黒騎士くん!! あ、待って——」

 

 痛みを堪えるように頭を手で押さえた彼が、アルファを抱えたままその場を離脱する。

 抱えているアルファにケガをさせないように、建物の壁を蹴り、完全にプロトワンの性能を引き出しながら、彼は闇夜へとその姿を消していく。

 

「……司令」

『恐らくは、無理に記憶を呼び起こしたせいで二つの記憶に誤差が生じているのだろう。時間か、きっかけがあれば統合されるだろうが……いや、まずは彼の居場所を把握することが先決だな』

「わかるんですか?」

『心配するな。Xプロトチェンジャーにはちゃんと追跡装置が……追跡装置が……』

「司令?」

 

 徐々に声を弱めていく司令に声をかけると、さらに弱弱しい声が返ってくる。

 

『プロトが妨害して分からなくなっちゃった……』

「このバカ司令!!」

「変態」

「駄目エイリアン」

『私だって一生懸命がんばっているのだ!! お前らはまずはシロとガウスのつけてるチェンジャーを回収して帰ってこぉーい!!』

 

 まさかプロトが追跡装置を妨害するだなんて……。

 いや、彼の戦闘力を考えれば大丈夫なのはわかってるけど……。

 

『ガウ……』

「シロ、とりあえず本部に戻るから君も一緒にいこ?」

『ガーウ……』

 

 シロがすごい弱り切っている……!?

 とぼとぼとこちらにまでやってきたシロが、普段絶対に近づいてくれない私の掌の上に乗り、こてんと倒れる。

 機能を停止したわけでもなく、ショックを受けたようにゴロゴロとうなり始めるシロに、私も共感の気持ちを抱く。

 

「まずは同じことが二度と起こらないように、事態の収拾を急がなくちゃ」

 

 地球の怪人を蘇らせようだなんて馬鹿なことを考える侵略者が出ないように、今回倒した奴らの痕跡を全て消しておこう。

 彼の……この場を離れたカツミ君のことを考えるのは……。

 ……。

 

「アルファァ……」

「レッド、それは後でゆっくり話し合おうや」

「しっかりとした場で議論しよう」

 

 どういう目的でワームホールで彼女を連れてきたかは知らない。

 けれど、彼女が一人幸せそうな顔でカツミ君と共に私たちの前から消えたことに関しては納得していない。




天のすけの気持ちを味わったナメクジ怪人でした。

物理全振りのプロトワン。
パンチの威力が強すぎてビームを出してきます(!?)

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